猿猴は月に愛を為す   作:ユズキあむ

22 / 24
第22話 遅延、神の玩弄

 

 

 

 

「月襲(ムーンレイド)ッ!!!」

遥か高空、一歩足を踏み外せばそのまま墜落する雲海のさらに上空——。

 

ロダストは雷、気、そして覇気を高めると、

振り下ろした両爪を空中で交差させる凄絶な爪撃を

放った。

 

だが、神(ゴッド)は研ぎ澄まされた

『心網(マントラ)』でロダストの思考と軌道を

完全に先読みしていた。

卓越した身体能力でしなやかに身を翻し、ひらりと

紙一重でかわしてみせる。

 

「速いな! だが読めている」

 

かわした勢いのまま、神(ゴッド)は空中で鋭く

旋回し、ロダストへ容赦ない踵落としを叩き込んだ。

 

ドゴォンッ!

 

空気が爆鳴し、衝撃波が高空を駆け抜ける。

だが、ロダストはその衝撃を受けてなお、微動だに

しない。

 

「……ほう、効いていないか」

 

神(ゴッド)が驚愕の声を漏らすのも構わず、

ロダストは一切気にせず即座に拳を力任せに振るって反撃した。

 

ブォンッ!

 

神(ゴッド)はその拳を危なげなくひらりと回避し、一瞬で後方へと距離を取る。間合いが開いた

その瞬間に、ロダストは鋭い気・覇気を乗せて飛ぶ

三日月斬撃状の爪撃を撃ち出した。

 

「繊月(センゲツ)!」

 

ズバァアンッ!

 

「……! 飛ぶ攻撃! 面白い人間だ。そんな事も

出来るのか」

 

寸前で身をかわした神(ゴッド)は、けろりと、

立ち位置を変え、服の埃を払うように肩を叩いた。

 

(直接殴らせてくれねぇ……見聞色でことごとく

軌道を見抜いてかわしてやがる)

 

神(ゴッド)の徹底した回避スタイルと

心網(マントラ)の精度に、ロダストは相手の間合いを測りながら苦々しく眉をひそめる。

 

雲海へ落ちぬよう高度を保ちながら、一度間合いを

仕切り直すために後方へ少し飛ぼうと空中で

身構えた瞬間——神(ゴッド)が不気味に片手を

差し伸べ、指を滑らせた。

 

スッ——。

 

「『遅延(スロウス)』」

 

フォーンッ!

 

妖しい光の波動が高空を包み込み、ロダストの身体を透過する。

 

「……ッ!?」

 

ロダストが次の一歩を踏み出そうとした瞬間、世界が一変した。

 

(な、んだ……身体の動きが、遅い……!?)

 

頭で命じた思考も、肉体の反応も全てが

遅れてる様に。まるで深い水底に沈められたかの

ような重圧感と鈍重さがロダストを支配する。

 

「これが俺の能力だ。全てを遅くする……神の如き

能力だろう?」

 

神(ゴッド)は動けないロダストに向かって、余裕の笑みを浮かべながら足取りも軽く迫ってくる。

 

「素晴らしい能力なのだが、火力は無くてな。他で

補う必要がある。…それだけが残念だ。」

 

ジャキン!!

 

神(ゴッド)が懐から取り出したのは、異様な

威容を誇る大型の拳銃だった。

 

「俺専用の特別製の銃だ。豪炎貝(バーンダイアル)と噴風貝(ジェットダイアル)を組み込んである」

 

銃口が、身動きの取れないロダストの至近距離で

固定される。

 

ボウッ!!!

 

爆炎と噴射気流が融合した凄絶な攻撃が一瞬で

ロダストの全身を焼き尽くした。

 

 

 

 

「ぐあっ……!!!」

 

激痛と共に吹き飛ばされ、空中で激しく身を

よじるロダスト。煙が上がる身体を押さえ、激しく

息を吐き出す。

 

「あっちー……!?」

 

炎に巻かれながらも、ロダストの瞳はまだ折れては

いない。それどころか、死線の中で殺意の光を一層

強く輝かせていた。

 

その姿を見下ろし、神(ゴッド)は心底可笑しそうに口の端を歪める。

 

「この武器で熱いで済むか。タフだな……ルフフフ!」

 

落ちれば終わりの高空戦。攻撃を完全に察知して

かわす『心網(マントラ)』と、身動きを

封じる『遅延(スロウス)』の罠。

 

この不利を前に、ロダストはいかにして死線を

切り開くのか——。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。