Fate/magi sister's 冬木の天秤 作:高島智明
結局、衛宮士郎はセイバーと2人で、夜の冬木市内へと出た。
「騎士王の夢」を見たことで、セイバーへの感情に微妙な変化も出ていた。
だがしかし、何処かの陣営が関係の無い誰かを巻き込んでいるかも知れない聖杯戦争を「正義の味方」を志望する士郎は放置して置け無かった。
そんな息子に父親は同行していない。
「かつての魔術師殺し」衛宮切嗣は、今回早まった聖杯戦争への疑惑を更に深め、さらなる調査を欲していた。
それに、これは息子が乗り越えなければ為らないことだと、理解はしていた………。
……。
…夜の市内を逍遥するセイバーと士郎だったが、とある人気の無い街角でセイバーが何かに気付いた。
「シロウ、サーヴァントの気配が近付いて来ます。闇の中に何者かが潜んで居ます」
武装するセイバー。
そして、警戒する士郎の視界に夜の闇の中から現れた人影には見覚えが在った。
「衛宮じゃ無いか」
「慎二」
間桐慎二は、ヘラヘラとすら言える笑いを浮かべた。
「こんな夜中にデートかい。それに何だよ、そのコスプレは。
まさか、その女の子がモグリ魔術師のサーヴァントだって」
セイバーは挑発には乗らない。
「シロウ、シンジとあのマスターを呼びましたね。
ならば、サーヴァントはアサシンの筈。
油断為さらず、私の傍を離れないで下さい」
「おお、怖い」
尚もヘラヘラしていた慎二が、突然に鋭い声を発した。
「やれ、アサシン」
暗殺者のサーヴァントは、闇に紛れる暗殺者らしくも無く黒ずくめの姿を現し、右腕を振りかざしてセイバーに向かって来た。
「その心臓、貰い受ける!」
セイバーは不可視の剣を振るって迎え撃つ………。
……。
…アサシンは、奇襲とマスター殺しに特化したクラスとも思えず、不可視の剣を振るうセイバーに対して譲らず、その巨大な右腕1つで渡り合っている。
サーヴァントVSサーヴァントの激闘の傍らで、マスター同士は相変わらず戦いもせずに向かい合っていた。
「どうだい、僕のアサシンは強いだろう」
高笑いすらしそうな慎二に対して、士郎はハラハラすらしてセイバーを見守っていた。
「その心臓、貰い受ける!」
遂に、アサシンの伸ばした右腕がセイバーの胸元に延びようとした、その刹那。
セイバーは大きく飛び退って、間合いを取る。そして…
「シロウ、貴方に真名を知られた以上、この剣を隠す意味は在りません」
不可視の剣を覆っていた風を振り払う。
「宝具を解放します」
聖剣に魔力が溜められる。
アサシンは追い縋り、セイバーの心臓に右腕を伸ばそうとするが、
「約束された勝利の剣ー!」
聖剣から放たれた魔力の光がアサシンを包み込み、その姿を打ち消した。
「そんな、何やっているんだよ、アサシン…あちち」
慎二が懐から何かを投げ捨てた。
その書物の様な形をした何かは地上に落ちて燃え上がり、燃え尽きた。
「ああ「偽臣の書」が。やっばりアサシンがやられたのか」
放心する慎二に対し、士郎が何歩か進み出た。
「慎二、どうする」
「ぼ、僕をどうする気だ。ま、まさか殺すとか言わないよな」
士郎は、ふと思い出す。
「サーヴァントを無くしたマスターは、教会に居る監督役が保護してくれるんだろう。行けよ」
そのセリフに、ハッと何かを思い出したかの様な慎二は、踵(きびす)を返して走り去った。
*
「1つ、聖杯に入った」
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、彼女と聖杯の関係を衛宮士郎を含めた参戦者たちは今だ正確には知らない。
只、アインツベルンが聖杯を用意するとしか。
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