筋肉三銃士が行く~筋肉は全て(の問題の7割くらい?)を解決する~   作:nocomimi

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長旅のお供に無愛想な元冒険者の御者が頼りになり過ぎる

「――――あれは...十年と少し前のことだった」

 

ルーク修道士は前を向いたまま語り始めた。

 

「私は四人のパーティを率いてルードヴィッヒ侯爵家の砦を掃討していたんだ。以前話したように、王家からの要請による特別任務だった」

 

表通りに入った馬車は快速に走り始め、客車に前方からの風が吹きつける。マルコは片手を出して数え始めた。

 

「えぇと...四人....てことは....」

 

するとハンナが声を上げた。

 

「ルークおじさんと、うちのパパと、それにヨーゼフおじさんでしょ。あと一人は誰?」

 

「あと一人は....剣士だった。Aクラスだ」

 

「てめぇの情婦(オンナ)だろ。ちゃんと言え」

 

ルークが説明すると前を向いたままのヨーゼフが口を挟む。

 

すると修道士は目を伏せ、しばらく黙っていたが、やがて小さく頷いた。

 

「...そうだ。私の恋人だった。彼女は.....」

 

「凄い...女の人でAクラス剣士なんて」

 

だが少女ハンナが感心した様子で呟くと、ルークは言葉に詰まったように口を閉ざし、顔を反らした。するとヨーゼフが言った。

 

「死んだのさ、そいつは。毒蛇に噛まれてな。そっからが俺ら全員の運の尽きだった」

 

ヨーゼフが手綱を操りながら補足する。それでも修道士が黙っていると御者は顎をしゃくって促した。

 

「ルカ、ちゃんと順序立てて説明しな。それがお前の責任ってもんだろ」

 

「....わかった」

 

ルーク修道士は再び前を向いた。その顔色は悪く、額には汗が浮かんでいた。だが彼は話し始めた。

 

「あれはダンジョン化した侯爵家の城塞群のうちの最後の一つだった。突入後、我々は奇妙な牢獄を見かけた。異様に巨大な手枷や足枷。大船をつなぎ留めるときに使うような太い鎖。だがそこを通過すると屍鬼(グール)の大群に遭遇した。十匹や二十匹ではない。百匹規模だ。中には巨大化した個体もいた」

 

「そ...そりゃヤバいっすね」

 

マルコが相槌を打つ。修道士はやや落ち着きを取り戻した様子で言葉を継いだ。

 

「だが我々は全個体を倒し先に進んだ。そして地下の奥深くにある広い部屋に到達した。そこにいたのは巨大な多頭蛇だった」

 

「だが厄介ではあったが結局そいつも倒せたんだ。問題はそこじゃあねぇ。そっから先だ」

 

ヨーゼフが言う。それを聞いたルーク修道士は沈黙し唾を飲み込んだ。そしてようようの間を開けた後こう言った。

 

「...その広い部屋には奇妙な縦穴があった。そしてダニエルが言った。『魔力源』はこの中にある、と。それを封じなければこの城は何度掃討してもすぐに魔物の巣窟に戻る。それどころか、水源を通じて地方全体を汚染している可能性さえある、とな」

 

父の名を聞いたハンナが真剣な顔で耳をそばだてる。修道士は続けた。

 

「話し合いの結果、二人がロープを固定し、残り二人が竪穴に入ることに決まった。だが突入の直前、石材の隙間から蛇が溢れるように飛び出してきた。普通の蛇だったが、夥しい数だ。片端から倒していったが、やがて女剣士が噛まれた」

 

そこまで言ってしまうと、ルーク修道士は再び口を閉ざした。数秒の沈黙が流れた。ヨーゼフも口を挟まない。

 

「...彼女はすぐに息絶えた。そして私は作戦の中止を宣言した。...これが私の過ちだった」

 

ルークは絞り出すように言った。マルコは不思議に思って顔を上げた。

 

「でも...ルークさん。仲間が死んだら撤退って、結構普通の判断じゃねっすか?」

 

「だぁからてめぇはダメなんだよルカ。まるで説明になってねぇ」

 

すると御者が焦れたような声で怒鳴り、御者席の脇にあった手すりを叩いた。

 

「いいかルカ。てめぇは情婦(オンナ)の死体に傷をつけないことを最優先にしたんだ。死体をそこに置いてったら魔物に食い荒らされるからってな。だが俺も見誤ったもんだぜ。おめぇがそこまでのバカな判断をする奴だってことを見抜けなかったんだからな」

 

すると修道士は目を閉じ、そして開けると、大きく呼吸をして口を開いた。

 

「...その通りだ。私は彼女の遺体を無傷で持ち帰りたかった。だから作戦を中止し撤収を....」

 

「生きてる仲間より情婦(オンナ)の死体のほうが大事だってか?賢こそうなツラして信じられねぇバカときたもんだ」

 

ヨーゼフが大声で吐き捨てる。

 

「後生大事に情婦(オンナ)の死体を抱えたままで普通に戦えると思ってんだからな。しかもあの時俺らにはまだ選択肢があったんだ」

 

御者は語気も荒く続ける。マルコたちも皆ヨーゼフの独白に一心に耳を傾けていた。

 

「死体なんかほっぽり出してダニエルを手伝ってれば、あいつだって生きて戻れたかも知れねぇ。だがルカよ。あいつはパニック状態になったお前を見限って、ひとりで任務を遂行することに決めたんだ」

 

そう言うと、ヨーゼフはやや穏やかな口調に戻ってこう言葉を継いだ。

 

「泣かせるじゃねぇか。情婦(オンナ)が死んだからってメソメソしてるお前を置いて、あいつは穴に降りていったんだ。『魔力源の封印は僕にしかできない』って言い残してな」

 

ルーク修道士が沈黙すると、御者は懐かしそうな表情で前を向いて言った。

 

「俺はあいつが気に入ってた。毛並みのいい坊ちゃんなのに、俺みたいな薄汚ねぇ生まれの人間を差別することもなかったし、何よりも頭のいい奴だった。だがあいつは戻らなかった。そして脱出する過程で俺は死体を抱えて動きの鈍ったお前の分まで戦わなきゃならなかった。んで毒蛇の残党に手を噛まれてこの通りさ」

 

御者はそう言って義手を持ち上げた。一気にそこまで喋ると、気が済んだのかヨーゼフはようやく口を閉ざした。

 

ルークは生気のない顔をして黙ったままだった。他の仲間たちの誰も口を開かなかった。やがて馬車は停車した。表通りに店を構える大きな馬車屋の前だ。

 

「おい、費用は王家持ちなんだろ。頼むぜ」

 

ヨーゼフは何事もなかったような表情に戻ると、ルーク修道士に合図しながら御者席から降りた。我に返った修道士が頷き、御者に続いた。

 

マルコはしばらく茫然としていた。ハンナとアビゲイルも困惑した表情で顔を見合わせている。少女は小さな声で呟いた。

 

「なんか...うちの勘当たっちゃった...。当たっちゃったけど、うれしくない」

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * 

 

店から出てきた亭主はヨーゼフの外見を見るなり顔をしかめ、品定めするように眺めまわし始めた。だが傍らに立ったルーク修道士が名乗り、大公の名を出すと途端に態度が変わった。

 

亭主が揉み手せんばかりの勢いで店内に案内し、最新型の馬車を紹介する。一行は二頭立ての幌付きを借りることにし、マルコが料金を支払った。亭主が倉庫から馬車を引いてくるのを見ながら、マルコ青年はじっと考えていた。

 

――――自分が同じ状況に直面したら、どう判断する?――――

 

だが、少女ハンナが傍らに寄ってきて手を握ってきたので、青年はふと我に返った。ハンナもまた考え込むような表情をしている。

 

すると仕様の説明を受け終わったヨーゼフが無造作に御者席に乗り込んで言った。

 

「行くぞ」

 

それを聞いたマルコは慌てて荷物を客車に積み込み、仲間たちを乗せた。だが、全員が乗り込むと、御者が席から後ろを向いて手招きしてくる。

 

「...なんっすか?」

 

マルコが身を乗り出して尋ねると、ヨーゼフは低い声でこう言った。

 

「お前ら、さっきから魔法光学迷彩を着た連中が後をつけてきてるぞ。いいのか?」

 

「大丈夫だ。彼らは味方だ」

 

ルークが後ろから言う。

 

「そうか。わかった」

 

すると御者は納得した様子で答え、前を向くと手綱を取った。

 

「...え?...え?...魔法光学迷彩って...なんっすか?」

 

馬車が発車するなか、今さらながら驚いたマルコが声を上げるとルークが静かに言った。

 

「スレイマン閣下の部下だよ。姿を隠して追尾してきている」

 

「あ...なるほど」

 

やっと事態を理解したマルコの心に次なる疑問が湧いてきた。

 

「でも...ヨーゼフさんどうしてわかったんっすかね」

 

「彼はそういう男だ。元Sクラスの『バーグラー』だからな」

 

修道士は答えた。それを聞いたマルコの背筋に電流が走ったような気がした。

 

「......Sクラス...!」

 

「しかも冒険者としては私よりはるかに先輩だ。私が彼から学んだことは多い」

 

ルークはそう言うと、しばらく沈黙したあと少女ハンナに向き直った。

 

「...ハンナ嬢。これが全ての顛末だ。きみが私を...軽蔑したとしても仕方ないと思っている」

 

だがハンナは顔を上げて修道士を真っすぐに見た。そしてしばらく言葉を探した後こう言った。

 

「...うちは...軽蔑なんてしない」

 

彼女は慎重に言葉を継いだ。

 

「だって、もしうちが同じ立場だったら、正しい判断ができるかどうかなんてわかんないもん。それに‥」

 

ハンナは相手の顔を見上げると言葉を探しながら続けた。

 

「とっても愛してたんでしょ?そのひとのこと」

 

その言葉を聞いた瞬間のルークの表情は剣で心臓を貫かれた者のようだった。彼は顔を固まらせ、息が詰まったかのように目を見開いて沈黙していた。

 

「そうだ。私は‥‥彼女を‥‥エレオノーラを‥‥」

 

苦悩に満ちた様子でルークが呟いた瞬間、アビゲイルが顔を背けて言った。

 

「不謹慎ではなくて?修道者とあろう者が昔の恋人の名を口にするなんて」

 

修道女はあからさまに不機嫌な表情だった。彼女は棘のある声で続けた。

 

「神に捧げた身は一度死んだも同然なら、なぜ過去の恋愛がそんなにおおごとなのかしら?」

 

「アビゲイルお姉ちゃん!そんなひどい言い方しなくたって‥!」

 

ハンナは驚いて叫んだ。だがアビゲイルはそっぽを向いたままだ。

 

「その通りだアビゲイル修道女。私は失格者だ...。冒険者としても修道者としても」

 

ルークが消え入りそうな声で言った。

 

「どうか私に主の憐れみがあるよう祈って欲しい」

 

それきり会話は途絶えた。馬車はやがて首都の郊外の宿に着いた。日が暮れるなか一行は宿を探すと、男女に分かれて部屋を取った。

 

「魔装具の腕輪買っといた。ヨハネおじさんに渡して」

 

ハンナはそう言うとアビゲイルとともに別部屋に引っ込んでいった。

 

ルークとヨーゼフは早くも毛布に潜り込み、ヨハネもうとうとし始めた。だがマルコはベッドの上で上体を起こしたまま、ハンナが置いていった魔装具を弄りながら考え事をしていた。

 

――――俺はパーティリーダーとして決断できるだろうか?――――

 

そんな問いが青年の心を去来していた。

 

――たとえ最愛の人を失った直後でも、生き残った仲間のために心を鬼にしなきゃならない――

 

リーダーとしての重圧が青年の胸に重くのしかかってきた。やがてヨハネが鼾(イビキ)をかき始めた。マルコは魔装具のスイッチを入れて巨漢の胸の上に置くと、毛布に潜り込んで無理やり目を閉じた。

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * 

 

翌朝早く一行は出発した。

 

首都を出て、南西に向かってひた走る。一日の旅程を終え日も傾いたころ、無口だったヨーゼフが振り向くと言った。

 

「明日には到着するぞ。ダンジョン攻略には何日かけるつもりだ?」

 

「二日だ。その後二日で首都に戻ってもらいたい」

 

ルークが答える。

 

「また超特急か。おめぇも懲りねぇ男だな」

 

ヨーゼフが鼻を鳴らして前を向いた。

 

「ルークさん、そう言えば今回の大ボスって......」

 

「ドラゴンだ」

 

マルコが尋ねると修道士は事も無げに答えた。

 

「....ドラゴンって...あのドラゴンっすよね」

 

「そうだ」

 

青年が念押しするとルークは頷いた。道の左右は落ち着いた雰囲気の街区だった。そこで停車して宿を取ると、一同は翌朝出発した。

 

街区を出ると、馬車は平原地帯を突っ切る一本道に入った。時折農家の集落が道の左右に現れては後ろに流れていく。だが雰囲気がおかしい。すれ違う農夫たちの表情もどこか暗かった。

 

「いよいよ南西部だ。首都に慣れた者には別世界だぞ」

 

ルークが誰にともなく言う。

 

「ど...どう違うんっすか?」

 

マルコが尋ねる。するとヨーゼフが肩越しに振り向きながら言った。

 

「無法地帯ってやつさ。騎士団も衛士隊もいねぇからな。他の地方と違って領主の私兵が警備してるわけでもねぇ」

 

それだけ言うと、御者はまた前を向き、手綱を操りながら鼻歌を歌い始めた。

 

――――だが、その後それは起こった。

 

* * * * * * * * * * * * * * *

 

ヨーゼフが唐突にサイドブレーキを引きながら馬を停止させ、馬車は急激に速度を落とした。

 

「どうした?」

 

ルークが尋ねる。御者は前方に顎をしゃくった。

 

道のど真ん中に丸太が落ちている。

 

「どうやら歓迎会が始まるぜ」

 

御者は平静な声で呟いた。マルコ青年は戸惑って御者と修道士を交互に見た。だがルークが何かを言う前にヨーゼフが振り向いて言った。

 

「おめぇらは幌を閉じて待ってろ。終わったら呼ぶからよ」

 

「...う...うっす」

 

マルコは訳も分からないまま返事すると、立ち上がって客車の前部の幌を閉じた。だがルークに目で尋ねても、修道士は肩をすくめるばかりだ。

 

―――任せろ..ってことか?―――

 

青年は中腰になり、幌の隙間から前を伺った。すると、左右の茂みから人影が出てくる。

 

ひとり、ふたり、三人。四人、五人と増えていき、最終的に七人もの男たちが馬車の前に群がってきた。全員が剣で武装している。

 

「よぉ御者さんよ。ちぃっと失礼するぜ。ま、大人しくしてりゃ悪いようにはしねぇ」

 

その中央にいた大柄な男が肩に剣を担ぎながら言った。どうやら群れのリーダーのようだった。スキンヘッドにいかつい体格だ。その顔はニヤニヤ笑っている。

 

「だ...旦那がたぁ...。勘弁してくだせぇ。儂はこの通り片輪者ですだ....」

 

ヨーゼフは驚くほど哀れな声を出すと、頼りなげな動作で御者席を降り両手を広げて哀願した。

 

「それに儂の雇い主はケチなお方でして...もし馬車を取られたなんて言ったら儂の責任にされて借金まみれにされるに決まってますだ...。どうか...どうかお見逃しくだせぇ」

 

「けッ...なんでぇ。本当に片手がねぇんだな」

 

大柄な男はやや目を見開いて呟いた。だがすぐに不敵な笑いを浮かべると、こう言葉を継いだ。

 

「だったらてめぇの雇い主を恨むんだな。どっちにせよ俺らのシマをタダで通すわけにゃいかねぇってもんだ」

 

会話を聞いていたマルコは振り向いてルークに言った。

 

「盗賊っすね。俺が行って追い払います」

 

「いや、必要ない」

 

だが修道士は静かに答えた。それを聞いたマルコは目を丸くした。

 

「....へ?...必要ないっ...て?」

 

「彼に任せよう。万が一戦闘になったらきみの剣では死人が大量に出かねない」

 

修道士はそう言うと幌に寄り掛かったまま腕を組み、目を閉じてしまった。青年は驚きに目を白黒させながら、再び前に向き直った。

 

「さ、そこをどきな。馬車と客の持ちモンを全部頂いたら、命まで取ろうたぁ言わねぇ」

 

盗賊の頭領はそう言うと、片手を伸ばしてヨーゼフの肩を押しのけた。

 

だがその瞬間だった。

 

いつの間にか、御者の義手の鉤先が頭領の左頬から入り右頬に突き抜けていた。そして彼の右手に握られたナイフの刃が相手の首筋にピタリと当てられていた。

 

「全員動くんじゃねぇ。少しでも動いたらこいつの首が飛ぶぜ」

 

ガラリと変わった低い声でヨーゼフが言った。

 

「あ...わ....わ....わ....」

 

急激な事態の変転に泡を喰ったように、頭領が声にならない声を漏らす。だが、その背後にいた手下どもがいきり立った。

 

「てめぇ!俺たちヴォイツェク盗賊団を脅そうってのか!」

 

「ん?脅しだぁ....?じゃあ見てみるか?」

 

ヨーゼフが呟いた次の瞬間、頭領の右耳が宙に飛んだ。

 

切断された耳朶がペチャリと音を立てて地面に落ちる。御者のナイフは何事もなかったかのように頭領の喉に添えられた。だが、犠牲となった頭領の額をみるみるうちに汗が流れ落ちる。その口からは腹の底からの苦悶の声が溢れ出てきた。

 

「次は目、鼻、唇、そんで頭の皮といくか。てめえらが降参しねぇ限り人間解体ショーは続くぜ。ん?」

 

ヨーゼフが事も無げに言う。そのあまりの異様さに気押されたのか、手下のひとりが呻くように言った。

 

「わ...わかった。ここは見逃してやらぁ。だからお頭(かしら)を放せ」

 

「見逃す?どっちがどっちをだ?」

 

ヨーゼフはいきなり頭領の頬から義手の鉤を引き抜くと、血払いもせずナイフを腰の鞘に納めた。頭領は苦痛の叫び声を上げ、側頭部に手を当てながら座り込んだ。

 

「勘違いすんなよおめぇら。見逃すかどうか決めるのはこの俺だ」

 

そう言い放ったあと、御者がいきなり右手を振り回した。

 

何かが風を切る音がして、手下の顔が裂けた。そいつが顔を手で押さえてよろめくと同時に、ヨーゼフの右手に握られた何かが見えた。

 

それは革製のベルトだった。金属製の派手なバックルがついている。

 

ヨーゼフはそれを左右に振り回しながら盗賊どもに襲いかかった。武器を構える間もなく、男たちが次々に顔面を割られて蹲る。最後の一人が殊勝にも剣を構えて斬りかかったが、御者はそれを苦もなく避けると、股間に蹴りを入れたうえ首投げで引き倒した。

 

「おめぇら全員身ぐるみ置いてきな。そうしたら命だけは見逃してやる」

 

悶絶する盗賊を足で押さえつけながらヨーゼフは言い放った。

 

それを幌の隙間から見ていたマルコはしばらく呆気に取られていたが、やがて呟いた。

 

「Sクラス...ってこういうことだったんっす...ね」

 

「―――そうだ。対人戦闘のみなら私より強いかも知れん」

 

ルークは目を閉じたままそう答えた。

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