老犬ミニチュアシュナウザークゥーの回想日記”是非読んでくれ” 作:クゥー男
俺の名前はクゥー。
今日はよく寝たよ。
俺は散歩に行けないので(心臓悪くてな)ベランダにしかでれないんだが、外は寒いな。
俺は暑いのも苦手だし、寒いのも苦手だ。
だから麻里が暑いときは冷房、寒い時は暖房をつけてくれていつも快適さ。
若い時は散歩で、近所の犬達とよくしゃべったものさ。
でも、一番好きな散歩は川沿いの土手を思いっきり走ることさ。
麻里が寧々と車で連れて行ってくれて、そこで、自由に走り回るんだ。
懐かしいよ。
ちなみに、”首輪“というものを俺たちは余程のことがない限りしない。
近所を散歩する時、病院に行く時、美容院に行く時は”首輪“と”リード“という屈辱極ま
りないものをしないといけないらしい。
あれは俺は苦手だ。というか嫌いだ。
でも人間界のルールらしい。
さて、今日は昨日の続きを話しようか。
今日はセバスチャンと麻里との出会いの話だ。
ある日、麻里とホームページを見ていて、麻里が“ミニチュアシュナウザー”と検索に
打ったんだ。
すると、“ミニチュアシュナウザー 里親”と出てきたので、麻里はそこをクリックした。
そしたら何が表示されたと思う。
沢山の里親を求めている犬達だ。
何故里親を求めているかって?
理由は、様々だった。
“飼うことができない環境に引っ越すことになりました”
“道端で捨てられていたのを保護しました”
“保健所で保護しました”
“近所から鳴くのでクレームがきて飼えなくなりました”
“繁殖できないので捨てられそうなところを保護しました”etc.etc.・・・
麻里は、それを見て悲しそうだった。
慌てて今度は保健所を検索していた。
すると、びっくりして俺にこう言ったんだ。
“クゥーちゃん、人間は身勝手だよね。
こうやって捨てられた子が保健所に行ってそれから貰い手が見つからなかったら処分さ
れるんだって、年間何十万匹だよ。信じられる?”
俺もびっくりした。
そういう世界があるんだ。
家族になった後いきなり捨てられることがあるんだと。。。
それから数日後、麻里は何回か里親のホームページを良く見るようになった。
そして、ある夜、健二にいったんだ。
“あのね、犬がもう3匹いるけれども、私ね、里親のホームページを見て、悲しかった
の。
それでね、引き取りたい犬が1匹いるんだけれども。だめかな。“
健二はこう言った。
“麻里の好きにすればいい。でも5匹以上はもう無理だけどね。”
さすが俺の家族と思ったね、
でも正直どんなやつがくるのか不安だった。
子犬の時に、人間不信になった俺だから良く分かる。
人間を信じるのには時間がかかるんだ。
俺は子犬だったからそんなに時間はかからなかったけど、いったい何歳のやつを引き
取ってそいつが麻里を信じられるのかどうか、家族の和を乱さないかどうかが俺は心配
だった。
数日後、麻里と俺は“大阪”に行った。そいつを迎えに行ったんだ。
マンションの1室に男性がいた。
サークルにその犬はいた。
清潔好きのおれはびっくりしたね。
サークルには新聞紙が重ねておいてあり、まあうんちとおしっこまみれなんだ。
多分ずっと変えてないね。
なぜかおむつをしていたが、おむつも変えてもらってないのかぐちゃぐちゃだった。
男性がこう言った。
“ありがとうございます。これから引越しするんですが、犬が駄目なんで”
“こいつ、セバスチャンって言います。メスなんですが。。”
“年齢は14歳ぐらいです。もう歳なんで餌も食べません。まあ長くないかもしれません
が、宜しくお願いします。”
なんだが、矢継ぎ早に色んなことを麻里にしゃべってたが、麻里はうなづくだけで何も
しゃべろうとしなかった。
最後に麻里は
“はい、わかりました。大事に育てさせていただきます”
そういって、彼女をサークルからだし、たたせようとしたが、ふらついてたてない。
彼女はがりがりだった。
目もうつろだった。
麻里は彼女を抱っこして、連れて帰り、即病院に直行したよ。
“先生、今日引き取ってきた子なんですけれども、ふらふらでがりがりなんです。大丈夫
でしょうか?”
“検査をしますのでしばらくお待ちください”
しばらくすると俺たちは呼ばれて、先生がこう言ったよ。
“栄養失調です。しばらく病院で入院します。危険な状態ですので”
“でも、先生、餌を食べないと、前の飼い主は言っていたのですが・・・”
“違います。餌をやっていなかったのです。それにおむつかぶれもひどいです。何故おむ
つをしていたのかわかりませんが、変えてやっていないので、かぶれがひどすぎるんで
す”
“わかりました。何卒宜しくお願いいたします。”
その夜、麻里は健二と寧々にその様子を伝えていた。
“ぺちゃくちゃしゃべって本当は、なんてひどいことしたんだっていってやりたかったけ
ど、男性だったし、逆切れされたら怖いでしょ。それで何も言わずに帰ってきた。”
“麻里、それでよかったんじゃないか、。後は先生に任せて、それからが大変だと思う
よ。大丈夫?“
“お母さん、私も手伝うよ”
俺は本当の誇らしかったね、こんな家族を守れるなんて犬冥利につきるというものだ。
でも俺も病院から帰ってきてからのことが心配だった。
しばらくして彼女が病院から帰ってきた。
病院からの栄養価の高いえさをもらって、彼女はどうだったと思う。
食べる食べる食べる食べる・・・誰かに取られるようかのように食べるというか食べ散
らかす。いまだにその癖は治らないけどね。
でも、かなり警戒しているのが俺にもわかった。
夜になった、が、彼女は寝ない。じーっと麻里を見ているんだ。そして寝ない。
麻里は、ずっと彼女を抱っこして
“大丈夫だよ。これから家族だからね。これからはゆっくり楽しく過ごそうね”
という言葉を繰り返し、徹夜だ。
これが1週間続いた。
さすがに麻里もばてていたが、
彼女も安心したのかばてたのか、寝始めた。
今度は寝る寝る寝る寝る。食べて寝る食べて寝るこれの繰り返し。
彼女は寧々と寝ることになり、毎日彼女のベッドで寝ることになった。それから2年間
彼女が心を開くのにかかったよ。
俺が彼女に過去を聞いたことがある。最近だがね。
彼女が言うには、子犬の頃はとても可愛がってもらっていたそうだ。
だけれども大人になり、その男性も仕事が忙しくなってくると段々、構ってくれなくなり、
構ってほしくて鳴くと怒られ、
サークルに入れっぱなしになり、
おしっことうんこの始末をしたくないからおむつをはかされたらしい。
だけれどそれも変えてもらえなくなり、
餌も1日1回が3日に1回となり、
彼女は生きる気力がなくなってきて、毎日ただ息をしているっていうだけだったそうだ。
ひどすぎるよ。本当に。
麻里は基本的に彼女に甘い、
今では太りすぎといわれるほど太っていて、俺と同い年になったと思うけど(年齢が定
かではないだ、本人も覚えてないって)俺より元気だ。
朝食の鮭がテーブルにのっていてそれを盗み食いしても、
麻里は“やられた~”って笑ってるだけ。
俺が怒ると、
"今まで苦労してきたんだから残りの人生好きにさせてあげたらいい“だとさ。
甘いよな~麻里は。
麻里も苦労しているから、余計に優しいんだろう。
だけどさ、麻里が恐ろしい話をしていた。
犬の環境に詳しい人に聞いたら、犬が病気になったら山に捨てる人が続出してるんだって。
何故だと思う。
病院代に30万円かかるとする。
そしたら新しい犬が変えるから山に捨てるんだってさ。
獣医をしている人間が、自分で犬を飼っていて、少ししか餌を与えずつなぎっぱなしにして、何をしていたと思う?
自分の病院用の犬の輸血用の血液をその犬から取るためだけに飼っていたんだって。
犬が歳をとったら老犬ホームがあるらしく、そこに預けに来る人がいっぱいいるらしい。
何故だと思う。
俺みたいに下半身が不自由になったら世話が大変だからさ。
なあ、なんか世の中おかしくないか。
俺たち犬族は、家族を守ることしか考えていない。
たとえ餌を1回抜かされても文句を言うか。叩かれても文句をいうか。
俺たち犬もいつかは歳をとる。
人間は、人間に対して、犬に対しても歳をとったものに対して、軽んじていないか。
命に対して、誠意に対して、軽んじていないか。
俺は年寄りだから、苦言する。
おっと今日もしゃべりすぎたな。ちょっとエキサイトしてしまったよ。
麻里がそろそろお買い物から帰ってくる時間だ。
昔は色んなものを麻里が食べさせてくれてたのにな。
歳はとりたくないよ。
今はドッグフードだけだよ。
また愚痴だな。
犬族、人間族、俺の今日の意見の感想を聞かせてくれよ。まあ期待はしていないがな。