過労死ライン越え(TS)転生者 キャロライン・オーバーは労働の待つ輪廻から解脱したい 作:エテンジオール
ループものは取りこぼされたキャラの、信頼を裏切られた心情を考えると四度も五度もおいしいよ(╹◡╹)
お姉ちゃんは、私の憧れだった。まだ小さい頃、世界にお母様と、父様と、お姉ちゃんしかいなかった頃。お姉ちゃんは私に何でも教えてくれたし、いつも見守ってくれた。閉じられた環境で、他に関わる相手もいないのに、私と同じで何も知らなかったはずのお姉ちゃんは、お母様でも知らないようなことすら知っていた。
遊んでほしい時の声のかけ方、困った時の助けの求め方、頭が痛くなった時の我慢の仕方から、苦手な食べ物を我慢して飲み込む方法。私の“なぜ”にお姉ちゃんはいつも答えてくれたし、お姉ちゃんの言った言葉はどれも本当だった。お母様ですらたまに間違えるのに、お姉ちゃんだけは間違えなかった。
幼心に、思ったのだ。お姉ちゃんは特別だと。比較する相手が少ない環境でも、明らかなレベルで特別だと。父様も、お母様も、きっとそう思っていた。きっと私は普通で、お姉ちゃんは特別だ。誰も言葉にしないけれど、みんながそう思っているのはわかった。でも、お姉ちゃんが“普通”の子供みたいに振る舞うから、それを尊重していた。
お姉ちゃんが望むから、両親はお姉ちゃんを普通の子のように扱った。その瞳に、今思えば異常とわかる知性が宿っていたとしても、かわいらしい幼子の外見と中身が噛み合っていなくても、お姉ちゃんは両親に、愛されることを望んだ。両親はそれを拒絶せず、愛する娘として受け入れた。
きっと何かが違えは、私たちは姉妹になれなかっただろう。けれどもお姉ちゃんが、キャロライン・オーバーであることを望んでくれたから、私たちは家族であれた。私はあの人のことを、姉と思うことができた。
だから最初、別邸から出た時は驚いた。お姉ちゃんのすごさは、誰にでも理解できるものだと思っていたから。みんながみんな、言葉にされずとも理解できて、けれど本人の意を汲んで“普通”に接しているものだと思っていたから。
“出来損ない”なんて陰口を聞いた時は、驚いたのだ。お姉ちゃんの出来が悪いのなら、私はなんだと言うのか。お姉ちゃんとは違って勉強もしなくて、遊んでもらってばかりだった私は、なんだと言うのだ。
今であれば、“出来損ないなのは節穴なお前らの目だ”くらいは言えるけど、当時の私にはそれほどの語彙はなく、胸の内から込み上げてくる不満を表現するすべがなかった。だから言葉にならない不満は、お姉ちゃんに甘えることで解消するしかなかった。
周囲の奇妙な言動の理由は、ある日突然わかった。“教育”と言われて課せられた魔法の行使、そこで私の魔法を見たフリーダが、私を天才と呼んだのだ。ただ、手から水を出しただけ。ただ、手から火を出しただけ。ただ、光を飛ばしただけ。そんな簡単なことができるだけで、私は“天才”らしい。そんな簡単なことができないせいで、お姉ちゃんは“出来損ない”らしい。
ふざけた話だ。お姉ちゃんのすごさは、こんなことで測れるようなものじゃないのに。それしか見ずに、みんながお姉ちゃんを貶める。それが許せなくて、否定してほしくて、お姉ちゃんに相談した。
「そんなに魔法が使えるなんてすごい!ゲームは天才なんだね!」
求めていた言葉は、周囲に対する反論。私と同じように、本当のすごさは魔法なんかではわからなくて、魔法の得意不得意なんて些事だという説明。与えられた言葉は、同調と迎合。魔法を使える、ただそれだけの事で、私なんかを“天才”と称した言葉。
“わたしみたいな出来損ないと違って”と小さく添えられたその言葉は、きっと私が最も聞きたくなかった言葉だ。本当に天才と呼ばれるべき人間が、自らを卑下する言葉。
否定してほしかった。否定してくれるだけでよかった。お姉ちゃんは嘘をつかないから、ただそう言ってくれるだけで、私にとっては信じる理由になったのだ。
お姉ちゃんは、間違えない。お姉ちゃんは、いつも正しい。そんな人間が自らを指す“出来損ない”の言葉を、私を指す“天才”の言葉を、私には無視することができなかった。
その言葉が、思考の端にベットリこびり付く。お姉ちゃんが間違えるはずがない。それは私にとって前提で、事実だ。この出来事一つを除いて、お姉ちゃんの言葉を疑ったことはない。なら、本当にお姉ちゃんは出来損ないで、私は天才なのか。
否定したい、否定してほしい言葉。そのための方法に気が付いたのは、ルーカス先生に出会ってからだ。
「天才と聞いて来たが、なるほど、その程度か。確かに才はあるが、努力なしでは咲かないな」
その言葉は、今となっては意図も理解出来る。その程度か、というのはただの感想だし、努力なしで咲かないのもただの事実。先生自身には、こちらを低く見るような意図はない。
ないのだが、かつての私はそこにそれがあるように思った。どこか嘲られているような気がして、少しムッとした。私は、お姉ちゃんが天才って言ってくれるくらいには才能があるんだ。そんな一方的に、上から目線で下げられるようなものではない。
結果としては気のせいだったが、私はムッとした。そして、言い返したくなった。なぜか。不当に低く見られるのが我慢ならなかったからだ。なぜか。私のみならず、周囲まで馬鹿にされたような気がしたからだ。
そう自分の中で解釈して、ひとつの可能性に思い至る。お姉ちゃんも、酷い言葉に対して同じように思うのではないかと。酷いことを言ったら、そんなことはないと反論してくれるのではないかと。お姉ちゃんが反論してくれれば、私の望みは叶うのではないかと。
きっとそれは、得るべきではなかった気付きだ。少し考えるだけでわかるのに、この時の私は気がつくことができなかった。いらないことには頭が回ったくせに、大切なことに気がつけなかった。
簡単なことだ。大好きな人に酷い言葉を吐くのは辛いこと。言われた相手も、言った自分も、聞いている周囲も悲しい気持ちになる、みんなにとって嫌なこと。そんな簡単なことに、私は実行に移すまで気がつけなかった。実行に移して、気が付いてから、やめることができなかった。やめてしまったら、取り消してしまったら、その苦しい思いが無駄になると思ったから。
お姉ちゃんは結局、私が罵っても困ったような表情を見せるだけで、否定してくれなかった。黙って私の言葉を受け入れて、ただ、ただ諦めたような顔をしていた。それが嫌で、その表情を崩したくて、言葉を強くした。数を増やした。けれど本物の“天才”であるお姉ちゃんを前に、私の言葉なんてなんの意味もなくて、ただ引くに引けなくなった馬鹿な私だけが残る。
不満はやがて怒りになって、怒りは嫌悪になって、嫌悪はやがて、偽物の言葉を本物にした。あんなに尊敬していた、大好きだったお姉ちゃんに対して抱く感情は、ネガティブなものに成り果てた。
私だけが目の前で褒められても、お姉ちゃんはちっとも気にしなかった。むしろ一緒になって、ゲームはすごいね!と褒めてきた。私が自分の魔法とお姉ちゃんのそれを比べて貶しても、お姉ちゃんはちっとも気にしなかった。わたしにできるのはこれだけだから、少しでもこれを磨くのと言って、手から水を垂らし続けた。
堪らなく、自分が惨めだった。私にできるのは才能にものを言わせて見下すことだけで、比べることだけ。お姉ちゃんは自分一人で基準を持って、無意味に見える努力も惜しまない。なのに、そんな“差”を見せつけられているのに、周囲が天才と褒めそやすのは私の方なのだ。
目的を失って手段だけが残ってしまった罵倒を、お姉ちゃんにぶつける。相変わらずお姉ちゃんは気にしなくて、そんなことをしている間に、先生がお姉ちゃんのすごさに気付く。
きっかけはわからなかったが、結果は瞭然だった。お姉ちゃんをずっと出来損ないと呼んで、会話はおろか、視界に入れることすらまともにしなかった先生がある日突然、キャロラインと呼ぶようになったのだ。キャロラインと呼んで、会話をするようになった。
言葉にすればたったそれだけの変化は、けれど最初、私が望んでいたものだった。お姉ちゃんが正しく評価されて、周囲からの扱いが改善する。お姉ちゃんが、出来損ないなんて言葉を受け入れることがなくなる。否定してくれる。
そんな、うれしい出来事があったにもかかわらず、何故か私の心は晴れなくて、口は勝手に、悪態を吐き続ける。ルーカス先生はもう普通に名前で呼んでいて、使用人たちだって表立って蔑まないのに、私だけが続けている。
自分で、自分がわからなかった。大好きだったはずなのに酷いことばかり言って嫌いになって、今となっては先生と楽しそうに話している姿を見るのも腹が立つ。そのくせ、散々罵られているのにお姉ちゃんはやっぱりお姉ちゃんで、私の異変に気がついて心配なんてしてくる。
一言で言えば、嫌だった。私を介さずに先生と仲良くなっているお姉ちゃんも、勝手にお姉ちゃんを認めている先生も。だから私を心配するお姉ちゃんに対して拒絶の言葉を押し付けて、その場をはなれる。嫌だった。私の思いなんて伝えていないにもかかわらず、それを前提として心配しているようなお姉ちゃんが。行動を見れば嫌われていて当然な、嫌われているべき私に対して、まだ好意を前提とした言動をするお姉ちゃんが。
嫌だったから、嫌すぎたから、お姉ちゃんから逃げることを選んだ。何もしなければ、普通に過ごしていれば、夕食の時間には顔を合わせてしまうお姉ちゃん。それから逃げるには、夕食から逃げる他なかった。ご飯をたべないまま、家から飛び出して、すぐに見つからない場所、森の中に入るしか無かった。
冷静な判断ができなかったから、それを選んだ。昼間の、太陽が明るい時間を除けば、自分たちが叶わないような強力な魔獣が目を覚ますことは理解できていて、それに見つかったら自分が無事でいられないこともよく理解できている。
にもかかわらず私は何も考えずに飛び出して、そのまま見慣れぬ景色の中で、迷った。太陽があればおよその時間から方角を確認できても、その術をお姉ちゃんから学んでいても、日が沈んでからは同じようにはできない。
右も左も分からない景色の中で泣いて、泣き疲れて、けれども涙はやまないまま家と思われる方向に向かって歩き続ける。途中、空の上の方が赤くなって、そちらに向かって歩いていくとお姉ちゃんが姿を見せる。
あんなに会いたくなかったはずなのに、安心できる顔。私よりも弱っちいくせに、私でも勝てるような魔獣に勝てないくせに、来るのが当たり前みたいな顔をして、私の心配をしている姿。
たとえどれだけ罵声を浴びせたとしても、お姉ちゃんはお姉ちゃんだったのだ。私が何をしたところで、何を思ったところで、お姉ちゃんにとって私は、ただの妹でしかなくて、守るべき、心配するべき対象なのだ。
そう自覚したら、張り詰めていたものが解けたみたいに気が楽になって、体が勝手にお姉ちゃんについて行く。お姉ちゃんが、大丈夫だと言った。嘘をつかないお姉ちゃんが、間違えないお姉ちゃんが、大丈夫と言った。それだけで先程までの不安は晴れて、安心してしまう。
大きな魔獣が現れた時も、お姉ちゃんが大丈夫と言ったから、パニックにならずに済んだ。きっと独りだったら、彼我の力の差なんて考えずに魔法を撃って、怒らせていただろう。
お姉ちゃんは囮になって、魔獣を私から遠ざけるために走る。何故か、自分が追いかけられると確信しているみたいに、走って逃げる。“わたしが食べられそうになったら、魔法で助けてね”なんていいながら、なんで持っているのか分からない塊を投げたりしつつ、時間を稼ぐように気を引いて逃げる。そして数分の時間稼ぎの末に、駆けつけた先生が魔獣を仕留める。
意味がわからなかった。先生との会話を聞けば、事前に会話したことではなかったらしい。なのにお姉ちゃんは確信があったみたいに時間稼ぎをして、先生の到着までを耐えた。そしてそのまま、意識を失って食べられる直前だった両親を救って見せた。まるで最初から、どこにいるのかがわかっているかのように的確に場所を言い当てて、ヒーローみたいに助けていく。
そんな明白な“特別”を前に、私のちっぽけな考えなんて意味が無いと、なぜもっと早く気がつけなかったのだろう。私のお姉ちゃんは天才で、特別なのだ。嘘をつかず、間違えず、いつも私を助けてくれる。そういうものだと認めれば、お姉ちゃんに感じるものなんて、安心感しかない。
引き取られた先生の家で、なにか困ったことがある度にお姉ちゃんを頼る。お姉ちゃんはいつも忙しそうだけど、私がお願いすればこちらを優先してくれた。他の人よりも、私のことを優先してくれた。私が昔みたいにお姉ちゃんに甘えるようになるまで、そう時間はかからなかった。
相変わらずお姉ちゃんのすごさを理解できる人は少なくて、新しい場所でも低く見られていることはあったが、もう気にはならない。お姉ちゃんがそれを受け入れているなら、きっとなにか理由がある。それに、ちょっとすればどうせ、いやでも理解することになる。なら、私が何かする必要はない。
私は全力でお姉ちゃんに甘えて、今度こそすきの気持ちを伝えて、それをするだけで、少なくとも堂々とお姉ちゃんが嫌がらせをされることはなくなった。魔法の“天才”らしい私が、心底大切にしている相手、そんな肩書きだけでも、配慮する理由にはなるらしい。
それはつまり、かつての屋敷での私の行いが、よりお姉ちゃんへの扱いを悪くする一因になっていたということで、気がついた日にすぐ謝る。お姉ちゃんはやっぱり気にしてなんていなくて、軽い調子でいいよと言った。お菓子をちょうだいって言った時よりも簡単に、どうでもいいことかのように、私を許す。
自分が恥ずかしくって、許されたことに安心して、また甘える。そんな相手に憧れてしまうことは、なれないとわかっていても近付きたいと思ってしまうことは、きっと当然のことだろう。優しくて、賢くて、守ってくれる人。私もお姉ちゃんみたいになりたいと思って、勉強にも力が入る。お姉ちゃんなら、たとえ躓いたって諦めない。わからないところをそのままにせず、自分の中に落とし込めるまで質問を続ける。なら、憧れている私が同じようにするのは当然だ。
学校に通うことを受け入れたのも、お姉ちゃんならそうするから。授業を真面目に受けるのも、お姉ちゃんならそうするから。“天才”と褒められても調子に乗らないのも、お姉ちゃんならそうするから。
辛い時は心の中のお姉ちゃんに励ましてもらって、迷った時はお姉ちゃんならどうするかを考える。もちろん、本当に辛い時は本物のお姉ちゃんに励ましてもらう。私の判断基準はお姉ちゃんで、そうしているうちに私の行動は、考えるより先にお姉ちゃんをなぞれていた。細かいところや、本当に大変な時なんかは同じようにできなくても、少なくとも大枠の、基本のところは、“もしお姉ちゃんが同じ状況なら”をできている自信があった。
隣のクラスメイトに魔法が飛んできた時に、反射的に庇ったことも、勉強が苦手な友人に教えてあげるのも、一つ一つの出来事が持つ意味を考えることも。全部自然にやれたが、お姉ちゃんならそうすることだ、と自信を持って言える。
お姉ちゃんなら、そうする。私の憧れのお姉ちゃんなら、そうする。私がそうすれば、きっとお姉ちゃんは、私のことを自慢の妹と思ってくれる。そしたらいつの日か、先生だけではなく私のことを頼ってくれるかもしれない。
そんな未来を夢みながらやれることを頑張って、下級貴族としては十分すぎる評価を、周囲から貰う。いつの間にか教師陣からも一目置かれていたお姉ちゃんと比べるとまだ足りないが、私にできる範囲で、全力を尽くせている。十分成長して、今ならばもう、あの魔獣に襲われても、お姉ちゃんを守れるくらいには強くなった。もう、守られるだけなんて無様を晒すことは、しない。
そう、思っていた。魔獣とは明らかに違う、本物の化け物が目の前に現れるまでは。雪山での生存、行動等を学ぶための冬季実習で、突然現れたそれはこちらに指を向け、咄嗟に逃げようとしたクラスメイトの体から突然血が飛び出す。
目で見てわからない、音も聞こえない、不可視の攻撃。かろうじてわかるのは、それが指から出ていることと、“それ”の指が攻撃によって一時的に失われ、すぐに生え戻ったこと。
お姉ちゃんならどうするかを、考える。無策で相手に突っ込んでいくことは、ただの無謀だ。負傷したクラスメイトを囮にして逃げることは道を外れる。効くか確認するために火の魔法を放って、当たったはずのそれが意味をなさず、無傷の化け物が現れるのを確認。正確には少し焦げているが、すぐに治った。
つまり、攻撃は攻撃として意味をなさない。しかし全くの無意味ではなく、回復するための時間くらいは稼げるかもしれない。お姉ちゃんと違って、私にはどの程度時間を稼げばいいのかはわからないが、多少の時間稼ぎはできるはず。
攻撃により化け物の注意が自分に向けられたことを察しながら、相手の動き始めに気をつけて、反応を待つ、向こうもこちらを窺っているのか、互いに動くことなく、時間が過ぎる。嫌な緊張感だ。寒いはずなのに汗が出てきて、そして不意に、私たちのどちらでもない足音が聞こえてくる。
教師か、他のグループのクラスメイトか、無関係な魔獣か。あの化け物の仲間というのは、あまりに最悪だから考えたくない。動かないまま、睨み合ったまま近づいてくるそれを待って、現れたのは見覚えしかないかわいいお顔。
来たばかりで状況を理解しているような言動なのは、今更気にすることではない。いるはずがないのに当たり前のように来たことも、理由は“お姉ちゃんだから”で済む。少なくとも私にとっては。そしてお姉ちゃんは救援信号を上げるようにと言って、クラスメイトがそれに従う。役目を果たせず撃ち落とされたが、お姉ちゃんが言うのなら、きっとそれにも意味はある。
けれど、みんなを置いて逃げろという言葉は、いくらお姉ちゃんのものでも聞けなかった。だって、お姉ちゃんはそうしない。私の憧れのお姉ちゃんは、自分の後ろに人がいるのに、置いて逃げたりしない。そんなことは、お姉ちゃんに恥じることだ。
「お姉ちゃん、私は何が相手でも、もう逃げないって、立ち向かうって決めたの。だって私は、あの日逃げなかったお姉ちゃんの、キャロライン・オーバーの妹、ゲーム・オーバーなんだから!」
だから、私を逃がすのではなく、私を使って戦ってほしい。お姉ちゃんとは違って魔法しか使えないような私でも、多少の戦力にはなるはずだ。先生みたいに上手にできなくても、その代わりくらいは務められる。
大丈夫。怖いけど、怖くはない。命の危険はあるかもしれないが、それだって大丈夫に決まっている。だって私には、お姉ちゃんがついているのだ。心の中のイマジナリーお姉ちゃんではなく、本物のお姉ちゃんが、“特別”がついている。それなら、この位の危機を乗り越えられずして、なぜお姉ちゃんの妹を名乗れるだろう。
気合を入れて、一歩踏み出す。化け物が相手でも、負ける気はしなかった。そしておもむろに指を向けられたのを見て、そこから飛び出した何かが迫るのが、スローモーションな視界の中で見えて、一つ気がつく。
お姉ちゃんの言葉を無視して、どうして私は自分が無事でいられると思ったのだろう。お姉ちゃんが間違えるはずなんて、ないのに。
この後めちゃくちゃビンディープレゼントされた。