Fate/magi sister's 冬木の天秤 作:高島智明
ランサー陣営との遭遇戦を終えて帰宅した遠坂姉妹は、寝ずに待っていた母の葵の出迎えを受け、只「只今、帰りました」とだけ答えて寝室へ向かった。
自分たちの陣営は未だ1騎を倒しただけ。
聖杯戦争は、まだまだ続く………。
……。
…翌朝。
姉妹は何事も無かった様に、何時もの様に並んで学園への道を歩いていた。
只、異なっているのは、妹が衛宮家での朝食に御邪魔しなかったこと、その為に姉が衛宮家に迎えに行くのでは無く、遠坂邸から姉妹が並んで歩いていることだった。
遠坂姉妹は、家を出てから暫く並んで歩いていた。
凛の歩調は何時も通りだが、桜にはその背中が少しだけ重く見える。
昨夜の魔力消耗が残っているのだと、桜は気付いていた。
そして、何時もなら見かける辺りで間桐慎二の姿が見えない。
それでも桜には、慎二の不在よりも、姉の沈黙の方が気にかかる。
けれど凛は、朝の光の中で何事も無い様に歩き続けた………。
……。
…衛宮士郎のクラスでは、担任教師の藤村大河が何時もの様に出欠を取った。
それから、大河は何時もの様に時間割にしたがって各クラスを巡り授業を行う。
「間桐は休み、と」
衛宮士郎も遠坂凛も、ついでに言えば1年後輩の遠坂桜も何事も無かった様に出席していた。
只、間桐慎二の席だけが空いていた。
だがしかし、何時も通りの学園の日常は紡がれて行った。
葛木宗一郎の授業も何時も通りだった………。
……。
…聖杯戦争が密かに開戦して、初めての休日。
士郎は柳洞寺を見舞っていた。
どうしても、柳洞一成や零観兄弟が心配だったのだ。
ところが…
柳洞寺では何事も無かった様に仏事が執り行われていて、弔問客が出入りしていた。
そして、イソイソと手伝う女。
下宿人の葛木宗一郎のフィアンセだと堂々と名乗り、臆面も無くキャスターと呼ばれていた。
士郎は、聖杯戦争のことなど知らないだろう柳洞兄弟や弔問客の前で迂闊なことも発言出来ず、退散する以外が無かった………。
……。
…帰り際。
山門を出て参道に踏み出しかけた士郎は、山門を振り返った。
アサシンのサーヴァントらしく、出入りする弔問客には気配を消している。
だがしかし、マスターに成ってしまった士郎には存在が感じられた。
宮本武蔵の伝説から抜け出した佐々木小次郎の様な「門番」の剣豪。
飄々と佇みながら、士郎に同行して来たセイバーに笑みを向ける。
「剣士の英霊か。剣を交えてみたいものよ」
油断無く士郎の傍を離れないセイバーに対して、剣豪のアサシンは飄々と佇んでいた。
*
その士郎が気付いていたか、どうか。
密かに、銀髪紅眼の幼気な少女が様子を伺っていた。
柳洞寺の山の地下にある魔法陣を提供したのはアインツベルンである。
その柳洞寺をキャスター陣営に占領された状態が、面白くないのは当然だ。
「あんなやつ、バーサーカーなら、ひと捻りよ」
そして、参道を下(くだ)る士郎たちにも注目する。
「お兄ちゃんなんか、人形にしてあげる」
幼気に見える少女は、無邪気とも、そうとも言い切れない微笑を浮かべた。
聖杯戦争は、未だ続く。