SOLテクノロジーのマザーコンピュータでの騒動から数日後、ゴーストガールはPlaymakerにコンタクトを取るのに利用したハッカーコミュニティに再び暗号化したメッセージをアップロードする準備をしていた。
あの場所で判明した誰も知らない隠された組織、ブレーン陣営とでも言うべき高度な技術を封印しているラボとそれを守る番人達。
そんな彼等に対してダメ元で投げかけるコンタクト要求メッセージをアップロードした。
「……まあ、流されるのが落ちね」
そう呟いたゴーストガールだったが投稿からわずか数分後、彼女の端末に応答ログが刻まれた。
驚きつつも解読したメッセージに記されていたのは、簡潔な指定日時と座標データ。
「こちらからは提示できるものなんて何もないのに……いったいどういうつもりなのかしら?」
疑問を抱えながらゴーストガールは指定された場所へとアクセスした。
そこは、SOLテクノロジーの監視網はもちろん、ハノイの騎士の目すら一切届かない、静寂に包まれた裏ネットワーク空間だった。
データの海の中に、ポツリと浮かぶ廃墟のようなエリア。
データストームの音すら聞こえないその静寂の中、黒いロングコートをたなびかせ、片手を眼帯に当てた男が悠然と佇んでいた。
「ククク……よくぞ来訪したな、電脳の幽霊よ」
「……ゼロ。
やっぱりアナタが来たのね」
ゴーストガールは慎重に距離を取りながら目の前の男、ゼロを観察する。
見た目は相変わらず痛々しい中二病スタイルだが、その背後に渦巻く圧倒的な技術力と存在感は本物だ。
「私が投げかけたコンタクトに応じるなんて、意外と暇なの?
それとも……」
「フッ、戯言を。
俺様達が貴様の拙い招集に応じた理由……それは貴様自身に果たしてもらいたい役割が存在するからに他ならん」
ゼロは包帯の巻かれた右腕を大袈裟にかざし、声を響かせる。
「だが、まずは貴様の口から語ってもらおうか。
取引の弾すら持たぬ貴様が、我等に何を求めて接触を試みたのかをな!」
ゴーストガールは呆れたように肩をすくめつつも、真剣な眼差しに切り替えた。
「理由なら2つあるわ」
彼女は人差し指と中指を立てて提示する。
「1つ目は、私個人の理由。
電脳トレジャーハンターとして、あなたたちのラボに眠る『未知の技術』や『負の遺産』なんて、無視できるわけがないじゃない?
喉から手が出るほど欲しい宝の山よ。
場所やアクセス方法を教えてもらいに来たの」
「ククク、強欲な
そして、2つ目は?」
「2つ目は……あの男——財前晃からの頼みよ」
ゴーストガールは小さくため息をついた。
「あのマザーコンピュータでの一件以来、彼はPlaymakerを本気で心配してるのよ。
妹を命懸けで救ってくれた恩人に、危険な目にあって欲しくないらしくてね。
連行の撤回と、危険なラボの開示を求めてるわ」
「フハハハハ!
財前晃め、相変わらず無駄な情を振りかざす青臭い男よ!」
ゼロは天を仰いで高笑いすると、スッと眼光を鋭く光らせた。
「断る。
我が
他者の介入など断じて許されん」
「でしょうね。
断られるのは百も承知よ。
でも……応じたってことは、そっちにも私に要求したいことがあるんでしょ?」
ゴーストガールが問いかけると、ゼロはコートの裾を翻した。
「左様。
こちらとしても、貴様という優秀な『
ハノイとの決戦に向け、表のネットワークで動いてもらいたい仕事が存在するのだ」
「あら、そちらも私に頼みたいことがあるの?
……でも困ったわね。
私はラボの情報の開示と連行の撤回をお願いしたい。
でもあなたは情報を渡す気はない。
……双方の要望が真っ向からぶつかっちゃってるじゃない」
「クク……ならば、決着の手段はひとつしかあるまい」
ゼロが腕を掲げると色鮮やかな光のラインがデュエルディスクの枠組みを形作っていく。
「言葉による不毛な交渉など、我らの美学に反する。
勝ち取った者がすべての主導権を握る……それがこの世界の絶対の
「ふふ、賛成よ。
カードで決着をつけるなら、デュエリストとして文句はないわ」
ゴーストガールもまた、流れるような手つきで自身のデュエルディスクを起動させる。
「私が勝ったら、ラボの情報を話してもらうわよ!」
「ククク……俺様が勝てば、貴様には我らの忠実なる手駒として働いてもらう!
覚悟するが良い、我が魔獣共の爪牙に引き裂かれる恐怖をな!」
「「デュエル!!」」
ゼロ LP4000
ゴーストガール LP4000
「俺様の先行だな。
俺様はメルフィー・ラビィーズを通常召喚!」
鮮やかなパステルピンクの毛並みを持つモフモフとしたウサギたちが、フィールドにピョンピョンと跳ねながら姿を現した。
「ラビィーズの効果発動!
デッキから「メルフィー」モンスター1体を手札に加える。
俺様はメルフィー・ラビィを手札に加える。
そしてラビィーズの効果で通常モンスターを手札に加えた場合、さらに手札から獣族モンスターを任意の数だけ特殊召喚できる。
メルフィー・ラビィは通常モンスター!
よって、俺様は手札のメルフィー・ワラビィ、ポニィ、ラビィを特殊召喚!」
メルフィー・ラビィーズ DEF100
メルフィー・ワラビィ DEF400
メルフィー・ポニィ DEF0
メルフィー・ラビィ DEF2100
「レベル2のラビィーズとラビィの2体でオーバーレイ!
2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!
エクシーズ召喚!
集え!ランク2!森のメルフィーズ!」
森のメルフィーズ DEF2000
「森のメルフィーズの効果発動!
オーバーレイユニットを1つ取り除き、デッキから「メルフィー」カード1枚を手札に加える。
俺様は通常魔法『メルフィーがころんだ』を手札に加える。
そして永続魔法『メルフィーのかくれんぼ』を発動!
その効果により、俺様のフィールドの獣族モンスターはそれぞれ1ターンに1度だけ効果では破壊されなくなる。
カードを1枚セットし、魔法カード『メルフィーがころんだ』を発動!
このカードを発動するターン、俺様は「メルフィー」モンスターしか特殊召喚できないが、デッキから「メルフィー」モンスターを4体まで手札に加える。
そしてその後、エンドフェイズになる。
俺様はパピィ、キャシィ、ラッシィ、ワラビィの4体を手札に加え、エンドフェイズに移行する。
そして手札のメルフィーの効果発動!
俺様のエンドフェイズに手札から特殊召喚される!
我が領域に姿を現せ!パピィ!キャシィ!そしてターンエンドだ」
森のメルフィーズ DEF2000
メルフィー・ワラビィ DEF400
メルフィー・ポニィ DEF0
メルフィー・パピィ DEF100
メルフィー・キャシィ DEF200
永続魔法『メルフィーのかくれんぼ』
伏せカード1枚
キャンキャンみゃうみゃうともふもふがころがり戯れる後ろでゼロが仁王立ちで腕を組みドヤ顔をキメる。
「相変わらずキュートなモンスターを使うのね」
「フッ、我が魔獣共の秘めたる魔力に酔いしれたか?」
ゴーストガールはフッと笑みを浮かべ目の前の状況と、以前のハノイの騎士とのデュエルからメルフィーの戦術傾向を推測する。
相手の召喚によって発動する効果、自他共に行われるバウンス、そして攻撃力1000すら超えない低攻撃力。
ハノイの騎士にとどめをさした攻撃力6600のメルフィーゴッド・マミィも元の攻撃力は0だった。
つまりメルフィーは召喚をトリガーにしたバウンスによって相手の場をガラ空きにし、低攻撃力の波状攻撃で相手のLPを削り切るのが基本戦術。
「そうと分かればやりようがあるわ。
私のターン、ドロー!
私のフィールドにカードが無いため、手札から罠カード『無限泡影』を発動!
森のメルフィーズの効果をターン終了時まで無効にする。
そして罠カードが発動したために手札のオルターガイスト・マルチフェイカーを特殊召喚!
そしてマルチフェイカーが特殊召喚した場合に効果を発動する」
オルターガイスト・マルチフェイカー ATK1200
「森のメルフィーズが封じられたか、だが我が魔獣共は止まらんよ!
その召喚に対してフィールドのメルフィーの効果をチェーン発動!
ワラビィ、ポニィ、キャシィ、パピィの順にチェーンを組む。
チェーン処理を開始する!
パピィを手札に戻し、デッキからフェニィを特殊召喚!
キャシィを手札に戻し、デッキからパピィを手札に加える!
ポニィを手札に戻し、墓地のラビィーズを手札に加える!
ワラビィを手札に戻し、デッキからキャシィ、フェニィの2体を特殊召喚する!」
メルフィー・フェニィ DEF300
メルフィー・フェニィ DEF300
メルフィー・キャシィ DEF200
フィールドに多脚の異形が現れた瞬間、その場で遊んでいた動物達がピョンっと飛び上がると慌てて手札に逃げ帰り、入れ違いに3匹の動物達がフィールドに飛び込んできた。
「本当どっちのターンか分からなくなるくらい動くわね。
マルチフェイカーの効果を処理するわ。
デッキからマルチフェイカー以外の「オルターガイスト」モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。
オルターガイスト・マリオネッターを特殊召喚!」
オルターガイスト・マリオネッター ATK1600
「その召喚に対してフィールドのフェニィ、手札のラビィーズの効果発動!
フェニィを手札に戻し、手札のパピィを特殊召喚!
ラビィーズを手札から特殊召喚し、自分の手札・フィールドのモンスターを融合素材とし、「メルフィー」融合モンスター1体を融合召喚!
フィールドの森のメルフィーズと手札のキャシィで融合召喚!
集結せよ!わくどきメルフィーズ!」
わくどきメルフィーズ DEF2500
「わくどきメルフィーズの融合召喚成功時に効果発動!
自分フィールドの「メルフィー」カードと相手フィールドのカードをそれぞれ同じ数だけ対象として発動し、カードを手札に戻す。
俺様はパピィとフェニィを選択し、貴様のマルチフェイカーとマリオネッターを手札に戻す!」
メルフィー・パピィとフェニィが機械的な異形のオルターガイスト達に小さな体で体当たりして手札に戻し、自分達は体当たりの跳ね返りを利用して手札に戻っていった。
相手のフィールドを埋めていたモンスターが1体に減ったが、同時に私のフィールドのモンスターもいなくなってしまった。
だが、
「想定内よ!
私はオルターガイスト・マリオネッターを通常召喚!
マリオネッターの召喚時の効果を発動!
デッキからオルターガイスト罠カード『オルターガイスト・ホーンデッドロック』をセットする」
「相手モンスターの召喚時にわくどきメルフィーズの効果発動!
自身のレベルを2つ下げ、墓地の獣族モンスター『森のメルフィーズ』を特殊召喚する」
「こっちだって止まらないわよ!
セットされた永続罠『オルターガイスト・ホーンデッドロック』の効果発動!
オルターガイストカードの効果によってセットされたこのカードはセットしたターンでも発動できる!
手札から「オルターガイスト」モンスター1体を墓地へ送る。
私はオルターガイスト・メリュシークを墓地へ!
そしてマリオネッターのもう一つの効果発動!
自分フィールドの「オルターガイスト」カード1枚と、自分の墓地の「オルターガイスト」モンスター1体を対象として発動できる。
対象のフィールドのカードを墓地へ送り、対象の墓地のモンスターを特殊召喚する。
フィールドの永続罠『オルターガイスト・ホーンデッドロック』を墓地へ送り、墓地のオルターガイスト・メリュシークを特殊召喚!」
オルターガイスト・メリュシーク DEF300
人魚の様な機械のモンスターが罠カードと入れ替わるようにして、墓地から泳ぎ出てきた。
「……あら?もう動物ちゃん達の効果は打ち止めかしら?」
「クク、そうだな。
我がフィールドの魔獣共はしばしの休息を取るようだ」
「そう、なら安心して盤面を整えられるわね。
私はメリュシークと手札のオルターガイスト・プークエリをリンクマーカーにセット!
召喚条件は「オルターガイスト」モンスター2体!
リンク召喚!リンク2!オルターガイスト・ヘクスティア!」
リンク2
オルターガイスト・ヘクスティア ATK1500
「オルターガイスト・プークエリは自分フィールドの「オルターガイスト」モンスターを「オルターガイスト」モンスターのリンク素材とする場合、手札のこのカードもリンク素材にできる。
そしてメリュシークの効果発動!メリュシークがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキからメリュシーク以外の「オルターガイスト」モンスター1体を手札に加える。
私はオルターガイスト・マルウィスプを手札に加える!
そしてマルウィスプがドロー以外の方法で手札に加わった場合にこのカードを特殊召喚する!」
オルターガイスト・マルウィスプ ATK1500
「マルウィスプが召喚・特殊召喚した場合、マルウィスプ以外の自分の墓地の「オルターガイスト」モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。
このターン、この効果で特殊召喚したモンスターの効果は発動できないけどね。
私は墓地のメリュシークを特殊召喚!
再び現れよ!
リンク2のヘクスティアとメリュシークをリンクマーカーにセット!
召喚条件は「オルターガイスト」モンスター2体以上!
リンク召喚!リンク3!オルターガイスト・プライムバンシー!」
リンク3
オルターガイスト・プライムバンシー ATK2100
「ヘクスティアの効果発動!
ヘクスティアがフィールドから墓地へ送られた場合に発動!
デッキから「オルターガイスト」カード1枚を手札に加える。
私は罠カード『オルターガイスト・マテリアリゼーション』を手札に加える!
そして、プライムバンシーの効果発動!
メインフェイズに、このカード以外の自分フィールドの「オルターガイスト」モンスター1体をリリースして発動できる。
デッキから「オルターガイスト」モンスター1体をこのカードのリンク先となる自分フィールドに特殊召喚する。
マルウィスプをリリースし、オルターガイスト・フィフィネラグを特殊召喚!」
オルターガイスト・フィフィネラグ DEF1000
「フィフィネラグがフィールドに存在する限り、相手はフィフィネラグ以外の「オルターガイスト」モンスターを攻撃対象に選択できず、効果の対象にもできなくなるわ!」
連続リンク召喚を繋げて、最後にはプライムバンシーを効果による除去から守るデコイを設置した。
「む、見誤ったか。
リンク4のモンスターをバウンスするつもりだったのだがな」
「恐ろしいことを言わないでくれる!?
まだ何かするつもりだったの?
さて、オーバーレイユニットの無いエクシーズモンスターをわざわざ蘇生するなんて、何か使える効果があるのでしょう?
バトルよ!
オルターガイスト・プライムバンシーで森のメルフィーズを攻撃!ヴェノム・ダクト!」
切り株に集まっていた動物達が表情を変えることなく吹き飛ばされていった。
「ではバトルフェイズの終了時に手札のメルフィー・ラッシィの効果を発動する!
自分フィールドの獣族モンスターが手札に戻ったターンに発動できる。
ラッシィを手札から特殊召喚し、このカードと手札の「メルフィー」モンスターのみを素材としてシンクロ召喚を行う!」
「シンクロ召喚ですって!?」
「俺様は手札のレベル2メルフィー・ポニィにフィールドのレベル2ラッシィをチューニング!
シンクロ召喚!レベル4!うきうきメルフィーズ」
うきうきメルフィーズ ATK1500
「うきうきメルフィーズの効果発動!
このカードが特殊召喚した場合、フィールドの表側表示モンスター1体を手札に戻す。
本来ならばプライムバンシーを戻したいのだがな、オルターガイスト・フィフィネラグを手札に戻してもらおう!」
せっかくのデコイがあっという間に処理されてしまった。
だけど主力を守ることが出来たなら良いわ。
「私はカードを3枚伏せて、ターンエンドよ!」
オルターガイスト・プライムバンシー ATK2100
伏せ3枚
「俺様のターン、ドロー!」
「私は罠カード『オルターガイスト・マテリアリゼーション』、永続罠『オルターガイスト・プロトコル』、『オルターガイスト・エミュレルフ』を発動するわ!」
ゼロのドローと同時にゴーストガールの伏せカードが一気に発動した。
「悪いけど、私だって罠使いだから相手ターンに動くのは十八番なのよ。
『オルターガイスト・エミュレルフ』は発動後は効果モンスターとなって特殊召喚する。
エミュレルフがモンスターゾーンに存在する限り、このカード以外の自分フィールドの「オルターガイスト」罠カードは効果の対象にならず、効果では破壊されない。
『オルターガイスト・プロトコル』がフィールドに存在する限り、自分フィールドの「オルターガイスト」カードの効果の発動及びその発動した効果は無効化されない。
そして『オルターガイスト・マテリアリゼーション』の効果発動!
墓地のオルターガイスト・メリュシークを攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。
そして罠カードが発動したために手札のオルターガイスト・マルチフェイカーを特殊召喚!
そしてマルチフェイカーが特殊召喚したのでデッキからマルチフェイカー以外の「オルターガイスト」モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。
オルターガイスト・シルキタスを特殊召喚!」
オルターガイスト・プライムバンシー ATK2100
オルターガイスト・エミュレルフ DEF1800
オルターガイスト・メリュシーク DEF300
オルターガイスト・マルチフェイカー DEF800
オルターガイスト・シルキタス DEF1500
4体のオルターガイストがプライムバンシーの後ろに姿を現した。
「さて、わくどきメルフィーズちゃんの効果はレベルを2つ下げて発動する効果。
すでにレベル2になっているその子の効果は使えないのでしょう?
そしてメルフィー・ラビィーズを今のドローで引いていないのであれば?」
「ククク、その通りだゴーストガール!
うきうきメルフィーズの効果発動!
相手がモンスターを召喚した場合、このカードをEXデッキに戻し、その後EXデッキから「メルフィー」エクシーズモンスター1体を特殊召喚できる!」
「残念だけど通さないわよ!
『オルターガイスト・プロトコル』の効果発動!
相手がモンスターの効果を発動した時、このカード以外の自分フィールドの表側表示の「オルターガイスト」カード1枚を墓地へ送って、その発動を無効にして破壊するわ!
装備カード扱いの『オルターガイスト・マテリアリゼーション』を墓地に送って、うきうきメルフィーズの効果を無効にして破壊する!」
「だが『メルフィーのかくれんぼ』の効果により、うきうきメルフィーズは破壊されない」
「それでも効果は止まるわ!」
川遊びをしていた動物達が突然の水しぶきに驚き、川岸の茂みに飛び込んで隠れてしまった。
「そして『オルターガイスト・マテリアリゼーション』がフィールドを離れたことにより、メリュシークが破壊され効果発動!
デッキからメリュシーク以外の「オルターガイスト」モンスター、オルターガイスト・クンティエリを手札に加える」
攻撃と効果を無効にする手札誘発のモンスターを手札に引き込む。
これでなんとかこのターンをしのぎましょう。
「む、そのカードは。
なるほど、俺様の攻撃を受け止めるつもりだな。
だが甘い!
俺様はフィールドの『メルフィーのかくれんぼ』のさらなる効果を発動!
墓地の獣族モンスター3体をデッキに戻し、その後自分は1枚ドローする。
俺様はラビィ、ポニィ、森のメルフィーズの3体をデッキに戻し、ドロー!」
ゼロが勢いよく引いたカードをチラリと見ると、フッと笑みを浮かべた。
「俺様は速攻魔法『メルフィーのおいかけっこ』を発動! 自分の墓地の「メルフィー」モンスター1体を特殊召喚する。
メルフィー・ラビィーズを蘇生する!」
ピンクのウサギ達が暗い穴からフィールドに楽しげな様子で駆け込んできた。
「ラビィーズの効果発動!
デッキから「メルフィー」モンスター1体を手札に加える。
俺様はメルフィー・ラビィを手札に加える。
そして通常モンスターを手札に加えたので手札から獣族モンスターを任意の数だけ特殊召喚できる。
再び現れよ!ラビィ、パピィ、フェニィ!
そして、レベル2のわくどきメルフィーズとメルフィー・ラビィでオーバーレイネットワークを構築!
エクシーズ召喚!ランク2!メルフィー・マミィ!」
メルフィー・マミィ ATK1000/DEF1000
攻撃力はどちらも0であるが、守備力がそれぞれ2100と2500のモンスターをオーバーレイユニットに持つメルフィー・マミィが召喚された。
ハノイの騎士にとどめをさしたエクシーズモンスターの影が過ぎる。
「ここよ!
オルターガイスト・シルキタスの効果発動!
自分フィールドの他の「オルターガイスト」カード1枚を手札に戻し、相手フィールドのカード1枚を手札に戻す!
オルターガイスト・マルチフェイカーを手札に戻して、メルフィー・マミィはEXデッキに戻ってもらうわ!」
攻撃力6000オーバーへと跳ね上がる可能性を秘めた最大の脅威を処理し、ゴーストガールは思わず小さく息を吐き出した。
「ふぅ、これで高攻撃力のメルフィーゴッド・マミィは封じたわ!
さあ、ここからどうするのかしら?」
「ククク、貴様がメルフィーゴッド・マミィを警戒していることなど端から承知の上だ!」
「……なんですって」
「俺様はメルフィー・ワラビィを召喚する!」
「何をするつもりか知らないけど、対策させてもらうわ。
プライムバンシーの効果発動!この効果は相手のメインフェイズでも発動出来るわ!
シルキタスをリリースし、オルターガイスト・フィフィネラグを特殊召喚!」
役目を終えたシルキタスのかわりにプライムバンシーとエミュレルフをバウンスから守るデコイを立てる。
それを見届けたゼロはさて、と両腕を広げ朗々と宣言する。
「ここからがデュエルのフィナーレだ!
レベル2のメルフィー・ラビィーズとメルフィー・パピィ、そしてレベル2のメルフィー・フェニィとメルフィー・ワラビィでそれぞれオーバーレイネットワークを構築!
2体をエクシーズ召喚!
ランク2!わくわくメルフィーズ!」
わくわくメルフィーズ ATK2000
わくわくメルフィーズ ATK2000
「わくわくメルフィーズの効果発動!
オーバーレイユニットを1つ取り除き、このターン、自分の「メルフィー」モンスターは直接攻撃できる!
それぞれのわくわくメルフィーズからオーバーレイユニットを取り除き、効果を適用する!」
そして天を指差し、
「そして、このデュエルの終焉は罠が決め手となることこそふさわしい!
罠カード発動!『メルフィータイム』!
自分フィールドの獣族エクシーズモンスターのオーバーレイユニットを任意の数取り除き、その数まで相手フィールドのカードを持ち主の手札に戻す。
さらに、自分フィールドの全ての獣族エクシーズモンスターの攻撃力はターン終了時まで、このカードを発動するために取り除いたオーバーレイユニットの数×500アップする。
わくわくメルフィーズに残されしオーバーレイユニット1つを取り除く!
貴様のフィールドのオルターガイスト・フィフィネラグを手札に戻してもらおう!」
再びデコイがバウンスされてしまった。
それでもフィールドにはプライムバンシーとエミュレルフがいる。
更に手札には攻撃を無効にできるクンティエリが……あ。
「気付いたようだな。
オーバーレイユニットが1つ取り除かれたことにより、俺様の従えしわくわくメルフィーズの攻撃力は500アップする。
故に、我がフィールドの魔獣共の軍勢の戦力は!」
わくわくメルフィーズ ATK2500
わくわくメルフィーズ ATK2500
うきうきメルフィーズ ATK1500
「さぁ閉幕だ!
わくわくメルフィーズでダイレクトアタック!」
「わ、私は手札のオルターガイスト・クンティエリの効果発動!
自分フィールドに「オルターガイスト」カードが存在する場合、クンティエリを手札から特殊召喚し、その攻撃を無効にする。
そして特殊召喚に成功した場合、このモンスターが表側表示で存在する間、相手フィールドのカード1枚の効果は無効化される。
特殊召喚はできる、けど」
オルターガイスト・クンティエリ DEF2400
「クク、さぁどちらのわくわくメルフィーズの効果を無効にするのだ?」
「……いま攻撃してきた方の効果を無効にするわ」
「良かろう!
ではもう一方のわくわくメルフィーズとうきうきメルフィーズで攻撃!
わくわくメルフィーズの効果によってダイレクトアタックとなる!
進軍せよ!わくわくメルフィー大行進!」
ゼロの号令に耳をピンと立てた動物達は一斉に走り出した。
プライムバンシー達の横をすり抜ける様に越えてきて……
「きゃぁ!!」
ゴーストガールLP4000→0
モフモフに群がられてゴーストガールは敗北した。
「あぁ、負けちゃった。
ぬいぐるみの雪崩に巻き込まれたらあんな感じなのね……」
デュエルの終了と共に消滅したモフモフの小動物達の山の下から、肩を落として座り込むゴーストガールが表れた。
敗北の余韻と、圧倒的な密度の『メルフィー』たちのモフモフに押しつぶされた脱力感に苛まれながら、彼女は乱れた衣装と髪を軽く整える。
近づいてきたゼロはすっと静かに手を差し出した。
ゴーストガールはその手を握り返し、引き上げられるようにして立ち上がった。
「ゴーストガール、良きデュエルであった」
「ありがと、案外紳士的なのね。
それで?あなた達が私にさせたい仕事って何なのかしら?」
電脳トレジャーハンターとして数々の裏仕事を請け負ってきた彼女の眼光が、ビジネスモードの鋭さを取り戻す。
ゼロはゴーストガールからゆっくりと背を向け、サイバー空間の水平線の彼方、データストームが渦巻く遠くの空を仰ぎ見るように重々しく口を開いた。
「現在、巷を騒がせているアナザー事件を知っているか?」
「アナザー事件ってLINK VRAINSからログアウトできなくなるっていう、ハノイの騎士が起こしてるあれでしょ?
Go鬼塚とブルーエンジェルがハノイの騎士とデュエルして電脳ウイルスの除去プログラムを手に入れたわよね?」
「そうだ、ハノイの騎士の三騎士と呼ばれる幹部の内2人が倒された。
だが、ハノイの騎士の動きに不審な点が見られた」
「不審な点?」
ゴーストガールは不審そうに首をかしげる。
彼女自身もサイバー空間の膨大なログやニュースを常に解析しているが、表面上はハノイの騎士が事件を起こし、それをPlaymakerや他のデュエリストたちが阻止しているという構図に変わりはないはずだった。
「あぁ、我等の最警戒監視対象ハノイの騎士の首魁リボルバーだ。
奴はこの騒動中、ある1地点から大きく動いていない」
「……本当にあなた達の技術力は凄まじいわね。
あなた達でハノイの騎士を壊滅できるんじゃないの?」
SOLテクノロジーの防衛システムすら容易く欺き、ハノイの幹部たちの位置情報ログすらリアルタイムで追跡してみせる規格外のハッキング能力。
想像を超えた能力にゴーストガールは溜息をつき、呆れと感心が半々の視線をゼロの背中に向けた。
「以前言ったように我等は表立って動くことは出来ない。
リボルバーについても何をしているのかまで調べれば、こちらの存在に気付かれる可能性があるのでな。
貴様には奴らの企てを調査してもらいたい」
「……なるほどね。
ハノイのトップがじっと潜伏して進めている裏の本命……。
もしそれが、アナザー事件すら単なる目眩ましにするような計画だったら、LINKVRAINSの危機ってわけね」
ゴーストガールは自身のデュエルディスクの画面を軽やかに操作し、ゼロから送られてきた暗号化データを迅速にストレージへ格納する。
そこにはリボルバーが潜伏しているとされるサイバー空間の座標データが含まれていた。
「いいわ、この依頼受けてあげる。
負けた借りを返すのもあるけど……サイバー空間の命運がかかってるかもしれない特大のネタを指をくわえて見てるなんて、電脳トレジャーハンターの名がすたるものね」
「ククク……それでは頼んだぞ、闇の深淵を舞う霊よ」
ゼロがこちらを一瞥すると、彼の姿はデータの粒子となってサイバー空間の闇へと溶けていった。
「やれやれ…… ハノイの騎士にSOLテクノロジー、Playmakerに果ては謎の組織まで巻き込んで…… LINK VRAINSもいよいよ本格的にきな臭くなってきたわね」
一人取り残されたゴーストガールは妖しい笑みを浮かべると、1度体勢を整えるために自身の拠点へと帰還した。