老犬ミニチュアシュナウザークゥーの回想日記”是非読んでくれ”   作:クゥー男

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第2話

 

俺の名前はクウー。

 

昨日から思い出を書き始めた。早速読んでくれた人ありがとう。嬉しかったよ。

 

 

実はこれを書いていることは麻里には内緒なんだ。

 

足が動きにくくなってから俺を病人扱いして、(まあ心配してくれてるんだが)とにかく過保護なんだ。(前からだけど)

 

 

だから、書くときは麻里がお買い物に行っている時に書くことにしている。

 

 

さて、今日は何を話そう。

 

 

そうだな、俺たち犬族がそれぞれ麻里と出会った時のことを話そうか。

 

まず俺が麻里と出会ったのは昨日も言ったけど、20年前。

 

 

ペットショップだった。

 

 

子犬の俺はその時は病気で精神的にも打ちひしがれていた。

 

 

何故かって、俺が生まれて母親のお乳を飲みに言った時のことだ。母親が急に俺の耳を片方噛みちぎったんだ。

 

 

俺は悲鳴を上げた。

 

 

そうすると、その時世話していた人が、(ペットショップのばばあだが)慌てて俺を引き上げて、困った顔で、こう言った。

 

 

”これじゃあ売り物にならない”

 

 

でも子犬の俺には何が何だかわからない。とにかく痛かったんだ。

 

 

数日後、俺は病院に通いながら、何をされたと思う?

 

 

短くなった耳と同じ大きさに片方の耳も切られた。

 

 

だから俺の耳はねずみみたいに小さい。

 

 

それがまたものすごく痛くて痛くてやっと治ったと思ったら、今度は同じ兄弟からからかわれた。

 

 

”お前の耳変だぞ”

 

 

”耳聞こえてるか?”とか・・

 

 

しばらくすると、俺たち兄弟は全員ペットショップのサークルに入れられて、売りに出された。

 

 

色んな人が来たよ。

 

 

他の兄弟たちは、愛くるしいしぐさをしたり、遊びあったりして、いろんな人に抱かれたりしていたが、俺はごめんだった。

 

 

サークルの隅でボーっとしていたよ。

 

 

 

当然、他の兄弟たちは売れていった。

 

 

その度に俺をからかうんだ。

 

 

”お前は無理なんじゃない?

 

 

”ペットショップの人間も言っていたな。

 

 

”耳切ったけど、やっぱりこんな不細工じゃ無理なんじゃない?”

 

 

そんなこんなで、おれは食欲もなく、病気になっているのが自分でもわかった。

 

 

でもペットショップの人間は病院にも連れて行ってくれない。

 

 

俺は自暴自棄になっていた。

 

 

ある日、一人の女性が子供と一緒に入ってきた。

 

 

 

それが麻里と寧々だ。

 

 

寧々はまだその時は小さくてペットショップをうろうろしていただけだったけど、麻里は他の犬を見ていて、俺とふっと目が合った。俺は目をそらした。

 

 

 

麻里はペットショップの人にこういったんだ。

 

 

”ミニチュアシュナウザーにしては耳が小さいですね”

 

 

”そらきた”と俺は思ったね。毎度のことですよと。

 

 

ペットショップの人間は麻里にこういった。

 

 

”母親が気が立っていて耳を噛みちぎってしまったんで揃えたんですよ”

 

 

 

その時の麻里の顔は一生忘れない。明らかに怒っていた。

 

 

そうすると麻里がこう言った。

 

 

”この子を抱かせてもらっていいですか?”

 

 

”よろしいですよ”

 

 

俺はびっくりした。

 

 

と同時に怖かった。また何かされるのではないかという恐怖心だ。

 

 

麻里は俺をだっこしてくれたが、他の兄弟みたいにぺろぺろなめたり、体を委ねたり出来なかった。

 

 

俺は直立不動状態で麻里に抱かれていた。

 

 

ペットショップの人間が言った。

 

 

 

”ちょっと緊張しているのね”

 

 

その時麻里は悲しそうだった。

 

 

”ありがとうございます”

 

といって麻里は俺をペットショップに返して、寧々と帰って行った。

 

 

でもなんか俺うれしかったんだ。別に家族にしてもらえなくてもよかったんだ。

 

 

 

次の日、また麻里がやってきた。俺はもう麻里から目が離せなかった。というかどきどきしていたんだ。

 

 

麻里はペットショップの人にこういった

 

 

”このミニチュアシュナウザー頂けませんか?”

 

 

俺は耳を疑った。

 

 

俺を家族にするってことだぞ。

 

 

俺はここを出れるってことだぞ。そんなこと、そんなこと信じられるか・・

 

 

 

ペットショップの人間が言った。

 

 

”耳の手術をしているので少しお高くなりますが”

 

 

その時麻里は俺の言いたいことをきっぱりと言ってくれた。

 

 

”耳が引きちぎられたとはいえ、こんなかわいそうなことをして、今も下痢をしているじゃないですか?病気じゃないですか?これ以上払えません。”

 

 

 

”わかりました。それではシャンプーをしてきれいにしてお渡しします”

 

 

”いえ、結構です。病院に連れて行って治ってからトリミングしますので”

 

 

 

 

 

 

この時、ペットショップの犬達がシーンとなったのが俺には分かった。

 

 

 

あれだけ馬鹿にされていた俺が、一番俺を理解してくれる人の下に家族として行けるんだぞ。

俺はとてもとても誇らしかった。

 

 

 

 

その時俺は小さいながらに誓ったんだ、

 

 

麻里を一生守ると。どんなことがあっても守ると。

 

 

 

これが俺と麻里との出会いだ。

 

 

それからすぐに病院に連れて行ってもらい、病気をすべて直してもらい、トリミングもして、元気るんるんさ、

 

 

まあしばらく耳を触られるのはトラウマになっていて嫌だったけど、それも麻里は寧々に言い聞かせて、理解してくれた。

 

おっとそろそろ麻里がお買い物から帰ってくる時間だ。

 

 

 

麻里にばれたら怒られるからね。まあ、麻里は怒らないから、大丈夫だろうけど、心配かけたくないんだ。

 

 

今度、ケビンとセバスチャンとの出会いを話すよ。年取ると話が長くなる。

 

 

 

 

今は麻里に撫でられたり、だっこしてもらうのは大好きだよ。

 

 

 

でも内緒にしといてくれよ。

 

 

 

 

だって俺はクゥー、男の中の男だからね。

 

 

 

 

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