過労死ライン越え(TS)転生者 キャロライン・オーバーは労働の待つ輪廻から解脱したい   作:エテンジオール

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 長くなっちゃった……(╹◡╹)

 あと今週は頻度落ちます、遊び呆けるからね(╹◡╹)


タイムアタック要素とサバイバルミッションは片方にしませんか?

 先生に助けを求められなかった理由を考える。俺の認識では、あそこで心停止する理由はなかった。最初こそ、タイミング悪く妹ちゃんが死んでしまったのかと思ったが、時間がズレても同じことが起きる以上、その線は薄い。

 

 次に考えたのは、受け入れる覚悟を肯定したこと。少し冷静になった今だからわかるが、これは俺のお口的に嘘になるのだろう。試しに、レンジの前で“キャリーはゲームのためなら公爵に売られる覚悟がある”と言った瞬間、心臓は止まった。なんだ、結局俺には覚悟が足りなかったのか。そう思ったところで、一つ違和感。

 

 本来、嘘をついたことで心臓が止まるのだとすれば、戻るのはこのタイミングではなく、直前のみのはず。そうして少し考えて、あることに気がついた。俺は売られる覚悟を問われて、仕方がなく受け入れたのだ。妥協して、受け入れた。諦めて、受け入れた。その事に気がついて、嘘だろうと思いながらレンジで確認すると、判定は正解。……妥協って諦めなんだね。そういう意図での“諦め”じゃないことくらい、少し考えればわかるだろう。わかれよ。

 

 多胞体様に文句を言っても仕方がないので、全力でキレ散らかしたくなるのを必死に我慢する。心の底から泣きそうで、ゆるっゆるの涙腺は普通に負けた。突然涙をダバダバ流し出した姉の背中を、レンジはとんとんしてくれた。やさしい。いい子。好き。

 

 大泣きしている間に狼が襲来。この回は動揺のあまり“諦める”云々の会話を忘れていたせいで、お腹をゆっくり食い殺される。しばらくぶりだからめちゃくちゃ痛い。久しぶりじゃなくても痛いが。

 

 一瞬、諦めることを制限しなければ問題なく先生に助けを求められるのではないかと考えて、すぐに否定する。仮にこの瞬間に戻ることが防げたとしても、あの先生は同じ問いかけをして、俺は同じように答えるだろう。心が折れて公爵に売られることを受け入れることができれば回避出来るだろうが、それ以外に説得の術はない。あの人は納得しないことには動いてくれないだろうし、納得させるには秘密を打ち明け、覚悟を決める他ない。“私たちの中でしょ!今だけ何も聞かずに助けて!”なんて言ったところで、首を傾げられるのがオチだ。

 

 俺って、先生のかわいい教え子よね?とイマジナリールーカス先生に質問して、“?ただのモルモットだが?”と返される。そんな!論文を共著にするって約束はどこに行ったのよ!生徒にはなれなくてもせめて仲間でしょ!この鬼!悪魔!人でなし!無表情!生粋の研究者!

 

 最後の一言でイマジナリールーカス先生がにっこり笑顔になったことで不愉快になり、退場願う。思考が脱線したが、結論としてはルーカス先生に助けを求めることは不可能、と落ち着いた。なんて頼りにならない先生だ。モルモット的に上昇していた株価は急降下。

 

 しかし、ルーカス先生を頼れないとなると、他に可能性があるのはニコラスさんか、お父上か。試しにレンジで確認したところ、お父上はマーダーベア?に勝てず食われる。ニコラスさんは傷を負わせて食われる。二人がかりならお父上が食われた後にニコラスさんがトドメを刺せるとの事。ダークホースとして確認したほかのメンバーはことごとく餌にしかならないと。キャリーと一緒だね。無表情メイドのフリーダさんが実はクソ強おばちゃんメイドなことに期待してみたが、ダメだった。先生?無傷で圧勝だって。一歩も歩かないらしいよ。大人しく戦ってくれよ。なんなんだよお前。……余談だが、突然知らない浪人が助けてくれる展開はないらしい。別に期待していなかったけど。

 

 そうなると、期待できるのはやっぱり先生だけで、けれども直接動かすことはできないと。冷静に考えて詰んでいる気がするが、セーブポイントがここという事は詰んでいないのだ。多胞体様は絶対。キャリーのお口も絶対。これらを疑うと俺は根幹が崩れて自我崩壊を起こすことだろう。

 

 どうにかできないものかと考えながら狼に食われて、何とかできないものかと考えながら狼を殺す。熊さんに勝てないか考えたところで、素敵なお口に“お前には無理!諦めろ雑魚!”と止められる。無駄なチャレンジをさせないでくれてありがとう、クソッタレ。

 

 頭の中がぐるぐる回って、狼との対峙中にコテンと転ぶ。頭ごっちん、ピヨピヨひよこが飛び回って、その瞬間に閃いたのは先生を直接動かさずに誘導すること。本人の前で明白に“直感”を論拠とすると、どうしてもその証拠が必要になるが、そうでなければ必要ない。状況証拠的に怪しいだけであれば、先生はモルモットを手放そうとしないはず。どうでもいいけど頭をぶつけるのは傷じゃないから心停止しないんだね。けれどその隙にガブリされて結局心停止。

 

 自身の思いつきが実現可能かレンジで確認して、結果は問題なし。そうなると問題は、先生を移動させる手段だな。どうにかこれを追いかけてもらって、ゲームの元に届けなくてはいけない。果たして本当にそんなことができるのだろうか、と考えて、合図を送ることを思いつく。

 

 大きな音か、強い光か、その両方か。歩いて十分くらいの距離、しかも森の中であることから、俺の力で出せるような騒音では気が付いて貰えないだろう。試しに鍋をガンガン鳴らしながら歩いてみたら、先生よりも先に野生動物に見つかった。かわいい鹿さん、なんでそんな怖い目でキャリーを見つめるのかしら?なんで、草食動物なのに牙が生えているのかしら?

 

 バリムシャされて心停止。この世界の鹿って人間食べるんだね。草だけ食ってろよ。何かいい方法がないか、例によってレンジを使って一人ブレストを実施。一人でやるのはブレストって言わないんですよ。あと、大事なルールとして否定してはいけないの。すぐに心停止するのは問題外よ。

 

 突然姉が意味不明なことを話し出すことで困惑したレンジの表情にも、悲しいことに慣れてしまった。ずっとやってるものね、これ。レンジには名誉検証マシン2号の称号を与えよう。1号?まだ赤ちゃんだった頃の妹ちゃんよ。

 

 複数回に及ぶ時間切れを繰り返して、やっと見つかった冴えた方法を説明しよう。まず、俺は狼を3分以内に処理しなくてはならない。某ヒーローみたいだね。あちらはスーパーパワーがあるが。次に、必要なものを回収した上で、先生を誘導するための仕込みをする。ここの調整を見すると、俺たちは明日起きる家を失うから要注意。

 

 そして最後、先生が追いついて助けてくれるまで、ゲームを守ること!正確には生き延びることだな。なんと素晴らしいことに、5分逃げ延びることができれば、先生は到着してくれるらしい。素晴らしすぎる計画だ。その5分間、どうやって稼げばいいんですか?……俺が頑張るしかないね。そうだよね。知ってた。

 

 完璧すぎる天才的な計画に、きじょーのくーろんってしってる?と聞いてやりたくなるのを我慢しながら飲み込む。ちなみに机上のクーロンとは、机の上にある下敷きがくっついて離れなくなる現象に対して、大気圧とか密着による説明よりも先に静電気の説明を始めること、転じて本筋から離れた傍流の話を主のように語ることだ。……当然、声に出したら心臓は止まる。

 

 結論としては、理論上、ゲームちゃんを助けることは可能、ということになる。奇跡のような確率の向こうに、救いはあるのだ。そしてそんなふざけた低確率、奇跡に対するもっとも有効的な暴力は繰り返しである。つまり俺の得意分野ってわけ。理屈上起こりうる全ての事象は、試行回数を無限にすることで必ず起こせる。多胞体様のありがたい言葉は、つまりそういうことであった。そりゃあ、諦めなければ望みは叶うだろうさ。

 

 というわけで、いざ本番。……何回目の本番かって?失敗した全ては練習に格下げされるから、これが一回目だよ。練習回数は……二進法を使っても片手じゃ足りないくらいかな。

 

 まず、いつも通りレンジを使って自決手段を確保。ついでに指示をしたら正面に向けて全力の攻撃魔法を放つように伝えて、必要な道具を回収。裸スタートのバトロワFPSみたいだね。必要なものの場所は全て把握しているから、ハズレ装備スタートは起きない。強装備も存在しないが。

 

 確保するものは愛用の短剣と、ちょうどいい大きさのナイフ。あと火打石をいくつかと、着火剤を少々。そして絶対に忘れてはならない調味料瓶。回復アイテムはない。この世界に存在するかも知らない。

 

 準備が出来たところで、まずは前哨戦の狼退治。この狼がキャリーのかわいさにメロメロなのは分かっているから、レンジのことは棚に格納。本当ならむき身のまま置いておきたいが、そうするとレンジが怪我をする可能性が上がるのだ。

 

 まずこんにちはの挨拶がわりにナイフを投げて、脚部に浅く傷を付ける。これがうまく決まると、最大で一分の時間が短縮可能。だいぶ上達した自覚はあるが、成功率はまだ三割くらいね。

 

 一緒にあそぼう!お前餌な!と挨拶しようとしただけなのに、突然攻撃された狼は怒って襲いかかってくるので、一番キャリーを舐めているこのタイミングでカプサイシンアタック。ふわっと撒かれた赤い粉によって、オオカミは悶絶。その隙に後ろ足を攻撃。短剣でグサッと刺して、素敵なあんよを邪魔な飾りへ作りかえる。ここまでは、多分過去最速ね。確率の上振れを感じます。

 

 俺に対する認識を美味そうな餌から厄介な餌に変えた狼に噛まれたり、引っ掻かれたりしながらその度に心停止し、客観的には一切の反撃を喰らわず格闘。最初の後ろ足と同じ方の前足を使い物にならなくして、狼を所定の位置へ移動させる。

 

「レンジ!今!」

 

 合図を送ったら、金属と水と土?石?が混ざった塊が飛んできて、オオカミを強打しながら壁をぶち抜く。魔法ってすごいね。五歳程度の子供がこんな武力を持てるのだから、使えない貴族が出来損ない扱いされるのも当然だ。

 

 別の部屋の中心で、ピクピク痙攣している狼くんの眼球から短剣をグリグリして確実にとどめを刺して、次の行動に必要な道具を確保。なんの偶然か、狼が絶命しているのは勝手知ったるキャリーの部屋。レンジ、まだ上手な出力調整できないみたいなのよね。キャリーの部屋か、お母様の部屋か、使用人室のいずれかを犠牲にしなくては、この勝利は得られなかった。キャリーの寝床?これを口実にお母様のベッドにおじゃまするわよ。

 

 燃えやすそうかつある程度軽いもの両腕に抱えながら外に出て、家から少し離れたところに生えている、ちょっと元気の無い木の根元に安置。火打石と火の魔法を使って着火剤に火をつけて、そのままお気に入りのお布団に引火させる。火打石と魔法を同時に使うのは、単体でやるより明らかに出力が上がったから。何も無いところに火花を生むより、生まれる火花を強くする方が、火の精霊さんは得意みたい。

 

 メラメラ音を立てて燃え出したのを見守って、レンジに火の番をまかせる。お家にまで広がりそうなら鎮火するように伝えて、俺は森の中へ。レンジを残しておくことでルーカス先生へ行き先を伝えつつ、俺は身軽に動けるようになる。一人守りながら五分と、二人守りながら10分は大違いだ。最初必須だった道案内も、もういらないくらいには走った。

 

 あとは、火事に気がついた先生がレンジから話を聞いて、こちらに駆けつけるのを待つだけ。木の選定によって真っ先に駆けつけるのを先生に調整しています。そうじゃないと犠牲者が出ちゃうからね。

 

「ゲーム!無事みたいね、よかった!」

 

 毎度ペソペソ泣いているゲームを見つけて、声をかける。普段は出来損ない!とか、キャリー!とか、生意気な呼び方ばかりしているくせに、弱っている時はおねーちゃんなんて呼んでくるのだから、かわいいものだ。

 

 小さい体を抱きしめて、大きな声を出さないように声をかける。今の時点で、既にこの子が熊に見つかっていることは確認済だ。だから声を出さなかったところで安全なわけではないのだが、不要に刺激するのは避けたい。相手は、餌が弱るのを待っているだけなのだから。

 

 こちらが気付いているという情報を与えず、少しずつ家の方にもどる。先生がやってくるのがこちらからだから、僅かにでも近づいていれば、若干合流が早くなる。

 

 素直に着いてくるゲームを連れて歩き、一分くらいするとクマが登場、先生はレンジから話を聞いたら、急いでこちらに駆けつけてくれるはず。だからそれまで、この子を守るのは、俺だけの役目。

 

「ゲーム、大丈夫。きっと4分もすれば、先生が助けに来てくれる。だから安心して、お姉ちゃんに任せてくれる?」

 

 命の危険を感じたゲームが、腰を抜かしてへなへなと座り込む。怖いのだろう、俺の裾を握りしめた妹を安心させるためにそう言って、手を離させる。ついでに時間を口にすることで先生の到着時刻を予測。3分だと心停止したから、3分以上4分未満ね。これまでの五分と比べて短いのは、俺が頑張ってタイムを縮め、呼び出し時間を早めたからだろう。

 

“安心して!お姉ちゃん、傷一つ負わないで見せるから!”と宣言して、本番の開始。早く仕留めるのが吉だった狼は、初手でこちらが攻撃をしたが、今回は時間稼ぎが目的だ。まだこちらをただのご飯としか思っていない相手に攻撃をして、怒らせる必要はない。にじり寄る熊とにらめっこをしながら、三十秒。もう八分の一が終わったのね!余裕だな。……本番はここからなんだよ。

 

 俺にヘイトを向けさせるために、石ころを投げつけつつ横向きに移動。こうしないと、ずっと後ろにゲームがいるままだ。攻撃もかわせないし、クマの攻撃の余波で死んでしまう。

 

 子供の投げる石ころごとき、クマには効かないだろう。けれど、餌風情に抵抗されるというのは、捕食者としてのプライドを傷つけるものらしく、クマの注意はこちらに向いた。もしかすると、ぼんやり赤く光らせたおてても理由かもしれない。

 

 煩わしそうな様子で近寄ってきて腕を一振。絶命。大きくゴロンと回避。枝が刺さって心停止。クソッタレめ!これだからお外は嫌いなんだ!枝に気をつけながら転がって、そのままお顔に向けて香辛料アタック。おそらく、俺が唯一持っているクマへの攻撃手段だ。

 

 クマ撃退粉末に、このままいなくなってくれることを願いながら当然叶わず、悶絶したあとの熊さんは明確な敵意を持って俺に狙いを定めた。悶絶時間が、きっと一分半くらい。あと二分。攻撃を避け続けるのは、現実的ではない。

 

 しっかりこちらに着いてきていることを確認しながら、背中を向けて逃げる。三十六計逃げるに如かず。無力な出来損ないキャリーにできるのは、いつだって逃げることだ。真正面から立ち向かったオオカミが例外なのである。

 

 走って、走って、方向転換。細い木なんかはなぎ倒しながら追ってくるから、耐えられるような大木に回り込んでクルクル追いかけっこ。あと30秒。

 

 先生が来るはずの方向、家の方向に向かって走り、15秒。追いつかれる。殴られる。横に転がって回避。叩き潰される。もう一転がりして回避。叩き潰される。向きを変えてもう三チャレンジ。結果は同じ。転部みたいに倒れ込み、頭上を青い火の玉が通過。後ろで炸裂。

 

 正面を見ると、ゲームがこちらに向けて魔法を放っていた。ありがとうと声に出して、直後叩き潰される。感謝は危機を脱してからしましょう。頭上を通った直後に走り出して、枝で転んで心停止。気をつけながらまた走り出し、そして追いつかれる。ゲームの正面には俺。その後ろに熊。フレンドリーファイアが怖くて魔法は撃てないね。躱すから撃って。

 

 なんてことを伝えられるような余裕は当然のようになく、後ろからどつかれて絶命。横転がりで回避して、叩き潰される。先程の焼き増しのように転がりを重ねて、

 

 不意に、真っ暗な闇に包まれた。

 

「畜生風情が、誰の許しを得て、私のモルモットに手を出している」

 

 ろくでもない五文字の呼び方が、こんなにうれしかったのは初めてだった。

 

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