Fate/magi sister's 冬木の天秤 作:高島智明
冬木市の郊外に拡がる、人知らぬ深い森。
その森の奥の西洋風の古城の1室で、衛宮士郎とイリヤスフィール・フォン・アインツベルンは向かい合っていた。
「お兄ちゃんはキリツグを奪った。キリツグは私を捨てた。殺してやる積もりだったのに」
イリヤは、幼気な外見や何時もの無邪気さからは離れた、複雑そうな態度だった。
そんなイリヤに対する言葉を探していた士郎は、とあることに思い至る。
「イリヤ。親父は何度も外国へ旅行していた。イリヤを迎えに行こうとしていたんじゃ無いのか」
「嘘を吐くな」
「嘘じゃ無いよ。
そして、何時も帰って来た時は寂しそうだった。
アインツベルンって家の人たちがイリヤに会わせてくれなかったんじゃ無いのか」
「信じられない!」
*
その少し前の時系列、城の在る森へと冬木市内からの峠道を近付く車が在った。
亡き妻の遺品として、衛宮切嗣が此の10年間、整備し続けていた妻の愛車だった。
騎乗スキルを発揮して車を操るセイバー。
後部座席に同行している遠坂姉妹。
姉妹のサーヴァントであるアーチャーとライダーも霊体化しつつも従っていた。
そして、ナビゲーションしているのは当然に切嗣だった。
「あの城は、前回、僕が最初の拠点として整備した。
当然だが、今回のアインツベルンの者たちは知らないかも知れない裏道も、僕が作った」
やがて、その裏道の入口に当たる森の端で車を捨てる。
「行こう」
切嗣の案内で、1行は森の奥の城へと向かう。
*
士郎の告白に心を乱されたか、士郎を1人残してイリヤは城の何処かに姿を消していた。
その隙を覗(うかが)っていたかの様に、士郎が幽閉されている部屋の扉を誰かが破った。
アインツベルン陣営は失念していただろうか、士郎とセイバーにはマスターとサーヴァントを繋ぐラインが繋がったままだった。
「急ごう、バーサーカーが来ないうちに」
「魔術師殺し」で無くとも、自明のことだった………。
……。
…出口へと急ぐ1行の前で、切嗣には見覚えの在るイリヤの護衛役がハルバードを振りかざした。
「リズ。道を明けてくれ」
「私に命令出来るのは、イリヤとセラだけ」
ハルバードを振りかざして迫るリズに対し、発砲を躊躇う切嗣より先に遠坂凛がガンドの魔術を放ち、空振りしたハルバードを実体化していたアーチャーが双剣で受け止めた。
「先輩、早く」
何時もは姉の影に控え気味の遠坂桜が、士郎の手を引いて走った………。
……。
…城を駆け出し、車を捨てた位置まで森の隠し道を走る1行。
だがしかし、後方の城の方から、灰色の巨人の咆哮が聞こえてくる。
「やはり、私たちが来た意味が在りそうだな」
アーチャーが何時もの様に、皮肉めいた笑いを漏らした。
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