山百合荘殺人事件   作:山菫

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山百合荘殺人事件3

 

 

バラバラという雨音(あまおと)でふと、目が覚める。

 

 

「おっと寝ちまってたか、疲れてたんかなぁ」

 

 時計を見ると15:10を指していた。どうやらいよいよ台風が上陸(じょうりく)したようだ。外の木々は激しく風に(あお)られている。雨脚(あまあし)も強まり、激しい風によって窓に(たた)きつけられていた。

 

 ロビーに自販機があったことを思い出し、せっかくの休暇を満喫するためにビールを追加で買いに行くことにした。

 

 

 ロビーに近づくと、何やら怒鳴(どな)り声が聞こえてきた。どうやら誰かが大声で電話をしているようだった。

 

「馬鹿野郎! てめえ、回収出来なかったらどうなるかわかってんだろうな!! わかってんのか!」

 

 真っ赤な顔をして怒鳴る男の姿が見える。でっぷりと太った体を小刻みに揺らしながら、電話を手に怒鳴りつけている。

 

 どうも()れ聞こえる話から、金貸しのような仕事をしているようだ。

 

 自販機でビールを3本購入し、ちらりと受付を見ると、女将が困ったような表情で苦笑いをしていた。

 

 

 部屋に戻り、テレビを見ながらビールをちびちびと飲む。充実した休日だ、もう一度風呂に行こうかなどと考えていると、女将が夕飯について聞きに来た。

 

「お夕食ですが、17:30にお持ちしようと思うのですが、よろしかったでしょうか?」

 

「あぁ、それでいいですよ。お願いします」

 

「かしこまりました、では、今しばらくお待ちください」

 

 時計を見ると16:20だった。風呂に入っても間に合うと判断(はんだん)し、もう一度大浴場へ向かうのであった。

 

 

「あぁー、やっぱここの風呂はいいなぁ、もう一日泊まってもいいかもしんねえ」

 

 飯もうまい、風呂も良い。相乗効果(そうじょうこうか)でビールも倍美味い気がする。日々の疲れが湯に溶け、インスタントで構成(こうせい)された肉体に美食が溶けていく。もう身も心も溶け(はじ)めていた。

 

 

 二度目の風呂を満喫し部屋に戻り、いよいよ本命の夕食の時間だ。

 

  17:40、いざ夕食。見た目に美しく、そして味も大満足の夕食であった。

 

 食事を終え、ビールを飲みながらテレビを眺める。外では相変わらず風が唸っているが、健二にとってはもはや他人事だった。明日はどうしようか。台風が抜けてくれれば、帰る前に景色ぐらいは楽しめるかも知れない。そんなことを考えながら、畳の上でだらしなく横になっていた。

 

 

 しばらくそうしてゴロゴロしていると、ふと尿意(にょうい)を覚えた。

 

 部屋を出て、ロビーの先にあるトイレへ向かう。

 

 

 ゴォゴォと風の音が聞こえる……。トイレから部屋に戻ろうか。さて、明日はどうしようか。そんなことを考えながら歩いていると……

 

 

「キャー!!」

 

 

 二階から、平穏(へいおん)を打ち破る悲鳴が()(ひび)いた。

 

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