Fate/magi sister's 冬木の天秤 作:高島智明
衛宮士郎がセイバーと共に「夜の聖杯戦争」に”出陣”して行った後、衛宮切嗣は父親として、そして「魔術師殺し」として想いを巡らせていた。
息子はセイバーと共に、確かに成長している。
だがしかし、それでも…あの子に「裏側の汚れ」まで背負わせる積もりは無い。
「魔術師殺し」とて全知の神とかでは無い。
今夜、2騎のサーヴァントが倒れ、その英霊が聖杯にくべられるとまでは知らない。
けれども、戦況が何時までも動くことも無い訳でも無いとは察せられた。
ならば、自分が動くしかない。
切嗣は「魔術師殺し」だった時から愛用して来た銃を手に取り、ゆっくりと点検した。
迷いは無い。
士郎を前線に立たせるなら、裏側の闇は自分が片付けるべきだ。
切嗣が狙いを定めたのは間桐臓硯だった。
柳洞寺の偵察はキャスター陣営に邪魔された。ならばー
間桐臓硯いやマキリ・ゾォルケン。
聖杯戦争を始めた「始まりの御3家」とされる3人の生き残り。
やつが聖杯の異常に気付いていない筈が無い。
全知ならない切嗣には、臓硯が第4次聖杯戦争の開戦以前から遠坂と禅定の血統を引く娘を狙い、そして新たな聖杯の器を作り出そうと目論んで果たせなかった、とまでは知らない。
だがしかし「魔術師殺し」は密かに決意していた。
マキリは何かを知っている、ならば知っていることを吐かせてやる………。
……。
…間桐邸に近づくに連れて、妖気と呼ぶべき感触が「魔術師殺し」だった感覚に感じられた。
近付くに連れて次第に強く成って行く。
それでも切嗣は退かなかった………。
……。
…かつての「魔術師殺し」のスキルを思い出し、間桐邸に忍び込んだ切嗣は、尚も強く成り続ける妖気の源を探った。
結果、あっさりと地下の「蔵」に辿り着く。
その場所は、蟲が蠢いていた。
「ほっほ、礼儀を知らぬ客じゃな」
妖気の源の怪老人に対して「魔術師殺し」は臆さない。
「マキリ・ゾォルゲン、聖杯には何が起こっている」
「教えてやる義理は無いのう」
地下蔵に蠢く蟲たちが、攻撃を始めた。
それを払いのけながら、銃を向ける。
「答えろ」
「儂は、そんなもので殺せぬよ。蟲に喰われろ」
不死の長く生きていたマキリにして忘れていた。
第4次聖杯戦争に於いて、敵マスターたちを葬った「魔術師殺し」の必滅の弾丸、起源弾。
蟲と言う魔術に因って不死を保ってきた臓硯には、天敵とも言うべき弾丸だった。
最早、口を割らせる余裕も無い、とみた「魔術師殺し」が放った起源弾は其の効果を発揮した。
「こ…これは…そうか…しまった」
怪老の身体からボロボロと蟲が零れては消失して行き、それと共に不死の筈の身体が崩れて行く。
「お…お」
もしも、心臓に当たる蟲を誰かの心臓にでも移植していれば、逃れようも在ったかも知れない。
だがしかし、そんな相手は遠坂が姉妹を当主とする決断をした結果、居なかった。
「今わの際に答えろ。聖杯には何が起こっている」
その「魔術師殺し」の声が届いたか、いなか。
「ゆ…ユスティーツァ…」
最後に其の名を呼んで、不死の怪老は崩れ去った………。
……。
…今は無人と成った間桐邸を、目的を達成出来なかった「魔術師殺し」は後にした。
蟲の怪老が支配し続けて来た”城”は、今は虚しかった。
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