Fate/magi sister's 冬木の天秤 作:高島智明
隣町の母方の実家に疎開させていた筈の幼い姉妹が、聖杯戦争開戦を目前にしていた父親の遠坂時臣が陣地を構える遠坂邸に、ひょっこりと姿を現した。
しかも、姉妹と似通った年頃に見える、何故か素肌の上に姉の遠坂凛の上着だけを羽織った少女を連れていた。
聞けば、凛の小学校に於けるクラスメイトが行方不明に成り、彼女を探しに来ていたのだと言う。
そして見付けたのだが、その先で誘拐犯に遭遇したのだ。
それだけでは無かった。
何と其の誘拐犯は「悪魔」を呼び出しており、その「悪魔」への生贄として、誘拐した子供たちを惨殺していたのだ。
凛と妹の桜も、誘拐犯と「悪魔」に追われたが、覚えたばかりの魔術を使って反撃し、その隙に逃げて来た。
幾ら才に恵まれていたとはいえ、未だ修行を始めたばかりの、そして触媒と成る宝石も持たない凛の魔術だけでは危険だったかも知れなかった。
その時、桜の虚数魔術が発動した。
流石の「悪魔」にも瞬間だけだが隙が出来た。
その隙に、助け出した凛の友人のコトネを連れて這う這うの体で逃げて来た、とのことらしかった。
流石の時臣も、姉妹を褒めるべきか叱るべきか、迷ったものだった。
兎も角(とにかく)助け出されて来たコトネを魔術については口止めした上で自宅へ、そして姉妹を隣町の母方の実家に送り届ける手配をして、さて時臣は「悪魔」について思いを巡らせた。
子供の言うことと笑い飛ばすことが出来ない。
聖杯戦争の開戦は目前である。
殆(ほとん)どの陣営がサーヴァントを召喚している筈だった。
それに姉妹は、誘拐犯の手の甲に魔法陣の様な模様をハッキリと目撃していた。
結局の処、時臣は聖杯戦争の監督役(裏では彼の息子である自身の弟子もろとも結託していた)に通報した。
*
監督役である言峰璃正は、未だにキャスター陣営からの参戦届出が無いことに困惑していた………。
……。
…深夜の遠坂邸。
遠坂時臣は、自信の弟子でもあり監督役の息子でもあるアサシンのマスターと裏で結託し、自身のサーヴァント・アーチャーを巻き込んで、他の陣営にフェイクを仕掛ける茶番劇を演じた。
公式には、これが第4次聖杯戦争の最初の戦いと記録された………。
……。
…冬木港の倉庫街。
真の第4次聖杯戦争の開戦。サーヴァントたちの激突する時が来た。
先ずは、アインツベルンのアルビノの淑女を連れたセイバーと、ランサーが激突した。
そして、アーチャー更にはライダーのサーヴァントが、王の名乗りを上げる。
更には、漆黒の甲冑に素顔を隠した騎士が乱入しようとした。
だがしかし、セイバーと相対した瞬間、何故か硬直していた。
「何者だ。キャスターかバーサーカーか」
残るクラスからの推察しての詰問だったが、キャスターにしては魔術師らしく無く、バーサーカーにしては狂化の気配を見せない。
セイバーの呼びかけに、ハッとしたかの様に硬直を解いた。
「私は、サーヴァント・トレイター」
「トレイター(反逆者)?」
「私は、かつて主を裏切った。その罰を受ける為に召喚された」
瞬間だけ、セイバーは迷いを見せた。
まるで、漆黒の兜の中からの声に覚えが在るかの様に。
だがしかし、次の瞬間には油断無く「不可視の剣」を構える。
けれども、トレイターはセイバーを黙殺するかの様に他のサーヴァントであるランサーに襲い掛かった。
偶々(たまたま)掴んだ街灯を、まるで「宝具」の様な武器に変えて襲い掛かる。
必殺の双鎗を振るうランサーも閉口していた。
手持ち無沙汰の感に成ったセイバーは、他のサーヴァントに対峙しようとした。
その頃、セイバー陣営の真のマスターである「魔術師殺し」衛宮切嗣は、セイバーが他のサーヴァントを引き付けている間に敵マスターを狙撃するべく待機していた。
ところが、容易に其の隙を見せる陣営が中々に無い。
更には、遠坂邸で返り討ちに成った筈のアサシンを、周囲に待機させていた切嗣の部下が発見していた。
ここは仕切り直し、と「魔術師殺し」は撤退を決断した。
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