獅童正義は明智吾郎として生きることになった。 作:枝野トナナ
さすがに本来の歴史と比べてスポットが当たる人物が多くなっているな。
転校してきたばかりの高校生と、政財界や公権力はおろか裏社会にもパイプを持つ政治家では、視点も交友関係も違うということだろう。
私はただの『観客』であるが故に、ゲーム盤上の運命に干渉することはないのだが――メモを記す程度のことなら問題はなかろうさ。
もちろんゲームマスターが許可していない非公開情報については触れないので悪しからず。
此度の私はあくまで中立、一観客に過ぎないのでね。出過ぎた真似はしないとも。
・この世界の歴史について
1996年に瀬田区御影町にてセベク・スキャンダルと呼ばれる爆発事故が発生。
1999年に珠閒瑠大異変とも呼ばれている大震災。
同年に巌戸台研究所爆発事故。
2011年に稲羽市連続誘拐殺人事件が起きているな。
とりあえず民間に公表できない事件は企業側が爆発事故というカバーストーリーで覆い隠しているらしい。
どういうわけか生存者の9割が謎の集団幻覚を見たから大異変とも呼ばれているがね。
『街が空に浮いて降りた』だの、最初の地震を受けて救助に向かった自衛隊に対して『機械兵器で襲ってきた』だの、
まったく不思議なこともあるものだなあ。
――ああ、そうそう。
影時間とやらについては私は一切関わっていないし興味もない。
外宇宙存在がもたらす完全なる静寂など、人の進化を促しようがないだろう?
まあ1つわかっていることは……現代のシャドウワーカーや桐条家の関係者に片目隠れの青年は見当たらないということだけだ。
・主要登場人物について
■獅童正義(しどう まさよし)
メモ:52歳の衆議院議員。酔っ払って女に絡んで殴られて死んだ男だな。
口と悪運だけで成り上がった政治家と言う者もいれば、高いカリスマとリーダーシップで日本を導く次期総理候補と信じた者もいる。
清廉潔白に見せかけて裏では邪魔な人間を始末してのし上がってきた――が、それが露見する前に死んだのは良いことなのか悪いことなのか。
■明智吾郎(あけち ごろう)
メモ:17歳の高校生探偵。覚悟ガンギマリ系爽やかサイコパス。
裏表が激しく、正義の味方として警察や検察と協力し様々な事件を解決する裏で、獅童の部下として暗殺行為を繰り返していたペルソナ使いだ。
復讐のために近づいた実父が死に瀕したからといって、自分の身体を提供するという謎の行動を取り実質的に退場しているようだが……?
■明智()
メモ:良い名称が思いつかないのでとりあえずこう表記しておこう。
明智吾郎の身体に獅童正義の脳を移植するという、人間の倫理観を完全に無視した手術の産物だな。
ペルソナは当然使えない。認知訶学研究に一枚噛みたくてもそれができる立場がない。
なんなら手術直後なので、キレ散らかしたり全力疾走するだけでぶっ倒れる虚弱体質デバフもついているぞ。
まあ観察眼とか政治家として蓄えた知識とか、明智吾郎自身や秘書たちが持っているコネなら使えるから、それで頑張っていくしかないだろうな。
■雨宮蓮(あまみや れん)
メモ:16歳の高校生。不幸にも酔っぱらいのハゲを殴ったらなんか死んで前科持ちになってしまった少年だ。
状況が状況なのと、庇われた女が素直に名乗り出て証言をしたことで、両親や警察・家庭裁判所からはかなり同情的に見られているぞ。
それでも被害者が将来を嘱望されていた政治家だということで放校処分は免れなかったようだ。
ただ、両親の努力やどこぞの誰かの悪巧みもあり、
強い正義感と前向きな精神を持ち、逆境にも腐らずに生きていくという大変私好み――もとい、立派な少年だよ。
・政財界に関わる登場人物について
■笹木吟太(ささき ぎんた)
メモ:55歳の弁護士だ。獅童正義が生きていた時は公設第1秘書だった。
若い頃は政治家になることを夢見ていたが、都議選で初出馬した獅童に大敗してから彼の秘書として生きていくことを選んだらしい。
良くも悪くも小心者の凡人だが、経験を積んでいるが故に実務能力は高く、政治家秘書というカテゴリで見れば大変優秀な人物だ。
能力は認めるが、信を置くには凡人過ぎる――というのが獅童からの評価だな。
■吉阪庵(よしざか いおり)
メモ:33歳の衆議院議員候補だ。獅童正義が生きていた時は公設第2秘書だった。
彼の父親が若き獅童の熱心な支援者だったため、秘書の中ではもっとも若いが付き合いは一番長い。
大恩ある人物の息子で能力もあるので第2秘書というポジションを与えたが、同様の理由で裏の仕事には一切関わっていない。
素質は認めるが、信を置くには善良すぎる――というのが獅童からの評価だ。
■星野光太郎(ほしの こうたろう)
メモ:49歳の政治家秘書だ。獅童正義が生きていた時は政策担当秘書だった。
25年前に居酒屋で知り合い、たまに会ってはいい感じのバーやキャバクラやそういう店を紹介し合ってた悪友らしいな。
ヤクザの女に手を出してフロント企業の悪徳弁護士としてこき使われていたところを、獅童にヘッドハンティングされて政治家秘書に転身できたそうだ。
才能は認めるが、信を置くにはゴミカスすぎるし報連相もやらんし……でも才能だけは本物なんだよな――というのが獅童からの評価だよ。
■春日部統志郎(かすかべ とうしろう)
メモ:30代前半の衆議院議員だ。彼も次期総理大臣候補と目されているな。
獅童正義の政敵である春日部由樹を父に持ち、とある大企業の社長令嬢である安藤真理恵と婚約したばかり。
霞が関でぶっ倒れそうな明智()と出会った時は、日比谷公園で雑誌記事に載せるための写真撮影をしていたそうだ。
本来の歴史では12月に獅童が失脚したことで彼の運命が動きはじめるわけだが、9ヶ月もズレるとどうなるのだろうな?
■南条圭(なんじょう けい)
メモ:36歳の企業経営者だ。南条グループ本家の御曹司であり、現在は南条商事の社長を務めている。
セベク・スキャンダルと珠閒瑠大異変を両方経験したペルソナ使いであり、自分より若いペルソナ使いが過酷な運命に巻き込まれるのを良しとしていないようだ。
高校時代の同級生や桐条家、あと初代探偵王子やグラサン刑事や3人の民間人と協力して、こっそりペルソナ使いの所在を把握している――のだが。
ほとんどのペルソナ使いは異変に巻き込まれて覚醒するから、彼が新しいペルソナ使いの存在を把握した頃には時既に遅しという状況が圧倒的に多いのだよ。
今回は珍しく事件が始まる前に異変に気づけたパターンだな。いや本当に珍しい。
・芸能界に関わる登場人物について
■上杉秀彦(うえすぎ ひでひこ)
メモ:36歳の芸能人だ。ブラウンという芸名でピン芸人をやっているが、司会業の方でブレイクして以来様々な看板番組を持っている。
南条圭の同級生でやっぱり2つの事件を経験済み。1997年卒の聖エルミン学園生は呪われていると言われても仕方あるまい。
本物の明智吾郎とは直接共演したわけではないのだが、テレビ局のロビーやカフェテリアで見かけた時に一方的に声をかけて絡んでいたようだ。
ちなみにペルソナ使いの芸能人をこっそり南条に紹介する時は、普段は会員制のクラブラウンジを使っているぞ。
通常は南条の近くの席に座って素知らぬ顔で世間話をするだけだから、本物の明智吾郎も馴れ馴れしい芸人にケーキを奢られただけという認識しかなかったみたいだな。
■小林康隆(こばやし やすたか)
メモ:36歳のプロデューサーだ。番組制作会社の社員としてテレビ局に出入りしている。
『今ドキ解説』なる時事ネタの解説をメインとしたニュース番組を中心に、対談や報道系の真面目な番組を担当しているな。
良くも悪くもお人好しの鑑のような人物で、困っている人がいれば助けるし、泣いている人がいると一緒に泣くタイプだ。
故に、芳澤かすみの事故と明智吾郎の後遺症障害が重なった現状は結構メンタルに響いている。後者は全くの嘘なのにな。
■岳羽ゆかり(たけば ゆかり)
メモ:23歳の現役女子大生モデルだ。フェザーピンク役でブレイクして女性タレントとしても活躍している。
23歳で現役女子大生ってなんだよと思うかもしれないが、本来の歴史の流れでも12月のインタビューで現役女子大生と紹介されているから仕方がない。
桐条のシャドウワーカーにもエクストラナンバーズとして関わっていることを考えると、芸能界とオカルト治安維持活動で大学の出席日数や単位が足りてないのかもしれないな。
明智吾郎と初めて会った時は素で知り合いの高校生こと天田乾と間違えたそうだ。似てるからな、仕方ないな。
・公権力と法曹界に関わる登場人物について
■新島冴(にいじま さえ)
メモ:東京地検特捜部の女性検事だ。年齢は秘密とのことだが、大学の先輩である吉阪庵よりは年下だ。
数年前から発生している精神暴走事件をずっと捜査し続けており、ある日警察から紹介された2代目探偵王子明智吾郎と組むようになった。
実際に明智吾郎のおかげで検挙に至った事件もいくつかあり、礼として何度か食事を奢る程度には仲が良い――わけだが、うん。
……まあ、本物の明智吾郎と曲がりなりにも交友関係と言えるものを築いていた、大変貴重な人物であることは確かだ。
獅童正義の貸金庫を開ける手続きに協力しているのも、無論検事としての打算はあるが――本物の明智吾郎が積み重ねた信用(笑)も理由だろうな。
■赤川由美子(あかがわ ゆみこ)
メモ:57歳の弁護士だ。軽子坂法律会計事務所の所長であり、様々な大学で客員教授として教鞭を取っている。
大変上品な老婦人という雰囲気に相応しく穏やかで心優しい女性だが、長いキャリア故に政財界の裏事情にも通じているな。
教え子の中でも優秀な人物については目をつけており、新島冴についても『ヤメ検になってうちに来てくれればありがたいのですけれど』と思っているようだ。
結構したたかな人物でもあるな。弁護士とはそういうものだが。
■木場真二(きば しんじ)
メモ:30歳の税理士だ。軽子坂法律会計事務所に勤務して2年目だそうだ。
ちなみに税理士業界は30代どころか40代で新人になる人間がザラにいる。
つまりこいつはエリート中のエリートだ。そうは見えないかもしれないが赤川がスカウトするだけの理由があるということだな。
・『心の怪盗団』に関わる登場人物について
■喜多川祐介(きたがわ ゆうすけ)
メモ:16歳の欠食児童だ。都立洸星高校美術科特待生で、4月から2年生になる。
世俗にそこまで興味がないので、たまにニュースや特集記事に出てくる程度の2代目探偵王子・明智吾郎のことなど欠片も知らないようだな。
人間観察が得意で人の絵を見たがって何故か食事を奢ってくれる自称探偵志望の明智()についても、今のところは何一つ疑っていない。
意図的にシンパシーを抱くよう誘導されているから――というのもあるが、現状では餌付けによる好感度上昇の方が大きそうだな。
それに彼は美を追求する芸術家の側面が強いからな。余人が気づかぬ細部に注目できる人間の視点は、彼にとっても興味深いのだろうさ。
■『観客』
メモ:雨宮蓮の【愚者】コープ担当にして、いつもニヤニヤ汝が後ろに這い寄る混沌・ニャルラトホテプの化身だ。
破滅と進化を司る諸悪の根源としての姿が一番有名だろうが、私は
このゲームの『観客』という立場も、とある3人……3柱かな? いや、うーん……まあ、3者と取引を繰り返した結果得たものだよ。
雨宮蓮にも説明しているが、彼とは直接取引を行っているわけではない。
あくまで他の人物からの取引内容に『私が雨宮蓮を導くこと』という条件が含まれているだけだ。
このゲームが続く限りは中立たる『観客』の立場と全ての取引内容を守るとも。
――さて、これぐらいでいいかな。
私の名については、雨宮蓮に対しては秘匿情報だが……君たちが見る分には構うまい。
なにせ私は『取引をする悪魔としてのニャルラトホテプ』だ。
悪魔の真名を知るということは悪魔と契約を結ぶということ。
契約を結ぶということは悪魔と取引をするということ。
雨宮蓮は取引の対象にしてはならないが故、名前を教えるわけにはいかないが……他の存在が取引を望むならば歓迎するさ。
もしも君が何かを求めるというのならば、私に申し出たまえ。
いつでも応じよう。私が望むものを差し出せるのならば。