DenCityのパブリックビューイングモニターが見える広場。
そこでは先日、ハノイの騎士の襲撃を撃退し、LINK VRAINSを守ったデュエリスト「Playmaker」である藤木遊作と店主の草薙翔一が共にCafeNagiの店頭に立っていた。
ハノイの騎士そしてSOLテクノロジー社が狙うAIの捕獲に成功した2人が今後のハノイの騎士の動向について密かに話していると、
「遊作くーん、遊びに来たよー」
声の方に目を向けると遊作と同じ高校の制服を着た2人の男女が店に来た。
うさぎを模した髪飾りにリスの尻尾のアクセサリーを腰につけたギャルっぽい見た目の女子と、片腕に包帯を巻きさらに片目が隠れた男子だ。
「たまちゃんにゼロ君、いらっしゃい。
注文はいつものでいいかい?」
草薙の声にお願いしまーすと返事をしたたまは遊作に向き直る。
「遊作くん、最近はちゃんと家で食べてる?
またインスタントばっかりじゃないでしょうね?」
「⋯⋯あんたには関係ないだろ」
「ククク、真実を暴かれ狼狽えたか遊作よ」
「もう、ゼロくんからかわないの。
それじゃ今晩ご飯持っていくからちゃんと食べてよね」
「勝手にしろ」
顔を覗き込むたまの追及から視線を逸らす遊作と何故か片目を押さえて嘲笑うゼロ。
遊作側からは一線を引きつつも戯れる3人を微笑ましく見守る草薙は手早く調理を済ませると2人に差し出した。
「はい、いつものホットドッグ2つ。
遊作が世話になってるみたいだな」
「いえいえ、こちらこそ遊作くんがお世話になっていますー」
眉間にしわを寄せる遊作の視線をスルーし、ホットドッグを受け取るとそれじゃ、と手を振り2人は離れていった。
周囲に人気が途切れると店の邪魔になるからと隅に置かれていたデュエルディスクに目が表示され、ニヤニヤと面白いものを見たと視線を向けた。
「っかー!Playmakerさまも隅に置けませんな!
孤高の復讐者気取っといてかわいい女の子が料理を家に持ってくるとかギャルゲの主人公かっての!」
「黙れ。人質が喋るな」
ヒドイっと涙目になるAiと名付けられたAIに失笑する草薙。
「あの事件直後からの付き合いなんだろ。
もう少し愛想良くしてやってもいいんじゃないか?」
「⋯⋯考えておく」
ため息をつき、実行する気の無さそうな遊作とAiの軽口をBGMに日常は過ぎていった。
その日の深夜。
モニターを唯一の光源とした暗い部屋に2人の人影があった。
「ブレーンさま、例のイグニスが遊作くんのところにいることを確認しましただワン」
人相は影となって見えないが、頭部から元気よく立つうさ耳と腰からくるりと巻くリスの尻尾をのぞかせた特徴的な影を揺らしながら女がモニターに向かって報告をしていた。
『ご苦労。
推測通りやはり接触してきたか』
「まあ今までも誘導はしていたみたいですけどワン。
これからタマ達はどうしますワン?
見守りを継続するのかワン?」
『いや、ゼロに動いてもらおう』
「ゼロくんにかワン?」
部屋にいるもう一人、コートを身にまとった男に視線が向けられた。
「ブレーンよ、我等の存在はハノイの騎士やSOLテクノロジーに知られれば新たな戦いの火種となる。
そのリスクを押してまで動く理由があるのか聞かせてもらおう」
『もちろんだが2人には偽装プログラムを纏ってもらう。
理由は当然遊作のためだ。
先日のハノイの騎士とのデュエルで世間の関心がPlaymakerに集中してしまっている。
遊作の協力者がPlaymakerの情報を消して回っているが、膨大な数になっているだろう。
そこでゼロが世間の関心を奪い、協力者の負担を軽減する。
そうすれば、ハノイの騎士との戦いに集中出来るようになり、早期解決となるだろう』
「あー、確かにゼロくんがデュエルしたら話題なんて掻っ攫われそうだワン」
アハハと乾いた声を上げる女。
対して男は眼帯の上から片目を押さえるポーズを決めながら嘲笑う。
「ククク、良かろう。
俺様の従えし、幽幻たる魔獣の戯れで衆目を引き受けてやろうではないか」
『それでは明日のこの地点にハノイの騎士が現れる。
付近にマスコミもいるはずだからそこで倒せ』
承知した、となおもポーズを崩さずに嘲笑い続ける男を見ながらおもむろに女が口を開く。
「ところでなんで通信をこんな暗いところでやるんだワン?
私達に悪くなる目はないけどワン」
『ゼロに聞け』
「秘密組織の会議は暗い所でするものだ」
「⋯⋯そっかワン」