竜族日記→竜族転生
日記要素今のところないので、、、。
歴史の繰り返しに意味はあるだろうか?
同じ歴史、同じ日々を送る事に意味はあるだろうか?
地下社会に変化は少ない。
ダーヤを基点とする絶対的な上下社会が築かれてからかなりの月日が経つが、それっきり社会は止まり、よく言えば安定したまま。
地位を上げたり、何か別なもので自己を表現したり。そんな目標すら下位竜族たちは抱けず、ひとり、またひとりと、変化を望む竜族らは外の世界に希望を抱き、洞窟を離れていった。
私もまた、そんな一員のひとつであった。
前世、というものを何となく覚えていた。我ながら無能な会社員であったと思う。ノルマを熟せず、ただ惰性で会社にしがみ付き、得意な事といえば謝罪を如何に早く終わらせられるか考える事で。8時間きっかりで帰り、さして高くない給与を貰ってはゲームに課金する事だけを繰り返している、そんな日々を送っていた。
で、そんな時トリッカルに出会った、それまでは覚えいる。
ニンゲンの教主がいて、世界樹教団があって。で、なんかもちもちした生物がいて。トラブルに巻き込まれながらも世界を救う、確か毎回がそんな感じで、ちょっとずつ真実が明らかになる、という流れだったと思う___
産まれて暫くは苦労した。
先ず、誰もいない、閉鎖された空間で生まれたので、同族に巡り会うのに数日を要した。
変な生き物……モンスターといったほうが良いか。それが沢山居て、殺気を放ち近づいてくるので、必死に逃げ回る毎日が続いた。
彼らは明らかに私を殺そうとしていた。あたり一面に響く嘲笑うような声に加えて、狩猟をするよう逃げ道が狭められていくのが、ただ現実として眼前に現れていた。
そうしてついに退路を絶たれ、最早これまでか、と死を覚悟した時、ガラガラと音を立てて壁が崩れ、赤と青の竜族が姿を現した。
助けにきてくれたのか!そう思い、水色竜族のほうに抱きついて見たはいいが、事態を把握していなかったらしく、相当驚いていたし、なんならスパイではないか、という話に発展していた。
「スパイだなんて!?ち、違います、私は___」
「然しだな、本来竜族が生まれるのにはなんらかの反応があるはずなんだが、ダーヤ様すらなんにも言っておられなかったぞ」
赤い方が訝しげにそう言ってくる。
スパイ?竜族?なんだそれは、と。彼女らの姿を見て、また、薄々気が付いてはいたが、自分の指をまじまじと見てみて。すぐ合点が言った。これトリッカルだ!!!と。
さて、彼女らに連れられて、ダーヤと面会した。相当に驚いていたし、まさか閉鎖地区でそんな出来事が、と。全地域を改めて調査するように他の竜族らに命じた後、私に対し向き直り、竜族の基本や、色々な事を教えてくれた。知らない事も多かったので、収穫は多かったと思う。
私はレピドライトの竜族。
よくわからないが、アメジストとよく似た色合いだからか、偶に「詐欺師」と間違われて酷い目にあう事もあった。
いや全然違うだろ、身長とか格好とかがさ!
さて、こんな日々を通じて、だいたい今がどこのストーリーなのか、外はどうなっているかを何となく推測したが、その次に、確証が欲しいと望むのは自然な事だろう?
問題は、竜族社会が相当に閉鎖的な環境である事だった。
知りたい事があっても、何もわからない。誰がどの序列で、どこがどこと戦って。で、またシルフィールが負けたとか。そんな「どうでもいい」情報は山ほど入ってくるし、皆が皆上に上がりたいと思って、権謀術数が蔓延っているのだが、それは竜たちの頭がそんなに良く無いので、せいぜい「強くなれる」ことを謳った詐欺商品や、対立候補の偽情報を高く買い付けた竜がシストに騙された!と暴れ、私の身が危うくなりかける事態が何度かあった。
どうでもいい。
全部が同じような事、騙された、勝った、負けた。
そんな事しか分からないのだ。
まぁよくも竜族というのはこの日々に飽きないものだ。
だから、結局は自分で直接見る他なかった。
で、外で生活して割とすぐに真相を知ってしまった。
この世界に教主は存在しない。その証左として、妖精王国が滅亡して、もうかなりの時間が経過している。
燃え広がった街並みは魔女王国のもと再建され、傀儡として再出発した状態であるが、その支配を離れつつあるベルベットと魔女王国の暫定女王フリックルが水面下で覇を競い合っている、というのが新体制下の妖精王国の要素である。
ベルベットは中々に賢しい奴だ。本来嫌っている砂糖を住民に配り、独立に向けた支持を取り付けつつある。さて、その背後に誰がいるか?
考えるまでもない、エルフの連中だ。
甘いものを嫌う魔女の連中らによって止まっていた甘味の供給が、ベルベットを介して再開された。それも、サッカリンでなく砂糖が!
一挙に民心を掌握したベルベット陣営と、衰退するフリックル陣営。
危うい均衡は崩された!手を出せなくなる前にベルベットを排除したいフリックルと、時間が味方しているベルベット。
どちらが仕掛けるにせよ、今まさに戦争が始まりそうであったまさにその時。砂糖の供給が「またしても」止まった___
「というのが事のあらましですわ」
アメジストの竜族。シストがそう私に説明をして、今監禁されているエルフィンの在処が書かれた地図を渡してきた。
妖精王国に関心がある事を知ってか、わざわざ此方に会いに来たらしい。
彼女曰く、この騒ぎを利用して一挙に稼いでやろうと手をあちこちに回していたところを魔女に裏切られて計画が破綻してしまったらしい。更にエルフィンの「食費」が馬鹿にならないからと、ある種の損切りをしたい、と私に申し立ててきたのだ。
ベルベットの保有する砂糖も底をつき、街はもう反乱寸前の状態である。
そこに亡命した本来の女王、エルフィンとその一行を差し向ける事で、本来の状態に戻したいのだ、と。
信頼できないパートナーだが他に伝手がある訳でもなし、取り敢えずやってはみませんこと?報酬はたっぷり王国から出ますのよ、と、胡散臭い文句に乗らざるを得なかった。
何よりも地下から出たかった。竜族社会は私には合っていないし、何よりあのモンスターが、いつ何時襲いかかってくるかわからないのだから、地下に居続けるのは居心地が悪い。
「では、契約成立、ということで。ソックリさん」
___全てが罠であったと知ったのは、もうしばらく後のことだ。
記録書 R-024-12ab事象
特筆すべき点として、当世界のエーリアスは一体の紫色の竜族によって統一されていた。アメジストではない。彼女の名は現在まで判明していない。
彼女は、自らを「全種族の代理人」と称していたようだ。調査のため立ち入った王宮内部には、反人間・反救世主思想を掲げるスローガンが至る所に掲示されていた。
その中でも特に多く確認されたのが、「全種族の協力が世界を救う」という標語である。
彼女が求めていたのは、権力による支配ではなく、共通の脅威に立ち向かうための基盤だったのだろう。少なくとも、圧政を敷いていたことを示す証拠は現時点では確認されていない。
全種族が一つに結束し、迫り来る危機に対抗した事例として当事象は極めて稀有なものである一方、その急速な統一が各種族の間に少なからぬ反感を生んだ可能性も否定できない。
但し、現段階でこれを滅亡の直接的要因と断定することは避けるべきであり、エーリアスの滅亡に至った経緯については、次回以降の調査に委ねる。