何処かの世界のあり得たかもしれない少女達の日常物語 作:タク-F
2日目の控室の騒動を経て3日目のプログラムは大幅な変更が決められた。
「当初は互いの学園の最も有名な相手の歌を歌うプログラムを予定していましたが……困りましたね」
「それならこちらで1つ提案があります。瑠璃、輪……手を貸してくれ」
優斗は2人を手招きすると耳打ちする。
「ふむふむ」
「えぇ……出来ますか……?」
その様子を見てナスターシャは調と切歌に視線を移し口を開く
「調……もう1度彼女達のステージを見なさい。本当に彼女達の言葉が偽善か……その答えはもう1度問わねばならないか、よく考えなさい」
「………………」
調は沈黙を続ける。
「マム……調は……」
「言い訳は不要です」
抗議も否定も許さずナスターシャは厳格な判断を下す。
、
『会場の皆様にお知らせがあります。本日のプログラムですがF.I.S学園側よりトラブル発生の報告を受け、急遽代役の登板やリディアン学園側からの助力として追加の方に登板をいただくと連絡を受けました。キャスト及び楽曲の変更は発生しますが大枠での変更はございません。ご理解の程よろしくお願いします』
司会の発表により1度はざわついた観客席だがすぐに落ち着きを取り戻す。対応を含めてレベルの高いステージなのだと響達が体感している時だった。
「ふふ……まさかこの地に足を踏み入れるのがこんなに早くなるとは思わなかったわ」
「お疲れ響ちゃん。トラブルがあったみたいだけど助っ人に来たよ」
「響……私も響の力になりたい!」
「ツカサちゃんにメラちゃん……それに未来!?」
響が驚愕してる中で龍樹が説明を始める。
「元々未来には2日目から観客席に呼ぶつもりだったんだけどこっちもトラブルがあったんだ。予定していた移動手段に遅延があってさ。前入りしてた面子は難を逃れたけど当日組は影響を受けてさ……」
「でも……来てくれてうれしいよ未来!」
「ありがとう響」
響と未来は互いに抱きしめ合う。そんな中でマリアが口を開く。
「ひとまず私とセレナで第一陣を務めるわ。せめてものお詫びに準備時間くらいは稼がせて」
「2人を止められなかったのは私達の責任です。ご迷惑をおかけします」
セレナが再び頭を下げて2人はステージへと歩き出した。
「かといって歌える曲に限りがあるわよ。小日向や堕落の実力はある程度理解してるけど……」
「何を言ってるんですか翼さん? 翼さんもステージに上がるんですよ?」
「輪!?」
「まぁまずは順番を決めましょう。でも……クリス……行ける?」
「……正直姉ちゃんと即興で合わせられるかは分からねぇ。でもやってやるさ!」
「決まりだね。切り込みは任せるよクリス!」
『さて……プログラムに変更はありましたがまずはこの曲からいきましょう! マリア・セレナ姉妹による【逆光のフリューゲル】です!』
司会の言葉により曲が流れる。本来予定していた互いの学園の代表歌を歌い合う異色の挑戦がステージを熱狂に包む。
「さぁ……いくわよセレナ!」
「はい! マリア姉さん!」
『聞こえますか? 激情奏でるムジーク』
『天に』
『『解き放て!』』
『聞こえますか? イノチ始まる脈動』
『愛を』
『『突き上げて!』』
マリア達の歌うフリューゲルは翼と奏が歌った頃のフリューゲルとは異なるタッチで会場を魅了していく。
「っ〜! 何のつもりの当て擦りって言いてぇが今回はそういうステージだったな」
「…………そうね。でもそれ以上にあの姉妹のコンビネーションは私と奏を上回るとさえ思えたわ。少なくとも……鏡香と合わせようとした頃の私達よりも完成度は上ね。初日のステージも圧巻だったわ」
思えば初日に刻んだインパクトが再燃していく。
『『yes just believe……神様も知らないヒカリで歴史を作ろう』』
「……来るわ! 大波よ!」
『『2人でなら翼になれるSinging heart!』』
会場のボルテージが天井知らずに上がっていく。その熱狂は最早誰にも止まらない……そう言える程の一体感に会場は包まれていた。
「……ふぅ。良い歌ね」
「日本の皆様を虜にする歌……素晴らしい歌でした」
ステージで微笑む2人の笑顔は見る者を浄化するのだろう。
「…………翼さん、クリスちゃん。私からお願いがあります」
「立花?」
「一番槍……私に行かせてください!」
「って言ってもお前……曲や相方の宛は……」
「私が行くよ。響の歌える歌やパートは私が熟知してる。未来も来てくれるでしょう?」
「はい! 私と鏡香さんで「少しよろしいかしら?」……ツカサさん?」
3人が立つと決めたその時ツカサが1つの提案をする。
「私も共に立たせて貰えないかしら? せっかくのフロンティア……私も爪痕を残したいもの。それに貴女達を輝かせるくらい熟して見せるわ!」
「それなら……あの歌はどうかな?」
「あっ……それ良いね響!」
『それではリディアン学園からはこの4人でエントリーです!』
「未来……お姉ちゃん……ツカサさん……お願い!」
「任せなさい響!」
「最高のステージにしましょう」
響・未来・ツカサ・鏡香が同じステージに並び立つ。
「ふふっ……セレモニーでは響を送る3人だったけど、この4人で立てるのも良いね」
『曲名は……この曲です!』
軽快なメロディが流れ響が紡いだ。
『走って! 走って! 憧れを追い越して』
『まだ見た事のないスピードの向こう側へ』
「この歌……あのゲームの歌!」
「結構手広くツカサも取り組んでよ……さぁ来るよ?」
輪とメラが4人を見守る中次に続いたのはツカサだった。
『仕掛けるのは最終コーナー! 』
『あとは行けるところまで息を切らしてたい』
未来も続きボルテージが上がって行く。
「鏡香さんってステージだと凛としてるなぁ……カッコイイ……」
「このバカップルが……」
鏡香に見惚れる龍樹を横目にステージは最高潮へと至っていく。
『『『『勝利の雄叫びよ……轟け!!!!』』』』
「…………凄いよツカサ……」
「メラ……次は私達だよ」
「ん……行きましょう輪さん」
ステージのライトが落ちメンバーが変更される。ステージ裏では鏡香と未来がメラと輪にマイクを渡す。
「メラちゃん……任せるよ!」
「輪……行ってきて!」
「任せてよ未来」
「託されましたよ鏡香さん」
『さて……メンバー変わって次は……この4人!』
ステージに立つのは先程の響・ツカサに輪とメラという学園でも変則的な組み合わせで4人が同じステージに立つ。
「さて……それなら私達はアレで行こう。任せるよツカサ!」
「全く……ついて来なさいよ皆!」
今度はツカサをセンターに据える配置構成を魅せる。しかし観客席の誰もがその振る舞いに魅了されている。ツカサのカリスマはフロンティアでも通用する事を証明するには充分だった。
『Sunshine 前を向けば高鳴るファンファーレ 』
ツカサの示す幕開けに盛り上がる会場……そして視線は響へと移る。
『ちょっと……ヘコむ時は、パッと耳済ませてFeel Me』
その明るさを輝かせ更に次の輪へとバトンが渡る
『気持ち1番 それぞれに続く地平蹴って』
ここでメラにはバトンは渡らず1度曲はサビへと移行する。
『『『『君と夢を駆けるよ何回だって巻き起こせスパート!』』』』
盛り上がる中で曲は2番へと進んで行く。
『青春 ワクワクしよう 前途多難も楽しめば溢れる大歓声』
『きっと1人だけじゃずっと気づけ無かったよね? 不可能なんて辞書にないこと』
そして曲は輪からメラへとバトンが渡る。冒頭とは違う歌いだしのインパクトが緩急をつけてメラの印象を引き上げる。
『『『『ひたむきに輝いたストーリー!』』』』
曲は巡って終盤へとかける。
『『『『いつまでも希望とともに』』』』
4人のステージは大歓声の中で終える事になる。そしてここからは……真打の登場となる。
「行くよ……お姉ちゃん! クリス!」
「こっちの台詞よ瑠璃。ついて来なさい!」
「食らいつくさ……もう昔のあたしじゃねぇ!」
照明が切替わり今度は瑠璃・翼・クリスの出番となる筈だ。
『響き渡れ凱歌よ』
しかし曲を跨ぐ暗転から照明が切り替わった時……既にステージにはクリスと瑠璃が立っていた。
『『『『何処までも』』』』
響とツカサ、輪とメラがそれぞれのサイドからステージの3人を祝福するようにエールを送る。それこそが4人がステージに残る理由だった。
『開かれた未来はもう』
『『『『この手へと』』』』
クリスから瑠璃へ、そして瑠璃の示す動きの先には最後にステージに降臨する翼の姿だった。
『『『『1……2……3……4!』』』』
ステージへと現れる翼はマイクを握る。そして迫力を携えて歌が始まった!
『鮮烈な日々を駆けた 夢と切り合って攻防戦 丁々発止』
『ちっぽけな勇気の手を』
『一蓮托生にPlay a game! 』
『『聞け時の声』』
この紡がれ……勝利を讃える曲は本来は響・翼・クリスがステージに立ち歌う曲だった。しかし2日目の時点で響から2人へと提案があった。
「瑠璃さんは翼さんの妹で、クリスちゃんのお姉ちゃんなんですよね! なら……瑠璃さんがステージへ上がってください!」
「それじゃあ響ちゃんが……」
「構いません! 寧ろ姉妹の絆を見せてください!」
そのバトンを経て3人が同じステージに立つ。コレは彼女達の事情を識る者程刺さる光景だった。
『『『響かせよう凱歌を 何処までもAh遮るものなどない地平へ』』』
昇るボルテージを受けて翼へとスポットライトが集まっていく。
『刻まれたんだMy history.My victory』
最後に光を切り裂くが如き演出が会場を沸かせ包んだ。
「調、切歌……本日のステージはどうしてか? まだ彼女の歌を偽善だと……貴女は言えますか?」
「…………真摯に向き合ってわかった。彼女が、立花響がステージに立つ理由も、何故彼女がステージに立てたかも。彼女よりあのツカサって人が上手い筈なのに……どうして彼女がステージに立つのか」
「あの人の歌……ステージだけじゃなくても温かいデス。眩し過ぎるくらいに明るいデスよ……」
気づけば2人は涙を流していた。何故響を偽善と謗ったか、それが愚かだと今になって理解してしまう。その光景は
(F.I.S学園側の揉め方……裏がありそうだな。俺の仮説が正しければそろそろ情報の真偽が……来たか)
その光景をカメラ越しに見守る優斗のスマホに通知が入る。差出人は『蒼汰』、件名は『候補』。
「充分だ。ゼロ・蒼汰……お前にはここから働いて貰うぞ?」
「任せてくれ優斗君。あの女王の功績に報いる為にも最善を尽くそう」
「ここからが僕達の戦いだね」
「最後のピースを回収しに行きましょう」
このステージに働く思惑は
4人楽曲の歌で手持ちがウマ娘しかねぇ……
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