猿猴は月に愛を為す   作:ユズキあむ

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第33話 雲上の宴と新たな家族

 

 

 

歩けるくらいに傷が癒えた数日後、シャンディアの村では空島全土を挙げた大宴会が開かれていた。

 

種族の垣根を越え、肉が焼ける香ばしい煙と賑やかな笑い声が雲の上に広がっていく。

 

「青海の勇者に乾杯だ!」

 

17歳の若きガン・フォールや、後に酋長となる

シャンディアの少年も、ジュースの入った杯を手に

取って笑顔でロダストを囲み、共に杯を交わした。

 

種族や立場を越えた温かな笑顔があちこちで

溢れ返っている。

 

「 まだ傷に響くから控えめにな!」

 

ロダストが豪快に肉を頬張ると、その体内から

アピーの弾むような声が頭の中に響き渡った。

 

『わあ! 美味しい! ロダスト、ワタシお腹は

いっぱいにならないけど、美味しさはすごーく

伝わってくるよ!』

 

(だろ? 空島の肉も悪くねえな)

 

『もっと食べて! もっと!』

 

一人でアピーに話しかけ、顔をほころばせるロダストの姿に、側にいたアマゾンがクスッと微笑んだ。

 

「ふふ、アピーも楽しんでいるようですね」

 

「ニシシ、俺の中で大はしゃぎしてる。」

 

 

宴の火が静かに揺れ、人々が絆を深め合う温かな夜が更けていった。

 

 

 

 

 

◇

 

 

翌朝、静寂が包む白い雲の丘にて、アピーの残された肉体の火葬が執り行われようとしていた。

 

祭壇に横たわる肉体を前に、アマゾンがそっと手を

触れ、ぽろぽろと大粒の涙をこぼした。

 

「ごめんなさい……あんなに小さかったあなたを、

守ってあげられなくて……」

 

その悲しみに応えるように、ロダストの身体から

すうっと光が溢れ、アピーの幽体が姿を現した。

アピーは柔らかな光を纏った手で、アマゾンの目元をそっと撫でる。

 

『アマゾン、泣かないで……。ワタシ、ロダストの

おかげで命が繋がったの。だから悲しまないで……

本当に、今までありがとう』

 

触れられないはずのその手から、確かな温もりが

伝わり、アマゾンはハッと目を見開いた。そして涙を拭うと、愛おしそうに静かに微笑んだ。

 

「……ええ。ありがとう、アピーちゃん。本当に

よかった……」

 

 

 

炎が優しく肉体を包み込み、細い煙が空島の上空へとゆっくり上っていく。その光景を、アピーとロダストが並んで静かに見つめていた。

 

『……変な気分』

 

アピーがぽつりと呟く。

 

「肉体とはお別れだけど、大丈夫か?」

 

『……しかたない。戻れないから』

 

二人は顔を見合わせ、ロダストが優しく頷いた。

 

「……じゃあ、弔うぞ」

 

『うん』

煙が雲の彼方へと消えていくのを見送りながら、

ロダストは胸の奥へと意識を向け、静かに問いかけた。

 

「……アピーは、これからどうする?」

 

アピーは光を纏った顔を上げ、満面の笑みをロダストに向けた。

 

『ロダストに憑いていく。ワタシはロダストの家族。一生、一緒にいる』

 

そのまっすぐな言葉に、ロダストは胸が熱くなるのを感じ、照れくさそうに鼻の頭をかいた。

 

「……そうか。妹だもんな、よろしくな。」

 

『えへへ、頼りにしてるよ、お兄ちゃん!』

 

二人のやり取りを見守っていたアマゾン、

ガン・フォール、そしてシャンディアの少年たちが

静かに歩み寄ってくる。

 

「青海に帰るのですね」

 

 

「ああ、準備が出来たら帰るよ、下に」

 

ロダストは空を見上げ、頼もしい眼差しで空島の人々を見回した。

 

「……よし、準備して青海に帰ろうか!」

 

ロダストの言葉に呼応するように、体内のアピーが

元気いっぱいに答える。

 

『うん!いこう!』

 

澄み渡る空の下、二つの魂は新しい家族としての温もりを抱き、静かに次なる旅立ちへと心を添わせた。

 

 

 

 

 

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