猿猴は月に愛を為す   作:ユズキあむ

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第23話 旅人ロダストvs神(ゴッド)

 

 

 

 

「ぐ……っ、ハァ……ッ……!」

 

熱線の直撃を受け、激しい煙を上げながら空中で

身をよじらせたロダスト。

 

全身を苛んでいた『遅延(スロウス)』の重苦しい

鈍重さが、激痛と共にスッと霧散していくのを

皮膚感覚で捉える。

 

「……っ、戻った……!」

 

身体の自由を取り戻した刹那、ロダストは即座に

体勢を立て直すと、全身の気と静雷を爆発させて

神(ゴッド)へ躍りかかった。

 

「『遅延(スロウス)』!」

 

「食らうか!」

 

シャッ!

 

神(ゴッド)の手から追撃で放たれた半透明な光線を紙一重で身を翻して躱し、空気を踏み抜いて一気に

間合いを詰める。

 

「うりゃあ!」

 

叩き込まれる渾身の右拳。だが、神(ゴッド)は

慌てる様子もなく不敵に口の端を歪めると、ロダストの拳に向かって右手のガントレットを突き出した。

 

ズオォンッ!!

 

「……!? 打撃のエネルギーが、吸われた……!?」

 

拳が着弾した瞬間、手応えが消えた。ロダストが

放った莫大な威力が、神(ゴッド)の掌の中に仕込まれた貝の奥底へと完全に吸収・蓄積されていく。

 

「ルフフ、甘いな」

 

神(ゴッド)は間髪入れずに左手から遅延光線を

照射した。

 

「『遅延(スロウス)』」

 

「くそっ! またノロく……!」

 

光線を浴びて体全体の動きが急激に鈍化したロダストに対し、神(ゴッド)は右手のガントレットを

その胸元へと静かに添える。

 

そして、己のガントレット(部位)そのものへ

直接能力を宿らせる。

 

「『停滞(アケディア)』——部位に神の光を

宿らせる技だ。」

 

「『排撃(リジェクト)』」——ドンッ!!!!

 

「ごぽッ……!?!?」

 

爆音と衝撃波。

叩き込まれた衝撃に、排撃貝の蓄積出力が乗せられ、凄絶な破壊力となってロダストの体内で一気に

炸裂した。内臓を破壊された激痛とともに、大量の

血を吐き出しながらロダストははるか高空へと

弾き飛ばされる。

 

「ふふっ、この右手のガントレットは素晴らしいだろう?」

 

神(ゴッド)は弾き飛ばされたロダストを

一瞥することもなく、右手の籠手を愛おしそうに

なでながら自慢げに言葉を紡ぐ。

 

「教えてあげよう。この右手には、

排撃貝(リジェクト)、雲貝(ミルキー)、

斬撃貝(アックス)、轟雷貝(ボルト)の4種が

緻密に組み込まれていてね。

 

お前の打撃は本来、衝撃貝(インパクト)の10倍もの威力を溜め込める排撃貝(リジェクト)で

そのまま吸収して受け止め、解き放つ際に生じる

『使用者をも打ち砕く絶大な反動』は、

この神(ゴッド)の能力『停滞(アケディア)』で

部位の時間を減速させ、完全に殺す……!

リスク無しで排撃(リジェクト)を連発できる……

これぞまさに神の力だ!…さらに!」

 

神(ゴッド)は、左手に握られた大型の銃口を

ロダストへ向けた。

 

ボウッ! ボババッ! ボウッ!

 

バーンダイアルとジェットダイアルの複合による

絶大な熱線が幾重にも解き放たれる。その熱線には、

あらかじめ『停滞(アケディア)』が宿され、異質な速度差を生み出していた。

 

通常速度で迫る熱線と、時間が減速して遅れて

追従する熱線が組み合わさった死の連射。

 

「……ッ、何発か遅いのがある……チッ!」

 

ロダストは自らの『気』のスピードを精密に

コントロールし、緩急のある熱線を極限の見切りの

もとで回避。捌ききれないものは空中蹴りで

叩き落とし、鋭く弾き返してみせる。

 

凄まじい衝撃波と熱線の猛攻を受けながらも、

ロダストは血を吐きつつ空中で体勢を立て直した。

 

「……ハァ……ハァ……!」

 

「……まだ立てるのか。おかしな奴だ。普通、

排撃貝(リジェクトダイアル)の一撃で、即死なのだがね」

 

神(ゴッド)は心底不気味そうに眉をひそめ、

冷ややかな視線を送る。

 

荒い息と共に高空で身構え直すロダスト。全身には

激痛と内臓への深刻なダメージが刻まれている。

だが、その瞳から光は微塵も失われてはいない。

 

(ダメージは確実に蓄積してやがる……。

あいつのあの右手のガントレット……俺の攻撃を

吸収して返しやがる上に、左手の熱線も厄介だ)

 

苦しい展開に変わりはない。だが、死線のただ中で

野獣の思考は冷徹に、そして鋭利に研ぎ澄まされていた。

 

ロダストの内に秘められた牙が、神の隙を捉えようと静かに輝きを増していく——。

 

 

 

 

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