「島だ〜着いたぞっ!」
サボテン島を後にし、ログポースを辿って
辿り着いた島——リトルガーデン。
サボテン島で拾った小舟を下りてジャングルへ
足を踏み入れたロダストは、天を突くような巨木と、そこら中を練り歩く見たこともない巨大な生き物たちに目を丸くした。
「うおーーーーっ!! デカい怪獣か竜みたいなのがいっぱいだーーー!!」
恐竜という存在を知らないロダストは、大興奮で気を纏わせた拳を突き出す。
「よし! メシだメシ! 一番デカい肉を狩るぞー!」
襲いかかってきた超巨大なトリケラトプスを撃沈。
さっそく捌いて豪快に焚き火を興し、香ばしい肉の匂いをジャングル中に漂わせ始めた。
ドーーーーンッ!!!
突然、島の中央にそびえる山が激しい音を立てて噴火した。
「うわっ!? 噴火だー!!」
空を仰ぐロダストだったが、直後に全身の肌がピリつくのを感じて目を見開く。
噴火の音と共に、闘争心を高らかにした『でかい気』が、ふたつ同時に跳ね上がったのだ。
「なんだこの気……!? 誰かが戦ってんのか!?」
ズズズオォォォン……!! ドカーーーンッ!!!
凄まじい衝撃と地鳴りが大地を伝ってくる。肉を
口に咥えたまま、気(見聞色)の気配を頼りに森の奥へと駆け出すロダスト。
ジャングルを抜けた開けた荒野でロダストが
見たものは、見上げるほど巨大なふたりの巨人——
青鬼のドリーと赤鬼のブロギーが、斧と剣を全力で
打ち合い、激しい火花を散らしている光景だった。
ドバァァンッ!!!
「ゲギャギャギャ! ブロギー、今日の切れ味も冴えているな!」
「ガババババ! ドリー、貴様こそいい剣捌きだ!」
互いの命を削り合うような真似をしているのに、
その瞳には一切の憎しみがない。あるのは圧倒的な「誇り」だけだった。
やがて火山の煙が収まると、ふたりはピタリと攻撃を止め、武器を収めた。
「すっげえ……!!ニシシ! 凄いものを見せて
もらったぞ!!カッコよかったー!!」
ひょっこり姿を現したロダストに、巨人のふたりは
目を丸くする。
「む? 小さな人間か。肉のいい匂いがすると思ったら貴様か」
「俺はロダスト! なぁなぁ、凄い勝負を見せてくれたお礼に肉奢るよ! 一緒に食おうぜ!」
「ガババババ!言うではないか小さき人間!よかろう宴をしよう!酒はあるか!?」
「海賊から奪った酒なら!」
三人で焚き火を囲み、香ばしい肉を豪快に頬張りながらロダストは目を輝かせた。
「それにしてもおっきいなぁー! 何族なんだ!」
「「『我こそはエルバフ最強の戦士』巨人族のドリーだ。巨人族のブロギーだ!!」」
「何だと!」
「 誰が最強の戦士だと?! 」
「「やるか!?」」
食ってかからんばかりに威勢よく立ち上がったドリーとブロギーは太い眉を吊り上げて応じる。
「「おうとも!!」」
「「…ゲギャギャギャ! …ガババババ! 」」
豪快に腹を抱えて大爆笑するふたりの前で、ロダストはニシシと笑いながら肉を噛みちぎった。
「久しぶりの客人だ!!」
「もてなされてるのはおれたちだがな!!」
「「ゲギャギャギャ! ガババババ! 」」
「ニシシ!」
「それにしてもこの島にいる生き物ありゃ竜か? 」
「いや、恐竜だ。この島では大昔に絶滅した生き物達が生きているのだ」
「へえ、そうなのか!」
「それもこの島だけだとは思うがな」
「チビ人間は海賊か?」
「違うぞ!俺は旅人なんだ!」
「そうかっ! 旅をしているのか」
「ああ、色々見たくてな!」
「だがこの島のログは一年だ。その間はどうにも
できぬ。大人しく一年を待つしか無い。それか、
一か八かで適当に船を出してみるかだ。
小さき人間には堪えるらしい。」
「…一年!そんなになのか!!まあ、大丈夫だ、
急ぐ旅じゃない!」
会話が弾む中、ドーンッ!と再び火山が噴火する。
「ガババババ!合図か」
「ゲギャギャギャ!!そうだな、今日は景気が良いと見える!」
「合図?なんの?」
「「決闘だ……!!!」」
ドゴォオオオンッ!!!!!
「3万5千211戦」
「3万5千211引き分け」「「…カ」」
「…ゲギャギャギャ!!今日も決着は着かなかったな」
「…ガバババ! 50年戦っても決まらんのだ、そう簡単にはいかんだろう!」
「ずっと戦ってるのか!? すげえな……!」
「なぁ、なんでふたりは戦ってんだ?」
「神のご加護を懸けた『エルバフの誇り』の決闘よ! 理由は……?忘れたが、誇りのために戦うのだ!」
「理由がなくても誇りのために戦う……。う〜ん、
難しいけどカッコいいな!」
「ログが溜まるまで一年か〜! 長い気もするけど、
いいや!」
ドリーとブロギーが誇りを賭けて戦う姿、凄まじい衝撃を肌で感じたロダストの胸は、沸き立つような熱さで満たされていた。
(世の中には、まだ俺の知らねぇ強え奴らが山ほど
いるはずだ……。
あの巨人のおっちゃんたちみたいに、
カッコよく自分の力に胸張って生きていくためにも、俺はもっと強くなっておかなきゃダメだ!)
ロダストはおバカではあるが、強さに対する純粋なハングリー精神と、男としての美学はあった。
「よし! この一年、この島で俺は強くなってやる!!」
ドリーとブロギーの圧倒的な存在感に触れ、ロダストは己の強さと誇りに思いを馳せる。
「なぁ! ブロギー!ドリー!空いた時間で
俺とも戦ってくれ! 俺ももっと強くなりてぇんだ!」
「面白い人間だ! 良いだろう、相手になってやる!」
「ガババババ! 折りたたんでしまっても知らんぞ!」
立ち上がったドリーとブロギーが同時に巨大な武器を構えて踏み込む!
「「いくぞロダスト!」」
対するロダストはニシシと不敵に笑うと、両手を大きく広げた。
全身から溢れ出す「気」と黒紫の「覇気」、そして
バチバチと放電する「雷」が混ざり合い、ロダストの
突き出した手の平の前に一滴の雫のようなだんだんと膨らむ特大の覇気玉が練り上げられていく。
両手に込めた特大の覇気玉を巨大な攻撃へと一気に投げ放つ!
「『月墜(ムーンドロップ)』っ!!!!」
ドゴォォォォォンッ!!!!
強大な力がぶつかり合った瞬間、濃密な気が大爆発を起こし、猛烈な衝撃波と雷撃のエフェクトとなって
全方向へ拡散! 大地ごと空間を揺らすほどの
エネルギーがリトルガーデンを吹き荒らした!
「「ゲギャギャギャ! ガババババ!! やるじゃねぇかロダスト!!」」
「……ドリー、ブロギー! 俺、この島でログが溜まるまでの一年間、修行するよ!」
二人の巨人の誇り高き生き様と、圧倒的な技の威力を間近で浴びたロダストの瞳には、熱い闘志が宿っていた。
「世の中にはまだまだスゲェ奴らがたくさんいる! !俺ももっと強くなって、自分の力に胸張って生きていきたい!」
「ガバババ! 良い顔になったなロダスト!」
「ゲギャギャギャ! たっぷり揉んでやるぞ、覚悟しておけ!」
太古の恐竜たちが蠢き、二人の誇り高き戦士が拳を交える島。
このリトルガーデンで、ロダストの過酷で熱い
「一年間の修業」が幕を開けるのだった——。