猿猴は月に愛を為す   作:ユズキあむ

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第34話 また会う日まで、果てなき空よ

 

 

青海へ戻る日の朝。

 

クラウド・エンドの白い雲の海には、ロダストを

見送るためにガン・フォールをはじめ、アマゾンや

後の酋長少年、さらには大勢のシャンディアの戦士たちやスカイピアの住民が集まっていた。

 

 

「よし! 持っていく物も入れたな。

食材、貝(ダイアル)に……黄金も持ったし!」

 

積み荷を確認しながら満足そうに頷くロダストの

胸の奥で、アピーが『ノラのお腹の中に黄金あって良かったね』と声を弾ませる。

 

(ニシシ!お金は必要だからな)

 

『ノラ、お腹痛くならなかったのかな?』

 

(あんな、遺跡がごろごろしてるんだし、

丈夫なんだろうなぁ)

 

二人がそんなやり取りを交わしていると、

シャンディアの少年が歩み寄り、大切そうに抱えて

いた『猿の被り物の仮面』をロダストに差し出した。後ろに控えるシャンディアの戦士たちも静かに

頷いている。

 

「これを持って行ってくれ。シャンドラの民からの

感謝と、誇りの証だ」

 

受け取った仮面の重みを感じながら、ロダストは

それを頭に軽く被り、ニッと笑った。

 

「ありがとう。大切にする」

 

そして、ガン・フォール、酋長少年、そして

見送りに来た空の人々を見つめ、力強く言い渡す。

 

「いつか誰もが笑い合える国にしろよ」

 

「……ああ! 誓うよ!」

 

「任せておけ、青海の勇者!」

 

未来を作る二人と住民たちが力強く応えるのを

見届け、ロダストはアマゾンに向き直った。

 

「アマゾン、世話になったな」

 

「道中、気をつけてご武運をお祈りいたします。

ロダストさん。……アピーちゃんも」

 

 

アマゾンの温かな眼差しに、ロダストの身体から

現れたアピーの光の影が、嬉しそうに手を振った。

 

『アマゾン、バイバイ! ワタシ、行ってくるね!』

 

 

 

「じゃあ! 行くぞー!」

 

ロダストが声を張り上げると、体内のアピーも元気

いっぱいに叫ぶ。

 

『うん、楽しみ!』

 

 

「じゃあ、またいつか!会おうぜ!」

 

次の瞬間、ロダストは船に乗るでもなく、

雲の果て(クラウド・エンド)の崖に向かって

突如猛ダッシュを開始した。

 

ダンダン、ダンっ!

 

勢いよく足音を鳴らし、そのまま雲の限界から

何もない大空へと飛び降りる!

 

 

 

「…えええええええ〜〜〜〜〜〜!?」

 

事情を知らないガン・フォールだけが眼を剥いて

大絶叫した。しかし、ロダストが空を飛べることを

知っているアマゾンや酋長少年、スカイピアの人々は、笑顔で手を大きく振り続けた。

 

 

 

「またいつかーーー!」

 

「ひゃっほーーーー!」

 

風を切って雲の海を一気に突き抜け、はるか下層の

白雲(積乱雲)へドボンと飛び込む!

 

ボフンッ!

 

 

がぼぼっゔぁずベてプァー!

 

『ふふっ、溺れてる! ワタシはもう死んでるから

影響ないや、ケラケラ!』

 

 

もがきながら『気』を放って飛翔し、白い雲の層を

豪快に突き抜けた——その直後。

 

「抜けたー!」

 

視界が一気にひらけた。目の前に広がっていたのは、見渡す限りの輝く青。

 

 

 

『わーーー! 下、めっいっぱいに青だよ!

ロダスト!!』

 

 

「ああ、海だー!」

 

 

雲の上の世界から、果てしなく続く広大な「青い海」と真夏の太陽が、眩いばかりの臨場感で二人を

迎える。

 

ロダストは落下の勢いを『気』でふわりと殺すと、

水面を叩くことなく海の上にピタリと舞い降りた。

 

シュサッ……!

 

足元で小さく水滴が跳ね、波の揺らぎの上に静かに

立つ。ロダストは風にそよぐ髪をサッとかき上げ、

どこまでも高い青空を見上げた。胸の奥で、アピーが溢れんばかりの感動を声に乗せる。

 

 

『これが青海……! すごい、すっごく広いよロダスト!』

 

「だろ? 世界はこんなに広いんだ。……っと、

元の小舟は行きに砕けちまったからな」

 

ロダストは抱えた荷物と黄金の袋をしっかり

握り直すと、ニシシッと笑った。

 

「まずはどこかの島か港に行って、新しい舟を

買おうーー!良いアイデアがあるんだーー!」

 

『うん! 新しい舟、楽しみ!』

 

二人で一つの身体、ふたつの魂。胸の中の温もりを

確かめるように手で触れ、ロダストは青い水平線に

向かって爽やかに進み出した。

 

 

新たな家族となった二人の、新しい冒険が今ここから始まる。

 

 

 

 





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【おまけ・幕間のお知らせ】

本編の裏側を描いた幕間SS(ショートストーリー)を別作品枠にて公開してます。

▼おまけの幕間『灯火のあとの静寂(しじま)』を
読むhttps://syosetu.org/?mode=write_novel_submit_yoyaku_edit&nid=426891&yid=1433699


※幕間は日曜日(21時)に公開予定です。
(※公開時間まではページが開きませんので
ご了承ください)

※幕間は
『灯火のあとの静寂(しじま)』
『お腹の中の小さな冒険』
『月の夜の重ね衣(ころも)』
『霊手に込めたありがとう』
『『—— “あぴーより”』』

の順でそのまま連続でお読みいただけます!

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