機動戦士ガンダムSEED C.E.75 VENDETTA   作:陽@曜花推し

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第9話です。

前回、リーシアはコンラート一派の最大拠点「アビス」を破壊しました。

そして、ついに敵側にもリーシアが生きていることが知れ渡りました。

ここから、状況は大きく変わります。

今までリーシアは、闇の中から一方的にコンラートたちを攻撃していました。

しかし、これからは違います。

コンラートたちは逃亡を開始し、証拠を消しながら宇宙へ向かう。

ヴィンセントは軍人という立場そのものを危険に晒しながら、ローゼンバーグ家事件の真相を追う。

そしてリーシアは、復讐を終わらせるために、さらに自分の身体を酷使していく。

今回のタイトルは「光と影の乱舞」。

それは、二機のMSによる戦闘を意味すると同時に、リーシアとヴィンセントという二人の生き方そのものも表しています。

リーシアは「影」。

自らを亡霊と定義し、復讐のために暗闇を歩いてきた少女。

ヴィンセントは「光」。

軍人として秩序を守りながらも、その秩序の中にある悪を見つけてしまった青年。

本来なら交わるはずのない二人が。

今度は、同じ敵を見据えて並び立ちます。

そして。

レイジとの決着も、まだ終わっていません。

それでは、第9話「光と影の乱舞」です。





今回のあらすじ

アビスの崩壊を受け、コンラートたちは最後の逃走計画を開始する。

一方、ヴィンセントはローゼンバーグ家事件の記録を正式に告発しようとするが、軍内部にはコンラートと繋がる者が存在していた。

軍人としての立場を失う可能性。

それでも、ヴィンセントは進む。

そしてリーシアは、次なる戦いへ向かう。

二人の前に立ちはだかるのは、再びレイジ・ローゼンバーグ。

最新鋭ギャンシュトロームとブラッドベイン。

性能ではギャンシュトロームが上。

だが、リーシアにはこれまでの戦いで培った技術と、何より復讐への執念があった。

そこへ、ヴィンセントが加わる。

二機の呼吸が重なった瞬間。

光と影の戦いが始まる。


第9話「光と影の乱舞」

 

 

 

ザフト軍特務艦。

 

艦内の一室。

 

ヴィンセントは一枚のデータ端末を前に、長い時間動かなかった。

 

画面には。

 

ローゼンバーグ家事件。

 

そして。

 

自分が集めた大量の資料。

 

「……これを提出する」

 

決意は固まっていた。

 

だが。

 

簡単なことではない。

 

相手は軍高官。

 

しかも国防事務局の中枢にいる。

 

証拠を出せば。

 

自分も無事では済まない。

 

それでも。

 

ヴィンセントは提出用データをまとめた。

 

「これ以上、隠すことはできない」

 

彼は立ち上がる。

 

その時。

 

艦内通信が入った。

 

『アルノー中尉、至急艦橋へ』

 

「了解」

 

---

 

艦橋。

 

司令官が待っていた。

 

「アルノー」

 

「はっ」

 

「お前が提出したローゼンバーグ家関連資料を見た」

 

ヴィンセントは黙る。

 

「かなり危険な内容だな」

 

「はい」

 

「証拠能力は?」

 

「複数の内部記録、電子署名、資産移動記録があります」

 

「これが事実なら、コンラートは重大な軍規違反だけでは済まない」

 

「承知しています」

 

司令官はヴィンセントを見た。

 

「お前自身は、この事件について何を思っている?」

 

ヴィンセントは一瞬迷う。

 

そして。

 

「……一人の人間が、権力によって消された事件だと思っています」

 

艦橋が静かになる。

 

「その一人というのは?」

 

ヴィンセントは答えた。

 

「リーシア・ローゼンバーグです」

 

司令官の目が僅かに動いた。

 

「やはり」

 

ヴィンセントは息を呑む。

 

「知っていたんですか」

 

「私も薄々、疑っていた」

 

司令官は画面を見る。

 

「ただ、確証がなかった」

 

「今はあります」

 

「分かっている」

 

司令官は深く息を吐いた。

 

「ならば、正式調査を開始する」

 

ヴィンセントの表情が変わる。

 

「本当ですか?」

 

「ただし」

 

司令官は指を立てる。

 

「お前も無関係ではいられない」

 

「承知しています」

 

「失職する可能性もある」

 

「構いません」

 

即答だった。

 

司令官はしばらくヴィンセントを見る。

 

そして。

 

「……そうか」

 

小さく頷いた。

 

「なら、最後までやれ」

 

「はい」

 

ヴィンセントは敬礼した。

 

これで。

 

もう後戻りはできない。

 

---

 

一方。

 

地球。

 

山岳地帯。

 

リーシアは廃施設の中にいた。

 

ブラッドベインの整備中。

 

「……」

 

彼女は右腕のスライサーウィップを確認する。

 

前回の戦闘で損傷した先端部。

 

焼け焦げている。

 

「交換」

 

メカニックが答える。

 

「部品がない」

 

「作って」

 

「時間がない」

 

「なら代用品」

 

「……分かった」

 

メカニックは渋々作業を始めた。

 

リーシアは端末を見る。

 

新しい情報。

 

コンラートたちが移動した。

 

「宇宙へ?」

 

メカニックが尋ねる。

 

「ええ」

 

「追うのか」

 

「当然」

 

「どうやって?」

 

リーシアは地図を見る。

 

そして。

 

「打ち上げ施設」

 

「マスドライバーか?」

 

「……それだけじゃない」

 

情報を追う。

 

戦時中に建設された大型宇宙輸送設備。

 

放棄された宇宙輸送施設。

 

そして。

 

大型輸送用の打ち上げ機。

 

「ここから宇宙へ上げるつもりね」

 

メカニックが眉をひそめる。

 

「一人で行く気か?」

 

「ええ」

 

「やめておけ」

 

「なぜ?」

 

「身体だ」

 

リーシアは黙る。

 

「前回、右目がかなりおかしくなってた」

 

「まだ見える」

 

「見えるかどうかじゃない」

 

メカニックが真剣な表情をする。

 

「お前は、もう何回か死んでるようなもんだ」

 

リーシアは視線を落とす。

 

「……それでも」

 

そして。

 

「今さら止まれない」

 

---

 

夜。

 

輸送施設。

 

コンラート一行が到着した。

 

大型シャトル。

 

コンテナ。

 

兵器。

 

そして。

 

ギャンシュトローム。

 

レイジが搭乗準備をしている。

 

「次は宇宙だ」

 

コンラートが言う。

 

「宇宙へ行けば、ザフトの捜査も簡単には届かない」

 

セレナが笑う。

 

「だったら、もう安心ね」

 

しかし。

 

レイジだけは苛立っていた。

 

「安心なんてできるか!」

 

コンラートが振り返る。

 

「レイジ?」

 

「俺はまだ、あの女に負けたままだ!」

 

ギャンシュトロームの拳を握る。

 

「次こそ殺す!」

 

「冷静になれ」

 

「俺の機体を壊したんだぞ!」

 

レイジは叫ぶ。

 

「俺のキャリアも、俺の名誉も、全部あの女に――」

 

「レイジ」

 

コンラートが冷たく言った。

 

「なら取り返せ」

 

レイジが止まる。

 

「お前があの女を殺せばいい」

 

「……分かった」

 

レイジは笑った。

 

「今度こそ」

 

---

 

その頃。

 

上空。

 

ブラッドベイン。

 

リーシアは一人。

 

「目標確認」

 

遠くに施設。

 

「……いる」

 

ブラッドベインが降下する。

 

施設の警戒レーダーが反応する。

 

「敵機接近!」

 

警報。

 

対空砲。

 

迎撃MS。

 

「来たか!」

 

リーシアは加速。

 

ブラッドベインが弾幕を突っ切る。

 

「……!」

 

強烈なG。

 

「くっ……!」

 

一瞬だけ視界が暗くなる。

 

しかし。

 

「まだ」

 

スロットル。

 

「まだ飛べる!」

 

一機。

 

二機。

 

三機。

 

敵MSを撃破。

 

そして。

 

「見つけた」

 

ギャンシュトローム。

 

「来たな、リーシア!」

 

レイジが叫ぶ。

 

「今度こそ殺してやる!」

 

ブラッドベインとギャンシュトローム。

 

真正面から向かい合う。

 

「あなたは本当に……」

 

リーシアが呟く。

 

「何も分かっていない」

 

「何だと!」

 

「自分の力で得たものが、何一つない」

 

「黙れ!」

 

ギャンシュトロームが突進。

 

アックス。

 

ブラッドベインが回避。

 

しかし。

 

ギャンシュトロームの肩部からビーム。

 

「……!」

 

ブラッドベインの腕を掠める。

 

「ぐっ!」

 

リーシアは機体を反転。

 

スライサーウィップ。

 

ギャンシュトロームの腕へ。

 

「また、それか!」

 

レイジが振り払う。

 

しかし。

 

今度はリーシアが距離を取った。

 

「……」

 

レイジは笑う。

 

「怖気づいたか?」

 

「違う」

 

リーシアはレーダーを見る。

 

「あなたを倒す必要がなくなった」

 

「何?」

 

その瞬間。

 

別のMSが戦場へ飛び込んできた。

 

ゲルググメナース。

 

「ヴィンセント!」

 

「リーシア!」

 

レイジが叫ぶ。

 

「また貴様か!」

 

ヴィンセントは答える。

 

「もう君たちの逃げ道はない」

 

「ふざけるな!」

 

ギャンシュトロームがゲルググへ向かう。

 

ビームナギナタ。

 

ビームアックス。

 

二機が激突。

 

「くっ……!」

 

ヴィンセントは押される。

 

しかし。

 

「ヴィンセント!」

 

リーシアの声。

 

「右!」

 

「分かった!」

 

ゲルググメナースが一歩下がる。

 

ギャンシュトロームの攻撃をかわす。

 

そこへ。

 

ブラッドベイン。

 

スライサーウィップ。

 

腕を拘束。

 

「今!」

 

ヴィンセントが突っ込む。

 

ビームナギナタ。

 

一閃。

 

ギャンシュトロームの脚部装甲が吹き飛ぶ。

 

「ぐあああっ!」

 

「リーシア!」

 

「ええ!」

 

二人の呼吸は完璧だった。

 

アカデミー時代。

 

模擬戦で繰り返した連携。

 

言葉が必要ない。

 

ヴィンセントが敵を引きつける。

 

リーシアが死角へ入る。

 

リーシアが拘束。

 

ヴィンセントが叩く。

 

そして。

 

逆も。

 

二人のMSが、戦場を交互に駆け抜ける。

 

「何なんだ、こいつら!」

 

レイジが叫ぶ。

 

「息が合いすぎる!」

 

「当たり前だ」

 

ヴィンセントが返す。

 

「僕たちは、昔から一緒に戦ってきた!」

 

「黙れぇぇぇっ!」

 

レイジが乱射。

 

ヴィンセントが回避。

 

リーシアが背後へ。

 

「そこ」

 

テンペスト。

 

一閃。

 

ギャンシュトロームの背部スラスターが破壊される。

 

「なっ!?」

 

機体が大きく揺れる。

 

「今だ!」

 

ヴィンセントが接近。

 

ビームナギナタ。

 

ギャンシュトロームの右腕を切断。

 

「俺の腕がぁぁっ!」

 

レイジが叫ぶ。

 

リーシアは機体を止める。

 

「終わりよ」

 

「ふざけるな!」

 

「もう戦えない」

 

「まだだ!」

 

レイジが残った左腕で武器を構える。

 

「まだ殺せる!」

 

リーシアは静かに言った。

 

「あなたは本当に……」

 

そして。

 

「哀れね」

 

レイジの顔が歪む。

 

「黙れぇぇぇっ!」

 

突進。

 

リーシアは回避。

 

しかし。

 

その瞬間。

 

強烈なG。

 

「……っ!」

 

視界が消える。

 

一瞬。

 

本当に何も見えない。

 

「リーシア!」

 

ヴィンセントが叫ぶ。

 

「大丈夫!」

 

だが。

 

大丈夫ではなかった。

 

右目。

 

完全な暗闇。

 

左目だけで追う。

 

それでも。

 

「ヴィンセント……左!」

 

「了解!」

 

ゲルググメナースがレイジの攻撃を受け止める。

 

そして。

 

リーシアが回り込む。

 

「これで終わり!」

 

スライサーウィップ。

 

ギャンシュトロームの左腕を絡め取る。

 

「なっ――」

 

引きちぎる。

 

「うわあああっ!」

 

両腕を失ったギャンシュトローム。

 

レイジは完全に戦闘能力を失った。

 

だが。

 

「……くそ……!」

 

そこへ。

 

施設の警報。

 

『打ち上げシークエンス開始』

 

「……!」

 

ヴィンセントが気づく。

 

「コンラートが逃げる!」

 

リーシアは振り返る。

 

遠く。

 

大型シャトル。

 

「行くわ!」

 

「待て!」

 

ヴィンセントが叫ぶ。

 

「君の機体は!」

 

「まだ動く!」

 

「でも!」

 

「追うの!」

 

ブラッドベインが飛び出す。

 

ゲルググメナースが続く。

 

「……仕方ない」

 

二機はシャトルを追う。

 

その後ろ。

 

破壊されたギャンシュトローム。

 

レイジは。

 

ただ。

 

拳を握りしめていた。

 

「……俺が……」

 

自分の力で戦うことすらできず。

 

ただ。

 

「……負けた……?」

 

その言葉を認めることが。

 

何より耐え難かった。

 

---

 

打ち上げ施設。

 

大型発進設備。

 

コンラート一行のシャトルが上昇を開始する。

 

「急げ!」

 

コンラートが怒鳴る。

 

「もうすぐ軌道に乗る!」

 

セレナが笑う。

 

「これで逃げられるわね」

 

だが。

 

モニターに。

 

二つのMS反応。

 

「……まさか」

 

コンラートの顔から血の気が引く。

 

「追ってきた!?」

 

ブラッドベイン。

 

ゲルググメナース。

 

二機が打ち上げ設備へ飛び込む。

 

「リーシア!」

 

ヴィンセントが呼ぶ。

 

「分かってる!」

 

ブラッドベインが大気圏脱出用の大型輸送機へ接近する。

 

だが。

 

「……っ」

 

リーシアの視界がまた暗くなる。

 

「リーシア!?」

 

「大丈夫」

 

「もう限界だ!」

 

「……まだ」

 

彼女は前を見る。

 

「宇宙へ行く」

 

ブラッドベインのスラスターが。

 

最後の力を絞り出す。

 

そして。

 

夜空へ。

 

一気に。

 

宇宙へ向けて駆け上がる。

 

ヴィンセントも並ぶ。

 

「今度こそ」

 

「ええ」

 

リーシアは答える。

 

「終わらせる」

 

二機のMSが。

 

黒い地球を背に。

 

漆黒の宇宙へと進んでいった。

 

 




次回予告

次回、第10話。

「追跡」

舞台は宇宙へ。

逃亡したコンラート一族を追い、リーシアとヴィンセントは戦時中に放棄された巨大施設へ向かう。

そこに眠っていたのは、大戦の爪痕。

そして。

コンラートが隠していた最後の証拠。

しかし。

宇宙での戦いは、地上とは違う。

推進剤。

姿勢制御。

通信。

すべてが違う。

そして。

過酷な高G機動を続けてきたブラッドベインは、ついに深刻な異常を迎える。

「リーシア、もうやめろ!」

「嫌」

「君の身体がもたない!」

「ここまで来たのよ」

漆黒の機体と。

朱きゲルググ。

追跡の果て。

二人はついに、コンラート一族の逃亡先へ辿り着く。

次回。

「追跡」

復讐の舞台は、宇宙へ。



作者の一言

第9話では、リーシアとヴィンセントが初めて本格的に共闘しました。

アカデミー時代の経験が、今の戦いで自然と噛み合う。

そんな二人を描いてみました。

そして、今回もブラッドベインはかなり無茶をしています。

ただ、リーシア自身が言っている通り、もう彼女にとっては「無茶をしない」という選択肢そのものがなくなりつつあります。

一方、レイジは今回、ついに両腕を失い戦闘不能になりました。

ただし、彼自身が自分の敗北を認めるには、まだ時間がかかりそうです。

コンラートたちは宇宙へ逃げました。

リーシアとヴィンセントも、それを追います。

ここから物語はいよいよ最終局面へ。

残り3話。

そして。

リーシアがこれまで払い続けてきた「命の対価」が、さらに大きな形で返ってきます。

次回もよろしくお願いします。
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