「邪魔するぜ。ちょっとお前さんに聞きたいことが出来てな」
そう声をかけると、猫背で丸まった背中がビクリと震えた。
振り向いた
「な、何でしょう。知っていることは全てお話ししましたが……」
「なぁに、大したことじゃねえよ」
「お前さんが見たっていう、人影のことをもう一度聞きたくてね」
「……人影、ですか」
一瞬、目を軽く見開いた。
ほんのわずかな反応だったが、
「確か、外に人影を見たって話だったな」
「は、はい。確かにそう言いました」
「そうか」
「……お前さん、見てねえな?」
「えっ……」
肩が跳ねる。
図星か。
「外を調べてきた。窓から入るのは、まず無理だ。ハシゴにも使った
一つ一つ、淡々と告げる。
「だから俺は、
「……」
「そうなると、どうにもおかしいんだよ」
「お前さんが見たっていう人影が、本当にいたんなら話は別だ。だが、外から来た奴がいねえとなると、その人影は何だった?」
「それは……」
「なぁ、
「お前さん、何か隠してるだろ」
「ち、違います! 僕は……」
「嘘なんだろ?」
「アレ」
「人影が嘘ってのはな、正直どうでもいいんだ。問題はよ、なぜそんな嘘をついたか――なんだよ」
「あっ、うっ……」と声にならない声を上げながら、
「なあ、正直に話してくれよ。じゃなきゃ、俺は大事なことを間違えちまう。おめえさんが誰かのために優しさで言っちまった、俺は、そう思ってるんだ」
「大丈夫だ、大丈夫……なあ、本当のこと、教えてくれや」
「う、うぅ……わ、わかりました……ごめんなさい」
「ゆっくり、ゆっくりでいいから、な」
「はい、実は……僕、見ちゃったんです。
「そりゃあ……お前さんが言ってた
「はい……
「なるほど、それは16:40頃ってことだね?」
「はい、そうです……」
なるほどな。
こいつは、それを見ちまった。
そして
……うん?
だが、なんでそこまでして庇う?
「なあ、一つ聞きてえんだが。なんでそんな嘘をついたんだい?」
「え、いや、その……」
「
「……あぁ」
思わず間の抜けた声が出た。
そういうことか。
「まあ、分からんでもねえよ」
「だがな、嘘ってのは時として
「……はい」
「必要な嘘ってのも、世の中にはあるだろうさ。だが、今回のは俺にとっちゃ
「ご、ごめんなさい……」
「もういい。理由は分かった。今度からは、見たことは見たこととして話してくれや」
「はい……」
さて。
これで一つ、引っかかっていた証言は片付いた。
問題は――
16時40分。
あの女は、
本人の口から、何があったのか聞かせてもらうとするか。