廃船島に新しい朝が訪れる。
朝陽が海面をキラキラと黄金色に照らす中、
荷物を積み終えたロダストとアピー。懐は相変わらずスカスカだが、ロダストの表情はスカッと
晴れやかそのものだ。
昨日の「無一文&ログポース無し」という
絶望的な事実などケロリと忘れたかのように、
ロダストの中では「大丈夫だ、何とかなる!!」の
精神でとっくに完結していた。
朝日を全身に浴びながら、ロダストは
胸を大きく張って太陽の様な笑みを見せながら、
爽やかに声を張り上げる。
「ニシシ!それじゃあ行ってくるぞーーーっ!!」
『いってきます』
水面にポヨンと浮く金斗雲(コモちゃん)に
乗り込み、準備は完了。
ドックの端ではトムとココロが笑みを浮かべ、二人を見送るべく佇んでいた。
その横には、旅の荷物をまとめたハレダスの姿も
ある。ハレダスもまた、今日ウェザリアへ
帰島するのだ。
「ハレダスも今日出るのか!」
「そうなんじゃ。コモちゃんの制作が終えるまでは、
離れられなかったからのう。別れは寂しいが、
お前さんたちと、また会えたら嬉しいなー。」
「また会いに行くよ、『気』を辿って!」
「おいおい……流石に気で空島の場所を探すのは
難しいだろう」
「ニシシ、出来るさ!」
自信満々に笑うロダストに、ハレダスは呆れたように髭を撫で……ふっと優しく目を細めた。
「……なんだか、お前さんなら出来そうな気が
するのー。では、またいつの日か!」
「ああ、またな!」
そんな二人のやり取りを見ながら、ココロとトムは
大笑いする。本当に無一文のまま出ていく
ロダストに対し、呆れつつもそのバカバカしさと
度胸が愛おしくてたまらないといった表情だ。
「たっはっはっ!っ…っ!
ログポースも金もねぇのにこの笑顔だ!
…オマエさんは、たいした大バカ野郎だ!たっはっ
…!っ!…っ……!っ…!!!」
「本当に無一文のまま行く気かい!? 途中で
行き倒れないようにしなよ!」
「整備が必要になればまた来ると良い!
まぁ、どれだけ見てやれるか分からんがなッ!
たっはっ…!っ!っ…っ!…っ!」
「ニシシ!ああ、ありがとう!またな!」
『トムさんもココロさんもまたね』
「ああ、気をつけて行くんだよ!!!」
『うん、ありがとうココロさん! バイバイ!』
『コモちゃん、出発だよー!』
アピーが声をかけると、コモちゃんは「ぽぽんっ!」と嬉しそうに身体を弾ませた。
ロダストの『気』と紡がれて生まれた特別な
雲の舟——コモちゃん自身が力を発揮し、水面を滑るように滑走すると、次の瞬間——
一気に大空へ急上昇!
ぐんぐんと離れていく廃船島が小さくなっていく中、トムの雷のような大声援が空へと響き渡った。
「俺たちがドンッと胸を張って造った舟だ!
どこまでも行ってこいーーーっ!!」
◇
「うおおおーっ! すっげぇーーっ!!」
どこまでも続く澄み切った青空。心地よい風が
二人の頬を撫でていく。
雲の座面はどれだけ風を受けても不思議なほど
揺れず、まるで高級なソファに揺られているかの
ような極上の乗り心地だ。
『ふはぁ〜……気持ちいい〜!
空のお散歩みたいだね、コモちゃん』
「ぽよよんっ♪」
しばらくの間、二人は雲の上に寝そべりながら、
流れる綿あめのような雲や遥か見下ろす大海原を
のんびりと眺めていた。
空の旅の贅沢で穏やかな時間がゆっくりと
流れていく。
やがて、お腹が「ぐぅ〜」と小さく鳴った
ロダストが、満足そうに体を起こした。
「ふぅ……あ、そうだ! 金がないなら、途中の海で
デカい魚でも釣ってどこかの島で売ればいいや!」
どこまでも呑気な提案に、
アピーも『あ、それいいね。』と笑顔で乗っかる。
ロダストは雲の縁まで歩いていき、眼下の海へと
身を乗り出した。
ふっと静かに目を閉じ、見聞色の覇気と『気』を研ぎ澄ませていく。静寂の中、広大な海の中に蠢く生命の脈動……魚たちの「気」を正確に捉える。
「……ニシシ!見つけたァ!」
ロダストの手元に、黄色の輝きとともに
『金猴王ノ雷鈷(キンコウオウノライコ)』が
現れる!狙いを定め、バチバチと放電する雷鈷を
上空から海面へと勢いよく投擲した!
バリバリバリッ——!!
遙か下の海面が激しく弾け、雷撃によって
麻痺した中型の魚がぷかっと浮かび上がる。
すかさずロダストが『気の糸』を伸ばしてそれを、
そのまま贅沢な餌にして、海中深くの超大型魚を
一本釣り!
「よしっ、大物ゲット〜〜っ!!!」
『すごーい! ロダスト、今日の晩ごはんだね!』
◇
大きな獲物を釣り上げ、再びのんびりとした
航海を続けていた二人だったが、やがて空模様が
少しずつ変化し始めた。
青かった空にどんよりとした暗雲が立ち込め、
激しい雷雨と荒波が吹き荒れる嵐が周囲を包み込む。
普通の中小型船なら一たまりもない荒天だ。
しかし、金斗雲のコモちゃんはビクともしない。
叩きつける雨風を軽やかに弾き返し、
激しい波の上をふわふわと滑るようにいなしながら、上空の風に乗ってぐんぐんと進んでいく。
ハレダスとトムの職人技、そして何よりコモちゃん
自身の頼もしさが存分に発揮されていた。
『コモちゃん、すごい。 全然平気だね!』
「ニシシっ頼りになるなぁ、コモちゃん!」
やがて嵐を難なく突破した二人の視線の先。
日光を完全に遮り、海面から空へと重々しく立ち込める不気味な黒霧の帯が現れた。……『魔の三角地帯
(フロリアン・トライアングル)』だ。
異様な静寂と冷気が漂うその霧を前に、
アピーはちょっぴり首をかしげて目を輝かせた。
『うわぁ……暗いね。でもロダスト、ここって
幽霊さんとかゴーストが出たりするのかな? 私も
幽霊だし、言葉が通じてお友達になれるかも!」
「ニシシシシっ! いいなぁそれ! お友達になって
宝の場所でも教えてもらおうぜ!」
アピーのズレた期待にロダストも乗っかり、
ニシシ!と不敵に笑う。
「あの霧の向こうに何があるか楽しみだな! 宝か、
デカい生物か、それともアピーのお友達か!」
「行くぞコモちゃん!」とロダストが声を張ると、
コモちゃんも頼もしく「ぽぽん!」と身体を
膨らませた。
ログポースもお金も持たない破天荒な二人を乗せた
一匹の金斗雲コモは、不気味な暗闇の海へと
迷うことなく、勢いよく突撃していくのだった——!
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【おまけ・幕間のお知らせ】
本編の裏側を描いた幕間SS(ショートストーリー)を別作品枠にて公開してます。
▼おまけの幕間『セント・ポプラは遊覧日和
〜幽々霊手とサングラス〜』を読む
https://syosetu.org/?mode=write_novel_submit_yoyaku_edit&nid=426891&yid=1433703
※幕間は日曜日(21時)に公開予定です。
(※公開時間まではページが開きませんので
ご了承ください)
※幕間は
『セント・ポプラは遊覧日和
〜幽々霊手とサングラス〜』
『水底に咲く青い青空』
『水煙の彼方と黒き炎』
の順でそのまま連続でお読みいただけます!
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