「邪魔するぜ」
声をかけると、二人がパッとこちらを振り向く。
「実はちょっと聞きたいことがあってね」
俺は
「現場に残された包丁なんだが、一般家庭で使うような、
「そこで、
「あぁ、そういう事なら」
「丁度、洗って手入れが終わった、今日使ったものがここにあります」
そう言って示された場所には、包丁が四本並んでいた。
「そして、使い終わって手入れが終わったら、そこの……入口にある紫外線で殺菌できる装置の中に入れておくんです」
なるほど。
誰かが一本抜き取ったとしても、外から見ただけじゃ気づきにくい。
「ちょっと、中を確認してもらってもいいですかね?」
「わかりました」
「えっと……あっ」
「一本、無いです」
「何が?」
「刺身包丁が一本」
やっぱりか。
現場に残されていたものと一致する。
「あぁ、やっぱりか。どうもありがとう」
「……あの」
「やっぱり、ってことは……
「あぁー、いや」
俺は少し言葉を濁した。
「まだ確定はしてないですがね。恐らく」
「……そうですか」
職人にとっちゃ、包丁はただの道具じゃねえのだろう。自分が手入れして、大切に使ってきたものが、人を殺すために使われた。思うところがあって当然だ。
これ以上、包丁の話を続けるのも酷だろう。
「あー、それとですな」
俺は話題を変える。
「
「はい? 何でしょう」
「実は、宿泊している
頭の中に、あの大学生の顔が浮かぶ。
「以前、何度か泊まってるようなんですが」
「はい。気に入っていただけて、何度かお越しになってますよ」
「その時に、
「うーん……どうでしょう」
「お風呂でご一緒したりは、あるかもしれませんけど……」
「ふむ」
「……あ、そういえば」
何か思い出したらしい。
「以前、お部屋の前でお二人が話されていたのを見ました」
「そうですか」
やはり、何かしらの接点はあったらしい。
だが、それだけじゃまだ何とも言えねえ。
旅館で客同士が話している。それだけなら、珍しいことでもない。
「ありがとうございます。また何か有ったらお願いしますわ」
「はい、お役に立てたなら良かったです」
俺は
以前から面識があった。
それだけは分かった。
さて――次は本人に聞いてみるか。