女騎士オンライン~約180日後にサ終するオンラインゲーム~ 作:作者アアアア
ダンボールの中身を見た瞬間、俺はちょっとだけ落ち込んだ。
「松坂牛……だったらよかったのに」
箱の中に鎮座していたのは、最新フルダイブVRマシン『REAL Zone』。ヘッドギア型の高性能機で、価格は軽く数十万はする代物だ。
『みんなが欲しがるもの百選!』という懸賞に応募したら、松坂牛からもズワイガニからも北の大地で作ったミルクアイスからもあぶられ、その結果として手に入った代物だ。
まず、アイスは抽選で十名、蟹は五名、牛は三名なのに対して、REALZoneは一名だ。ある意味でラッキーだが……。
一人暮らしをする一介の大学生には、嗜好品よりも食品の方がよっぽど嬉しいに決まっている。
大学はそう遠くない内に夏休みに入るし、単位もしっかり取れているから時間は問題ない。
ただ、バイトばかりはどうしようもないな。
そもそも俺はゲームをほとんどやらない。たまにスマホの安っぽいゲームを触る程度で、VRなんて触ったこともない。
それでも折角当てたマシンをホコリをかぶらせておくのも惜しい。ネットで適当に「VRMMO おすすめゲーム」と検索してみると、妙なタイトルが目に飛び込んできた。
『女騎士オンライン』
サービス終了まであと半年。基本無料になっていて、公式サイトから直接ダウンロードできるという。サ終の経緯を調べてみると、当初は硬派なファンタジーMMORPGだったらしい。女性しかいない世界だが、無骨かつ硬派な世界観を売りにしていた。
ところがプロデューサーが変わってからエロ要素を前面に押し出す路線変更をし、プレイヤーは減る一方。更にプロデューサーの舌禍が追い打ちをかけ、プロデューサーを解雇して前任を戻すももう遅い。
どうにもならずにサ終が決まった。運営もヤケクソになったのか、終了発表と同時に基本無料化したらしい。
「半年後に終わるゲームなら、思い入れも生まれないだろ」
そんな思いを持ってダウンロードした。終わったら売りに出してそれで蟹や寿司でも食べればいいからな。
REALZoneをPCに繋げて、パソコンを操作して起動準備をする。
それが出来たらギアを装着。VRは一言で言えば意識ごと電脳世界に行けるらしいので、ベッド等で横になって使うことが推奨されている。……らしい。
横になったらこめかみ部分に付いているボタンを押してREALZoneを起動。カウントダウンが始まる。
5……4……。
「何だか緊張するな……」
3……2……。
現実から離れる時が迫っている。
1……。
そして俺、
目の前には女の人が立っていた。周囲は黒一色で何もない。辺りを見ていると目の前に液晶が現れた。
『ようこそ! 女騎士オンラインの世界へ!』
上部に大きく書かれいたそれの下にはここはキャラクリエイト場面、目の前にいるのはゲーム内での自分の姿。これを自分で決めてもらうと長々と書かれていた。
まず、性別は女で固定されている。女騎士オンラインだからな。
続いて種族、名前、髪型、声、体形を細かく弄れる。
種族は人間にエルフ、ドワーフと王道ファンタジーの種族があるが、それ以上によく分からない種族がある。猫族、犬族にサキュバス、ゾンビ、牛娘、ロボ娘と水増し感が否めないものがある。というか、ロボットって何なんだ? 世界観にあってなくないか?
そんな俺が選んだのは狼女だ。容姿は人間に狼の耳と尻尾が生えたような姿。……猫族も犬族も似た感じだし、やっぱり水増しか?
次に顔、クールな感じにして目の色を片方を金、もう片方を銀にする。オッドアイってカッコいいからな。
髪は黒のウルフカット。狼だけにこれは譲れない。
声は十種類以上あるボイスを選択できる。俺が選んだのは凛としつつ、大人しげで澄んだ声。
そして体形。
「……」
胸を最大まで上げた。尻もそれなりに。
最後にプレイヤーネームを『ルナ』にした。月野だからな。
「よし、これでいいか」
眼前にこれでいいのかという確認が出るがはいを選ぶ。
『ではここより先は、幻想の世界! 貴女の旅路に幸が有らん事を!』
その文章と共に俺は完全な暗闇に取り残された。
……何もない。真っ暗闇の中、俺の五感が一つが拾ったのは声だった。
聴覚は周囲から騒めく音がするのを俺に伝える。
それを認知した途端、身体に感覚が宿り始めた。
全身に世界を感じる。触覚は少なくともそう答えるだろう。
嗅覚が拾ったのは独特な匂い、パンの匂いを感じれば、煙の臭いも感じられる。
俺は瞼を閉じているのに気付いた。ゆっくりと目を開ける。
視覚に飛び込んできたのは、石畳の通りにレンガで作られた住居。音だけでは分からなかった、道を楽し気に歩く人にホログラムウィンドウに触れる人。
まさに現実離れした異世界がそこにはあった。
ちなみに味覚は分からない。何も食べていないからな。
確かここは蒼穹都市『アルセリア』のはず。ゲームを始めると必ずここに放り出されると公式サイトに書いてあったから間違いない。
「……何だ?」
俺の周りでクスクスと笑い声がする。
「あはは、また初ログインか」
「洗礼だな」
「またデカパイかぁ、壊れるなぁ」
周囲の人がひそひそとそんな会話をしている。
洗礼? 何かの儀式が行われようとしているのか?
それに自分の身体に疑問が出始めた。
妙に感じやすいのだ。全身を通る微風、日の光による微かな熱。
それと引き換えに身体に布の感覚が無い。足も石畳の硬さと冷感が直に来ている。
俺は視線を下に落とす。
「うお!?」
目に入ったのは肌色の山脈二つ! 視界を遮る程に大きなそれがそびえていた。足も確認したいがどうしても見えない。
だが確信を持てた。
完全に全裸。その上、素足。
「な!?」
俺は即座に両手で胸を隠す。尻尾が独りでに動いて股間を隠した。
……結構、便利だな。
顔が赤くなっていくのが自分でも分かった。
それにしても洗礼の言葉が気になる。もしかして、ゲームを始めた人は必ずこうなる運命なのか?
「大丈夫? そこのご新規さん?」
簡易な鎧を付けた女性が声を掛けてきた。