猿猴は月に愛を為す   作:ユズキあむ

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第26話 金色の戦士

 

 

 

 

耐え続け、殺意の目を向けてくるロダストを

見下ろし、神(ゴッド)はなおも高慢な笑みを崩さず、狂気的な全能感を空へ撒き散らす。

 

「そう!!!オマエたちは、天からの贈り物、

この空にあるモノは全ておれのものだ!!!

だから神がどうこうしようとも!好きに扱おうとも

何も問題はないっ!!」

 

 

「…フフフフッ! ルフフフフフッ!!! ルフフフフフフフフッッ!!!!!!!」

 

銃口からの熱線と右手で『遅延(スロウス)』の

光線を放ちながら、悪びれもせず吐き捨てられたその決定的な言葉と、嘲笑い(わらい)。

 

高空に木霊する醜悪で狂気的な高笑いが、人々の

尊厳をどこまでもあざ笑う。

 

アピーたちの命を、シャンディアの誓いを、アマゾンを、犠牲になった生贄たちを「自分の好きにして

いい物」と言い切られたその瞬間——

 

ロダストの胸中で渦巻いていた憤怒の導火線が、

音を立ててプツンと断ち切れ、限界を完全に突破した。

 

血に濡れた顔のまま、ロダストの表情からすべての「感情」が瞬時に消え去る。

 

 

 

「ギリッ………!!!」

 

奥歯を完全に噛み砕く凄絶な音が響き渡った。

 

 

ゾワッ

 

 

「ぐ、グッ……ゥゥウッ!………ガアアアァアーーー

ーーッ!!!!」

 

 

 

ズドオオォゥンッ!!!!!!

 

 

咆哮とともに、気での飛行を続けるロダストの全身から桁違いの『気』が爆ぜる。その凶暴な奔流は、彼の激憤に呼応するように輝く黄金へと変貌を遂げた。

 

髪が輝く金色に染まり上がり、荒々しく逆立つ。

血涙に濡れていた双眸は、澄み切ったひと握りの理性を宿す鮮烈なエメラルドグリーンへと変色を遂げる。身体はひとまわり逞しくなり、力が溢れる様に

感じられた。

漲る巨大な『気』の影響で、胸の奥から凶暴で好戦的な高揚感が沸き立つ。

 

ロダストから解き放たれる高密度の荒々しい

金色のオーラが、暴風となって空の雲海を一瞬で

吹き飛ばし、空一面を眩い黄金色に染め上げた。

 

「な、なんだその姿は!?」

 

神(ゴッド)は、その桁違いの圧力と圧倒的な威圧感に気圧され、思わず息を呑む。

 

「…懸命に、生きてる人を………ッ。

嘲笑ってんじゃねェ………っ!

 

 

 

オマエだけは………許さねえッ!!!!」

 

 

 

シュンッ!

 

それまでのスピードを遥かに超え、視界から消えたかのように動くロダストに、神(ゴッド)は息を呑む。

 

「な……ッ!?」

 

「『金猴王ノ雷鈷(キンコウオウのライコ)』!!」

 

練り上げられた気、覇気、そして雷のエネルギーが

融合した黄金の光の楔が放たれる。神の肉体に突き刺さると同時に、気の性質を宿した雷がまとわりつき、持続的にその身体を激しく焼き苛んだ。

 

ドンッ!! バリバリバリッ

 

 

「グワァアあぁああっ!! ぐ、ぐっ……感電し続けるとはァ……! 青海人!」

 

ロダストの黄金の異彩に一瞬圧倒されながらも、

身を焦がされている神は焦りを打ち消すように銃口と右手から熱線と遅延光線を乱射する。

 

しかし、極限の怒りと共に研ぎ澄まされた

ロダストの『武装色の覇気』と金色の気は、減速の

空間そのものを強引に突破していた。

 

 

カッ!

ブワッ!

 

「閃光!? 見えなくする気か! だが

心網(マントラ)で気配は分かるぞ! そこだ!『遅延(スロウス)』!」

 

「なに!? 分身だと!?」

 

神の心網(マントラ)が捉えたのは——

『空明(クウメイ)』。気配そのものを空間に残していく、気と見聞色の覇気の合わせ技によって

作り出された金色の分身だった。

 

神の予備動作を完全に読み切ったロダストは、すでに神速で神を捉えていた。

 

キュインッ!!

 

「!!速すぎて心網(マントラ)でも追い切れない!

『絶対時間領域』(ゴッド・クロノス)ッ!!!」

 

死の危険を感じた神は、必死の停止空間領域を展開する。

メキッ!!

 

フォーーンッ!!

 

だが、一歩発動が遅かった。神が領域を展開しきる

より早く、漆黒の武装色で武装硬化されたロダストの左腕が、神の首元を力強く鷲掴みにしていた。

 

「この空間は神の世界だぞ!! くっ! 玩具風情がァ

ァ!! 離せッ!!」

 

停められた空間内で

焦燥に駆られた神は銃口の照準をロダストへ向け、

至近距離から熱線を何発も叩き込むが、分厚い気の鎧に弾かれ効かない。

 

ドオォンッ! ガキンッ!!

 

左腕の排撃貝(リジェクト)を直撃させるも、武装色の鎧と黄金の気に阻まれ、硬質な金属音を立てて弾き返された。

 

「弾かれる……!? なんなんだこれはァ!! 貴様ァ〜〜〜〜ッ!!」

 

神の顔から最初に見せていた余裕は完全に消え失せ、激昂と動揺が入り混じる。自分が蔑んでいた

存在に追いつめられた現実が、その全能の尊厳を

打ち砕き始めていた。

 

 

「この玩具がァーーーーーッ!!!

 

 

 

処刑してやる!!!雲貝(ミルキーダイアル)!

審判の剣!!」

 

神が右腕を振りかざすと、ガントレットから鉄雲が

しなやかな剣の形で打ち出され、ロダストの肉体へ

爆発的に巻き付いた。鞭のように強く締め上げ、黄金の動きを封じ込める。

 

「この鉄雲の内側には、九つの穴が開いている!! 『停滞(アケディア)』!!」

 

鉄雲の刃に停滞の光が宿っていく。

 

 

「貴様は死刑だ!」

 

凶気に満ちた神の叫びが、時を拘束されたロダストの眼前に響き渡った——。

 

 

 

 

 

 

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