Fate/magi sister's 冬木の天秤 作:高島智明
屋敷の結界が味方で無いサーヴァントの侵入を告げた。
庭に飛び出した1同を、天空の乗り物の上から、黄金色の甲冑のサーヴァントが見下ろしていた。
「久しいな、騎士王。今度こそ我が財宝の1つと成れ」
「セイバー、あいつを知っているのか」
衛宮士郎の疑問には、父親の切嗣が答えた。
「僕とセイバーが、前回の最後に戦ったサーヴァント。
第4次聖杯戦争のアーチャーだ。
真名は英雄王ギルガメッシュ。
だけど、あの時に聖杯から流れ出した泥に飲まれた筈だ……そうか。
あの影響で、この10年間を」
見下ろす英雄王は1同を見回して嘲笑した。
「ふん。雑種どもが群がっているか」
だがしかし切嗣は、むしろ淡々と言い返す。
「それを言うなら、君こそ神と人間の雑種だろう。神話通りならな、自称英雄王」
この返しに、むしろ愉快そうに嘲笑の混じった大笑をギルガメッシュはした。
「わはは!雑種が我を雑種と言うか「魔術師殺し」よ」
そして更に言い募る。
「好いわ。
聖杯の器とか言う小娘も、大聖杯とやらが在ると言う、あの寺の廃墟も既に我がものよ。
聖杯は、既に我が財宝の1つに戻ったも同然。
お主も我が財宝の1つと成れ、祖国を救済しそこなった王」
笑うだけ笑って、天空の乗り物で英雄王は飛び去った………。
……。
…飛び去った後の衛宮屋敷では、顔を寄せ合って合議していた。
衛宮切嗣が推定する。
「ギルガメッシュが漏らした通りならば、やつと言峰が居るのは柳洞寺だ」
そして、
「どうする?」
息子は考えを巡らす様にして、答えた。
「俺には、未だ何が正義かも分からない。だけど、あいつに聖杯を渡してはいけない」
「そうか、それなら」
「戦うよ。そして、聖杯戦争を終わらせる」
確かに、残るサーヴァントはギルガメッシュとセイバーの2騎のみ。
ならば、これが最後の決戦に成るだろう。
セイバーは士郎を見返した。
「シロウが其の決心ならば、私は戦います。
確かに英雄王は強敵ですが、私も決着を着けなければ為りません」
そのマスターとサーヴァントの2人を見回して、士郎の父親も決意した。
これは士郎の戦いだ。
だったら、父親としての自分の役目は、助けの合図が在るまで見守ること。
決意を明らかにしてから、セイバーは何かに思い至った態度に変わる。
「只、あの「全て遠き理想郷」が在れば、ギルガメッシュであっても遅れは取らないのですが」
「何だよ、それ」
「私の聖剣の鞘です。
「約束された勝利の剣」が無限の攻撃力を誇る様に「全て遠き理想郷」は無限の防御力を誇ります。
ですが、その鞘は私の手元から失われています」
ところが、あっさりと切嗣が、
「在るよ」
「「は?」」
セイバーと士郎の目が点に成った。
「前回、第4次聖杯戦争でアインツベルンが僕にアーサー王を呼び出させる為に押し付けた触媒が、その聖剣の鞘だった。
そして、今は士郎の体内に埋め込まれている」
「俺の…」
「あの時、瀕死だった士郎を助ける為に埋め込んだ。
おそらく、今回も其れが触媒に成ってセイバーを呼び出せたんだ」
「そうだったんだ」
「セイバーいやアーサー王の剣の鞘を、アーサー王に返す時が来た様だな」
切嗣が魔術礼装を解除する詠唱を唱えると、士郎の体内から溢れた光が形を取り、剣の鞘の形に成った。
その鞘にセイバーが取り出した、今は不可視の魔力を解いて姿を現した、その剣がピッタリと収まった。
「シロウ…貴方が私の鞘だったのですね」
セイバーが感嘆を込めた………。
……。
…その日も暮れて、決戦の夜が来た。
衛宮士郎とセイバーは並んで、柳洞寺の山門へと続く参道を登っていた。
参道を登り切ると、山門には破壊の後が残っていた。
山門の奥の境内も破壊の後を残している。
その境内に踏み込んだ士郎とセイバーの前に、飄然と現れた人影。
「来たか」
その相手に、士郎が返す。
「言峰神父いや言峰綺礼。ギルガメッシュは何処だ」
「我なら此処だ」
ギルガメッシュが霊体化を解き、慢心したかの様に堂々とする。
聖剣を鞘から抜き放つセイバー。
士郎も身構えた。
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