八雲紫と幻想郷と   作:ZED

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二 外の世界が無くなったら

「侵入者!侵入者です!至急援軍を!」

「何だと!?一体誰だ!?」

「八雲紫、博麗霊奈の2人を確認!」

「クソ・・・おい!人数をこっちに割け!」

 

妖怪の山に入って最初に見たのは、見張りの白狼天狗達だった。

山には数十の白狼天狗が山の周りを監視していた。

しかし彼らが最初に取る行動は、援軍を呼ぶ事。

 

「どいつもこいつも弱腰ねえ」

「アンタを見てビビってるのよ、分からない?」

「それは結構な事で」

 

迫り来る弾幕を避け続け、奥へ奥へと進んでいく。

この瞬間だけは、何事にも代えがたい物だ。

いくら時代が過ぎても、この感覚だけは変わった事はない。

 

「いやー、参りましたね」

 

前方から、聞き覚えのある声が聞こえた。

若く張りのある声ながらも、どこかかすれている。

・・・文だ。

 

「久しぶりね」

「こっちは会いたく無いんですけどねえ・・・ちなみに、目的は」

「「散歩」」

「ハァ・・・やっぱり。」

 

文は諦めたような表情で、こちらに団扇を向ける。

 

「それじゃあ、妖怪の山の『大天狗』として・・・お相手致します、と」

 

動き始めた。相変わらず、俊敏な動きである。

規則的な弾の中に散らばった弾が紛れる。やはり大天狗と言うだけはある、強力な弾幕だ。

 

「流石、他の奴らとは違うわ」

「それでも喋る余裕はあるんですね」

「勿論、行くわよ?」

 

今度はこちらの番だ。

精一杯の弾幕には、精一杯の弾幕で応える。

それがスペルカードルールの楽しみであり、同時に八雲の掟でもある。

 

此方が弾幕を張る。

相手が弾幕を避ける。

相手が弾幕を張る。

此方が弾幕を避ける。

 

なんて楽しい事だろう。

 

「ゼェ・・・ゼェ・・・」

「お見事だったわね、文」

「はあ・・・まだ原稿が上がってないって言うのに、とんだ迷惑ですよ」

「いいネタが出来たじゃない」

「それもそうですが」

 

文が、あ、と何かを思い出したように言った。

 

「この先に行くんですよね?」

「勿論。」

「気をつけてください。今は河童が暴動を起こしてるみたいなんで」

「あらあら、どうしたのかしら」

「詳しくは調べているんですが、何やら河童の春が来たなんて騒ぎ始めて・・・」

「河童の春・・・?」

「ちょっと、私は無視?」

 

霊奈が不服そうに声を上げた。

 

「あら。あなたもステキだったわよ、霊奈」

「アンタのせいで私の影が薄れるじゃない」

 

その言葉に、思わず笑ってしまった。

博麗の巫女が、そこまで面子を気にしているとは。

少し意地悪く、こう返して見る。

 

「いいじゃない、何ていったって私は」

「幻想郷で一番偉い、でしょ?」

「ご名答♪」

「全く・・・」

「変わりませんねえ。」

 

「暴動・・・本当に河童は何するか分からないわね」

「大きくなると面倒になりそうね。早めに大人しくさせましょう」

「お願いします」

 

 

 

 

しばらくすると、河童達の声が聞こえてきた。

何やら大声で叫んでいる様だ。

 

「河童の春が来た!文明開花の時だァ!」

「技術革命バンザイ!」

 

その様子を眺めていると、河童達はざわめき始めた。

どうやら気づかれたみたいだ。

 

「八雲紫!?それに霊奈の奴も・・・」

「どうする・・・?」

「いや・・・迎え撃て!コレさえあれば・・・八雲だって落とせる!」

「そうだ!迎え撃てェ!」

 

「血気盛んねえ。八雲を落とす、ですって」

「バカなのか、それとも何かしら裏があるのか・・・」

「ま、応戦してあげましょう」

 

先手は相手に取られる。

河童達の持つ何やら見かけない物から、弾幕が打ち出される。

新発明でもしたのだろうか?

それにしても、やけに遅い弾幕だ。かと言って、密度も高い訳ではない。

何も考えず、その弾を避けた。

・・・はずだった。

 

「えっ?」

「嘘っ」

 

弾幕は光り始め、爆発を起こした。

それはとんでもなく大きな爆発だった。

何が起きたのか理解したのは、体が焼けたように熱く感じた時だった。

川一帯が大きく抉れている。

 

「どういう事だ!?こんなの聞いてないぞ!」

「味方が巻き込まれた!」

「だから言ったんだ!実験も無しに無闇に使うなって・・・」

「今使うのは危険だ!引け!引けー!」

 

あっと言う間に、河童は退散してしまった

 

「大丈夫?」

「んな訳ないでしょ・・・1ミスよ」

「お互い様ね。しかしなんであんな物・・・」

 

「八雲紫!博麗霊奈!」

 

拡声器を持った河童から、何やら叫び声が聞こえる。

声は機械音になっており、顔は遠くてよく見えない。

 

「我々は降参する!話を聞いてくれ!」

 

「だってよ」

「いいんじゃない?暴動が収まるのなら」

 

拡声器の方へと近づいてみる。

声の主は河城にとり。河童の長だ。

 

「協力、感謝しよう。八雲紫、それに霊奈。」

「で、どういう事なの?場合によっては・・・」

「ま、待ってくれ!それは順を追って話す!それよりこっちに来て欲しい・・・」

「罠じゃないでしょうね」

「馬鹿な、この河城にとりの名に誓ってそんな事はしない」

 

連れていかれたのは、川の一角だった。

そこには沢山の・・・本当に山のようになった、兵器置き場があった。

 

「ちょっ・・・どうしたのコレ?」

「・・・八雲紫。」

「・・・」

 

その時、こう思った。

目の前の物を、コレを信じたくない。

きっと何かの冗談だ。

 

「に、にとりったら・・・こんなに沢山作って、どうするつもりなの?」

「八雲紫」

「全く無駄はダメって、寺子屋で教わらなかったかしら。後で資源として回収でも

「八雲紫!!!!!!!」

 

「・・・我々はこの兵器達を、どの一つも作ってはいない。」

「・・・」

 

嘘だ。そんな事有り得ない。

今まで、何の不安も無かったのに。

考えた事もなかったのに。

 

「外から『来た』んだ。他にもかなりの物が流れ着いてる。ここにあるのは、ほんの一部だよ」

 

動悸がしてきた。

あまり動いていないのに、息切れが止まらない。

 

「ゼェ・・・ゼェ・・・」

「ちょっ、紫!?」

「・・・」

 

苦しくなってきた。脳が張り裂けそうだ。

その場に倒れこむが、まだ苦痛は治まらない。

周りが暗くなってきた。

嘘だ、嘘だ。嘘だ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紫様」

「藍。今日は何時間?」

「・・・気絶した所を、河城にとりと霊奈が運んでくれたのですよ」

「・・・そう。」

 

思い出してしまった。

いや、考えていない訳では無かった。

随分前、確か結界の勉強に励んでいた頃。

1つの知識として、覚えていた事がある。

 

 

『外の世界が無くなったら、どうなってしまうのか?』

 

 

 

「2人が待っていますが、どうしますか」

「・・・呼んで頂戴」

「承知しました」

 

2人が来る。

霊奈は心配そうに、そして何が起こったのか分からないという風に私を見つめている。

逆ににとりは、思いつめたように、何かを覚悟したような顔つきになっていた。

 

「悪かったわね、二人とも。急に倒れたりしちゃって。」

「ホントよ!一体どうしたの?まだそんな年じゃないわよね?」

「紫・・・」

「・・・ええ。分かってるわ。」

 

「霊奈。君はさっき、兵器の山を見ただろう」

「そうね。」

「そしてそれらは、外の世界から幻想入りして来た。その事は分かるね?」

「いつもの事じゃない。それがどうかしたの?ちょっと量が多いぐらいで。」

 

「それが問題なんだ」

「?」

「幻想郷は、人に忘れ去られた物達が集う場所。」

「うん。」

「例えば・・・例えばだよ。もし外の世界の人間が居なくなったら。・・・どうなると思う?」

「そりゃーありとあらゆる物が幻想郷に・・・ってえ?」

「・・・分かったかい。」

 

霊奈はようやく理解が追いついた様だった。

ひどく取り乱した顔をしている。

 

「え?え?どういう事?待ってよ」

「霊奈、落ち着いてくれ」

「嘘でしょ?ついこの間まで、外の人間だって来てたじゃない!」

「・・・」

「意味分かんないわよ!!もう帰る!!」

 

霊奈はそう言うと、物凄い速さで飛び去っていってしまった。

 

「・・・どうするつもりだ?八雲紫。」

「私は、八雲として。『幻と実体の境界』の実行者として。学ぶべき事は、学んできたつもりなの」

 

「どうしてかしらね、何も考えられないわ」

 

そう告げると、河童の長は悲しそうな顔をした。

そして、邪魔したね、とだけ言って帰ってしまった。

ふと見た表情が、どこか落胆をしているように感じた。

 

こんな筈じゃなかった。

いつものように迷惑をかけて、八雲の名をずっと記憶に残らせる。その筈だった。

今まで積み上げた物が、音を立てて崩れ始めたような気がした。

 

 

 

幻想郷崩壊まで、あと30日。

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