獅童正義は明智吾郎として生きることになった。   作:枝野トナナ

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第23話――4/10『The Spark of Chaos』

 春休み、最後の日曜日。

 本当は今日こそゆっくり過ごしたかったのだが、大宅一子のせいで出かけないといけなくなった。

 ――まあ、代わりに昨日を諸々の準備に充てたから何とかなるだろう。

 電車通学なんて大学込みでも30年ぶりだ。なんで50代になってから高校生の真似事をしなけりゃいけないんだ。

 生涯学習ってそういう意味じゃないだろ?

 ……いや、ぼやくにはまだ早い。今日は休日だ。私服で過ごせる。

 どちらにするか悩んだが、地味な方のセットにしよう。茶色系の服にアイボリーのパーカーの組み合わせだ。

 印象を固定化させないためにも、もう1組ほど私服があってもいいのだが……夏が来るのは早いからな。

 夏服を揃えられない方が困る以上、今は出費を抑えることを優先すべきだ。

 

 ……でもソファとローテーブル、欲しいよな。

 防音マンションだからこの先色々と密談する機会もあるだろうし。

 さすがに家具は必要経費扱いすべき――だよな?

 価格を考えればミトリのミドルプライス品で我慢してもいいが……でもなぁ、座り心地は重要だ。

 あるいはソファベッドにするのもアリかもしれない。

 普通の高校生や大学生として振る舞い続けるのであれば、友人や知人を泊める可能性はゼロではないだろう。

 機密情報は書斎として使っている明智吾郎の部屋に集積するようにし、あえてこちらを自宅として公開して友人関係の強化やアリバイ作りに使用する。

 ――本来セキュリティ的にはこっちの防音マンションの方が高いはずなのだが、ここもオ(・)ー(・)ト(・)ロ(・)ッ(・)ク(・)と(・)コ(・)ン(・)シ(・)ェ(・)ル(・)ジ(・)ュ(・)の(・)組(・)み(・)合(・)わ(・)せ(・)だ(・)。

 コンシェルジュを欺く手口を使う連中には、却ってザル警備になりかねない。

 それなら普通のマンションである明智吾郎の部屋にホームセキュリティを導入した方がマシだろう。

 幸い、あのマンションは1階に大家が住んでいる。

 事件の捜査資料を集めて書斎として使っていることを素直に説明すれば、警備会社との個人契約ぐらい認めるはずだ。

 問題は料金だな。月額1万円以内なら飲み込めるが……まあ、これは後で調べるか。

 

 出かけよう。今日の目的地は新宿だ。

 行き先はバー・にゅぅカマー。

 

 ――だから高校生を、しかも売出し中のテレビタレントをバーに呼びつけるんじゃねえよクソが。

 何なんだよあの女。社会常識ねえのかよ。

 これだからジャーナリストは好きになれねえんだ。どいつもこいつもウザったくて常識ってもんがねえ。

 まあいい。昼間だからまだ言い訳は聞く。

 バーに入る明智吾郎のスクープを書こうものなら全力で始末してやるが、そういう意図でないなら今は我慢だ。

 敵に回すと厄介でも、味方として利用できるならむしろ有力な情報源になる。

 特にゴシップ系に飛ばされるような奴らは、嗅覚が鋭いことが多い。

 ネットニュース全盛の時代でゴシップ記事が生き残るには、そこらの素人と一線を画す売りがないといけない。

 だから出版社側も、嗅(・)ぎ(・)つ(・)け(・)て(・)は(・)い(・)け(・)な(・)い(・)も(・)の(・)を(・)嗅(・)ぎ(・)つ(・)け(・)た(・)奴(・)の(・)口(・)を(・)封(・)じ(・)つ(・)つ(・)有(・)効(・)活(・)用(・)す(・)る(・)た(・)め(・)に(・)、配属先を変えてやるわけだ。

 正しく人材の有効活用というやつだな。

 

 ……などと考えているうちに、呆気なく新宿に着いた。

 日曜ということもあり人通りはかなり多い。

 天気も曇りだし、外に出ても過ごしやすいからだろうか。

 ともあれ、繁華街はどうにも如何わしい連中が多い。

 目線を合わせないように気をつけつつ、普通の速度を心がけて歩く。

 ――幸い、目的の店まで何事もなく辿り着いた。

 やはり、見るからに高校生が入る店じゃない。

 だがまあ昼間だからな――昼間だからな。昼間だからなッ。

 自分に言い聞かせながらドアを開け、中に入る。

 

「あら、いらっしゃい……ってここは子供が来るところじゃないわよ」

 

 知ってるわ!!

 ――気合で出かかった言葉を飲み込み、別の言葉に変換する。

 

「す、すみません。大宅一子さんにここに来るように言われまして」

「まぁまぁ……ちょっとイッちゃん! ダメでしょこういう子、こんな店に連れ込んだら!」

「え〜? そんな硬いこと言わないでよ〜。

 ララちゃんのとこしか安心できる場所がないからさぁ」

「それにしたって相手のことを考えておやんなさい!

 困っちゃうでしょ、警察に補導されたり変なやつに見咎められても!」

 

 いいぞ、言ってやれ言ってやれ。どんどん言ってくれ。

 店名通りのオカマバーすぎてびっくりしたが、見た目に反して真っ当な人格者じゃないか。

 ……そう言えば何年か前に星野(カス)が、話を聞くのが上手なママとやらがいるオカマバーの話をしてたな? もしかしてこの店か?

 

「大丈夫だよー。大学生って言えばバレないっしょ。

 それに大事な話したいからさっ。このまま使わせて、ねっ?」

「……もう、夜になる前にきちんと返してやりなさいよ?

 あんたが記事にしなくたって、他の記者にこんな店に来たってスッパ抜かれたらマズイに決まってるんだから」

 

 ……む?

 

「あ、あの……」

「あらごめんなさい。アタシ、何も知らないんだったわ。

 坊やのことは誰にも言わないから安心していいわよ。

 それじゃ仕入れに行ってくるから、好きに話してて」

「ありがとー、ララちゃん!」

 

 恰幅の良いママの後ろ姿を見送り、私はとりあえず大宅のいる奥の席へと向かう。

 あの口ぶりからして、明智吾郎のことを知っていそうだったが……

 

「ララちゃんねぇ、けっこう前にテレビで見た君のこと話してたことがあるんだぁ。

 情熱帝国だったかなぁ。若いのにしっかりしてる子もいるのねぇ〜って感心してたよ」

「そ、そうですか」

 

 なるほど。本物の明智吾郎(クソガキ)を出した特番を見ていたのか。

 まあ固定ファンがつく程度には知名度が上がっていたわけだし、そういうこともあるだろう。

 それはそれとして――

 

「ずいぶん個性的な店ですね。

 昼間に貸していただけるとは、常連さんなんですか?」

「そっ。アタシとララちゃんの仲だからさ。

 ここでなら多少アレなネタでも話せるし」

 

 ……? どういうことだ?

 たかがゴシップ記事用の録音データを渡すだけにしては警戒しすぎだ。

 何かあるのか……? ……いや、そう言えば――

 

「とりあえずさ。君の友達の声、聞かせてもらってもいーい?」

「――構いませんよ。どうぞ」

 

 大宅がボイスレコーダーを再生している間、この前のことを思い返す。

 渋谷ヒカリエのスカイロビー。素人の誘拐犯。そこからの逃走。

 ……ダメだ。この女に庇われた後、セイゼリアで起きるまでのことは、ほとんど思い出せない。

 医者曰く、血圧や自律神経の異常以外にも、過緊張から一気に気が緩んだせいで脳虚血を起こしていた可能性があるとの話。

 そこまで体調を崩してしまえば、意識があったところで細かな記憶など保持していられないのかもしれない。

 

『……以上、素人探偵の推理でした』

『そう、か……だから、この絵に』

「――へぇー……これはまた、なかなかの収穫だわ。

 さっすが2代目探偵王子君、肩書は伊達じゃないってワケね」

 

 む? ……再生が終わったか。

 いかんな。少し記憶を探るのに集中しすぎた。

 

「はは。余分な部分まで録音しちゃってすみませんね」

「モノは相談なんだけどぉ〜、このサユリの解釈って記事に……」

「ダメです。喜多川の反応を見るために都合よく推理を組み立てただけなので、本気にしないでください」

「ちぇー。……でも割と真に迫ってる気がするけどね?

 親子で世話になってたなら、生まれた時の写真をモデルに絵を描くって全然有り得るだろうし」

「確かにそうですが、これは完全に推理ショーとして話していますからね。

 わざと断定的に話すことで信憑性を持たせているだけです。

 そもそも紫色だって、二面性だとか癒しだとか不吉とか別の意味がいくらでもありますし。月にも静寂や情緒、季節の移り変わりといった意味もあるはずですよ。

 こんな素人推理で記事を書いたら大宅さんの沽券に関わりますよ」

「へぇーへぇーへぇー。いやーすごいね、探偵甘く見てたわ」

 

 ボタンを押す仕草。また懐かしいネタだな。今の高校生が知ってるのかソレ。

 まあいい。こちらもようやく、聞くべきことに思い至った。

 

「お褒めいただき光栄です。

 ところで1つ、思い出したことがあるのですが――

 先週、大宅さんはな(・)ぜ(・)ス(・)カ(・)イ(・)ロ(・)ビ(・)ー(・)で(・)ラ(・)ン(・)チ(・)を(・)し(・)よ(・)う(・)と(・)思(・)っ(・)た(・)ん(・)で(・)す(・)か(・)?」

 

 さて。どう答え――

 

「あ、やっぱバレた?」

 

 ……認めた? こんな、秒で?

 

「まあそりゃ疑うよねぇー。記者が取材でもないのにのんびりスカイロビー上がってランチ♪ ってやるわけないもん。

 ま、でもあの時は長話をするより、家に帰すほうが先だと思ったってのが1つ。

 下手に取材途中のネタを話して、面倒なことになるとマズイなって思ったのが1つ。

 今日ここに君を呼んだのも、詳しいことを話そうって思ったからってワケ」

 

 ……なるほど?

 そういうことなら、改めて話を聞いてやらないでもない。

 こちらを侮って嘘をつくような人間は論外だが、私から見ても大宅の行動は合理的判断の域に収まっている。

 事情を説明する場を自分から設けている点も踏まえれば、今回は不問に付すべきだろう。

 

「あの日はさ。朝イチで斑目を突撃取材するつもりで家まで行ったんだ。

 でも留守だったから、一旦時間つぶして出直そうと思って駅前広場まで引き返してたワケよ。

 そしたら秀尽学園の校長が、駅の方から知らないオッサンと並んで歩いて来るのが見えてさ。

 ちょっとこう、なんかネタでも出てこないかなって尾行したわけ」

 

 ――秀尽の……小早川が?

 いや、確かにあのシルエットだから見つけるのは簡単だろうし、春休みである以上個人的理由で渋谷近隣にいること自体は何もおかしくないが……

 

「それで2人揃ってカフェに入ったから、後ろの席で話を拾ったワケよ。

 まあ――『先生の代わりをどうしよう』とか、『誰かが後継になるとしても誰が』とか。

 その時は普通に学校の先生の話だと思ったんだけど……校長が先に出ていった後、連れのオッサンが電話取ってさ。

 『やはり御子息に協力してもらう必要がありそうだ』なんて妙なこと言ったから、気になってもっかい後を着けたの」

「……それで?」

「別のカフェに入って、今度は部下なのか秘書なのかわかんない男達に会って話し込んでてさ。

 『ここ一週間近く渋谷駅で目撃』とか『白いシャツに青いダイヤ柄のベスト』とか、人探しにしても変な雰囲気で……なんかこいつら怪しくない? ってなって。

 だから今度はそいつらに気づかれないよう、そーっと駅をウロウロしてたらさ。

 いるじゃんね。ってなったワケ。白いシャツに青いダイヤ柄のベスト着た男の子」

 

 …………なんだソレ。

 いやもう、本当に、なんだソレは。

 揃いも揃ってド素人すぎる。ブンヤが散々近くをうろついて気づかないってなんだよ。

 ――まあ一応大宅の尾行技術が高いって可能性は否定しないが、それにしたって……ザルだろ?

 確かに本物の明智吾郎は同じ組み合わせの服を複数買って常に同じ服装をするタイプの人間だったし、私も仕方なしに奴の服を着ていたが……

 あと1日違ってたら喜多川祐介に選ばせた服に変えていたから、絶対捕まらなかった奴じゃないか。

 逆に本物の明智吾郎(クソガキ)なら物理で突破したはずだ。どちらにしろ無謀に過ぎる。

 

「で、君の後をおっかけてぇ? 怪しい奴らが後を追ってるのも確認してぇ?

 君が急行エレベーターに乗ったの見てぇ? 怪しい奴らが次に来た普通のエレベーターに乗ってぇ?

 普通のエレベーターが11階に止まるか見てぇ? 本当に止まってぇ?

 少し待ってから急行エレベーターで上に行ったら――君がライト焚いて逃げてきたってワケ」

「……なる、ほど」

 

 聞いているだけで疲れた。

 いやまあ、怪しい奴らを追って同じエレベーターに乗り込まないという選択ができるあたり、この女は有能な方だろう。

 ド素人どもがどういう犯罪行為を狙っているかわからない以上、少し遅れて行くほうが安全を確保できるからな。

 今回は知人偽装型の誘拐だったが、極論、強盗や殺人が目的というケースだって有り得た。

 それらを回避するために意図的にすぐ後を追わず、何本か見送ってから、退路を確保できる可能性が高い急行エレベーターで上に行く。

 ――完璧ではないが正しい判断だと言える。

 

「そんでさ。この前会った時、秀尽学園にも知り合いがいるって言ってたじゃない?

 その知り合いってのが生徒で、外で話を聞くとかなら大丈夫だろうけどさ……

 万が一先生とかで、学校に行って話したら、校長も関わってる可能性高そうだしちょっとヤバくな〜い? ってことに気づいちゃったからね。

 だから秀尽学園の方は調べなくていいよ。っていうか当面の間、下手に近づかない方がいい」

 

 ……ふむ。

 社会常識は怪しいくせに、こういう方面では真っ当な対応をするのか。

 まあ実際に倒れかけた場面を目撃して介抱している以上、良心があれば警告の1つも発したくなるだろうな。

 

「ご忠告ありがとうございます。

 ――ですが、僕としてはこのまま不安に駆られる日々が続くのも辛い。

 ここは一度、秀尽の校長先生にお会いしてみようかと思います」

「……ええ?」

「大宅さんの話を聞く限り、僕を連れ去る指示を出したのは校長先生の連れの男ですよね?

 校長先生が黒幕だとしても、実働を指揮しているわけではないし――授業が始まったら、校内に外部の人間を招き入れる余裕はないはずです。

 それなら春休み明けの平日、それもほとんどの先生方が授業に出ている時間を狙えば、比較的安全な状況で直接校長先生と対談できるはずだ。

 そこできっぱりと政治的問題に口を出す気はないと言えば、校長先生が黒幕でも連れの男が黒幕でも僕の意図は伝わるでしょう」

「それは……確かにそうかもしれないけどさぁ。

 でもちょっと危険じゃない? 誰か連れて行くアテでもあんの?」

「そうですね……正直、父の秘書にお願いするのが一番なのですが、時期的に衆院補選で忙しいでしょうし……

 知り合いの検事さんの妹さんが秀尽学園の生徒なので、その検事さんに同行をお願いするか……最悪妹さんを頼るか、ですね」

 

 多少甘い見積もりに聞こえるだろうが、校長である小早川の性格はよく知っている。

 醜聞を避けるためにもみ消しを依頼し、権力者の顔色を伺う臆病者だ。

 他校の生徒である明智吾郎の誘拐なぞ指示すら出せんわ。それこそ明るみに出たら大醜聞もいいところだ。

 大宅の手前だから新島姉妹を引き合いに出しているが、私一人で突撃しても間違いなく何ら問題はない。

 

 あ(・)の(・)校(・)長(・)に(・)獅(・)童(・)正(・)義(・)の(・)後(・)釜(・)を(・)狙(・)う(・)度(・)胸(・)が(・)あ(・)る(・)な(・)ら(・)、(・)政(・)治(・)家(・)に(・)頼(・)ら(・)ず(・)と(・)も(・)体(・)罰(・)教(・)師(・)の(・)揉(・)め(・)事(・)ぐ(・)ら(・)い(・)握(・)り(・)つ(・)ぶ(・)せ(・)て(・)い(・)る(・)。

 

 故に――ほぼ確実に、小早川の知人である『連れの男』こそが黒幕。

 誘拐を指示しただけの第三者という可能性は切り捨てる。そこまで段階が踏める人間が噛んでいるなら、きちんとプロを動かせる。

 衆院補選の立候補と合わせるだけでも絞り込める可能性はあるが、ド素人の底抜けに愚かな考えが私には読み切れないことはここ数日で身に沁みた。

 ここは待ちの姿勢よりも攻めるべき。あるかどうかもわからん危険には目をつぶり、さっさと裏を取って確実に仕留めに行くに限る。

 

「……まあ、誰か一人でも一緒にいれば、校長って立場じゃ手出ししにくくなるか」

「それに秀尽学園に乗り込めば、大宅さんへの手土産も作れますからね。

 さすがにこれだけ情報をいただいたら、タダとは言えないでしょう」

「おっ、わかってるねぇ〜。

 そういう計算高くて早い子、おねーさん好きだなぁ〜」

 

 こういう女に借りを作ったままだと、本当に面倒なことになるからな。

 返せるうちにさっさと返すに限る。

 ……まあ、クソガキ相手の体罰程度ならこちらで握りつぶすがな。

 他に重大な問題を起こしていて、暴くことで新島姉妹からの信用を買うことに繋がるなら、売ってやってもいい程度だ。

 

「――ま、とにかく。

 ヤバいと思ったらすぐに連絡してね。君ほど強いコネはないけど、ふっつーに警察に通報ぐらいはできるからさ」

「ありがとうございます。

 できる限り吉報をご連絡できるように頑張りますよ」

 

 

 

 ――バーを後にし、駅の方へ歩く。

 なんだか遠くが騒がしい。

 アルタビジョンの方だろうか。

 歩き始めようとした矢先、着信が入る。

 電話だ。――星野から。

 

「はい、もしもし?」

『ああ良かった。無事でしたか。ニュース見ました?』

「……いえ。何か、事故でも?」

『地下鉄ホームで車両爆走による脱線事故ですってよ。そんで渋谷駅周辺に交通規制。

 ボスは今どちらにいらっしゃいます?』

「――新宿だ。歌舞伎町近く」

『なら近いっすね。コクーンタワーまで出れます?』

「今から向かう」

『了解です。拾いに行きます。

 ちょうどノートパソコンの修理も終わったんでついでにお渡ししますよ』

「ハードのチェックもしたか?」

『もちのロンです。盗聴器もロガーも怪しいソフトも完全処理済みって業者が太鼓判押してます。

 ああ、ついでにボスが使いたいソフトもこっちでインストールしときました』

「助かる。一旦切るぞ」

 

 ――ついに来たか。

 何が原因だ? 物理的工作か? ハッキングか? 買収か? 通常の薬物投与か?

 あるいは私抜きで廃人化や精神暴走技術が完成したというのか?

 もしくは――明智吾郎以外の、認知改変能力を持つペルソナ使いが現れたのか?

 

 情報が足りない。

 そもそも最近、事故件数が増えている気がする。

 この前の今ドキ解説で交通事故を取り上げたのだって、それが理由だった。

 ……いや、さすがに考えすぎか? 精神暴走事件にあれだけ熱を上げていた新島冴だって動いていない。

 ――だが単に、私が用意した偽書類と吉阪への疑惑を晴らすことに注力しすぎて、他の事件への関心が低くなっているのでは?

 もしかしたら認知訶学やペルソナ使いが関わっている事件が他にも起きていたのでは?

 

 ……クソが。

 なんで片さないといけない仕事ばかり増えやがる。

 これから学校だって始まるってのに――どいつもこいつも、こっちの都合ってものを考えろ!




Q:手術後デバフが無かったら明智()でも素手で物理突破できますか?
A:聞いてみました。
「そもそも下手な反撃は過剰防衛に繋がるリスクがありますからね。
 僕であれば、体調に関わらず逃走手段の確保に務めます。
 健康体なら……そうですね、同意したフリをしてフェイントをかけてエスカレーター側に走って逃げる、あたりで対処したかと。
 ……走ることさえ危険というのは本当に厄介な制約ですよね」



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 いつも執筆の励みになっております! 重ねてお礼申し上げます!
 ストックの関係で次回更新は明後日火曜の21時15分になりますが、これからも頑張って書いていきますのでよろしくお願いします!
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