猿猴は月に愛を為す   作:ユズキあむ

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第6話 双子岬と子鯨のラブーン

「うおーーーー! 海が山を登ってるぞーーーー! すっげぇぇぇ!!」

グランドラインの入り口——リヴァース・マウンテン。

ロダストは激流をグングン突き進む小舟の上で、風に髪をなびかせながら大興奮で叫んでいた。

「ニシシっ! このまま一気に突入だー!」

何の策も航海術もない、完全なノリと勢いだけの突撃。

山の入り口の運河に怒涛の勢いで進んで行く——その直後!

ドガッシャアァァンッ!!!!

「ギャーッ!? 船がーーーっ!?」

勢い余って入り口の巨大な断崖絶壁へダイレクトに激突!

小舟はひとたまりもなく木々に砕け散り、ロダストは空中へと豪快に放り出された。

「あ、やべっ……気で浮かな……」

空中で姿勢を整えて気で浮こうとした瞬間——

ドッボーーーーンッ!!!!

能力者の宿命である「悪魔の実」の呪いが容赦なく襲いかかり、気を通す暇もなく一瞬で金づちのように海の中へ沈んでいった。

「ぶくぶくぶく(力が入らねぇ……! ドボンと沈んじゃった……!)」

重い体で海中をぶくぶくと沈んでいくロダスト。

視界が暗くなりかけたその時——足下から、ぬっと大きな影が近づいてきた。

『プオォ……?』

それは、大人のクジラに比べればまだずっと小さな、つぶらな瞳をした可愛い子鯨だった。

子鯨は沈んでいくロダストを不思議そうに見つめると、優しくその背中にロダストを乗せ、水面に向かって力強く尾ひれを振る。

バッシャァァンッ!!

「ぶはぁっ!! げほっ、ごほっ! た、助かったーーーっ!!」

海面へ顔を出して荒い息を吐くロダスト。

自分を助けてくれた背中の感触に気づき、まじまじと見下ろす。

「うおっ! 助けてくれたのか! ありがとな子鯨!」

『プオオォー!』

子鯨は誇らしげに潮を吹き上げ、ロダストを乗せたまま近くの岬——双子岬の岸辺へとゆっくりと運んでくれた。

「ふぅ〜! 海水をいっぱい飲んじゃったぞ!」

プルルルルルッ!

びしょ濡れのまま岸辺に上がり、豪快に体を揺すって水を払うロダスト。

子鯨は嬉しそうに浅瀬でプカプカと浮かびながら、こちらを見つめている。

「おいおい、派手な音を立てて漂着したと思えば……命拾いしたな、小僧」

灯台の陰から、医者バッグを抱えた一人の男が歩み出てきた。

穏やかな眼光をした花のような髪型をした男——

クロッカスだ。

「俺はロダスト! 船が木っ端微塵になっちゃってさー!」

「見ればわかる。わしはクロッカスだ。その子の名はラブーン。」

「 この子鯨の名前か! いい名前だな! 助けてくれて本当にありがとな、ラブーン!」

ロダストが屈み込んで撫でてやると、ラブーンは気持ちよさそうに目を細め、擦り寄ってきた。

能力者でカナヅチなロダストだが、助けてくれた命の恩人(恩鯨)にすっかりメロメロだ。

「さて……足(船)を失って途方に暮れるところだろうが、小僧」

クロッカスは呆れたように首を振りながら、灯台の方を指差した。

「見ての通り何もない場所だが、今日はうちに一泊していけ。ちょうど獲れた大王イカを焼いたものがある、食うか?」

「食う食うー! 一泊させてくれー! おっさん太っ腹だな!」

「おっさんではない、クロッカスだ」

その夜、灯台の明かりの下で、香ばしく焼き上がった大王イカを豪快に頬張るロダスト。

浅瀬ではラブーンも一緒になって楽しそうに海面を跳ねている。

「うっま! イカ最高! ラブーンも食うか〜?」

「こら小僧、ラブーンに味付けしたものを食わせるな」

賑やかな笑い声が、グランドラインの入り口である双子岬の夜空に響き渡るのだった——。

 

 

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