レッドラスト〜屈強な女軍人ばかりの流刑惑星に放り込まれたが無事に生き残れるだろうか〜   作:ベニサンゴ

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第24話「救助活動」

 カイに与えられた専用機"シルバーフェザー"の初出動は、本人が思い描いていたほど華々しいものではなかった。緊急の出動命令が発され、基礎修練でボロボロになった身体に鞭打っての搭乗である。自分よりも遥かに高負荷のトレーニングを完遂していたユーリは一切疲労を感じさせておらず、身体の強さに歴然とした差を感じながら基地を飛び出した。

 

「ユーリ、見つけたぞ」

「こっちでも確認したよ。――救助を始めよう」

 

 赤褐色の荒野の真ん中に、黒い山ができていた。近づくほど、その山が蠢いていることが分かる。

 滑るような走りで接近し、副兵装の機関砲を三点バーストで繰り出す。

 

「こちら"シルバーフェザー"。目標を発見。テレアントとキャプチャービーの群れに襲われてる。スラッグの除去を始める」

「了解。こちらもすぐに追いつくわ」

 

 叩き込まれた弾丸が黒い金属生命体の胸を爆散させる。仲間を破壊され、機械の蟻は憤るように顎を鳴らして頭を上げた。そこに最接近したコバルトレインの鉄脚が衝突する。

 

「退け、アリンコ!」

 

 ユーリの技量は見る者を魅了する。だが今ばかりは見惚れている暇もない。コバルトレインがテレアントを吹き飛ばすのを横目に、カイは空中に飛翔している鉄蜂に銃口を向ける。尾部に針の代わりに鋭い鉤爪を備えたキャプチャービーが、何かを掴んでいる。赤い何かが滴る袋のようなもの。カイは反射的にそれを撃ち落とし、落下したものをランナーの脚で抱き止めた。

 

「グリーンホロウを確認。両翼はもぎ取られてる。横っ腹に穴も空いてるね」

 

 ユーリの淡々とした報告が無線に流れる。彼女が努めて感情を抑えていることが、ざらついた音声でも分かった。

 ランナーが二機も揃えば、テレアントとキャプチャービーが十数匹程度の小規模な群れなど赤子の手を捻るようなものである。瞬く間に勝敗は決して残党すら逃さず殲滅は完了した。

 ちょうどそのタイミングで、後方から追いかけてきていたローバーの車列が姿を表す。

 

「ハル、生存者を探すぞ」

『イエッサー』

 

 鉄虫の群れが覆っていたのは小型偵察機であった。荒野に刻まれた深い傷が、不時着の衝撃を雄弁に語っている。堕ちた航空機に攻撃能力は乏しく、スラッグはすぐさま襲いかかってくる。周囲に残された銃器の残骸が、彼女たちの抵抗の跡として残されていた。

 カイはランナーから飛び降り、ハルと共に濃緑色の機体内部へ潜り込む。スラッグの侵攻はここまで迫っていた。鋼鉄の装甲はテレアントの顎で噛み破られ、骨格が露わになっている。地上観測用の機器類がバリケードに転用されていた。

 

「誰かいるか! 助けに来た!」

 

 激しく揺さぶられた機内は壮絶な状況だ。内部を一目見渡しただけでは何も分からない。ハルの光源で照らしながら、カイが声を張り上げる。

 

『マスター、微弱ながら声が聞こえました』

「掘り起こそう」

 

 人間の聴覚には捉えきれない小さな声もハルの鋭敏なセンサーは逃さない。支援AIのアシストを受け、カイは瓦礫の山に手を伸ばす。

 

「カイ、手伝うよ」

 

 コバルトレインから降りて追いかけてきたユーリが、重い鉄の扉を持ち上げる。青年とそう変わらない小柄ながら、内に秘めた膂力は比べるべくもない。人型の重機のように、彼女は次々と瓦礫を撤去していく。

 機体の外ではローバーが次々と到着し、慌ただしく降りる足音が聞こえてくる。

 

「生存者一名。他にもいるかもしれない!」

「応急処置の用意を。他の場所も探すわよ!」

 

 アメリの指示が降る前に隊員たちは動き出していた。即座に野外医療キットが展開され、担架が近くに横付けされる。ユーリが取り除いた瓦礫の下から、人の腕が現れる。血の滲んだ軍服を着て、指先が震えていた。

 瓦礫は次々撤去され、満身創痍の隊員が顔を見せる。顔面蒼白で、目から光が消えかかっている。

 

「諦めるなよ。助かるぞ!」

「あ、ああ……」

 

 カイは虚な目を覗き込みながら激励する。女性隊員は唇をわずかに開いて、安堵の表情を浮かべた。

 瞬く間に彼女は担架に乗せられ機外へと搬出される。待ち構えていた衛生兵科の隊員たちにより、止血処置が取られていた。

 

『マスター、まだ生存者がいるかもしれせん』

「そうだな。……行こう」

 

 ハルの進言を受け、カイは機内へと向き直る。出動した第三航空隊の人員は8名。――少なくとも、あと6名は安否不明のままである。

 

「スラッグが来る前に間に合わせるわよ!」

 

 アメリの言葉で時間に余裕がないことを知る。

 群がっていたスラッグは殲滅したがそれで終わりであるはずもない。今この瞬間にも、空から落ちてきた鉄の塊を目指してこちらへ近づく群れはあるはずだった。

 燃え上がる機体に消火剤が撒かれ、焦げた匂いと煙が充満する。ハンマーを持った隊員たちが窓を破り空気を流し込む。そして瓦礫が次々と外へ投げ出されていく。

 全員が一体となって、迅速に動き続けていた。

 

「ハル、ブラックボックスも回収するぞ」

『イエッサー』

 

 力のないカイに、手伝えることは少ない。

 彼は己の無力感に打ちひしがれながらもできることを探す。せめて、彼女たちが残したものを無駄にはしない。

 

 第三航空隊によるダレス荒野第13地区ネストの夜間偵察飛行の結果、隊員8名のうち5名が死亡。2名は意識不明の重体で搬送された。残る1名は、発見されていない。彼女たちの尽力により、部隊は第13地区ネスト深部の詳細な地形データを獲得。さらに、グリーンホロウが異常なシグナルを受信した記録を発見した。

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