逃げ場のない空。絶対的な「死」の気配を全身で
察知した神(ゴッド)は顔を醜く歪ませた。
死の淵に立たされた神(ゴッド)は、
血走った眼でロダストを睨みつけ、醜く金切り声を
上げた。最後のプライドを必死に振りかざすように、狂気の本性を高空へ叫んだ。
「この空に生きる全てのモノは俺の物だ!!
こやつらはモノだ! 奴隷なのだ!奴隷とは人権が無い。人ではないのだ、物だァ! 痛め付けようとも、
壊そうとも、死のうともォ、何の問題はない!!!」
言葉を奪われ、道具として弄ばれ、
殺されたアピーの生。犠牲になった多くの命。
それら全てをただの「物」と言い切る神の最悪な
主張が、高空の風に虚しく響き渡った。
右腕に過去最高の密度で練り上げられた金色の気が、怒りの頂点で目も眩むような閃光へと昇華していく。
神(ゴッド)は残された全能力を振り絞って、
極大の『絶対時間領域(ゴッド・クロノス)』を
展開した。
フォーーーンッ……!!
空間が歪み、世界から色彩と威力が削ぎ落とされて
いく。迫るロダストの拳も、爆発する気の波紋も、
まるで透明な琥珀の中に閉じ込められたかのように、完璧な静止状態へと追いやられていく。
神の能力は、迫り来る右腕の拳撃とその圧倒的な
破壊力を強引に殺ぎ落とそうと蠢いていた。
だが——過剰な覇気に悪魔の実の能力は通用しない。
溢れ出る気と超絶的な覇気によって、高空の空間
そのものが激しく鳴動し始める。
バリバリバリッ!!!
「……ガアアアァアーーーーーッ!!!!」
ガシャァァァンッ!!!
ロダストの体内から爆発したように溢れ出る
金色の気と過剰な覇気が激しく荒狂う。
限界を超えて展開されていた
『絶対時間領域(ゴッド・クロノス)』の
停止空間が、ガラスの破片のように空中へ粉々に
砕け散った。
「なっ……絶対時間領域(ゴッド・クロノス)を……力任せに破っただと……!?」
「青海までェ飛んで行けッ!!!!!」
「玩具如きがァーーーーーッッ!!」
空間の縛りを力でねじ伏せられ、無防備となった
神の胸前へ、激高する黄金の気を宿した
ロダストの拳が迫る。
神はロダストの捕縛から逃れようと、最後まで必死に首元の左手を外そうと足掻き、神自身が持つ左手の
銃で死に物狂いに熱線を連射してどうにかしようと
暴れ回る。
「クソぉッ!! くそーーーーーーっ!!俺は神だぞ!?!!!!!」
熱線の焦土すら意に介さず、ロダストの双眸が
黄金の光を放つ。全身の気、覇気、雷、命——
持てる全エネルギーをその右拳へと注ぎ込み、
魂のすべてを掛けた一撃を練り上げる。
「『金猴王ノ神御解(キンコウオウノカミトキ)』
ッ!!!!!!!」
バリバリッ ズンッ!
「がっ……あ…ばぁぁぁぁッ!?」
「堕ちろォーーーーーーーッ!!!!!!」
ロダストの魂と激怒を込めた黄金の拳撃が、神の胸板を易々と打ち砕き、体内に溜め込まれていた絶対的な『気』を一気に全開放して突き抜ける。
「ガアアァアアーーーアアアァーーーーーっッ
ッ!!!!」
逆立った黄金の毛並みが激しい爆風になびき、
猛り狂う業火のごとく赫々たる輝きを放つ緑翠玉
(エメラルド)の双眸が、神の顔に浮かぶ動揺と恐怖を正面から見据える。
ひとまわり大きく逞しくなった肉体から迸る、
通常を遥かに凌駕する圧倒的な腕力。そして全身を
駆け巡る『気』の影響で脳髄すら焦がすほどに滾る
凶暴なまでの戦意。
それら全てが、穿ち抜く一拳に集約されている。
圧倒的な『気』が解き放つ輝きは周囲の空間すら歪め、命を舐め切っていた神の誇りも全能の威厳も、
その「生の咆哮」の前に万片となって
砕け散っていく。
キュイィィンッ………ドガァァァンッ!!!!!!
「アアアアァーーーーーっッッ!!!!」
ヒューーーーーーーンッ!
神の絶叫が天を裂く。ロダストの気を全開に纏った
攻撃は、咆哮をあげ金色に光り輝く巨猿の輪郭を取りながら、神の身体を丸ごと呑み込んで突き抜けた。
轟撃!!!!!
神の体は空の雲海を真っ二つに切り裂き、
気の巨大な猿の閃光とともに——遥か下の青海へと、
絶叫と血煙を置き去りにして、力任せに一直線に
叩き落とされていった。