緑谷久?いや、俺○○じゃないか!?緑谷久(転生者)短編集 作:緑谷久を魔改造して皆を怖がらせましょう!
第一話:転生、そして決意
鏡の中に映っていたのは、鋭い眼光と整った目鼻立ち、そしてどこか狂気を孕んだ知性を漂わせる一人の男の顔だった。
男の名は、緑谷久。
……いや、かつて別の世界で自らを「神」と呼び、仮面ライダーのシステムと数多のゲームを生み出した男――檀黎斗の魂と容姿、そして何よりも圧倒的な「神の才能」を宿してこの世界に転生した男だ。
「……フッ、ハハハハハ! まさか異世界に生まれ変わるとはな! この私が、緑谷久として!」
久は自室で一人、低く高らかな笑い声を上げた。
この世界は、人類の八割が何らかの超常能力――「個性」を持つ社会。しかし、久が授かった個性は「口から小さな火を吹く」という、あまりにも小規模でくだらない代物だった。
だが、そんなものは久にとってどうでもよかった。
個性などという生命の気まぐれなど、己の頭脳に比べれば塵に等しい。彼の中に脈打つのは、既存の概念を覆し、現実を超越するゲームとシステムを創り出す、不滅の「神の才能」そのものなのだから。
「個性などという不確定要素に頼るから人間は小さくまとまる。私の才能さえあれば、この世界すら私の掌上で踊るゲームに過ぎん!」
久は海外出張の打診を即座に断り、自宅の地下に人知れず広大なプライベートラボを構築し始めていた。表向きはしがない会社員を装いながら、夜な夜な最先端の工学、量子力学、そして遺伝子工学を融合させた未知の技術の基礎理論を打ち立てていたのだ。
すべては順調だった。あの出来事が起きるまでは。
◇
「……お父さん。僕ね、お医者さんに『諦めた方がいい』って言われちゃった……」
リビングのテレビには、オールマイトが笑顔で人々を救う映像が流れている。その前で、まだ幼い息子――緑谷出久が、ボロボロと涙をこぼしながら震えていた。
足の関節の奇形。出久は「無個性」だと宣告されたのだ。
妻の引子は申し訳なさそうに涙を流し、出久を抱きしめていた。
そして翌日、公園から帰ってきた出久の腕には、痛々しい擦り傷と焦げ跡が残されていた。
「どうした、出久。その傷は」
久が静かに問い詰めると、出久は俯きながら言った。
「かっちゃんたちが……『デクのくせにヒーローになれるわけない』って……僕、ヒーローになりたいだけなのに……」
爆豪勝己。近所のガキ大将であり、強力な「爆破」の個性を持つ少年。彼が出久を「デク」と蔑み、理不尽な暴力を振るっているという事実。
さらに、久の脳裏にはこの世界の「未来」の記憶が鮮明に存在していた。
無個性ゆえに虐げられ、やがてオールマイトから力を譲り受けたとしても、自らの体を壊しながら泥をすするような過酷な戦いに身を投じる息子の未来。ヴィラン連合、オール・フォー・ワンという巨悪との死闘、そして傷つき疲弊していく幼い背中。
久の胸の中で、静かな、しかし爆発的な怒りと……狂おしいほどの父親としての情熱が跳ね上がった。
「くだらん……あまりにもくだらんぞ!!」
久は突然、バッと両腕を広げて立ち上がった。出久と引子が驚いて肩を跳ねさせる。
「お父さん……?」
久は出久の前で膝をつき、その小さな肩を強く、しかし確かな温もりを込めて掴んだ。その瞳には、かつて世界を震撼させたゲームクリエイターの、圧倒的な狂気と自信が滾っていた。
「出久! 無個性だからヒーローになれないだと? 人の価値をそんなちっぽけな『個性』などという物差しで測る奴らの妄言に耳を貸す必要はない!」
「でも……僕には力がないよ……」
「力? 力なら私が創る!!」
久は腹の底から笑いを破裂させた。
「ハハハハハ! 素晴らしいじゃないか! 個性を持たないということは、既存の枠組みに縛られないゼロの存在ということだ! ゼロだからこそ、私の最高傑作を受け入れる器となり得る!」
久の言葉に、出久は呆然と目を見開く。
「かっちゃんという少年も、オールマイトという規格外のヒーローも、この社会のシステムすらも……すべて過去のものにしてやる。出久、お前はヒーローになるのではない」
久は出久の目を真っ直ぐに見つめ、力強く宣言した。
「お前は――仮面ライダーになるのだ!」
「カメン……ライダー……?」
「そうだ! 運命を切り拓き、時代を創る者! 人類を超越した『神の力』を纏う存在だ!」
久は出久の頭をガシガシと撫でると、翻然と背を向け、地下ラボへの扉へと歩き出した。
「出久、今日からお前のトレーニングを始める。体力を鍛えろ! 精神を研ぎ澄ませ! 私の創り出す『究極のゲーム』をプレイするに相応しいプレイヤーとなるために!」
「お、お父さん……!」
「引子! しばらく地下に籠もる! 飯はドアの前に置いておいてくれ!」
久は地下への階段を駆け下りながら、重厚な鉄扉をピシャリと閉めた。
暗闇に包まれたラボのライトが一斉に点灯する。無数のモニターが青い光を放ち、久の顔を怪しく照らし出した。
「作るとも……最高のドライバーを! 最高のガシャットを! 私の『神の才能』の全てを注ぎ込み、出久を世界で唯一無二の存在にしてやる!」
久はコンソールに向かい、猛烈な勢いでキーボードを叩き始めた。画面には幾重にも重なる複雑なプログラムコードと、ベルト状のデバイスの3D設計図が浮かび上がる。
『ゲーマドライバー』
そして、その動力を司る無数の『ライダーガシャット』の構想。
「爆豪勝己の爆破? オール・フォー・ワンの奪い取る力? フハハハハ! 私の創造力の前では、そんなものは単なるバグに過ぎん! 見せてやるぞ、この世界に……神の恵みを!!」
地下室に、男の狂おしくも愛に満ちた高笑いがどこまでも響き渡っていた。
緑谷出久を、最高の「仮面ライダー」にするための計画が、今ここに動き出したのだ。