もふもふをひろったら家がダンジョンになりました   作:一宮 千歳

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23話

トイレと風呂。確かに要る。

幸いデフォルトの属性なし家具に大きな浴槽とシャワー、個室洋式トイレ、小便器があった。

 

まずはトイレをぽんぽんと配置する。トイレって家具で良いのか? 某どうぶつのスローライフゲーの余波を感じる。

 

大浴槽は、まあ銭湯ばりの大浴槽だ。Mサイズの八畳でもちょっと狭い。LLサイズの二十畳をガチャって、あとはシャワーを置いて、排水をなんとかして……

 

できた。全四階層の風呂トイレ別、300人収容の避難所。床暖房完備。そしてこれとは別にダンジョン層も増築した。

 

……まあかわりに、DPが1000まで減ったんだけど。維持費、1日200DPなんだけど。

 

「維持費がやべえ」

「うーん。真野、あのさ、宝物ガチャがあるじゃん? あれ奮発して上のランク回さねえ?それをくれれば俺が1週間泊まってやろう」

「中村ァ!神かお前は!」

「はっはっは。褒めてもDPしか出んぞ」

 

宝物ガチャ。

★1〜3はゴミしか出ないとして、★3〜5、★5〜7、★7〜10は希望がある。なんたって翻訳首輪が★3だからな。

 

「うーん。どうする?★3〜5が一回60DP、★5〜★7が一回300DPなんだが」

「★7〜★10は?」

「前言っただろ、1回2000DPだ」

「んじゃ三日後、3/6に4320DP溜まるだろ?そん時に★5〜★7を3000DP、10連回そう」

「おけ」

 

そういうことになった。

風は強い。予報ではしばらく続く。

 

----

 

明けて3月4日。風は強まった。県内全域に注意報だそうだ。しかし社会というのは注意報程度では止まらない。

 

『まのー、かぜつよい?たいふう?』

「風は強いけど台風じゃないな。季節性のやつだ。ほら、天気予報で言ってるだろ?」

 

昼、じいさんたちは来なかった。風が強いので見送ったのだろう。DP収入としてはじいさん10人分の中村がいるので、プラスではある。あるが、じいさんたち家で何してるかな、とは気になった。

 

ポテトとクロと中村と、二人と二匹で遊んだ。避難所フロアを使ってかくれんぼだ。100部屋+トイレ+風呂を探し回って死ぬほど疲れた。

しかしシャルロッテが拗ねた。「私もマスターと遊びたかったです!なんで誰も来ない店番だったんですか!」

すまん。

 

3月5日。風の勢いが止まらない。これはちょっと異常だ。

幸い警報にはなっていない。なってはいないが……。

 

昼、郵便で避難所の書類が来た。書留だったので、その場で郵便局員さんと話す。

 

「風、酷いですね」

「ええ」

「配達大変じゃないですか」

「ははは、まあこれで飯食ってますんで。警報が出ない限り働きますよ」

「お疲れ様です」

 

その後、店は開けずにかくれんぼリターンズ。シャルロッテが探知魔法とか隠蔽魔法とか使って大人気なかった。疲れた。

 

----

 

3月6日。土曜日。DPは4500になった。

 

「真野ー。そろそろ?」

「うむ。ガチャの時間だ」

「やったぜ」

 

- ぴろん -

- 10連ガチャのご利用ありがとうございます。ダンジョンストレージに保管されます -

 

「引いたぞ」

「お前風情というものがねえな」

 

早速ダンジョンストレージから出す。

 

★5 尽きない松明(たいまつ)

★6炎のロングソード

★5折れない槍

★6風の外套

★5乾かずの水筒

★5疲れずの靴

★6雷の杖

★5乾かずの水筒

 

「真野、8個しかねえぞ。バグか?」

「いや、★7が2個ある」

 

★7魔法のバッグ

効果:なんでも入る、重さを感じない空間収納。生物は入れないであげてください。

 

★7オリハルコン5kg

効果:固ーい金属。人間に加工できるかな?

 

「……どう思う、中村」

「俺冒険者やめて運送業やるわ」

「ずるくね?」

「いやこれだけで150万の価値あるだろ」

「オリハルコンはどうする?」

「県に売るわ」

 

買うのかな。

 

「ていうか2000DPで出る最低限が★7だよな」

「うん」

「★7でこれだろ? 日本どうなっちゃうかな」

「まあしばらくは回さないよ」

「ロマンのねえやつー」

 

ロマンで飯は食えねえんだ、中村。

でもこいつ探索者で飯食ってるな。ほなロマンで飯食えるか……。

 

「ところで、水筒ダブったが、真野いるか?」

「うーん。飲み水として使えんのかな」

「水筒だぞ? 使えなかったら詐欺だろ」

「じゃあ貰う。居住スペースで使うわ」

「もう得体の知れない急須から茶出してるじゃねえか」

「それはそれ、これはこれ」

 

急須メルカリで売ったらいくら付くかな。売らないけど。

世界が壊れそう。

 

「んじゃー9個俺が貰うってことで」

「おう。あと4日頼むぞ」

 

天気予報をつけると、昼には風が弱まるとのことだった。

じいさんたち来るかな。

 

----

 

「よお真野くん。2日会わんうちに顔が変わったな」

「柳瀬さん。そんなに変わりました?」

「うそじゃ」

 

この野郎。

 

「ちょっと役所に書類を提出してきます。寛いでてください」

「ほいよ。シャルロッテちゃんとお喋りしとるよ」

 

ぶろろろろ。

市役所の受付に来た。

 

「すいません、防災課から来た書類を書いて持ってきたのですが」

「防災課ですか……ちょっとお待ちくださいね。 二口(ふたくち)さーん」

 

二口なる人を呼ぶために受付のお姉さんは内線をかけている。

 

「お待たせしました、四階までお上がりください」

「あ、はい」

 

一階は通常の申請窓口しかないからな。

庁舎を上がると他の課の人がいるって訳だ。

 

とてとてと階段を上がり、四階についた。えーと、防災課はどこかな。

壁の案内図を見ると、南側に防災・資産管理課がある、と書いてある。そっちか。

 

「すいませーん。避難所認定の書類を持ってきまして〜」

「ああすみません真野さん、こちらです、私が二口です」

 

二口さんはガタイのいい男性だった。身長は勝ってる、えっへん。

 

「どうもどうも真野です。これ、書類です」

「わざわざお持ちいただいてありがとうございます、郵送でも良かったのに」

「いやあ、ここ数日風が強かったですからね。郵送で郵便局の人に負担かけるのも良くないかなと思って」

「ああ、変な風でしたよね。だいたいこの季節の風なら一日強く吹くだけのはずなのに」

「ねえ」

 

他愛無い世間話。

 

「……おっと、書類ですが、不備はないようですのでこれでお預かりします。避難所として開けて欲しいときは電話で一報しますので」

「はあい、よろしくお願いします」

「いえいえとんでもない、こちらこそ受けていただいて感謝しております。三百人の受け入れ態勢、なかなかない社会貢献ですよ」

「そう言っていただけて何よりです」

 

さて。書類提出したし、帰るか。

 

ぶろろろろ。店は柳瀬さんしかいないし、ちょっと中村と一緒にポテトかまうか。

 

「ただいまー」

「おかえりー」

『まのー。おみせは?』

「んー。シャルロッテに任せてる」

『なるほどー』

 

ポテトがすりすりしてくる。なんか今日は甘えてくるな。

 

「どしたー」

『かぜつよいの、やだ』

「弱まってるぞ?」

『……うん』

「ポテトは心配性だなあ」

 

中村がポテトをからかう。

 

『なかむらは、かんじない?』

「ん? 何が?」

『あさって、いやなかぜ、くる』

 

嫌な風、か。

 

「ポテトはどうしてわかるんだ?」

『んー。ふんいき』

「ふんいきかー」

 

なでまわす。硬い表情がほぐれる。

 

『まのー。ひなんじょ、でばんくる』

「そうかあ。準備しとくかなあ」

 

具体的には300人分の布団を出す。

ホログラムメニューをぽちぽちやっていると、中村が話しかけてくる。

 

「真野、信じるのか?」

「ポテトが言うんだから信じてみてもいいだろ」

『ぼく、うそはついてない』

「ほらな」

「うーん。ダンジョンマスターの勘ってやつなのかね」

 

夜、夢を見た。

避難所エリアに人を誘導する夢だ。

いやにはっきりしている。

 

途中、目が覚める。スマホの時計は午前2時。

 

止むはずだった風は、びゅおうびゅおうと音を立てている。

 

そうか。




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