オルガン諸島を出航したロダストの小舟は、穏やかな海を順調に進んでいた……はずだった。
「うおっ!? なんだこの海流ーーーー!? ぐるぐる回ってるぞー!」
突如現れた荒り狂う特殊な海流に呑み込まれ、揉みくちゃにされた小舟は、ぽつんと浮かぶ孤島——シクシス島へと強引に打ち上げられた。
「ぶはっ! いやーびっくりした! まさか海流が巻き上がってるとはな!」
砂浜に打ち上げられたロダストは、豪快に水を払うと首を傾げた。
「うーん、ぐるぐる海流のせいで船じゃ出られないか……。ん? でも人の気配がするな。ふたりくらい……?」
探検がてら「気」のする島の中央へと向かって歩き出す。
洞窟の奥へと入っていくと、岩場に一振りの立派で美しい太刀が突き刺さっていた。
「ん? なんだこの綺麗な刀……。こんな所に落とし物か?」
ロダストが屈み込み、まじまじと刀を観察していた——その時!
「そこまでだ宝の番人ーーー!! その刀は貰っていくぞ!!」
ドスゥンッ!!
洞窟の天井を破って躍り出てきたのは、帽子をかぶったギラギラとした目の青年——ゴール・D・ロジャーだった!
その後ろから、メガネをかけた青年——シルバーズ・レイリーが呆れ顔で追ってくる。
「おいロジャー! 宝の番人ってなんだ、ただの通りすがりのヤツだろうが!」
ロダストは「あぁ!? 俺は番人じゃねぇよ!」と笑いながらも、身構えて腕に武装色を纏い、向かい打つ!
話を聞かずにニヤリと笑って斬りかかってくるロジャー!
キンッ! ズガァンッ!!
ロジャーの放った一撃と、ロダストの拳が真っ正面から激突し、凄まじい衝撃波が洞窟内に吹き荒れた!
「なに!? 素手で一撃を受け止めやがった……!? ガハハハ! おもしろぇ奴! おれはロジャーだ!」
「俺はロダスト! 旅をしてるんだ! この刀は拾っただけだもん!」
話を聞けば、二人もロダストと同じく例の変な海流に呑み込まれてこの島に漂着したらしい。
海岸へ戻ると、そこにはロダストの小舟より少しだけ大きい程度の、二人が乗ってきた小さな船が打ち上げられていた。
「おいロジャー! どうする気だ、この海流でどうやって脱出する!」
「なあに、どうにかなるさ!」
頭を抱えるレイリーに、ロジャーはあっけらかんと言い放つ。
それを見たロダストは、ポンと手を叩いた。
「あ、俺飛べるから船ごと運ぼうか? 抜けられるぞ?」
「なに!? 抜けられんのか! なら頼む!」
「おいロジャー、少しは警戒しろ……」
呆れるレイリーを無視して、ロジャーは拾い上げた刀を握りしめ、胸を張った。
「この刀の名前は『エース』だ! 最高の宝を手に入れたぞ! 宴だーーーー!!」
「うひゃひゃひゃっ! 宴だ宴だー! 肉喰うぞー!」
「まったく…」
その夜、焚き火を囲んで肉を喰らい、酒を酌み交わす三人。
ロジャーはロダストの規格外のタフさと、バカ正直な強さを一目で見抜いて目を輝かせた。
「面白ぇ奴だなあお前! ロダスト、おれはこれから仲間を集めて、偉大なる航路(グランドライン)に入る! なあお前、おれの仲間になれよ!」
「んー! ありがたいけど、俺、人目につくと色々迷惑かけそうだからな〜。やめとくよ!」
「迷惑かどうかはおれが決めるんだ! 仲間になれよー!」
「海賊をやる気は無くてな! 悪いな、ロジャー!」
あっさりと断られても、ロジャーは嫌な顔ひとつせず「ガハハハ!」と豪快に笑い飛ばした。
翌朝、出航の刻。
海岸にはロジャーたちの船と、ロダストの小舟が並ぶ。
「よし、ロダスト! 頼むぞ!」
「おう、任せとけ!」
ロダストは二人の船の前に立つと、深く息を吐き出し、全身に途方もない「気」と「覇気」をみなぎらせた。
ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
「これは…」
「おおー!!」
レイリーが息を呑み、ロジャーが目をキラめかせた
次の瞬間——
ドッギャァァァンッ!!!!
全身から溢れ出る気と覇気を纏ったロダストは、ロジャーたちの船を己の小舟ごと丸ごと抱え上げると、天高くへと豪快に跳躍し飛翔した!
荒れ狂う激しい海流の上空を、まるで鳥のように一気に飛び越えていく。
「うおおおーっ! 本当に船ごと飛びやがったー!!」
ドサァァン!と海流の外側の穏やかな海へと着水した二つの船。
海流を抜け出せたことに大興奮のロジャーとレイリーが船首から身を乗り出す。
小舟の上から、ロダストは満面の笑みで大きく手を振った。
「じゃあなロジャー! レイリー! また会おうなーーー!!」
「ガハハハ! また会おう、ロダスト! 気をつけてな!」「ああっまた会おう!」
「ニシシっ!」
豪快な二人組に手を振りながら、少年は再び爽やかに大海原へと漕ぎ出していくのだった——。