金色の気で形成された巨大な猿の形象が、神を
巻き込みながら遥か下の青海へと一直線に激突する。大海原を割り、天を突くほどの凄まじい水柱が
立ち上った。
空を切り裂いた爆風が去り、すべてを包み込むような穏やかな静けさが戻る高空。
ロダストの身体を覆っていた劇的な黄金のオーラが、小さく弱々しく明滅し、まるで己の役目を果たし
終えたかのように澄んだ空気の中へ、すうっと溶けて
消えていく。
超獣の如く猛々しく逆立っていた毛並みや、
赫々たる輝きを放っていた双眸が、いつもの穏やかで柔らかな姿へと戻っていった。
「……お前が神だろうが…何だろう、が………関係ねえ…」
肩を激しく上下させながら、ロダストは神が打ち堕とされた下界を静かに見下ろす。
「アピーの………人、の命を嘲笑った、テメェを……俺は絶対…赦さねぇ…。」
「それ…だけだ……。」
激しい疲労感とともに、最後の一撃を解き放った右拳をゆっくりとほどく。
「はあ、はぁ……」
「アピー……約束…守っ、た…ぞ……」
最後に小さく、安堵の笑みをこぼす。
その瞬間、ふっと全身の力が抜け落ちた。限界を
とうに迎えていたロダストの身体から、残されていたわずかなエネルギーが、結び目の解けた紐のように、空へ溶けるように消え去っていく。
視界が急速に白く霞み、意識が深い闇へと
落ちていく。糸が切れた人形のようにその身体は上空から脱力し、青く澄み渡る下界へと、ただ静かに
落ちていった。
ヒュー……
……
……
……
身体を苛んでいた激痛も焦燥も消え去り、底なしの
暗闇の中へと溶けて消えていく。
……
果てしない落下の感覚。けれど、不思議と恐怖は
なかった。
……
凍りつくような高空の風をそっと和らげるように、
優しく抱く温かな気配。
まるで柔らかな光に包み込まれているかのような
感覚の中、静寂がすべてを包み込み、ロダストは深い
眠りへと身をゆだねた。
……
……
……
「…スー……」
深く、静かな息遣い。
ロダストはうっすらと目を開けた。重い瞼の隙間から視界に飛び込んできたのは、見覚えのある白い綿飴のような雲の床と、どこまでも澄み渡る天空。
「ここは……空島…? 俺は…意識を失って、そして…落ちたんじゃ……」
記憶の糸を手繰り寄せながら、身体を動かそうとしてロダストは異変に気づく。
「いっ!」
強烈な激痛が全身の神経を駆け走る。
思わず顔を歪めた。だが——本来ならば骨は砕け、
指一本すら動かすことなど不可能なほどボロボロだったはずの身体が、かすかに、けれど確実に動かせる
程度にまで回復していた。
「……少し治ってる……? 一体誰が……」
破れかけた皮膚は綺麗に手当され、身を焦がしていた激痛は和らいでいる。
自分の体に施された丁寧な処処に困惑し、周囲を
見回そうとしたロダストの耳元に——
どこからともなく、心から聴きたかった、もう二度と逢うことは叶わないと知っていた、ふんわりと
温かな声が囁いた。
『ワタシ』
「…………アピー……?」