「ハァ……ハァ……っ!」
ロダストは極限状態の中で全神経を
研ぎ澄ませていた。激痛の渦中、開花し始めた
『見聞色の覇気』が、神(ゴッド)の殺意の波動を
かすかに捉え始める。
ボウッ!! シャッ!
神(ゴッド)の死角からの奇襲、そして高速の一撃を、ロダストは最小限の身こなしで紙一重にかわしてみせた。
「ルフフフフ!『遅延攻囲』ッ……!」
何度も神の十指先から解き放たれた無数のノロマ光線が、空を埋め尽くす死の網となって迫る。
(……全方位から空間を潰しに来てやがる……!)
ロダストは、縦横無尽に軌道を変えながら
紙一重の回避を繰り返す。残像すら置き去りに
するような極限の身こなし。
だが、いくら爪を、尖らせ死角から懐へ
滑り込もうと、神はロダストの軌道をあらかじめ
知っていたかのように先回りしていた。
「……ほう。よくかわすじゃないか、青海人(せいかいじん)……フフッ!」
「『金猴王ノ紫電(キンコウオウのシデン)』!」
すかさずロダストの手爪から鋭い紫の電撃が
解き放たれる。だが、神は首をわずかに傾けるだけでそれを完璧に回避した。
「無駄だ、見えている!」
「っ……! 読まれてるなら、避ける暇すら与えねぇ
広範囲で叩き潰す……!」
ロダストは全身の気と雷を極限まで爆発させた。
「『金猴王ノ殷雷(キンコウオウのインライ)』
ッ!! ガアアアァーーーーッッ!!!!」
ドドンッ!!
広大な雷を纏った衝撃波が放たれた瞬間、
神(ゴッド)は不快感に目を細めると、短く呟く。
「……『絶対時間領域』(ゴッド・クロノス)!」
フォーーンッ!
減速の領域を自らの全周囲へと密度の高いノロマ光子のドームが極大展開される。ロダストは認識すら
できない一瞬のうちに、衝撃の威力が全身を
穿っていた。
……ドンッドンドンッボンッ!
「がぁっ!? なんっ……!?」
…ごぼっ…。
衝撃波に弾き飛ばされ、血を吐くロダスト。
口元を拭い、体制を整え直した時には、すでに距離を取られていた。
(!……いつの間にあんな遠くに!)
「ルフフフっ、これが神の力」
「『絶対時間領域』(ゴッド・クロノス)は
俺だけにしか認識を立ち入ることの出来ない神の領域
この領域の中は俺以外の全ての存在は動く事も
認識する事も出来ない!!!
コレこそが神の御技だ!!」
神はすでに安全圏へと退避しており、左手に握られた銃から容赦のない熱線を次々と放つ。
ボウッ! ボババッ!
「だが、この技を出してしまったら、終わりが
近そうだな…。
…ふむ、余興に少し話でもするか」
神は不気味な光を薄く広範囲に撒き散らした。
フォーンッ!
「……! 何だ、身体の動きが鈍い……!?」
「『凡赦神刑(はんしゃしんけい)』。」
「俺の能力を薄く放った。ゆっくりになる効果は
さほど期待できないが、動きは鈍る。戦闘中には
致命的なズレだろう?」
神は遊び半分に熱線を放ち、前進を拒みながら
嘲笑うように語りかける。
「ゆっくり語ろうじゃないか。」
「俺には生まれつき『心網(マントラ)』が
使えてな。ヒトの考えていることが分かった。」
神は生まれつき圧倒的な『見聞色の覇気(心網)』を宿していた。
「空で不吉なことや恐ろしいことが起こると、俺は
それが手に取るように分かってなァ……愉悦を
感じて、笑い出してしまうのだよ、ヒトの感情が揺れ動くさまにな。周囲の者共からは『不気味な化け物』だと恐れられ、遠ざけられてきたがね……。」
神の瞳に宿る深淵のような狂気が、醜悪な歓喜と
なって弾け飛ぶ。
「愉しいのだよッ!!!!」
「人間の醜さ、葛藤、苦悩、怒り、悲しみ。
恐怖……!!他にも色々な感情、それらをじっくり
吟味し、味わい尽くす時間がなぁ!ルフフフフッ……
フフフフッ……!コレだよこれ……。
…人間は!これコレぇッー!!」
「……黙れッ……!!」
その不快な口を今すぐぶち壊し、言葉を黙らせようとロダストは飛びかからんとする。
だが、『凡赦神刑』のせいで自身の感覚と身体の
動きがわずかにズレ、狙いを定めることすら
叶わない。さらに、遊び半分の熱線が容赦なく身を
焼き、前進を阻む。
口を塞ぐことすらできず、ロダストはただ神の吐き気を催す独白を聞かされ続けるしかなかった——。