Fate/magi sister's 冬木の天秤   作:高島智明

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Episode.32 退却戦

城を駆け出し、車を捨てた位置まで森の隠し道を走る1行。

だがしかし、後方の城の方から灰色の巨人の咆哮が聞こえて来る。

 

「やはり、私たちが来た意味が在りそうだな」

アーチャーが何時もの様に、皮肉めいた笑いを漏らした。

「アーチャー、どういう意味だ」

セイバーの問いにも、その笑いを消さないアーチャー。

「誰かが、あのでかぶつを食い止めないと、ということだ」

「ならば、これは私のマスターを救出する為の退却戦だ。私が…」

「セイバーにはセイバーのマスターの御守が在るだろう。

それに、うちの姉妹のサーヴァントならば、未だライダーが居る」

 

その間にも、巨人の咆哮は次第に近付いて来る。

「行け!」

その時、脱出を促すアーチャーに衛宮切嗣が向き直った。

「待て。君には聞きたいことが在る。君は、僕の知っている誰かを思い出させる。君は誰だ」

アーチャーが答える前に、マスターの遠坂凛が反応した。

「私も知りません。アーチャーが何の英霊なのか」

 

益々笑みを皮肉そうにするアーチャーに、尚も切嗣は問いかける。

「もしも僕の感じた通りならば、君に此処で、こんな役目をさせる訳にはいかない。答えてくれ」

アーチャーは皮肉そうな、だがしかし、先程までとは異なる笑みに成って、

「やっぱり、爺さんは誤魔化せなかったか…そうだ。私は、この時代からは未来の亡霊だ」

「それじゃ、やっぱり君は」

念を押す様な、けれども何かを恐れる様な切嗣。

「そうだよ、爺さん。私は「正義の味方」に成ろうとした衛宮士郎の成れの果てだ」

 

何処か自嘲する様なアーチャーを見やって、その場の1同は其々に自分の知り人の面影を見て其々の2人称を呼ぶ。

先ず、遠坂桜が、

「先輩…」

凛も、

「衛宮君…」

セイバーが、

「シロウ…」

そして、衛宮士郎も、

「お…俺…」

 

1同が唖然としている間にも、巨人の咆哮が次第に近付いて来る。

「見ろ、もう時間が無い。この詠唱は時間がかかるが、やるしか無いか」

アーチャーは何かの呪文を詠唱し始めた。

 

体は剣で出来ているー

 

呪文の詠唱の間にも、巨人の咆哮は次第に近付いて来る。

だがしかし、迫る前に詠唱が完成した。

 

ーUnlimited Blade Works!

 

固有結界の虚空に歯車が浮かび、果て無き荒野に無数の剣が突き刺さっている。

その剣が、迫るバーサーカーに向かって放たれた。

「行け!」

アーチャーの叱咤に、1同はハッとした様に動き出した。

 

桜が士郎の手を取って走り出した。

他の1同も踵(きびす)を返す。

それを振り返ることも無く、アーチャーは剣を放ち続けた………。

 

……。

 

…又も、倒れた灰色の巨人が立ち上がって来た。

*

 

「きゃはは!バーサーカーを6回も殺せるなんて。でも12回には届かなかったね」

アインツベルンの城では、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンが、バーサーカーと繋がったラインを通して戦況を見やり、笑っていた。

*

「ここまでかな。けれども、連中は逃げ切った頃だろう」

アーチャーが1人かえりみた時、白い流れ星の様なものが空中を走り、バーサーカーの振り下ろす1撃の下からアーチャーを攫った。

 

「ライダー?!」

「貴方が衛宮士郎ならば、貴方を見殺しにしたら桜が悲しみます」

ライダーの天馬は、アーチャーを救い上げた其のままに、バーサーカーの目前を飛び去った。

*

1同は、車を乗り捨てて来た森の入口まで逃げのびた。

「士郎。セイバーに飛ばす様に言ってくれ」

切嗣が言うまでも無く、1同が乗り込んだ車は、急発進した。

 

「アーチャーとライダーも逃げました」

遠坂姉妹とサーヴァントたちとのラインを通じて、状況は察しられた。

*

「つまんない。お兄ちゃんたちに逃げられた」

アインツベルンの城では、イリヤが憮然としていた。

 

彼女の感情は複雑だった。

「お兄ちゃんの言ったことは本当なの?キリツグは私を迎えに来ていたの」

答えてくれるものは居なかった………。

 

……。

 

…車は衛宮屋敷に帰り着いていた。

 

「共闘は此処まで。ここからは、又、敵同士よ」

遠坂姉妹の姉は、妹の手を引いて立ち去って行った。

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