Fate/magi sister's 冬木の天秤   作:高島智明

27 / 41
Episode.27 蟲の妖怪老人

衛宮士郎がセイバーと共に「夜の聖杯戦争」に”出陣”して行った後、衛宮切嗣は父親として、そして「魔術師殺し」として想いを巡らせていた。

 

息子はセイバーと共に、確かに成長している。

だがしかし、それでも…あの子に「裏側の汚れ」まで背負わせる積もりは無い。

 

「魔術師殺し」とて全知の神とかでは無い。

今夜、2騎のサーヴァントが倒れ、その英霊が聖杯にくべられるとまでは知らない。

けれども、戦況が何時までも動くことも無い訳でも無いとは察せられた。

ならば、自分が動くしかない。

 

切嗣は「魔術師殺し」だった時から愛用して来た銃を手に取り、ゆっくりと点検した。

迷いは無い。

士郎を前線に立たせるなら、裏側の闇は自分が片付けるべきだ。

 

切嗣が狙いを定めたのは間桐臓硯だった。

柳洞寺の偵察はキャスター陣営に邪魔された。ならばー

間桐臓硯いやマキリ・ゾォルケン。

聖杯戦争を始めた「始まりの御3家」とされる3人の生き残り。

やつが聖杯の異常に気付いていない筈が無い。

 

全知ならない切嗣には、臓硯が第4次聖杯戦争の開戦以前から遠坂と禅定の血統を引く娘を狙い、そして新たな聖杯の器を作り出そうと目論んで果たせなかった、とまでは知らない。

だがしかし「魔術師殺し」は密かに決意していた。

マキリは何かを知っている、ならば知っていることを吐かせてやる………。

 

……。

 

…間桐邸に近づくに連れて、妖気と呼ぶべき感触が「魔術師殺し」だった感覚に感じられた。

近付くに連れて次第に強く成って行く。

それでも切嗣は退かなかった………。

 

……。

 

…かつての「魔術師殺し」のスキルを思い出し、間桐邸に忍び込んだ切嗣は、尚も強く成り続ける妖気の源を探った。

結果、あっさりと地下の「蔵」に辿り着く。

その場所は、蟲が蠢いていた。

 

「ほっほ、礼儀を知らぬ客じゃな」

妖気の源の怪老人に対して「魔術師殺し」は臆さない。

「マキリ・ゾォルゲン、聖杯には何が起こっている」

「教えてやる義理は無いのう」

 

地下蔵に蠢く蟲たちが、攻撃を始めた。

それを払いのけながら、銃を向ける。

「答えろ」

「儂は、そんなもので殺せぬよ。蟲に喰われろ」

 

不死の長く生きていたマキリにして忘れていた。

第4次聖杯戦争に於いて、敵マスターたちを葬った「魔術師殺し」の必滅の弾丸、起源弾。

蟲と言う魔術に因って不死を保ってきた臓硯には、天敵とも言うべき弾丸だった。

 

最早、口を割らせる余裕も無い、とみた「魔術師殺し」が放った起源弾は其の効果を発揮した。

「こ…これは…そうか…しまった」

怪老の身体からボロボロと蟲が零れては消失して行き、それと共に不死の筈の身体が崩れて行く。

「お…お」

もしも、心臓に当たる蟲を誰かの心臓にでも移植していれば、逃れようも在ったかも知れない。

だがしかし、そんな相手は遠坂が姉妹を当主とする決断をした結果、居なかった。

 

「今わの際に答えろ。聖杯には何が起こっている」

その「魔術師殺し」の声が届いたか、いなか。

「ゆ…ユスティーツァ…」

最後に其の名を呼んで、不死の怪老は崩れ去った………。

 

……。

 

…今は無人と成った間桐邸を、目的を達成出来なかった「魔術師殺し」は後にした。

蟲の怪老が支配し続けて来た”城”は、今は虚しかった。




ご意見ご感想をお待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。