女騎士オンライン~約180日後にサ終するオンラインゲーム~   作:作者アアアア

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ジョブを得よう

「あ、あぁ……」

 

 隠しながら頷くと女性は話し続ける。

 

「初ログインは装備が無いから必ず、全裸でここに放り出されるんだよね」

 

「それじゃ、洗礼ってのは……」

 

「全プレイヤーが体験する避けられないイベントって事」

 

「そ、そうなのか……」

 

 女性の見た目は俺みたいに動物の耳も無い、耳が尖ってるわけでも、角が生えている訳でも無い。……人間か? 

 

 気にはなるが今はこの状況を抜けたい。そう思って俺はおねだりをしてみる。

 

「それで、服とかは無いのか?」

 

「こっちも渡したいけれどさ……」

 

 女性は申し訳なさそうに話す。

 

「今のご新規さん、無職でしょ?」

 

 無職……職……ジョブの事だろうか? 

 

「無職は何者でも無い存在。対応している装備が無いんだよ。だから、布切れ一枚まとえない」

 

「えぇ!?」

 

 確かジョブは、戦うのに必要な能力でこれを決める必要がある。……だっけか。

 

 まさか働かざる者食うべからずならぬ、着るべからずとは……。

 

「ギルドに行けば、ジョブを変えられる。よかったら案内しようか?」

 

 俺は迷わず首を縦に振る。

 

「分かった。私はクレア。人間の剣士をしている」

 

 クレアは俺に手を差し出す。けれど、俺の両手は隠すのに精一杯。

 

「あ……後でにする?」

 

 出してから気づいたのか手を引っ込めた。……いや、クレアの手を無駄にするわけにはいかない。

 

 俺は右手を話すと同時に左手で両胸を隠す様に精一杯、腕を伸ばす。

 

「お、大胆だね」

 

 クレアは小さく笑って握手をする。

 

 がっしり手と手を握り合い、離す。

 

「ついてきて」

 

 俺はクレアの後を追うのだった。

 

 

 

 

 

 石畳の道路を歩いているが、意外な事に全裸の俺を気にかける人は殆どいない。

 

 洗礼でみんな、全裸を見慣れているからか? 

 

「せっかくだし、このゲームの事を聞いてもいいよ。答えられる範囲なら答えるからさ」

 

「そうなのか。じゃあ……」

 

 俺はここに来て最初に思った事を話す。

 

「本当に女の人しかいないんだな」

 

「そりゃ女騎士オンラインだからね。けれど、実際の男女比率は9.9:0.1だよ」

 

「圧倒的に男ばっかりだな」

 

「私だってリアルじゃ男だし」

 

「そうなの!?」

 

 クレアがしれっと答えて思わず叫んでしまう。それにクレアは首を傾げる。

 

「ボイスフィルター機能を使っているからね。そっちも使っているんじゃないの?」

 

 確かにキャラクリエイトの時に自分の声は設定したし、公式サイトにもこの機能があれば女騎士にのめり込め、身バレ対策にもなると書かれていたが……。

 

「あれの意味がイマイチ分からなくてな……」

 

「成程ね」

 

 ゲーム知識の少ないから聞いてばかりになってしまうな……。

 

「簡単に言えば、相手には台詞が変わって聞こえる機能の事だよ」

 

 クレアは例え話をしてみる。

 

「例えば、ボイスをお嬢様に設定した人が、『俺は○○ってもんだ。よろしく』と言っても、相手には『わたくしは○○ですわ。以後、お見知りおきを』という感じになるんだ」

 

「何だか実感が沸かないな……」

 

「君は普通に喋っているだろうけれど、私には凄く儚げな口調になっているよ」

 

「そうなのか?」

 

 自分の口に手を当ててみる。他人から見た俺はどんなのだろうか……。

 

「ただ、この機能にも問題があって……」

 

「問題?」

 

「ボイス被りがある。まぁ、それぐらいかな」

 

 次に俺は個人的な事を聞いてみる。

 

「クレアはどうしてゲームを始めたんだ?」

 

「私? キャラデザの人が好きな人でね」

 

「誰だっけ?」

 

「スイカ55先生。その手の界隈では有名なハズだけど……」

 

「すまない。そういうのには疎くてな」

 

「そうなんだ。スイカ55先生は、自他共に認める女騎士好きなイラストレーターで、チチとケツとタッパがデカい筋肉質な女性を描くのを得意としているんだ」

 

「まさに、なるべくしてなった人なんだな」

 

「バストサイズなんて、二ケタは貧乳扱いだよ。100cm超えてやっと普通。みんな、バストサイズなんて大を選ぶからね」

 

「どうりで爆乳が多いわけだ」

 

 俺が感心しているとクレアが聞き返す。

 

「ルナがこれを始めたのは? 大方、基本無料につられて?」

 

「まぁ、そんなところだな。それにREALZoneにホコリを被せたくなかったからというのもある」

 

「REALZone!?」

 

 今度はクレアが驚きの声を上げる。

 

「私が言うのも何だけど……このゲームに、そんな最新機を使う程の価値は無いと思うよ?」

 

「このゲームの玄人の人がそれを言っていいのか?」

 

「平気平気、そこまでこんな運営が無責任なゲームなんて高尚な訳無いんだから」

 

 案外、言いたい放題だ……。

 

「路線変更後の種族だって、似たり寄ったりの水増しだし、運営の自己満な実装で硬派から離れて行くし、プロデューサーはマジモンの馬鹿だし」

 

 俺は確か狼女だ。これの特徴って何だ? 少し聞いてみるか。

 

「狼女も?」

 

「ええ、動物系の種族は十種類ある。けれど、狼女はまだ使える方だよ」

 

 それを聞いて俺は内心、安堵した。戦えるだけの能力は恐らく持てているらしい。

 

「あのプロデューサー、過去にこのゲームを遊ぶやつはTS願望持ちの変態しかいないってイベントで失言してね。それ以外にも……」

 

 あれ? この空気は何だか……。

 

「最初の頃は、シリアスなダークファンタジー味があってさ……」

 

 もうこの感じだと俺の言葉は聞かなさそうだな。

 

「広場だって死体やカラスがその辺によくいたんだよ」

 

 うわぁ……愚痴が始まってしまった。けれど、教えてもらったり、道案内までしてもらっているんだ。しっかり聞かないとな。

 

 

 

 

 

「……って話」

 

 ようやく撃ち終わったクレアの愚痴機銃。

 

「さて、ここがギルドだよ」

 

 クレアが指さすのは石造りの堅牢な建物。両開きの扉の上には『GUILD』と描かれている。

 

「行こうか」

 

 見あげていた俺を引き戻す様にクレアは扉を大きく開いて案内をする。

 

 ギルド内は多くの人でごった返しており、その中には俺と同じように全裸の人も何人かいた。

 

「あれもご新規さん?」

 

 俺は思わず全裸の人を見て聞いてしまう。

 

「そうだけどさ、助ける気も無くいたずらにジロジロ見るのはやらしいよ」

 

「……スンマセン」

 

 俺は誰とも目を合わせず、クレアの背中だけを見て歩いて、受付の前に立つ。

 

「変更したいジョブを選んで下さい」

 

 受付嬢は淡々とそう言うと、俺の眼前にメニュー欄が現れる。

 

 剣士、魔法使い……色々あるが……俺はどうしたらいいのか?」

 

「クレア。オススメのジョブってある?」

 

「そりゃあ、自分の強みを活かせる物がいいと思うけれど……」

 

「ゲームの事とかよく分からなくてな……狼女の特性すら知らないんだ」

 

 俺の言葉にクレアは呆れながらも教えてくれた。

 

「……本当に何も調べずに入ったんだね。狼女は素早さと攻撃力が高め。月の光を浴びると一時的に強化される。防御は微妙だから、真正面から殴り合うのはダメ」

 

 そう言いながら、ジョブ一覧を指でなぞる。

 

「だからシーフがいいよ。防御力は無いけど、足が速い。罠の察知もできる。後々アサシンやシノビにクラスアップすれば、攻撃力も上がるし遠距離もこなせるようになる。だから狼女の特性とも相性いいんだ」

 

「成程、だったらこれにしようかな」

 

 俺はシーフを選んだ。

 

 すると俺の身体が光り出して、短パンにブーツ、首には深緑色のマフラーが巻かれた。

 

 しかし、上半身のシャツはへそ出し、半袖、胸がこぼれないようにボタン一つだけで留めているという別の意味で不安になる服装だった。

 

「お、おぉ……?」

 

 俺は振り返ってクレアを見る。

 

「不服だったら、新しい装備を作ったり、拾ったりするしかないね」

 

「……それもそうか」




おまけ『クレア視点でのルナ』

ルナ「え、えぇ……」
クレア「初ログインは装備が無いから必ず、全裸でここに放り出されるんだ」
ルナ「それじゃ、洗礼ってのは……」
クレア「全プレイヤーが体験する避けられないイベントって事だ」
ルナ「そ、そうなのね……」
ルナ「それで、服とかは無いのかしら?」
クレア「こっちも渡したいけれどさ……」
クレア「今のご新規さん、無職だろう?」
クレア「無職は何者でも無い存在。対応している装備が無いんだ。だから、布切れ一枚まとえない」
ルナ「えぇ!?」
クレア「ギルドに行けば、ジョブを変えられる。よかったら案内しようか?」
クレア「分かった。俺はクレア。人間の剣士をしている」
クレア「あ……後でにするか?」
クレア「お、大胆だな」
クレア「ついてきて」
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