何処かの世界のあり得たかもしれない少女達の日常物語 作:タク-F
『G-eraフロンティアライブ』は、ついに折り返しを越えて4日目を迎えていた。
「え……? 未来ちゃんが……いない?」
「はい」
4日目は響が瑠璃へと相談する事から始まってた。
「お姉ちゃんは……既に探しに出てます。優斗さんへの連絡はおれがするってりゅうくんも飛び出しちゃって……」
「あの2人も!?」
「…………随分穏やかじゃない話ね」
「私達も探そうツカサ」
「そうね……すぐに解決出来ると良いのだけど」
合流したツカサとメラも未来の捜索に加わるがあまりにもタイミングが悪すぎた。
「響ちゃん……ステージに立てそう?」
瑠璃の心配は当然だ。響が不安に潰されそうになっているのはあまりにも理解できてしまう。ソレこそ誰かの思惑とすら思える悪意を感じていた。
◆◆◆
前日までの3日間、リディアン音楽院とF.I.S学園が互いの魂をぶつけ合ってきたドームアリーナは、開演前から異常なほどの熱気と期待感に満ちていた。数万人の観客が求めるのは、もはや単なる音楽の優劣ではない。彼女たちが歌に込める「生き様」そのものだった。
「ここまでの盛り上がり……とても心地良いわ。それこそ貴女達への失言さえ無ければ手放しで喜べる程のステージ……それ故にあの件は申し訳無いわね」
「我々のメンバーの失言……改めて謝罪します」
昨日のステージを踏まえマリア・セレナが改めて謝罪する。そして渦中の2人が改めて前へ出る。
「2日目の失態……私達が取り戻す。ステージでの姿を見ていて欲しい」
「もうあたし達は間違え無いのデス!」
ステージではどよめくような歓声と鳴りやまないアンコールの嵐に包まれている。その興奮のるつぼの中第4日目の幕を開けるべく、ステージの中央へと飛び出してきたのは──風鳴翼と雪音クリスだった。
『──応えなさいアリーナァッ!! 私たちの歌で、この世界を焼き尽くすわよ!』
『ついてこいよ、てめえら全員の魂を引っ張ってやるからさっ!』
2人の言葉に呼応して柔らかな前奏が流れる。4日目の最初はリディアン側の楽曲から始まる。
『昨日のアンコールに応じて戻って来たよ! でもコレで最後……行くよお姉ちゃん! クリス!』
『えぇ! 行くわよ瑠璃!』
『頼もしいぜ姉ちゃん!』
そして瑠璃にライトが当たり歌唱が始まった。
『ぎゅっとほら、怖くは無い』
『わかったの、これが命』
『後悔は、したくはない』
『『『夢 ここから始まる さぁ笑顔に光を』』』
ステージが柔らかな歌に包まれて穏やかな空間へと変貌する。直前まで興奮していた筈の観客席すらも取り込む雰囲気が最早彼女達を求めている。
「瑠璃はやっぱりそうやって歌えてるのが1番だよ。クリスも翼も……瑠璃と歌えるのを本当に楽しんでる。瑠璃が2人にとってどれほど大切に思われてるか……あぁもう泣けちゃうじゃん」
『全身全霊』
『いざゆかん』
『ありのまま』
『『『全てを放とう』』』
「まったく……あの人がルナ・ステージに立っていたら私達はこの場所にいなかったなんて……考えたくないわね」
「悔しいのツカサ?」
「悔しいわよ……あの人とステージで競えなかった事が」
「流石ツカサは向上心の塊だね」
柔らかな歌に包まれる会場の中で競えなかった相手のステージを見て尚闘志を燃やす堕落ツカサの再起は遠い未来の話ではない。
『『『響け絆 願いと共に』』』
「──まだまだ、終わりじゃないデスよ!」
「私たちの歌も、聴いてもらうんだから!」
翼とクリスが作り上げた圧倒的なボルテージの只中へ、ステージ袖から飛び込んできたのは、万全のコンディションを取り戻して帰ってきた月読調と暁切歌の二人だった。
『後は託したよ2人とも!』
ステージを調と切歌に託し瑠璃はステージを降りる。
「お疲れ様瑠璃……最後まで歌えたじゃん!」
「ありがとう輪。未来ちゃんの件の進捗は?」
「『フロンティアからは出てない筈』……それが鏡香さんの仮説。そして連絡……『獲物を取り寄せとけ』って。まったく……あの人は何をするつもり何だろ?」
「えぇ……私……喧嘩するのは苦手なのに……」
「じゃあ私の槍つかう?」
「う〜ん……竹刀で良いよ。お姉ちゃんの稽古で触った事があるから」
輪のスマホに着信音がして対応する。ついでに鞄の中を探り始める。
「ん……了解……龍樹君? ふむふむ……あ、こっちに届くの? わかった。受け取ったら折り返すね?」
そう言って輪は自身の鞄を弄りフロンティアのマップを取り出すと印を付け始める。
「輪? 何をしてるの?」
「ん〜……荒事の準備?」
「鏡香さんじゃあないのに?」
「人手がいるんだって」
「なにそれ……」
そんなやり取りをしながら2人はステージを見守ってた。そしてステージへはF.I.S学園の制風を纏った彼女たちがマイクを握り、翼・クリスと合流する。4人の歌姫が織りなすのはかつて双翼が繋いだ絆の象徴── 『ORBITAL BEAT』 ……今、学園の垣根を越えて4人の歌姫がステージへと降り立つ。
「ってか瑠璃! あの娘達も歌うつもりだよ『ORBITAL BEAT』!」
「F.I.S学園のステージを観た後で良かったよ。そうじゃないならお姉ちゃん……
『何のつもりの当て擦り』
って喧嘩腰になるかもしれないし……」
「うわぁ〜…………鏡香先輩の件引き摺ってたら間違いなく言うわ〜」
しかし今やその心配はない。2人は安心してステージを見守っていられる。
『幾千億の祈りも』
『柔らかな光でさえも』
『
『カルマのように』
『転がるように』
『投げ出してしまえなくて』
『『『『今私らしく駆け抜けて』』』』
本来この曲は2人楽曲のデュエット……しかし今や4人いるにも関わらず違和感なく盛り上がる。翼・クリス・調・切歌の重奏は会場を別方面の興奮へと導いていく。
『絡みつくようなノイズも』
『凍りつく静寂さえも』
『全てを掻き消す
「あっ……駄目だ涙が出そう」
「まぁ瑠璃からすれば翼さんが鏡香さん以来となりでデュエットを、それもクリスが……ってなると涙止まらないよね」
「そうだよぉ……涙止まらないよぉ……」
ステージを見守る中で瑠璃の涙は止まらなかった。
『裏切るように』
『傷つくように』
『穢れなく生きたかった』
次の組み合わせへのバトンも見事に曲はいつの間にか終盤を迎え……
『『『『この闇を越えて』』』』
強力なユニゾンが響いたのだった。
「素晴らしいユニゾンです。暁さんも月読さんも振り切れてますね」
「そうね……私達も続きま……え?」
あまりの熱狂に、アリーナの空気すら震えているかのような錯覚の中──。突如としてステージの照明が一斉に絞られ、F.I.S学園側の特設ステージへとスポットライトが集中した。
「
「え……?」
客席から、そして舞台袖で息を呑む響やマリアたちから、どよめきが漏れる。その光景の中心、誰もが予想しなかった場所に、彼女は立っていた。
──小日向未来。
F.I.S学園側のステージに、凛とした佇まいで降臨した未来は、迷いのないまっすぐな瞳で数万人の観客を見据えていた。いつもは響の隣で、彼女を支え、包み込む「陽だまり」としてそこにいた彼女が、今自らの意思でマイクを手にしている。
「未来……っ!?」
響が、信じられないものを見るように声を漏らす。
『さぁ響……私達のステージだよ。ステージに来て……』
F.I.S学園のマリアやセレナたちも、その突然のサプライズに目を見張り、そしてどこか誇らしげな笑みを浮かべた。
未来が胸に手を当て、深く息を吸い込む。
「えぇ……手筈通り彼女をステージに送り出しました。コレでリディアン側の精神は揺らせた筈です。困るんですよ……
会場を離れてコーヒーブレイクを嗜む男……Mr.ウェル。F.I.S学園の発展の……そして自身の利権・利益の為ならば手段を選ばぬ狂人はタブレットをスワイプする。そこに新着のメッセージが知らされる。
「おや……もう下準備に着手出来ますか。良いですねぇ流石は【ネフェリム】……僕の最強の下僕だ。反抗的な小娘達なんぞよりも余程信頼出来る。
Mr.ウェルの狂気の歩みがフロンティアを包もうとしていた。
次は原作で言うフロンティア浮上編まで行ければ……
よろしければ感想・評価・お気に入り登録お待ちしています