「うわあぁぁっ……! すげぇ! 街中にもシャボン玉がいっぱいあるぞ!」
『ホントだ〜〜! 建物も乗り物もキラキラしてる〜〜っ!』
巨大な幹の根元、77番GR(グローブ)付近に
着地したロダストたちは、目の前に広がる光景に
大興奮していた。豪華なホテルが立ち並ぶ街並みの
中を、シャボン玉でできた独特な一人用の乗り物
「ボンチャリ」に乗った人々がフワフワと爽快に
駆け抜けていく。
「おお〜!! あれ何処で乗れるのかな!? アピー、あのまるい乗り物めちゃくちゃ楽しそうだぞ!」
『ホントだ〜〜っ! ぽよんぽよん浮いててスゴイ! ワタシたちもあれ乗りたい〜〜っ!』
アピーもぴょんぴょんと跳ねながら、
うらやましそうに手を振る。通り沿いには観光客向けにボンチャリを貸し出しているレンタルショップが
あり、二人は今すぐにでも飛び付きたそうに
目を輝かせた。
「ニシシッ!いいなぁ!……そういや、あの木の『77』って数字は何なんだろ? まるで街全体が細かく区切られてるみたいだな」
『1から79まであるんだって〜! さっき看板に
書いてあったよ!』
「ええ!マジかよ、ここめちゃくちゃ広いじゃねぇか!…にしても……いろんな奴がいるな!」
ロダストはニシシッと笑いながら、街を行き交う
人々を見渡す。
平和そうな一般市民や観光客に混ざって、
身構えたような賞金稼ぎやチンピラ、物騒な気配を
纏った海賊たちの「気」が複雑に交差している。
その独特な雑多さと活気に、ロダストの胸は自然と
躍っていた。
「よし! 街で遊ぶ前に、まずは資金作りと
腹ごしらえだ!」
ロダストたちは77番GRにある大きなレストランへと
飛び込んだ。
そこでまずは、旅の途中で船を襲ってきたところを
返り討ちにし、コモちゃんの中に収められていた
巨大な海獣を売り払うことにしたのだ。
(……っていうか、コモちゃんの中にどうやって
入ってたんだ……? どうやって……?)
ロダストは首を傾げたが、「まあいいか!」と
細けぇことは即座に思考から締め出した。無事に
海獣を買い取ってもらい、手に入った束の札束を懐に入れ、二人は吸い寄せられるように席へつく。
「ニシシッ頼む! このお金で買えるもの持ってきてくれ!」
テーブルに乗り切らないほどの料理をドカンと
並べさせ、豪快に口へ運ぶロダストとアピー。二人でモリモリと平らげていると、隣のテーブルで酒を
飲んでいた船員風の男たちの会話が耳に飛び込んで
来た。
「おい、次の目的地『魚人島』への準備は進んでるのか?」
「へっ、まずは船の『コーティング』をしてくれる
腕のいい職人を探さねぇとな。あの深海を越えるには職人の技が不可欠だ」
魚人島に行くための重要そうな情報を耳にし、
ロダストが「へぇ、コーティング職人か……」と
噛み締めようとしたその時——少し離れた席の観光客たちの楽しげな話し声が、さらに強くロダストの心を惹きつけた。
「なぁ、飯食ったらこの後どうする? やっぱり
『シャボンディパーク』か?」
「当たり前だろ! あそこの遊園地は最高に楽しい場所なんだからよ!」
(……ゆーえんち……?)
その単語を聞いた瞬間、ロダストの動きがピタリと
止まった。
「……なぁ、アピー。『遊園地』ってなんだ?」
『ゆーえんち……? かんがえただけで、なんか心が
ウキウキする響きだね……!』
「だろ!? 『最高に楽しい場所』だってよ!
ニシシッ、魚人島に行くのも大事だけどさ………」
ロダストとアピーは顔を見合わせ、全く同じニッと
した笑顔を弾けさせた。
「『まずは遊園地に行ってみよう!!』」
「ポワ〜〜ッ!」とコモちゃんも賛成するように
鳴き声を上げ、二人は会計を済ませると、
コーティング職人探しを後回しにしてウキウキと
『シャボンディパーク』を目指して駆け出した。
……のだが。
「死ねぇ! 威勢のいいガキどもめ!」
「その女と妙な生き物を引っ立てろ! 人身売買(オークション)で一儲けだ!」
「賞金首じゃなさそうだが、身包み剥ぎ取って
やるぜ!」
「……なんなんだよ!さっきからぁぁぁーーーーーーーーっ!!??!」
遊園地へ向かう道中、浮かれた二人をターゲットに
定めた海賊、賞金稼ぎ、さらには凶悪な人攫い屋
(ヒューマンショップのハンター)たちが、
次から次へと路地裏から湧き出して襲いかかって
きたのである!
ウキウキ気分を邪魔されたロダストたちの、
怒濤のシャボンディ諸島めぐりが幕を開けたのだった——。