もふもふをひろったら家がダンジョンになりました 作:一宮 千歳
トイレと風呂。確かに要る。
幸いデフォルトの属性なし家具に大きな浴槽とシャワー、個室洋式トイレ、小便器があった。
まずはトイレをぽんぽんと配置する。トイレって家具で良いのか? 某どうぶつのスローライフゲーの余波を感じる。
大浴槽は、まあ銭湯ばりの大浴槽だ。Mサイズの八畳でもちょっと狭い。LLサイズの二十畳をガチャって、あとはシャワーを置いて、排水をなんとかして……
できた。全四階層の風呂トイレ別、300人収容の避難所。床暖房完備。そしてこれとは別にダンジョン層も増築した。
……まあかわりに、DPが1000まで減ったんだけど。維持費、1日200DPなんだけど。
「維持費がやべえ」
「うーん。真野、あのさ、宝物ガチャがあるじゃん? あれ奮発して上のランク回さねえ?それをくれれば俺が1週間泊まってやろう」
「中村ァ!神かお前は!」
「はっはっは。褒めてもDPしか出んぞ」
宝物ガチャ。
★1〜3はゴミしか出ないとして、★3〜5、★5〜7、★7〜10は希望がある。なんたって翻訳首輪が★3だからな。
「うーん。どうする?★3〜5が一回60DP、★5〜★7が一回300DPなんだが」
「★7〜★10は?」
「前言っただろ、1回2000DPだ」
「んじゃ三日後、3/6に4320DP溜まるだろ?そん時に★5〜★7を3000DP、10連回そう」
「おけ」
そういうことになった。
風は強い。予報ではしばらく続く。
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明けて3月4日。風は強まった。県内全域に注意報だそうだ。しかし社会というのは注意報程度では止まらない。
『まのー、かぜつよい?たいふう?』
「風は強いけど台風じゃないな。季節性のやつだ。ほら、天気予報で言ってるだろ?」
昼、じいさんたちは来なかった。風が強いので見送ったのだろう。DP収入としてはじいさん10人分の中村がいるので、プラスではある。あるが、じいさんたち家で何してるかな、とは気になった。
ポテトとクロと中村と、二人と二匹で遊んだ。避難所フロアを使ってかくれんぼだ。100部屋+トイレ+風呂を探し回って死ぬほど疲れた。
しかしシャルロッテが拗ねた。「私もマスターと遊びたかったです!なんで誰も来ない店番だったんですか!」
すまん。
3月5日。風の勢いが止まらない。これはちょっと異常だ。
幸い警報にはなっていない。なってはいないが……。
昼、郵便で避難所の書類が来た。書留だったので、その場で郵便局員さんと話す。
「風、酷いですね」
「ええ」
「配達大変じゃないですか」
「ははは、まあこれで飯食ってますんで。警報が出ない限り働きますよ」
「お疲れ様です」
その後、店は開けずにかくれんぼリターンズ。シャルロッテが探知魔法とか隠蔽魔法とか使って大人気なかった。疲れた。
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3月6日。土曜日。DPは4500になった。
「真野ー。そろそろ?」
「うむ。ガチャの時間だ」
「やったぜ」
- ぴろん -
- 10連ガチャのご利用ありがとうございます。ダンジョンストレージに保管されます -
「引いたぞ」
「お前風情というものがねえな」
早速ダンジョンストレージから出す。
★5 尽きない
★6炎のロングソード
★5折れない槍
★6風の外套
★5乾かずの水筒
★5疲れずの靴
★6雷の杖
★5乾かずの水筒
「真野、8個しかねえぞ。バグか?」
「いや、★7が2個ある」
★7魔法のバッグ
効果:なんでも入る、重さを感じない空間収納。生物は入れないであげてください。
★7オリハルコン5kg
効果:固ーい金属。人間に加工できるかな?
「……どう思う、中村」
「俺冒険者やめて運送業やるわ」
「ずるくね?」
「いやこれだけで150万の価値あるだろ」
「オリハルコンはどうする?」
「県に売るわ」
買うのかな。
「ていうか2000DPで出る最低限が★7だよな」
「うん」
「★7でこれだろ? 日本どうなっちゃうかな」
「まあしばらくは回さないよ」
「ロマンのねえやつー」
ロマンで飯は食えねえんだ、中村。
でもこいつ探索者で飯食ってるな。ほなロマンで飯食えるか……。
「ところで、水筒ダブったが、真野いるか?」
「うーん。飲み水として使えんのかな」
「水筒だぞ? 使えなかったら詐欺だろ」
「じゃあ貰う。居住スペースで使うわ」
「もう得体の知れない急須から茶出してるじゃねえか」
「それはそれ、これはこれ」
急須メルカリで売ったらいくら付くかな。売らないけど。
世界が壊れそう。
「んじゃー9個俺が貰うってことで」
「おう。あと4日頼むぞ」
天気予報をつけると、昼には風が弱まるとのことだった。
じいさんたち来るかな。
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「よお真野くん。2日会わんうちに顔が変わったな」
「柳瀬さん。そんなに変わりました?」
「うそじゃ」
この野郎。
「ちょっと役所に書類を提出してきます。寛いでてください」
「ほいよ。シャルロッテちゃんとお喋りしとるよ」
ぶろろろろ。
市役所の受付に来た。
「すいません、防災課から来た書類を書いて持ってきたのですが」
「防災課ですか……ちょっとお待ちくださいね。
二口なる人を呼ぶために受付のお姉さんは内線をかけている。
「お待たせしました、四階までお上がりください」
「あ、はい」
一階は通常の申請窓口しかないからな。
庁舎を上がると他の課の人がいるって訳だ。
とてとてと階段を上がり、四階についた。えーと、防災課はどこかな。
壁の案内図を見ると、南側に防災・資産管理課がある、と書いてある。そっちか。
「すいませーん。避難所認定の書類を持ってきまして〜」
「ああすみません真野さん、こちらです、私が二口です」
二口さんはガタイのいい男性だった。身長は勝ってる、えっへん。
「どうもどうも真野です。これ、書類です」
「わざわざお持ちいただいてありがとうございます、郵送でも良かったのに」
「いやあ、ここ数日風が強かったですからね。郵送で郵便局の人に負担かけるのも良くないかなと思って」
「ああ、変な風でしたよね。だいたいこの季節の風なら一日強く吹くだけのはずなのに」
「ねえ」
他愛無い世間話。
「……おっと、書類ですが、不備はないようですのでこれでお預かりします。避難所として開けて欲しいときは電話で一報しますので」
「はあい、よろしくお願いします」
「いえいえとんでもない、こちらこそ受けていただいて感謝しております。三百人の受け入れ態勢、なかなかない社会貢献ですよ」
「そう言っていただけて何よりです」
さて。書類提出したし、帰るか。
ぶろろろろ。店は柳瀬さんしかいないし、ちょっと中村と一緒にポテトかまうか。
「ただいまー」
「おかえりー」
『まのー。おみせは?』
「んー。シャルロッテに任せてる」
『なるほどー』
ポテトがすりすりしてくる。なんか今日は甘えてくるな。
「どしたー」
『かぜつよいの、やだ』
「弱まってるぞ?」
『……うん』
「ポテトは心配性だなあ」
中村がポテトをからかう。
『なかむらは、かんじない?』
「ん? 何が?」
『あさって、いやなかぜ、くる』
嫌な風、か。
「ポテトはどうしてわかるんだ?」
『んー。ふんいき』
「ふんいきかー」
なでまわす。硬い表情がほぐれる。
『まのー。ひなんじょ、でばんくる』
「そうかあ。準備しとくかなあ」
具体的には300人分の布団を出す。
ホログラムメニューをぽちぽちやっていると、中村が話しかけてくる。
「真野、信じるのか?」
「ポテトが言うんだから信じてみてもいいだろ」
『ぼく、うそはついてない』
「ほらな」
「うーん。ダンジョンマスターの勘ってやつなのかね」
夜、夢を見た。
避難所エリアに人を誘導する夢だ。
いやにはっきりしている。
途中、目が覚める。スマホの時計は午前2時。
止むはずだった風は、びゅおうびゅおうと音を立てている。
そうか。
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