獅童正義は明智吾郎として生きることになった。   作:枝野トナナ

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第12話――3/30『Intention in the Shadows』

 暖かな風に春曇りの空。

 実に良い。こういう日は外に出るに限る。

 昨日14時ぐらいまで寝過ごしたことは忘れよう。

 2つの部屋を掃除して片付けて日用品を買ったら、一日が終わったことはもっと忘れるべきだ。

 時間は有限。自堕落な高校生の春休み生活に飲まれて無為に日々を過ごすなどあってはならない。

 

 ……しかし、どうしようか。

 

 とりあえず健康に支障が出ない程度の運動も兼ねて歩いているものの、明確な指針を作れているわけではない。

 異界の入口とやらが見つかれば検証したいこともあるが――とはいえ、日本の首都たる東京にそんなものがあったらとっくに例のオカルト警察が対処しているだろう。

 認知訶学研究を止める方策を追加するにしても……ああ、そうだ。

 特捜部長が新島冴の仕事を止めないように手配しておかないとな。

 弱みを握っていた獅童正義が死んだからといって、調子に乗って余計なことをされても困る。

 そういえば笹木の方はどうなっているだろうか。

 一度顔を合わせるか。

 

 

 

「申し訳ありません、笹木さん。

 お忙しい中お呼び出ししてしまって」

「いえいえ、私としても吾郎さんに報告すべきことがありましたので」

 

 渋谷駅近くの喫茶店ルノワールは笹木が好きな店だ。

 12時までモーニングサービスをやっているというのが評価点らしい。

 気持ちはわからなくもない。

 政治家本人よりも早く起きて準備を始める以上、朝食を後に回すことも多いだろうからな。

 

「とりあえず例の件のタネは撒き終わりました。

 それと、こちらが私の新しい名刺となります」

「ありがとうございます」

 

 笹木に頼んでいたのは、認知訶学研究の情報を三大財閥側に流すこと。

 そして弁護士事務所を立ち上げて私の補佐をすること。

 私が望んだ通りに手早く仕事を終えたということだ。

 それ自体は評価してやりたいのだが――

 

「そういえば昨日、南条商事の社長に会いましたよ。

 用件は全く別の――昔(・)の(・)僕(・)に関する極めて個人的な話でしたが」

「――えっ?」

 

 私の言葉に、笹木は目を丸くした。

 どうやらこいつも何も知らない側の人間か。当たり前と言えば当たり前だが。

 

「まさか一方的に認識されていたとは思いませんでした。

 ――手(・)術(・)以(・)前(・)の(・)僕(・)は(・)、(・)い(・)っ(・)た(・)い(・)ど(・)う(・)い(・)う(・)人(・)間(・)関(・)係(・)を(・)築(・)い(・)て(・)い(・)た(・)ん(・)で(・)し(・)ょ(・)う(・)ね(・)?」

「そ、それは……すみません、私どもでは知りかねます。

 しかし、その……あの、南条の若君が、吾郎さんを?」

「ええ。僕も驚きました。世の中は広いくせに狭いものですね」

 

 嘘をついている様子はない。

 当たり前だが。

 私に対して嘘をつこうとする人間なぞ、傍には置かん。

 

「誰なら僕の交友関係を知っていると思います?」

「うーん……難しいですね。

 吾郎さんと会う機会ならば我々もありましたが、あくまで仕事に関わる部分の話ばかりで……

 やはり学校の方に顔をお出しして御学友に話を聞くほうが確かではないですか?」

「そこまで仲の良い友人がいたら、先生方だって教室に顔を出すことを勧めているはずです。

 記憶がないと言えども戻るきっかけになれば――と、普通は考えますからね。

 そういう素振りが一切ない時点で、少なくともクラスメートには友達がいない可能性が高い」

 

 そもそも明智吾郎の性格でまともに同年代の友人が作れるわけがないだろう。

 奴の母親そっくりだ。

 好かれたいし認められたいという意思が強いくせに、どうしたら相手に好かれるかが頭から抜けている。

 だから相手を繋ぎ止めたくてこっちが望んでもいない子を宿す。

 だから相手に認められたくて自分しか使えない能力を誇示する。

 そ(・)れ(・)こ(・)そ(・)が(・)嫌(・)い(・)に(・)な(・)る(・)理(・)由(・)だ(・)と(・)理(・)解(・)で(・)き(・)な(・)い(・)あたり、本当に母親の遺伝子が仕事をしすぎている。

 私の血を継いでいるというのが商売女の寝言ではなく真実だったというのなら――

 ……いや、止めておこう。

 愛していないものは愛せないし、何もかも終わった後だ。

 

「きっと、昔の僕を認められるのは度量の広い大人だけですよ。

 だけど昔の僕は面倒くさいだけのガキだった。

 甘いだけのお人好しは舐めてかかる。人間として尊敬できなければ下に見る。

 そういう点で、笹木さんみたいな縁の下の力持ちタイプの人間の方が、まだ付き合いそうに思えたんですが」

「はは……いや、私のような凡人は視界の外ですよ。

 あの頃の吾郎さんが見ていたのは、獅童先生だけでした」

「……そうですか」

 

 鳥のヒナかよ。

 生まれた時に近くにいないのになんで刷り込みされてるんだよ。

 ああ本当に、本当に、本当にッ! あの女そッッくりだ!!

 

 ――などと吐き捨てたくなった途端、頭がずきんと傷んだ。

 興奮状態になりつつある時の兆候だ。

 一応、緊急用に処方された薬は持ってきているが……薬品名でネット検索しても一切ヒットしない代物。

 薬剤情報提供書(せつめいしょ)はもらっているが、抗不安薬のテンプレート副作用が揃っている。

 つまりは眠気、ふらつき、集中力の低下、記憶力の低下、依存症の五点セットだ。

 使いたくない要素が揃いすぎていて、本当にヤバい時以外飲む気になれない。

 そもそもこの程度なら、深呼吸で落ち着けば収まることは知っている。

 

「チッ――ああ失礼。しかしどうしたもんですかね。

 まあ南条社長の件は芸能界繋がり――社長のかつての同級生が同じテレビ局で司会をやっていたというのが主原因でしたが。

 こういう変な繋がりがボロボロ出てくると、さすがの僕と言えども整理しきれなくなりますよ」

「それは……そうでしょうね。

 本当に初耳でした。申し訳ありません」

「いえ、良いんですよ。

 知らないなら仕方ありません。そもそも悪いのは昔の僕なので」

 

 本当に明智吾郎(クソガキ)が悪い、としか言いようがないからな。

 まあいい、この話は終わりにしてビジネスの話をするか。

 

「それより、冴さんのことですけど。

 吉阪さんや星野さんから、笹木さんに何か連絡行ってます?」

「ええ、まあ。

 筆跡鑑定をしたいとかで資料の任意提出を求められたので、妻の実家から年賀状を送り返してもらいました。

 あれだけは毎年直筆で書いていますし、当たり障りのない内容にしているので」

「……良く、取っておいてくれてますね?」

「ははは。義両親は妻や子供たちを愛してくれていますからねぇ。

 写真が付いてるのに捨てるなんてとんでもないからとファイリングしてくれているんです」

 

 ……そういえばこいつは愛妻家だった。

 酒が入ると惚気がエンドレスで出てくるから、プライベートで飲む時は星野ばかり誘ってたんだっけな。

 吉阪? あいつは下戸な上にウザいテンションで絡み酒してきたから二度と誘わん。

 まあ今の私では、あと2年経たんと酒なぞ飲めんわけだが。

 

「しかし私と吉阪は探られて痛い腹はないですが……星野は大丈夫でしょうか?

 奴がやっていることに関しては、私ではカバーできませんよ?」

「構いませんよ。あのゴミカス野郎は1人で仕込んで1人で安全地帯から爆発させるのが大好きなので。

 今回の件もあいつが独断でやってる部分が大きいから、むしろ笹木さんに迷惑をかけてすみませんとしか言えません」

「……ああ……はい」

 

 遠い目にもなるよな。

 私だってそうする。

 

「それより、冴さんの邪魔が入らないように手を回してもらっていいですか?

 必要な資料があれば、僕が預かっていますからなんとでもできますが」

「いえ、大丈夫ですよ。

 彼の首輪を握っているのは他の誰でもなく、元々獅童先生でしたから。

 私と星野の総意として吉阪を先生の後継に推すと決めた以上、我々の邪魔をするのは獅童先生の邪魔をするも同罪。

 ――そ(・)う(・)、(・)先(・)方(・)に(・)は(・)お(・)伝(・)え(・)し(・)て(・)お(・)り(・)ま(・)す(・)」

「さすがですね。一足早く動いてらっしゃるとは」

「下手に大江先生に接近されても困るということぐらい、私にでもわかりますので」

 

 かつて同じ政治家(オヤジ)を師と仰いでいただけある。

 笹木は長年私の秘書として仕えているが、根本の考え方に政治家の視点をしっかりと持ち合わせている。

 だからこそ私の手元に置くべき駒なのだ。

 

「急いては事を仕損じる。

 一旦は冴さんと財界の御三家に任せて、少し様子見をしようと思います。

 あまり干渉すると先方が反発して吉阪さんや僕の腹を探りに来る可能性が高いですからね。

 笹木さんは、それでいいですか?」

「もちろんです。獅童先生の後継者をお守りするのが今の私の仕事ですから」

「ありがとうございます。あなたのような人がいてくれると本当に心強い」

 

 先に仕事をされてしまったが、開業祝いも兼ねて少し多めの金を振り込んでおこう。

 今、こいつに裏切られたら困るからな。

 

 

 

「――というわけで笹木さんのところに代金と、あと花とか色々送っておいてください」

「それを俺に振ります?」

 

 お前しか余裕ねえんだよ星野(カス)。

 

「いやあ、僕が自由に使えるお金が振り込まれるのがまだまだ先なので。

 良いじゃないですか、根回し怠ったツケを払うと思えば」

「坊主の貯金はどうしたんですか」

「家電と家具と家賃で来月には消えますね。

 ど(・)う(・)せ(・)大(・)学(・)進(・)学(・)で(・)き(・)な(・)い(・)か(・)ら(・)い(・)い(・)だ(・)ろ(・)ってケチった代償ですよ、ハハッ」

「ボスの自業自得ですね。ちっとは反省したらどうです?

 坊主に少しは夢ぐらい見させてやっても良かったでしょうに」

「あなたの辞書に反省って言葉が載っているとは思いませんでしたよ。

 それに端金で満足して気づかない方が間抜けなんです。

 少し計算ができればわかることだし、僕ならちゃんと意図を見抜けます」

「そりゃあんたが自分でやってることなんだから当然でしょうよ」

 

 いつもの映画館内のカフェ(カルト9のオリアス)で、いつものように安くもないアイスティーを飲む。

 こんな場所で話す内容でもないが、周りは映画の内容で盛り上がっている奴らばかりだ。

 オッサン同士が話していようが、オッサンとガキが話していようが、意外と悪目立ちはしない。

 

「で、吉阪さんと冴さんは?」

「完全にやる気ですね。ガッチリ手を組んで共同戦線張ってます」

「スケープゴート役の方々は?」

「逃げたいみたいなんで逃がしましたよ。大江のところへ。

 あっちも例の研究に関わってる奴を逃がしたくないみたいですしねぇ。

 俺は親切なので、助(・)言(・)も(・)き(・)っ(・)ち(・)り(・)し(・)て(・)お(・)き(・)ま(・)し(・)た(・)」

 

 ……こいつのやることだからな。

 多分獅童正義(私)が使っていた資金ルートのうち汚いパイプをあえて大江に渡して、罪を追加で被せようって魂胆だろうな。

 

「何を教えたんです」

「贋作ばっか扱う画商と、手際の悪いバイトの元締めをちょっとね」

「ああ……」

 

 斑目からの献金と渋谷マフィアか。

 確かに吉阪には要らんな。

 認知訶学研究に回すカネとして使っていただけで、そもそも選挙費用とは無関係の枠だ。

 ただ――

 

「それだけ水(カネ)をやったら、生け簀の魚(例の研究)が元気になっちゃいませんか?」

「なるでしょうね」

「ハハッ、なるでしょうねじゃないですよ?

 僕よりあなたの方が危険な立場にいるんですからね?」

 

 政治家・獅童正義の暗部を握っている張本人なんだから自衛はしろよ?

 そういう意図を込めて睨みつけると、星野はアメリカ映画の俳優よりも大げさに肩をすくめた。

 

「ま、一応それとなく工作はしてますよ。

 テレビ局とトラブルシューターにね。

 さすがにボスもタレント業干されたくはないでしょうし、怖いお兄さんに絡まれてもキツイでしょう?」

「それは、まあ」

 

 一応、裏社会からの攻撃に関しては対処できるものもある。

 そもそも暴力団排除条例が広まったことで、奴らは直接的な暴行よりも社会的抹殺を仕掛ける方にシフトしている。

 だから明智吾郎(私)を狙うのであれば、フロント企業を通じてプロデュースを申し出て、それをネタに脅迫するような手を使ってくるだろう。

 そういうやり方で仕掛けてくるのなら、こちらの土俵に引きずり込める。

 ただ――

 

「今の僕では、シンプルな暴力で詰めてこられると死にますからね」

 

 さすがに日常生活における禁忌については病院側から十分に説明を受けている。

 血圧を上げてはいけません。傷口が塞がるまでプールや温泉は厳禁です。飛行機に乗るのは控えてください――等だ。

 肝心の術式説明が一切されていないから何がどうしてそれが禁忌なのかわからない、という致命的な問題はあるが。

 

 ――いや術式説明は大事だろ何で無いんだよ、と誰もが疑問に思うだろうし、実際に私も抗議したが仕方ない。

『明(・)智(・)吾(・)郎(・)さ(・)ん(・)に(・)は(・)事(・)前(・)に(・)術(・)式(・)説(・)明(・)を(・)し(・)て(・)同(・)意(・)書(・)に(・)サ(・)イ(・)ン(・)も(・)も(・)ら(・)っ(・)て(・)い(・)ま(・)す(・)よ(・)』と言われてしまったのだ。

 ハハッ、闇医者って怖いな。

 絶対に外に出せない手術の内容なぞ、知る人間は一人でも少ないほうが良いということなのだろうが……やり口が手慣れてやがる。

 まあ、血圧が注意事項ということは脳内出血のリスクがあるということなのだろう。

 あるいは自律神経絡みで体調を崩す可能性も高そうだ。実際、退院翌日に無茶してぶっ倒れたしな。

 

「一対一ならまだ怪しい護身グッズで無力化できると思いますが、チンピラは数にモノを言わせますからね。

 対処する間に僕の身体がぶっ壊れるか、1発ハジかれて(銃で撃たれて)終わりかな」

「なんです、その『怪しい護身グッズ』って?

 あんたがわけのわからないモノを頼りにするなんて珍しい」

「桐条謹製の充(・)電(・)不(・)要(・)で(・)繰(・)り(・)返(・)し(・)使(・)え(・)る(・)ス(・)タ(・)ン(・)ロ(・)ッ(・)ド(・)と(・)タ(・)ク(・)テ(・)ィ(・)カ(・)ル(・)ラ(・)イ(・)ト(・)ですって」

「……本当に全てが怪しい護身グッズを持ってこないでくださいよ。

 どこからツッコめばいいのかわからないじゃないですか」

 

 私だってわからんよ。

 なんだよ放電が前提の機械製品で充電が不要って。

 『トワイライトフラグメントを採用したダスクシャードモジュールによりスピリットポイントを疑似再現し自動的に電力を発生させます』と言われても困る。

 『SPメーターが0になった場合は6時間以上未使用状態を維持し、回復をお待ちください』と言われてももっと困る。

 

「正直、1回ぐらい試運転したい気持ちはあるんですけどね。

 僕の想像以上の威力が出てうっかり殺人犯になったら大変ですし」

「スタンガンはともかく、ライトの方ならすぐ試せるじゃないですか」

「夜中に部屋で試しましたが、車のハイビームの数倍明るいことだけは確実ですね。

 遮光一級のカーテン越しに照らしてもまだ懐中電灯ぐらいには明るいんですから。

 多分本当に軍用タクティカルライトの最上位機種をベースに魔改造した何かです」

「……ボスにあやかって強(・)い(・)日(・)本(・)でも作ろうとしてるんですか? あそこ(桐条)は」

「そういう意味で言ってませんから。僕は」

 

 そりゃあ目指すは最強国家日本と口にしたことはあるが、国際的パワーバランスの話に決まってるだろ。

 資源が足りないことに定評しかない我が国が物理最強を目指してどうするんだよ。

 

「もっともコスパのいいやり方を追求するのが民主主義国家の政治家の仕事です。

 金にモノを言わせて最上級の最高品質を追求できるお貴族様と一緒にされても困ります」

「今のボスは政治家じゃないですけどね。7年後に頑張ってください」

 

 うるせえよ。

 

「無論頑張って生き延びてあなたの鼻を明かすつもりではいますよ。

 それはそれとして、頭数を揃えて物理的排除を狙われたらどうしようもないのは事実ですが。

 ……まあ、僕程度にそんなコスパの悪いやり方を押し通すヤクザがいればの話ですし、警戒する必要は薄いと思いますがね」

「そういうところですよ、ボス。

 今どき裏社会から抜け出せないバカはあんたみたいな賢い計算はできないんですって。

 皆が皆、ボスや坊主や俺達みたいに賢い側の人間じゃないんですよ」

「それはそうですけど、それこそ考えても無駄じゃないですか。 

 予測できないバカを予測するなんてことを始めたら、検討しないといけないパターンが無限に増えるだけだ。

 それよりはあなたが上手くやって、僕が計算すべきパターンを絞り込んでくれたほうがいい」

 

 星野を飼っている最大の理由がそれだ。

 こいつは独断専行もひどいし周りに迷惑をかける率も高いが、最終的には私の負担を減らしてくれる。

 本当に最終的には、だが。

 

「あーあ、相変わらず人使いの荒いボスだ。

 ま、俺だって死にたくないからがんばりますけどね」

 

 星野は「うーん」と大きく背伸びをし――急に真顔になって小声で囁いた。

 

「電車、気をつけてください。

 国交相狙ってるらしいです」

「――わかった」

 

 獅童正義として最後に参加した『会議』のことを思い出す。

 首相の任命責任を追求するには誰を狙うのが一番効率的かという話で、国土交通大臣が列車の欠陥を握りつぶしているというネタは上がっていた。

 私個人としては明智吾郎の能力で運転手を暴走させようと考えていたが――

 システムのハッキングや保守点検中の工作など、何らかの細工を加えて物理的に事故を起こすということも出来なくはないだろう。

 精神暴走と違って証拠が残るというだけだ。

 

「笹木さんと吉阪さんにも伝えておいてあげてくださいよ」

「へいへい。お任せください」

 

 必要なことは話し終わった。

 あとは各々がやるべきことをやり、やらないべきをやらないだけだ。

 

 私は――とりあえず明日の番組出演の準備をするか。

 制服で出ないといけないから、久しぶりに明(・)智(・)吾(・)郎(・)の(・)姿(・)を(・)真(・)正(・)面(・)か(・)ら(・)見(・)る(・)こ(・)と(・)に(・)な(・)る(・)。

 平常心を保つためにも慣れておかないといけない。

 私は私だと言い聞かせて、鏡の中の幻影に耳を貸さなければいいだけ。

 それだけだ。

 拷問の方がマシだと言い切れる程度には苦痛だがな。

 

 下手をすると今日の夜どころか明日の午前中までまるまるそれで潰れるかもしれないが……やってやるさ。

 今の私は、明智吾郎として生きるしかないのだから。




Q:遮光一級のカーテンとはなんですか
A:99.99%以上の遮光率を持つカーテンを指します。
 このカーテン越しだと0.01%未満の光しか通らないということです。

Q:護身グッズの仕組みが分かりません
A:小型の黄昏の羽根を組み込んだスペシャルな内蔵モジュールで擬似的にペルソナ能力の一端を再現し、内部でジオを発動して自動給電しています。
 現実世界でも使用はできますが、異界や認知世界内で本来のスペックを発揮するようです。
 SPゲージ式のため休ませると回復します。
 ソウル系アイテムは摂取させようがないので使用不可。またSP回復飲料をぶっかけるのは電気製品なのでNGとのことです。

Q:結局タクティカルライトのスペックはどれぐらいなの?
A:現実世界においては最大3000ルーメン10万カンデラと推測されます。明るさ自体は無段階調光とステップ調光で自在に調整できるので、遮光カーテンを使わなくとも普通の懐中電灯として使用できます。
 戦闘時効果としては敵1体に対して目眩が中確率、ダウンが低確率で発生します。
 異界や認知世界で使うと内蔵モジュールが本気を出すので明るさが倍になり、目眩やダウンを取れる確率が上昇します。
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