機動戦士ガンダムSEED C.E.75 VENDETTA   作:陽@曜花推し

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第8話です。

ここまでの物語で、リーシアはコンラートたちの裏資金ルートを着実に破壊し、ついに自分が生きていることまで知られることになりました。

そして今回から、これまでの「一方的な復讐」が終わります。

コンラート、セレナ、レイジ。

彼らもまた、リーシアを止めるために動き始めます。

特にレイジは、自分の地位と実績を守るため、最新鋭のギャンシュトロームに乗り込みます。

対するリーシアは、満身創痍のブラッドベイン。

機体そのものも限界へ近づいていますが、それ以上に深刻なのは、操縦者であるリーシア自身です。

それでも彼女は戦います。

ただし、今回の戦いでは一つ大きな変化があります。

それは、ヴィンセントがリーシアを追うだけの存在ではなくなること。

軍人としての立場を危険に晒してでも、彼女の側に立つ覚悟を決めます。

そして、いよいよコンラート一族が作り上げた巨大な闇の一端が、その姿を現します。

それでは、第8話「陰謀の果て」です。




今回のあらすじ

リーシアが生存している。

その事実を知ったコンラート・ローゼンバーグは、自らの隠蔽工作が崩壊することを恐れる。

彼は地球圏最大級の秘密拠点「アビス」へ資産と兵器を集結させ、証拠を全て処分しようと動き始める。

一方、ヴィンセントは軍内部の記録から、ローゼンバーグ家事件に関わる不正の存在を確信する。

だが、軍人としてそれを追えば、自らの立場も危うくなる。

そしてリーシアは、アビスへの単独攻撃を決意。

しかし彼女を待っていたのは、これまでとは比較にならないほどの防衛戦力だった。

その中心に立ちはだかるのは、最新鋭MSギャンシュトローム。

パイロットは、レイジ・ローゼンバーグ。

復讐鬼と愚かな後継者。

二人の戦いが始まる。

---

# 本編



第8話「陰謀の果て」

 

 

プラント。

 

最高評議会関連区域。

 

コンラート・ローゼンバーグの執務室には、重苦しい空気が漂っていた。

 

机上のモニターには、地球圏で破壊された施設の一覧が映し出されている。

 

一つ。

 

また一つ。

 

さらに一つ。

 

すべて、同じ黒いMSによって破壊された。

 

そして。

 

それを操る人間が誰なのか。

 

もう分かっている。

 

「……リーシア」

 

コンラートは、その名前を吐き捨てるように呟いた。

 

セレナが隣に立つ。

 

「本当に……あの女なの?」

 

「間違いない」

 

「でも、あの時……」

 

「死亡したはずだ」

 

コンラートの声には苛立ちが滲んでいた。

 

「確実に処理した」

 

セレナは震える。

 

「だったら、どうして……」

 

「知らん!」

 

机を叩く。

 

「どうやって生き延びたのかなど、どうでもいい!」

 

コンラートは立ち上がった。

 

「問題は、あの女が私の資産を壊していることだ」

 

「お父様……」

 

「今までに失った金は?」

 

「……相当な額です」

 

秘書が答える。

 

「複数の補給拠点、武器庫、輸送網。それに、裏口座の一部まで消失しています」

 

コンラートは歯を食いしばる。

 

「……ならば、最後の拠点へ移す」

 

「アビスですか?」

 

「そうだ」

 

コンラートは地球圏の地図を表示した。

 

「現在、そこに残存資産の大半を集めている」

 

「でも、そこまで集めてしまえば……」

 

「一度に処分できる」

 

コンラートは冷たく笑った。

 

「リーシアが来るなら、そこが最後の墓場になる」

 

セレナの表情が明るくなる。

 

「そうよ……!」

 

そして。

 

「お父様、レイジお兄様も?」

 

「当然だ」

 

コンラートは答える。

 

「軍から手に入れたギャンシュトロームがある」

 

その名を聞いて、レイジが入ってきた。

 

「待たせたな」

 

高価な赤服。

 

自信に満ちた表情。

 

「準備はできている」

 

「レイジ」

 

「安心しろ、親父」

 

レイジは笑った。

 

「今度こそ、あの黒いグフを俺が叩き潰してやる」

 

コンラートは頷く。

 

「頼んだぞ」

 

レイジは満足そうに笑った。

 

自分の腕を信じているわけではない。

 

自分が「最新鋭機に乗っている」ことを信じているだけだった。

 

---

 

一方。

 

ザフト軍特務艦。

 

ヴィンセントは再び極秘資料を開いていた。

 

「……アビス」

 

そこには、コンラート関連の施設一覧があった。

 

地球圏最大規模。

 

兵器保管。

 

資金洗浄。

 

私兵訓練。

 

そして。

 

「……ここに、証拠がある」

 

ヴィンセントは、あるファイルを見つけた。

 

『ローゼンバーグ家当主夫妻事件・原資料』

 

本来なら存在しないはずのデータ。

 

何者かが削除した跡がある。

 

その復元処理を進める。

 

数秒。

 

画面が切り替わった。

 

『現地移送命令』

 

そこに。

 

コンラートの承認コード。

 

「やっぱり……」

 

ヴィンセントの指が震える。

 

リーシアの父親と母親は。

 

偶然死んだのではない。

 

コンラートの命令によって、危険地域へ送られた。

 

その直後、レクイエムによって死亡。

 

さらに。

 

『リーシア・ローゼンバーグ』

 

『国家叛逆』

 

『拘束』

 

『簡易ポッド移送』

 

「……全部、繋がった」

 

そして最後に。

 

『最終処理責任者』

 

コンラート・ローゼンバーグ。

 

ヴィンセントは目を閉じた。

 

「リーシア……」

 

彼女の言葉を思い出す。

 

『私はもう死んだの』

 

「君は……こんなものを一人で抱えていたのか」

 

拳を握る。

 

その時。

 

艦内スピーカーから警報。

 

「地球圏で所属不明MSを確認!」

 

ヴィンセントは立ち上がる。

 

「まさか……」

 

モニターへ切り替える。

 

黒い機影。

 

「リーシア……!」

 

彼女はまた動いている。

 

そして。

 

表示された目的地。

 

「……アビス」

 

ヴィンセントの顔が青ざめた。

 

「そこは罠だ!」

 

---

 

地球。

 

海洋施設アビス。

 

巨大な海上プラント。

 

かつて資源採掘に使用されていた構造物を改修し、コンラート一派の最大拠点へ変貌させた場所。

 

大量のコンテナ。

 

兵器庫。

 

MS格納庫。

 

通信設備。

 

対空砲。

 

そして。

 

地下には巨大な資金保管施設。

 

表向きは存在しない軍事要塞。

 

「警戒レベルを最大にしろ」

 

コンラートが命令する。

 

「奴が来る」

 

「了解!」

 

「防衛MS全機、待機」

 

そこには大量のザクウォーリア。

 

グフイグナイテッド。

 

ザクキャノン。

 

旧式ながら武装を強化されたMS。

 

そして。

 

その中央。

 

一機のギャンシュトローム。

 

「レイジ」

 

コンラートが通信する。

 

「ここを守れ」

 

「任せろ」

 

レイジは笑う。

 

「俺が奴を撃墜する」

 

セレナも司令室から見守っている。

 

「お父様」

 

「何だ」

 

「本当にあの女を殺せる?」

 

「レイジならな」

 

コンラートは答えた。

 

「機体性能が違いすぎる」

 

それは。

 

間違っていなかった。

 

だが。

 

「相手は最新鋭機ではない」

 

コンラートは知らなかった。

 

リーシアにとって。

 

機体性能など。

 

とうの昔に「重要ではなくなっている」ことを。

 

---

 

夜。

 

海面。

 

風。

 

波。

 

雲。

 

その上を。

 

ブラッドベインが飛んでいる。

 

コックピット。

 

リーシアは一人。

 

「……見えた」

 

遠くに、施設の照明。

 

レーダーには大量の敵反応。

 

「多いわね」

 

それでも。

 

引かない。

 

「全部壊す」

 

スロットル。

 

ブラッドベインが加速する。

 

「……!」

 

リーシアの身体にGがかかる。

 

呼吸が苦しくなる。

 

視界の端が暗い。

 

だが。

 

「まだよ」

 

さらに加速。

 

「私には……まだ飛べる!」

 

その直後。

 

対空警報。

 

多数の砲台が一斉に火を噴く。

 

「来た!」

 

ビームが夜空を埋める。

 

ブラッドベインが降下。

 

海面すれすれ。

 

波を切る。

 

そして。

 

再上昇。

 

「速い!」

 

「追え!」

 

防衛MSが動く。

 

しかし。

 

一機。

 

また一機。

 

ブラッドベインの速度についてこられない。

 

「なんだ、あの機体!」

 

リーシアは敵の真横へ。

 

「そこ」

 

スライサーウィップ。

 

一機撃破。

 

次。

 

ドラウプニル。

 

脚部破壊。

 

テンペスト。

 

撃破。

 

そして。

 

その奥。

 

「……」

 

リーシアの目が細くなる。

 

一機だけ。

 

動きが違う。

 

周囲のMSが道を開ける。

 

重厚な機体。

 

大型スラスターユニット。

 

ビームアックス。

 

ギャンシュトローム。

 

「……」

 

通信。

 

「黒いグフ!」

 

レイジの声。

 

「今度こそ逃がさないぞ!」

 

リーシアは答える。

 

「あなたが……レイジね」

 

「そうだ!」

 

レイジは笑う。

 

「俺がローゼンバーグ家の正当な後継者だ!」

 

「……」

 

リーシアはしばらく黙った。

 

そして。

 

「そう」

 

「なんだ?」

 

「なら、なおさら潰す価値がある」

 

「何だと!」

 

レイジが突進する。

 

ギャンシュトロームの巨大なスラスターが火を噴く。

 

「死ねぇぇっ!」

 

ビームアックス。

 

振り下ろす。

 

リーシアは回避。

 

「速い!?」

 

レイジが驚く。

 

ブラッドベインは横へ滑る。

 

スラスター。

 

反転。

 

テンペスト。

 

レイジはビームシールドで受ける。

 

「ぐっ!」

 

衝撃。

 

「この程度か!」

 

レイジが反撃。

 

ビームアックス。

 

リーシアは後退。

 

二機が激突する。

 

最新鋭機の性能。

 

ブラッドベインより高い。

 

普通なら。

 

リーシアは苦戦する。

 

しかし。

 

彼女には。

 

「……機体が速ければいいと思っているの?」

 

レイジの攻撃を読んでいた。

 

右。

 

左。

 

さらに。

 

敵が振り下ろす瞬間。

 

一歩。

 

踏み込む。

 

ギャンシュトロームの懐。

 

「なっ!?」

 

スライサーウィップ。

 

右腕。

 

巻き付く。

 

「なめるな!」

 

レイジが力任せに振り払う。

 

リーシアの機体が弾かれる。

 

「……!」

 

壁へ衝突。

 

「リーシア!」

 

遠くからヴィンセントの通信。

 

「来たの……?」

 

「ここは危険だ! 退け!」

 

「嫌よ!」

 

リーシアは機体を起こす。

 

「ここを壊さなきゃ、あいつらは逃げる!」

 

「なら僕も戦う!」

 

ゲルググメナースが現れる。

 

レイジが怒鳴る。

 

「貴様、また邪魔をするのか!」

 

ヴィンセントは答えた。

 

「邪魔をしているのは君たちだ!」

 

「ローゼンバーグ家事件の全記録を確認した!」

 

レイジの顔が引きつる。

 

「……!」

 

「コンラート・ローゼンバーグ」

 

ヴィンセントが叫ぶ。

 

「貴様らがリーシアの両親を殺したことを、すべて明らかにする!」

 

「黙れぇぇっ!」

 

レイジが襲いかかる。

 

だが。

 

ゲルググメナースが迎撃する。

 

ビームナギナタ。

 

ギャンシュトロームのビームアックス。

 

激突。

 

「ぐっ!」

 

ヴィンセントは押される。

 

そこへ。

 

リーシアが割り込む。

 

「レイジ!」

 

スライサーウィップ。

 

ギャンシュトロームの武装を絡め取る。

 

「なにっ!?」

 

「あなたは……」

 

リーシアはブラッドベインを加速させる。

 

「自分の力で何かを得たことがあるの?」

 

「うるさい!」

 

「父親の権力」

 

「黙れ!」

 

「人の功績を奪っただけ」

 

「黙れぇぇっ!」

 

「何も知らないくせに、自分が優秀だと思っている」

 

レイジの顔が歪む。

 

「俺は……俺は……!」

 

「だから」

 

リーシアの声が冷たくなる。

 

「あなたは私の敵の中で、一番弱い」

 

「なっ……!」

 

次の瞬間。

 

ブラッドベインが消えた。

 

いや。

 

レイジの視界から外れた。

 

後方。

 

左。

 

上。

 

そして。

 

目の前。

 

「うわぁぁっ!」

 

テンペスト。

 

ギャンシュトロームの胸部へ叩き込む。

 

レイジは間一髪で回避。

 

だが。

 

胸部装甲に大きな亀裂が走る。

 

「くそぉぉっ!」

 

レイジが乱射する。

 

ビーム。

 

ミサイル。

 

全弾。

 

リーシアは回避。

 

だが。

 

そのたびに。

 

「……ぐっ!」

 

身体へG。

 

鼻血。

 

視界が暗くなる。

 

「リーシア!」

 

ヴィンセントが叫ぶ。

 

「もうやめろ!」

 

「まだ……!」

 

「君は限界だ!」

 

「まだなの!」

 

ブラッドベインが再加速。

 

リーシアは唇を噛む。

 

「私は……このために生き残った!」

 

一気に接近。

 

スライサーウィップ。

 

ギャンシュトロームの右腕へ。

 

「取った!」

 

巻き付く。

 

引く。

 

レイジのビームアックスが手から離れる。

 

「なっ――」

 

その直後。

 

ゲルググメナースが突っ込む。

 

ビームナギナタ。

 

ギャンシュトロームの脚部を切断。

 

「うああああっ!」

 

ギャンシュトロームが姿勢を崩す。

 

ブラッドベインがその背後へ回る。

 

「終わり」

 

テンペスト。

 

一閃。

 

ギャンシュトロームの背部スラスターが破壊される。

 

「な……」

 

レイジの顔から血の気が引く。

 

「俺の……ギャンが……」

 

リーシアは機体を止める。

 

「あなたには、その機体すら勿体ない」

 

「ふざけるなぁぁぁっ!」

 

レイジは怒りに任せ、予備武装を取り出す。

 

しかし。

 

その腕は震えていた。

 

リーシアは、それを見た。

 

「……怖いのね」

 

「うるさい!」

 

「自分が負けることが」

 

「黙れ!」

 

「自分には何もないと、気づくことが」

 

「黙れぇぇっ!」

 

レイジは突進。

 

しかし。

 

もう遅い。

 

ブラッドベインの一撃が、ギャンシュトロームの腕部を吹き飛ばした。

 

そして。

 

レイジは動けなくなった。

 

---

 

司令室。

 

セレナが悲鳴を上げる。

 

「レイジお兄様!」

 

コンラートは立ち尽くしていた。

 

「バカな……」

 

自分が用意した最新鋭機が。

 

旧式の改修MSに敗れた。

 

いや。

 

違う。

 

「機体ではない」

 

コンラートは理解する。

 

「あの女の執念だ」

 

そして。

 

最悪の警告。

 

『自爆シークエンス開始』

 

「……!」

 

コンラートが画面を見る。

 

「自爆……?」

 

「全施設の証拠を処分する」

 

コンラートは即座に命令した。

 

「脱出する!」

 

セレナが叫ぶ。

 

「お父様! レイジお兄様は!?」

 

「……捨てる」

 

「え?」

 

「もうあいつに戦う力はない」

 

コンラートは冷たく言い放った。

 

「私たちが逃げなければ、全てが終わる」

 

セレナの顔が青ざめる。

 

「でも……」

 

「来い!」

 

---

 

戦場。

 

自爆警報。

 

『残り5分』

 

リーシアは施設を見る。

 

「……自爆?」

 

ヴィンセントが答える。

 

「証拠を消す気だ!」

 

「なら……」

 

リーシアはスラスターを吹かす。

 

「逃がさない」

 

ヴィンセントが叫ぶ。

 

「待て! 君の機体はもう限界だ!」

 

「分かってる」

 

「なら!」

 

「だから、最後の一撃を使う」

 

ブラッドベインが施設の奥へ突入する。

 

しかし。

 

右側のスラスターから火花。

 

リーシアの視界がまた暗くなる。

 

それでも。

 

「父様……母様……」

 

テンペストを構える。

 

「もう少しだけ」

 

コンラートたちの逃走路へ。

 

巨大な隔壁を切り裂く。

 

「見つけた」

 

遠く。

 

脱出シャトル。

 

そこへ逃げ込もうとするコンラート。

 

セレナ。

 

そして。

 

動かなくなったレイジの機体。

 

「待ちなさい!」

 

リーシアが叫ぶ。

 

コンラートが振り返る。

 

その目に。

 

恐怖。

 

「……リーシア」

 

「そうよ」

 

リーシアは言う。

 

「あなたが殺したリーシア」

 

「違う……!」

 

「私は死んだ」

 

「……」

 

「でも」

 

ブラッドベインの光る目。

 

「あなたたちに復讐するためだけに生きてきた」

 

その時。

 

施設全体が大きく揺れた。

 

『残り3分』

 

ヴィンセントが通信する。

 

「リーシア! もういい! ここを出るんだ!」

 

だが。

 

彼女はコンラートを見つめていた。

 

テンペストを握る。

 

「……今日は、ここまで」

 

コンラートが安堵する。

 

だが。

 

リーシアは続ける。

 

「あなたたちは、もう逃げられない」

 

「……何?」

 

「あなたたちが作った証拠」

 

リーシアの端末へ。

 

大量のデータが転送されている。

 

「全部、ヴィンセントへ送った」

 

コンラートの顔が凍る。

 

「……!」

 

「これで、あなたの終わりは始まった」

 

リーシアはそう言うと、機体を反転させた。

 

ヴィンセントも追う。

 

「行くぞ!」

 

ゲルググメナースがブラッドベインへ並ぶ。

 

そして。

 

二機は崩壊するアビスから脱出した。

 

背後。

 

巨大な火柱。

 

海面が大きく盛り上がる。

 

コンラート一派の最大拠点は。

 

轟音とともに崩れ落ちた。

 

---

 

ブラッドベインのコックピット。

 

リーシアは操縦桿に手を置いたまま動かなかった。

 

「……終わった」

 

ヴィンセントから通信。

 

「リーシア」

 

「……何」

 

「もう、十分だ」

 

「まだ」

 

「でも」

 

リーシアは小さく笑った。

 

「コンラートはまだ生きている」

 

ヴィンセントは答えられなかった。

 

「セレナも」

 

「……」

 

「レイジも」

 

「レイジは……」

 

「まだ死んでいない」

 

「そうだな」

 

リーシアは前を見る。

 

「なら、次で終わらせる」

 

だが。

 

その言葉とは裏腹に。

 

視界が大きく揺れた。

 

「……っ」

 

リーシアは額を押さえる。

 

世界が。

 

少しだけ。

 

暗くなっていく。

 

それでも。

 

「まだ……」

 

彼女はスロットルを握った。

 

「私は、まだ飛べる」

 

ブラッドベインは。

 

傷ついた漆黒の翼を広げ。

 

夜の空へ消えていった。

 

その後ろを。

 

ヴィンセントのゲルググメナースが追う。

 

二機が去った後。

 

燃え落ちるアビスを見つめる一つのシャトル。

 

中には。

 

コンラート。

 

セレナ。

 

そして。

 

拘束されたレイジ。

 

コンラートは拳を握っていた。

 

「……まだだ」

 

セレナが震える。

 

「お父様……」

 

「まだ、全てを失ったわけではない」

 

しかし。

 

その声に。

 

かつての余裕はもうなかった。

 

復讐者の刃は。

 

確実に。

 

ローゼンバーグ家の喉元へ届いている。

 

そして。

 

リーシア自身も。

 

もう後戻りできないところまで。

 

自分の命を削っていた。

 

 




次回予告

次回、第9話。

「光と影の乱舞」

アビスを脱出したコンラート一派は、宇宙へ逃亡するための準備を進める。

一方、ヴィンセントはついに軍内部でローゼンバーグ家事件の不正を正式に告発する決断を下す。

しかし。

軍上層部の中にも、コンラートと繋がっている者がいる。

そして。

リーシアは、ヴィンセントから「一緒に戦ってほしい」と告げられる。

「私は一人でいい」

「僕はそう思わない」

二人の間にあった距離が。

少しずつ変わり始める。

その頃。

逃亡したコンラートたちは、戦争の遺物が眠る場所へ向かっていた。

舞台は。

宇宙へ。

そして。

リーシアとヴィンセントの戦いも、最後の段階へ入っていく。

次回。

「光と影の乱舞」

二人が初めて、本当の意味で背中を預け合う。




作者の一言

第8話では、コンラート一派の最大拠点「アビス」を舞台に、レイジとの初めての本格的な直接対決を描きました。

レイジは最新鋭のギャンシュトロームに乗っています。

それでもリーシアが勝てたのは、ブラッドベインの性能だけではありません。

リーシア自身の操縦技術と、これまで積み重ねてきた戦闘経験、そして何より「負けても失うものはない」という覚悟があったからです。

一方で、今回の戦闘ではリーシアの身体にかなり大きな負担がかかっています。

このあたりから、彼女の状態は少しずつ深刻になっていきます。

また、ヴィンセントもついに一歩踏み込みました。

今まではリーシアを「助けたい」と思いながらも、軍人として追う立場でした。

しかし、ここからは彼自身が軍組織と衝突する可能性を覚悟し始めます。

そして、コンラートたちの逃亡先は宇宙。

いよいよ物語の決着が近づいてきました。

残り4話。

リーシアの復讐は、どこへ辿り着くのか。

最後までお付き合いいただければと思います。

ありがとうございました。
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 一年戦争は終わった。▼ 黒いガンダムを駆り、多くの者たちの運命を変えたレン・イズミ。しかし終戦後、ニュータイプとして高い軍事的価値を持つレン、アムロ、ララァを、地球連邦軍がそのまま自由にするはずもなかった。▼ 研究対象として囲い込まれるくらいなら、その立場そのものを利用する。レンはゴップ大将のもと、新たな特殊部隊――**BLACK RAVEN〈黒鴉隊〉**…


総合評価:1653/評価:8.38/連載:77話/更新日時:2026年10月24日(土) 12:00 小説情報


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