ワタシがこの世界に生まれたのは空ちゃんとほぼ同時だったように思う。
というのも、自室に居たはずが気づいたら広い空間に居て、さらにその空間の外側には赤子の泣き声や大人が慌しく動いているのを感じ取れたからだ。
紫がかった景色がどこまでも広がりいくつかの浮き岩が存在していたことに加え、白い髪が視界に映っていたり男の自分にはないはずの胸があったり、さらには亜空の矛が浮かんでいたために、鈍いという自覚のある自分でも悟ってしまった。
『空の律者になってる......?』
そう思い試しに空間を操作してみると、キューブ状の物体を作ることができた。その次はキューブを引き延ばし、浮いている岩に飛ばして破壊してみる。
......ふむ。
薄々気づいていたことではあるが、やはりここは現実空間でも虚数空間でもない、心象風景とでも呼ぶべき場所らしい。自身のイメージが形となるような感覚が先ほどはあったため現実空間ではないことは断言できる。
それよりも、だ。
この空間や力に慣れたから分かったが、どうやら本体はこの産まれたばかりの赤子の丹田のあたりにあるらしく、意識の交代や権能の主導権も自分にある。
何なんだろうかこれは。この赤子に憑依したというわけではないし、この赤子は赤子で意識は独立していていつでも乗っ取ることができる。
いや、別に今すぐどうこうするわけではないが、付属品のような形でこの赤子にくっついているのはなんだかモヤモヤするのだ。
うーん...よし、決めた。
当面の間はここで鍛えつつ外の様子を観察しておこう。何かあったら
うん、そうしよう。
あれから4年が経ち、ワタシの宿主である
そう、個性だ。なんとワタシはヒロアカの世界に転生していたらしい。
律者の権能やガン=カタを鍛えつつ外の様子を探ってはいたが、ケモミミが生えてたり特定の部位がやけに発達してたり、しまいにはテレビにオールでマイトな人が映っていたりと、ここがヒロアカの世界と気づくのにそう時間はかからなかったのである。
そんな世界故かやはり空ちゃんもヒーローへの憧れがあるようで。キラキラと目を輝かせながら診断結果を心待ちにする様子は実に微笑ましい。
しかし、だ。
「うーん、なんでしょうねぇこれ。普通は足の小指に関節があると個性が宿らないんですがねぇ、お腹のあたりにコアっていうか、そんな感じの物体があるんですよねぇ」
4年の間に体の端から端まで調べて分かったことだが、この宿主の体には個性因子が存在しない。その代わりといっては何だが、幼児にしては破格の崩壊エネルギー適応性を有しているらしい。
...らしい、というのは崩壊エネルギーをドバドバと流し込んだわけではないからだ。いやほら、垂れ流しにしてると周りにどんな影響があるか分からないしそれなりに愛着のある子をゾンビにはしたくなかったし...
しかし、毎日少量ではあるが崩壊エネルギーを流し込んでいたのに人の形を保っている以上、しっかり適応できるだけの器があると断言できる。
少量の崩壊エネルギーといっても、それは律者目線の少量なのだ。4歳の空ちゃんが何の異常もなく過ごせてることからもその適応性の高さが分かるだろう。
「ま、4歳になったばかりですからねぇ。経過観察ってことで、個性らしきものが出たらまたウチに来てください。」
それを聞いた空ちゃんは、なんだか顔が曇っていた。幼稚園の友達は個性が出てるのに自分は出てない...みたいな、大方そんなところだろう。
...潮時かなぁ。
4年も経ったわけだし、この子には人並に善性もあって、おまけにヒーローになりたいという子供らしい夢もある。無個性の夢見がちな少女がヒーローになるなどと、この世界はそんなには甘くないのだ。それに、空ちゃんから漏れ出そうになってる崩壊エネルギーの扱い方を教えないと再来年あたりには爆発四散してそうな気もするし。
まぁ、この体に入った責任とでも言うべきものだ。教え、導き、鍛え上げ、彼女が胸を張れるようにしてやろうじゃないか。
そんなことを考えながら、今後の決意を固めるワタシであった。
・空の律者(偽)
いたいけな女児の体に崩壊エネルギーをぶっこんでいったアホ。「なんか空律になってるしロールプレイしたろ!」の精神で後方腕組師匠面をする予定(できない)
・律月空
通称空ちゃん。無個性のはずが、崩壊エネルギー適応性が高いせいで律者コアを呼び寄せた挙句、アホの本体が体内にあるせいで一生付きまとわれるし師匠面される被害者。
ヒーローになりたい。
月1で投稿できればいいなと、そんな感じです。