独占欲の強い幼馴染と恋人になった俺は、規則でがんじがらめの現代ダンジョンで成果を出して成り上がる。頭脳労働は任せたぞ ~双星の攻略者~ 作:グラシアS
「――グォオオオオオオオオッ!!」
目の前で黒いドラゴンが咆哮をあげる。
まさか、ダンジョン内でもない場所でこんな魔物を見るとは思っていなかった。
間違いなく強い。
実際にドラゴンの攻撃で、多くの受験者が吹き飛ばされている。
奴は、指定地点へ続く道を塞ぐように立ちはだかっていた。
だからこそ、容易には突破できない。
「
澪もドラゴンに対して、強烈な連弾を叩き込んだ。
しかし、鱗の表面が多少焦げただけで、ドラゴンは平然と突っ立っている。
「……見た目通りの強さね。
ここは、戦うよりも無視したほうが良いかも……」
「おいおい、これが試験だと?
あのエクリプスとか言う奴……正気かよ」
そう、これはエクリプスが俺たちに出した試験の一部だ。
俺たちに彼女が与えた試験……それは、試験会場の地下にある特定の場所に、配られた機械を置いてくることだった。
試験会場の地下には、大量の魔物が放たれていた。
とてもじゃないが、制御できるとは思えないほどの魔物の数々。
特にあのドラゴンは凄まじいの一言だ。
あんなもの……どこに生息していたのか。
「倒さずにやり過ごすとしても、注意を惹きつける必要があるぞ」
あのドラゴンは、間違いなくエクリプスの命令で、あの道を塞いでいる。
戦わずにやり過ごそうとしたところで、何もしなければ熱烈な歓迎を受けるだけだ。
なら、どうするか……考えていると、雄叫びが聞こえてくる。
「ドラゴンスレイヤー!!
良い響きだ……ボクの攻撃で沈め!!」
あれは……前の試験会場で転けていた改造人間の少女か。
彼女は、足から大量の炎を噴出し、その勢いのままドラゴンに迫っていた。
まるでロケットのように飛翔する彼女は、腕の先から巨大な刃を伸ばしている。
しかも、あの刃は超振動していた。
それによって、ドラゴンの肉を鱗ごと切り裂くつもりなのだろう。
「でも、ダメだ……あまりにも直線的すぎる」
ドラゴンは平然と猛スピードで迫りくる少女を回避し、殴りつけて吹っ飛ばす。
甲高い金属音と共に、彼女はこっちに吹っ飛んでくる。
その衝撃で、少女の体は地面へとめり込んだ。
「だ、大丈夫か?」
地面に埋まった少女の体を、どうにか引っ張り出す。
改造人間なだけあって、ドラゴンの一撃でも死んでいない。
この少女は、大丈夫そうだな。
俺は、意識をドラゴンに戻す。
奴はその場から動かず、たくさんの受験者がいるこちら側を警戒している。
同時に、奴の後ろには二人の受験者の姿が確認できた。
この少女がドラゴンの意識を引き付けているうちに、気配を潜めて突破したのだろう。
随分と利口な奴らだ。
だが、同時に数人がタンカで運ばれる様子も見える。
誰かが戦っているところに便乗するやり方も、相応にリスクが高いようだ。
それほどまでにドラゴンは強いということなのだろう。
『破損領域が五%を突破……注意してください』
そんな機械音声が聞こえてくる。
少女の顔をじっと見ると、ひび割れが入っていた。
しかし、ドラゴンの攻撃を受けた他の受験者が戦闘不能になっていることを考えると……
「すごい頑丈な体だな」
「だが、あのドラゴンの前ではあまり意味がない。
アタック、スピード、サーチレンジ……どれも隙がない」
正直、かなり同感だ。
あのドラゴンはかなり強い。
倒せたとしても、それなりの消耗を余儀なくされるだろう。
「……これが低層試験であることを考えると、無視して突破するのが一番良さそうね。
常識的に考えて、あんな魔物は低層にいないわ」
澪の言葉に、俺も同意する。
実際に低層に行ったことはない。
だが、低層の通常資格は、関連企業に所属する冒険者であれば、誰でも取得できる。
もしあんなものが我が物顔で闊歩しているなら、そうなるはずがない。
「勝手にしろ。
ボクは、この試験でドラゴンスレイヤーになる」
そう言って少女は、ドラゴンに向かおうとした。
俺はそんな少女を制止する。
「落ち着け……冷静さを失えば、突破できるものもできないぞ」
俺はドラゴンの様子を見る。
奴は、特定の場所から動く気配がない。
どうやら、あの場所の番人のようだった。
であれば、対策を練ることはできる。
「進!! 後ろ!!」
澪の声で後ろを振り返る。
すると、猿を模した魔物が殴りかかってきた。
俺は、それを受け止めて、逆に頭を破壊して魔物を倒す。
猿の魔物は死体となって、地面に倒れた。
「雑魚魔物が増えているわね。
落ち着いて会話をするためにも、いったん全滅させるわ」
「澪、ありがとう。
じゃ、まかせた」
「
彼女は空へと飛び上がり、精密なコントロールで魔物たちの頭だけを破壊する。
雑魚魔物の死体が大量に地面へと転がった。
「あんまり死体が増えるのは、良くないか」
魔物の死体は、有毒な蒸気を発することがある。
あれだけの数の死体が放置されるのは、あまり良いことではない。
澪に頼んで焼却して貰うか?
そう思った時、受験者に紛れて魔物の死体を回収している試験官の存在に気づいた。
「どうして試験官が、魔物の死体を回収してくれているかは分からないが、とりあえずは気にする必要はなさそうだな」
俺は、改めてドラゴンの様子を見る。
相変わらず、周囲ににらみを利かせながら、通路を通せんぼしていた。
あのドラゴンをどうにかしなければ、この試験に合格することはできない。
そう思った俺は、少女の方を見た。
ドラゴンにやられた傷は、結構深そうに見える。
「俺の名前は進……お前の名前は?」
「! ボクの名前はホライゾン……あらゆる境界線を突破する最強の人類だ」
ホライゾン……なんとなくだが、エクリプスと同じ匂いを感じる。
たぶん、偽名だろう。
「それ、偽名だろ?
本名は?」
「ホライゾン……誰が何と言おうと、ボクの名前はホライゾンだ」
……まぁ、本名に拘る必要はないか。
そう思って会話を再開しようとしたとき、少女は顔の亀裂を手で押さえた。
「痛むのか?」
「い、痛く……痛く……めっちゃ痛い」
そう言って少女は半泣きになる。
とはいえ、俺や澪に治療することはできない。
どうしたものか……考えていると、近くから知らない女性の声が聞こえてくる。
「見せてください。
私が治療しましょう」
視線の先には、白を基調とした法衣を身にまとった女性がいた。
胸元には宗教団体の紋章らしきものが下がっている。
聖職者は、治療魔法を使えることで有名だ。
ここは彼女に任せるべきだろう。
「……この機械の体を治せるのか?」
「分かりません。
が、とりあえずやってみます」
聖職者は、ホライゾンの傷に手を当てる。
すると彼女の手が光り輝き始めた。
おそらく、治療を開始しているのだろう。
「……お前のその体は一体なんだ?」
「全身に改造を施した改造人間だ。
この世界において、もっとも有能な存在。
そして、これから最高の冒険者となる」
ホライゾンは胸を張り、そう威張り散らす。
しかし魔法が普通になった今でも、全身を機械に改造するのは普通ではない。
改造を行っても、せいぜい義手や義足、義眼を付ける程度のもの。
全身を改造するとなると、そこには強い意志があるはずだ。
俺はそれが何なのか……知りたいと思った。
「どうして全身を機械に改造したんだ?」
俺がそう尋ねると少女は腕を組んだ。
何かを考えているように見える。
「これはとても長い話だ。
三年ほど前になる。
ボクが機械調整員としてダンジョンに入っていた時のこと」
機械調整員……確か兵器やダンジョンに設置された機械を調整する職業のはず。
つまり、三年前には既に社会人……見た目通りの年齢ではないな。
「ボクは戦闘専門の冒険者からこう言われた。
【ありがとう。流石は縁の下の力持ちだね】と――
どういうことか分かる!?」
「……どういうことだ?」
話を聞く限り、普通に褒められた話にしか聞こえない。
だが、見る限り彼女は激怒している。
一体、どういうことなのだろうか。
「つまり、機械担当は裏方で満足してろってこと!
これほどの屈辱はない!!
だから、ボクは三年かけて自分の体を改造した!!!
機械調整員が縁の下で終わる存在ではない。
縁の上で光を浴びる存在だと証明するためにね!!!!」
俺は思わず言葉を失った。
まさか、たったそれだけの理由で――
「自分の体を機械に改造したのか?」
そんな俺の問いに、ホライゾンは鼻で笑った。
まるでくだらない問いだと言わんばかりに。
「たったそれだけ?
人生において、ハートを貫く以上の優先事項はない」
た、確かに、そうかも?
自分の心に従うのが人生だと言われたら、一概には否定できない。
俺だって澪と一緒にこの試験を受けているのは、自らの心に従った結果なのだから。
――いや、でも全身を機械に改造までするのは、ちょっと理解の外だわ。
「そうか……お前は変わった奴なんだな」
そう言って少女の傷が治療されるのを待つ。
やがて、周囲の雑魚魔物たちを殲滅した澪が戻ってきた。
「ホライゾンといったわね。
あのドラゴンをやり過ごすために、協力しなさい」
ホライゾンの性格なら、回りくどく誘うより、正面から協力を求めた方が良さそうだな。
この短い時間でも、この少女は自尊心が非常に高いと分かるのだから。
人数が増えれば、それだけドラゴンの意識も引き付けやすくなる。
「断る」
「……理由を聞かせて貰っても?」
「ボクは、あれを討伐する。
だから、逃れようと思っているおまえたちとは組まない」
かなり強情だ。
だが、あのドラゴンを討伐するのにメリットがないように思う。
そう思っていると、聖職者の彼女が声を上げる。
「可能であれば、討伐するべきだと思います。
試験官は、己を示せと言っていた。
ドラゴンから逃げるような臆病者が、合格判定を貰えるでしょうか?」
確かにそうだ。
その考えには一理ある。
「もっとも、この中の誰かがドラゴンを倒せるだけの火力を持っているなら……
の話ですが」
黒いドラゴンは高い再生能力を持っていることで有名だ。
記録によると、体内に存在する核を破壊することで仕留めることができる。
それだけの破壊力……となると澪の【
しかし――
「進……ドラゴンへのとどめは、アンタがやりなさい」
「お、俺? でも、俺は接近戦しかできないぞ」
俺のメインウェポンはこの拳……通常の魔物は倒せても、あれだけのドラゴンをどうにかできるとは思えない。
しかし、どうやら澪はそうは思っていないらしい。
「アタシでもできる。けど、それだけ強力な魔法は制御が難しい。
それをするのは良くないって、教えたわよね?」
ああ、この試験は低層に入るためのもの。
低層は、二つの要因から広範囲に影響する攻撃を禁止している。
改造人間でありながら、ホライゾンが射程も火力も高い重火器を使わないのは、おそらくそのためだ。
そう考えると、俺がやるしかないか。
「だが、核の場所はどうやって特定する?
記録で個体差が大きいって見たぞ」
「それは、ボクがやる。
眼球に搭載されたレーダーなら、核の場所を特定できる」
ホライゾンは誇らしげに、自らの眼を見せつけてくる。
どうやら自慢の一つのようだ。
やはり、こいつも澪とは別方向にぶっ飛んでるな。
「アタシが、あのドラゴンの気を惹きつける。
進は力を溜めて待機、
ホライゾンは眼球のレーダー機能を使って核の場所を突き止めて」
澪はそう指示を出す。
確かにその流れならいけるかも知れない。
「いや、ボクをローレベルと見るな。
確かに一撃で倒せるだけの火力はない。
けど、あの強靭な鱗を切り裂くことはできる。
専用装備を搭載しているのだからな」
腕の先から、細長く反り返った刃が伸びる。
刃先は針のように細く、内側だけが鋭く湾曲していた。
彼女がこれで鱗を切り裂き、そこを俺が狙う。
口頭で核の場所を伝えるよりも、よほどスムーズに連携できるだろう。
「ホライゾンさんの治療が終わりました。
それで、その作戦ですが、私にも協力させてください」
「分かったわ」
聖職者の申し出を、澪は受け入れた。
少しでも戦力は多いほうがいい。
「では、皆さんに強化の魔法をかけますね」
「強化の魔法……そんなこともできるのか?」
「ええ、私は治癒魔法のほかに強化魔法も得意です。
筋力、魔力、神経の強化が同時に行えるんですよ」
それはすごいな。
筋力と魔力なら、どちらか一方を強化するだけなら、それほど難しくないと聞いている。
だが、複数を同時に強化するとなれば話は変わる。
しかも、神経伝達を加速させる強化は、特に難易度が高いはずだ。
それを含めた三つを一度に扱えるなら、彼女はかなり優秀な術者なのかもしれない。
「じゃあ、澪……頼んだぞ」
「任されたわ」
その言葉で作戦が始まる。
澪は魔法で空へと浮かび上がり、聖職者さんは地上からドラゴンへと迫る。
ホライゾンは少し離れた場所から、ドラゴンを観察していた。
この状況下で俺がするべきことは、彼女たちが作り出す隙を見逃さず、一撃でドラゴンを仕留められるように力を溜めておくことだ。
結局のところ、全ては俺の働きにかかっている。
ふと、俺はホライゾンが気になり、彼女の様子を見る。
彼女の瞳は、ここからでも駆動音が聞こえるほどに、激しく作動していた。
「……そうだよな。
もう、出来るかなんてどうでもいいことだった。
するか、しないか……俺たちの道にはその二つしかない」
俺は、右腕に力を集中させ、ホライゾンが核を見つけるのを待つ。
聖職者さんの強化のお陰か、先ほどよりも体が軽くて、動き出しも早い気がした。
目に見えて分かるほどではないが、それでも有用な魔法だろう。
俺は息を吐いて、目の前に集中する。
「「
澪と聖職者さんが、同時に同じ魔法を放つ。
魔力による衝撃波を放つ基本魔法……澪が放った衝撃が、ドラゴンの攻撃ごと奴の全身を吹き飛ばし、続いて聖職者さんが放った衝撃が、ドラゴンの顔を上に向けさせた――
ドラゴンは大きく体勢を崩し、俺たちを見失う。
その瞬間、ホライゾンが走り出した。
俺も彼女に続いて走り出す。
ドラゴンも気づいているようだが、体勢を戻す時間など与えない。
「核の位置をサーチ……ロック!」
ホライゾンの腕から湾曲した刃が伸びる。
「――スケイルリッパー!!」
刃が鱗の隙間へ食い込み、硬い鱗を根元から一気に斬り剥がす。
同時に、彼女はその場から退いた。
あそこが核だな……後は俺が奴にとどめを刺すだけだ。
「っ!! 進!!」
その時、ドラゴンの腕が俺に向かって振るわれる。
だが、無駄だ。
踏ん張りの利いていない攻撃などで、俺は止まらない。
迫りくるドラゴンの腕を左腕で弾き飛ばし、鱗がはがされたドラゴンの脇腹に右腕の拳を叩き込んだ。
「ブレイクインパクトォ!!!!」
拳が脇腹へとめり込み、その奥にあった核まで一撃で粉砕する。
奴はうめき声すら上げられず、その場に崩れ落ちた。
「狙い通りね。
言ったでしょ?
アンタならできるって」
澪がそう言いながら、空から降りてくる。
あとは、この機械を指定された場所に運ぶだけだ。
「ドラゴンの討伐、お見事でした。
このご恩……忘れはしません。
ご縁があれば、またお会いましょう」
そう言って聖職者さんは、奥地へと進んでいった。
礼儀正しい人だな。
そう思っていると、近くから雄叫びが聞こえてきた。
「ドラゴンスレイヤー!!」
ホライゾンの奴が、ドラゴンの死体の上でそう叫んでいた。
随分と自己顕示欲の強い奴だ。
機械分野か……俺はもちろんだが、澪の奴も魔法ほど得意ではなかったな。
それに彼女は魔法に専念してこそ、大きな力を発揮する。
ホライゾンか……試験が終わったら連絡先の交換に応じてもいいかもな。
そんなことを思っているとホライゾンが、ドラゴンの死体から降りてきた。
「感謝感激……ソロで討伐できなかったのは、少し不服だ。
だが、ドラゴンスレイヤーとなったのは事実。
お前たちの協力に感謝する」
「いいってことよ。
さっさとこの試験に合格しようぜ」
そう言って、俺と澪は機械を手に取り、指定された場所に向かおうとする。
そんな俺たちをホライゾンが引き留めた。
「
お前たちは、凄い奴らだし、とてもホットだ。
だから……これからも仲良くしたい」
どうにか聞こえるくらいの小さな声だった。
先ほどまで雄叫びを上げていた者と同一人物とはとても思えない。
「顔が赤くなってたわね。
本名を名乗るのは、恥ずかしかったのかしら?
ふふっ、彼女……かわいいわね」
どうやら澪も、彼女の様子を好意的に受け止めたようだ。
なら、後で連絡先を交換することも普通にできそうだな。
もちろん、澪にも了承を貰ったうえで、三人で交換するが。
「あー、よくやった。
お前らがドラゴンを討伐してくれたおかげで、想定以上に突破者がでたが、まぁいい。
では、私の試験の合格者を発表する」
エクリプスが合格者を発表する。
彼女から呼ばれた受験番号は、全部で六人だった。
ドラゴン討伐に参加した四人と、ホライゾンが作り出した隙にうまくやり過ごした二人。
計六人がこの試験に合格した。
「ど、どうして!?
俺たちだって、この機械を持ってきたじゃないか!?」
「言ったはずだ……【ヘマをせずに、己を示せ】と。
お前らが、示したのは己の臆病さだけか?
それで、合格になると思っているのか?」
俺たちがドラゴンを討伐したことに便乗した者たちは、全員が失格した。
立ち向かうにしろ、やり過ごすにせよ、素質を見せる必要があるということか。
あの二人は攻撃こそしていないが、ドラゴンの隙をうまく突き、奴の感知網を搔い潜って突破している。それはそれで、有能な証ということか。
それからは、話が早かった。
およそ一時間の休憩を経て、俺たちは個室に案内される。
筆記試験と面接、そして試験官との一対一の実技試験が行われた。
全ての試験が無事終了する頃には、外は完全に暗くなっていた。
『単独侵入資格試験・低層級――合格』
俺たちはスマホに送られてきた合格通知を見て、息を吐いた。
「第一関門は突破した……って感じか」
この合格は前提条件に過ぎないが、それでも合格率の非常に低い試験なのだ。
心底、安心する。
もし不合格だったら、俺たちの夢は企画倒れしていた。
「実際にダンジョン内に入れるようになるには、時間が掛かるみたいね」
「まぁ、手続きに時間が掛かるだろうからな。
だから、大学在籍中に取ったんだ。
だが、これで俺たちはダンジョンに入ることができる」
「ええ、既に低層で、アタシたちが調べる場所は決まっているわ」
もう決まっているのか。
正直、低層の資格を取ったとはいえ、そこで何をするのかはイメージもできてなかった。
「低層には放棄された区画がある。
何ができるかは、見てみないと分からないけれど、アタシたちはそこで分かりやすい実績を作り出す。
それこそ明莉ちゃんと連絡を取ってでもね」
明莉ちゃん……ホライゾンのことだな。
あの後、彼女とは連絡先を交換した。
おそらくホライゾンも試験には合格しているはずだ。
機械分野の専門家がいるのと、いないのとでは、できることも違ってくるだろう。
既に大まかな準備は終えた。
あとは大学卒業後、ダンジョンでどれだけの成果を出せるかにかかっている。
「進……アタシを焚き付けた責任。
これからも取り続けて貰うから、覚悟しておきなさいよ」