Fate/magi sister's 冬木の天秤 作:高島智明
聖杯戦争に参戦したマスターは、契約したサーヴァントの生前の記憶を夢に見ると言う。
衛宮士郎はサーヴァント・セイバーを召喚した際にも、特に此の点について誰かに注意された訳でも無く、夢を見ない様に備えることも無かった。
夜の聖杯戦争に備えて、早目に仮眠を取っていた士郎の夢に、それは現れた。
「それを手にしたが最後、君は人間では無く成るよ」
だがしかし、少女は大地に突き立てられていた黄金に輝く剣に手を掛け…
誰にも抜けなかった「選定の剣」を抜いた少女ーアルトリアは、アーサー・ペンドラゴンと呼ばれる王と成った………。
……。
…夢から覚めた士郎を、父親が見守っていた。
「親父…俺が見た夢は本当なのか」
父親は少し考えてから答えた。
「聖杯戦争に参戦したマスターは、契約したサーヴァントの生前の記憶を夢に見ると聞いている。
士郎が見たのは、セイバーの記憶だろう」
「それじゃ、やっぱり。
俺が見た夢でセイバーは…アーサー王だった。
って、アーサー王って女の子だったのか」
聞いている父親の方は「驚くのは、そこかい」とでも言いたげな態度だった。
「親父は驚かないんだな。知っていたのか」
「最初からアインツベルンは、アーサー王を呼び出す触媒を僕に押し付けた」
「じゃあ、親父は知っていて…」
「そして僕は、あんな少女に英雄の役目を押し付けた何者かに腹を立てていたよ」
当然の様に、士郎を守っていたセイバーは、今更の様に前回のマスターを非難する様な視線を向けた。
「キリツグ、何故それを言葉にしなかったのです。貴方は只、私を黙殺した」
「あの時の僕は、聖杯に願望をかけることしか考えなかった。
全ては、その為の道具としか考えなかった。
けれども、その聖杯は狂っていた…士郎には、同じ間違いをして欲しくない」
セイバーにしてみれば、前回には遂に分かり合えなかったマスターの本心だった。
*
遠坂邸では、母親の葵が手作りした夜食を前に姉妹が今夜の聖杯戦争の作戦を語り合っていた。
とは言え、得られている情報は限られいてた。
結局、今夜も情報と敵を求めて逍遥することに成りそうだった。
ふと、凛はアーチャーの入れた紅茶を卓に下して、妹に語り掛けた。
「ねえ、桜。ライダーのあの服だけど。桜の趣味とも思えないんだけど」
「姉さん。私も不思議に思っているのですが。
ライダー位の美人なら、もっと着飾っても似合いそうですのに」
ライダーは「邪眼隠し」の下で、何故かモジモジとした末に答え始めた。
「この衣装は、姉様からの御下がりなのです」
「姉様?そう言えば、貴女、3つ子だったわよね」
ライダーは、観念した様に続ける。
「姉様たちは、女神として不老でした。少女のまま成長しなかったのです。
女神から堕神した私だけが成長してしまい、姉様たちと御揃いの衣装が似合わなく成ってしまったのです」
凛は、ふっと息をついて、
「そうだったのね。貴女の隠れた属性は「妹」
だから私たち姉妹で召喚した時、桜の方に応えたんだわ」
*
衛宮父子も遠坂姉妹も、戦いの中のひと時を過ごしていた。
だがしかし、今夜も聖杯戦争は戦われる。