Fate/magi sister's 冬木の天秤   作:高島智明

7 / 7
Episode.7 王の問答

ランサー陣営を如何に誘(おび)き出すか、その作戦を思考していた森のアインツベルン城の上空で、アーチャーの「天翔ける王の御座」とライダーの「神威の車輪」(戦車)が鉢合わせした。

 

当然に警戒したセイバー陣営だったが、アーチャーとライダーの用件はセイバーを酒に誘うことだった。

「何を道化(たわけ)たことを」

等と思ったセイバーだったが、マスターの方は「魔術師殺し」の冷徹さを保っていた。

「セイバーがランサーから受けた傷のままでは分が悪い。

まして相手は2騎だ。

ここは喜んで申し出を受けよう」

何処かの世界線では「言葉を交わしたのは3度」などと言うが、それでは、特に中継役のアイリが倒れた後では、どうやって意思疎通を通じていたのやら。

例え、手駒として使い倒すにせよ、最低限のコミュニケーションは必須だろう。

最低限の命令は下されていた。それが当然の筈だった。

「王の酒宴には相応しい」

と、英雄王が「王の財宝」の中から取り出した「神の酒」を酌み交わし、英雄王と征服王と騎士王は問答した。

 

話題に上ったのは、聖杯への願望だった。

だがしかし、騎士王が「自らが治めた、そして救えなかった王国の救済」を口にした時、征服王と英雄王は笑った。

英雄王などは嘲笑した、と言って好い。

 

誇らしげに自らの王道を語る英雄王と征服王に騎士王は反論出来ない。

祖国を滅ぼしてしまった王という負い目。

あの「選定の剣」を抜いたことすら、後悔する思いがした。

選定の遣り直しをこそ聖杯に願うべき、とすら思えたのだ。

 

そして征服王イスカンダルは、自らの王道を誇示するかの様に固有結界の中に「王の軍勢」を召還して見せた。

英雄王と征服王に論破された形の騎士王は、自らの王道と騎士道の動揺に心を迷わせていた。

だがしかし、マスターである「魔術師殺し」は冷徹だった。

征服王が此の切り札を見せてしまったこと、それが最終決戦に対しての「魔術師殺し」の戦い方にどう影響するか、征服王当人すら未来を予知出来なかった。

潜伏先のマッケンジー家にライダーに連れられて戻って来たマスターのウェイバー・ベルベットは憮然としていた。

王たちの酒宴と問答の間、蚊帳の外の様にされていたのだから無理もない。

だがしかし、改めて征服王の王道に触れた思いをしていた。

遠坂邸に戻った英雄王は、騎士王を論破したことに愉悦を覚えていた。

何れ、あの女は自分の財宝の1つにしてやる。

 

単身出掛けた英雄王を出迎えた、マスターであり臣と称している遠坂時臣は、英雄王の勝手な振る舞いに不満を押し殺していた。

英雄王と征服王が帰った後のアインツベルン城では、衛宮切嗣が拠点の移動を決意していた。

アインツベルンから来た従者の中には、異論が在るものも居ないでは無かった。

”この”世界線ではキャスターやランサーの襲撃は、未だ起こっていなかった。

それでも「魔術師殺し」は冷徹に指摘した。

 

上空から攻撃出来る敵に場所を知られた以上は安全とは言い切れない。

まして、セイバーはランサーから受けた手傷が癒えず、戦力として不完全だ。

この城とは離れた、新たな拠点に密かに潜伏する方が此れからの戦いに有利だ。

 

そう「魔術師殺し」は主張した………。

 

……。

 

…冬木市は大橋を挟んで、大きく2つの地区に分かれている。

その名の通りに近代的な「新都」と古くから在る「深山町」だ。

その深山町に如何にもらしい武家屋敷が在った。

 

その屋敷に密かに衛宮切嗣とセイバー、そしてアイリが森の城から移動して来ていた。

その開けた屋敷は、ひと目見て無防備の様で、実際には警戒の結界などが張り巡らされていた。

 

この屋敷に落ち着く間も無く、セイバー陣営いや「魔術師殺し」は、ランサー陣営を誘き出すべく策を謀り始めた。




ご意見ご感想をお待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。