ノエルは崩壊した城の瓦礫に凭れ、空を見ていた。
母が一人で戦っている。
あれほど優雅であることにこだわっていた、矜持を持っていた──あるいは囚われていた──母が、
ほんの二十分ほど前までは穏やかな午後だった。いつもどおりの日常が続いていた。
それが、突然の、謎の襲撃。まさに青天の霹靂だった。
自分の対応に失着があったとは思えない。自然発生ではありえない、天を覆い尽くす紫電の迸りを察知した瞬間には魔力を放出し、“魔力の鎧” を纏っていた。母ほどではないが、十分に実戦に堪える水準で魔力操作を習得している。だからこの鎧さえあれば凌ぎ切れると思っていた。連続の落雷──襲撃者の攻撃がやんだら直ちに攻勢に打って出て制圧すればよいと安易に考えていた。
甘かった。あまりにも甘ったれていた。
雷が終わらないのだ。のべつ幕なしに降りそそぐ死の閃光、衝撃、轟音──瞬く間に城は瓦礫の山と化した。光で見えなかったが、この時にはすでに城下町も地獄めいた様相を呈していたことだろう。
動揺があった。やがて恐怖が鎌首をもたげた。
それが仇となった。精神の乱れが、“魔力の鎧” に綻びを生んだ。
次の瞬間には稲妻に打たれていた。
それでもノエルは瞬時に魔力を整え、立て直した。
だから死にはしなかったが、深刻なダメージを負ってしまった。そのうえ、強引に鎧を再構築したせいで過剰に魔力を消費してしまっていた。
雷がやむまで持ってくれるだろうか。
魔力は体外に放出すると、自然と目減りしてゆく。雷を防ぐほどの高密度の魔力を纏いつづけるそのMP消費量は、並の魔法の比ではない。ノエルでも長くは続けられない。
かといって、雷光で視界がままならない状況で、どこにいるかもわからない襲撃者を探して闇雲に突撃しても勝率は低いだろう。
神に祈るしかなかった。
しかし、その祈りは聞き届けられなかった。
魔力切れを起こしたノエルは再び全身を焼かれ、どこからか飛んできた瓦礫に脇腹を抉られた。肋骨の砕ける音。千切れた腸管がまろび出て垂れ、かと思えば視界が切り取られた。右目に破片が直撃したらしい。生温かい煮こごりが頬を伝う感触──破裂した眼球から
死を覚悟した。あと一発でも雷を受けたら自分は死ぬ。
思うように体が動かない。蹲り、固く目を閉じた。
「……」
しかし、不意の静寂。
攻撃が止まったのだろうか……?
ハッとして瞼を開け、頭を上げた。土埃が辺りを覆っていた。襲撃者の気配はない。かなり遠くにいるのかもしれない。
視線を下げると、近くの地面に後頭部の砕けた頭部があった。脳髄のほとんどが消えている、がらんどうな頭蓋骨。小さな二つの体が折り重なるようにしてうつ伏せに倒れていた。
その横顔はよく知っていた。
「ロジー……エミー……」
妹たちだった。
上に覆い被さっているロジーはもう駄目だ。脳を失い、絶命している。
ノエルは力を振り絞って彼女をどかし、下敷きになっていたエミーを確認した。
「っ!」
息を呑んだ。氷山のような形の瓦礫がエミーの薄い胸部を突き破っていた。彼女も息をしていない。
やがて土埃が晴れてくると、今度は少し離れた所に父の首を発見した。崩落した建材に首から下を押し潰されており、光のない目を見開いたまま微動だにしない。明らかに死亡していた。
城は山の上にある。だから領地の様子がよく見えた。
地獄のような光景が広がっていた。
城も町も破壊され尽くし、至るところから火の手が上がっている。それなのに呻き声すら聞こえない。皆、死んでしまったのだ。
体から力が抜けていくのを感じ、たまらず、崩落した内壁らしきものに背を預けた。
守るべきものを守れなかった。尊敬する兄に汚名を着せてまで守った領地を、民を、家族を、何一つっ!!
情けなさで涙があふれてきた。
兄上がいてくれたらな、と思ってしまう。
兄の目覚ましい活躍は聞き及んでいた。領地を出て貴族の責務から解放されるや否や、“これで好き放題できるぜ!” とばかりに羽目を外して悪魔と取引し、もって禁忌の力を得たのではないかと疑わざるを得ないようなその輝かしい物語は、まさしく英雄譚──あるいは救世のプロローグなのではないかとさえノエルには思えてならなかった。憧憬が大いに認知を歪めている自覚はあったが、あながち的外れではないだろう。
いろいろとおかしいのだ。
エバンス伯爵肝煎りの騎士たちでも歯が立たないS級盗賊団を瞬殺し、多くの貴公子が狙っている、
かと思えば、ミスティ嬢が実家に帰省している隙を逃さずに、ダンジョンの高難度ギミックをたちまちのうちに看破してダイヤモンド・シールドのボス個体を鼻歌まじりに指一本で粉砕すると、没落貴族の美少女に家を買い与えて虜にし、現地妻とする。
旅のついでに未確認の蘇生スキル持ちのアイスウルフの群れをたったの二手で殲滅し、冒険者随一の美貌を誇る、〈ドラゴンスレイヤー〉ことレオノールに格の違いをわからせて虜にし、婚約者公認の
挙げ句の果てには世界改変スキルなどという神話でも聞かないような規格外の能力を相手取って勝利し、凱旋するや否や、婚約者と妾が見守る中、三日三晩休まずに未亡人と情を交わして虜にし、亡き夫を忘れさせる。
「ふふ……」
あまりにも荒唐無稽で失笑してしまう。きっと吟遊詩人がエール片手に好き勝手に脚色したのだろう。
けれど、兄上ならやりかねないな、とも思う。
特に女性関係には説得力があった。地元にいる時からそうだった。少し目を離すと、ともすれば彼に向けられる思慕の眼差しが増えているのだ。童女から熟女までまるで節操がない。幼き日のノエルは兄が盗られるのではないかとひどく心配し、身の程を弁えぬ不届き者を見かけるたびに彼にバレないように魔力を放出して威嚇したものだ。
「兄上……」
兄ならこの絶望的な状況もひっくり返してくれるに違いない。今にどこからかひょっこり現れて、昔ドラゴンを倒した時のように知恵を授けてくれるはず……。
現実逃避だった。自覚はある。
つらくなるとすぐに兄を頼りたくなるのはノエルの悪い癖だった。いくら兄でももうどうしようもない。知恵を請われても困ってしまうだろう。
ふと気づく。
涙でぼやける空に違和感を覚えた。
涙をごしごしと拭う。目を凝らしてその正体を探り──
「!」
西の方角、その上空に人影が浮いていた。
蟻ほどの大きさに見えるから
母ではない。シルエットを見るに、おそらくは男。滞空してこちらを見下ろしているようだった。
あいつか。
状況からいって、あの人物が襲撃犯で間違いないだろう。
ふと目が合ったような気がした、その時、城下町のほうから飛翔した影があった。母だ。
母が音速飛行で襲撃者に肉薄する。
その刹那の立ち合いがどのように行われたか、ノエルには見えなかった。
しかし、母が後れを取ったことだけは明らかだった。
おそらくはカウンターを合わせられたのだろう。きりもみ回転しながらものすごいスピードでノエルのほうへ墜ちてくる。
が、目前まで迫ったところで体勢を立て直した。
ドレスのスカートを膨らませ、とん、と
彼女はその腕を一瞥するなり、“魔力の刃” で切断した。ぼとりと落ち、鮮血が迸るよりも早く火の魔法で一気に焼却止血する。この間、表情に変化はなく、上空の襲撃者を油断なく見据えつづけていた。
追撃はない。〈天空の死神〉を警戒しているのか。
と、母がノエルをちらと見た。
「何を呆けているのですか。あなたはあなたの為すべきを為しなさい」
ハッとした。そうだ、こんなときこそ〈以信伝心〉の出番ではないか。
襲撃者の情報を共有する。
だが、有益な情報がもたらされることは期待できない。
こんな非現実的なことができる存在を認識していたらテレパシーでの定期連絡の際にとっくに話題に上げているはずだから、サーバを担うノエルが知らないということは誰も知らないということだ。当然、起死回生の妙手など望めない。
ゆえに、本命はこちらから情報を提供すること。
襲撃者の目的は不明だが、最大級の危険人物であることは明らかだ。何もかもを破壊し、
救援は間に合わない。そしておそらく母でも勝てない。だから、もう、自分たちの命とウィリアムズ領は諦める。だが、同盟貴族や民の未来のために情報を伝えることはできる。
兄が守った平和を壊させるわけにはいかない。
「任せましたよ」
母はそれだけ言って飛び立った。命を代価に情報を得るために。
ノエルは一度深呼吸すると、〈以信伝心〉を発動した。
──こちら、ノエル・ウィリアムズ。緊急事態につき通信可能な者全員に接続した。
〈以信伝心〉は、ノエル(サーバ)とその他の者(ユーザ)を接続するものであって、ユーザ同士での直接の念話(P2P通信)はできない。だから、全員に接続したら全員の話を同時に聞き、別々に対応するマルチタスクが要求される。
瀕死でやることではないが、泣き言は言ってられない。
接続した瞬間に母から送られてきた襲撃者の風貌とスペックはこうだ。
・仮面をしていて顔は見えない
・中肉中背にブラウンの短髪、一般的な白さの肌(ただし変身魔法やスキルで偽装している可能性あり)
・無地らしきチュニックと簡素なズボンという庶民的な服装
・革のブーツ
・武器は腰に下げた短剣のみ
・革製防具(胸当て及び籠手)
・音速に、見てから対応できる反応速度
・その速度に耐えうる強度の肉体
・体重五十キロほどの母を蹴り飛ばす顕在筋力
・母以上に高速かつ精密な魔力操作
・落雷及び飛行を可能たらしめるスキル
スキルと判断したのは魔力を感じないからだ。これらの情報をユーザに伝え、
──皆様の中に襲撃者の正体に心当たりのある者はおられないか?
異口同音に “ノー” が返ってくる。そも、それほどの落雷ないし電気を操れる人物がいるなど、にわかには信じられないという。〈天空の死神〉を超える魔力操作も現実的ではない。“幻術の類いでは?” という声もちらほら。
──その可能性もあるが、そうでなかった場合に備えて情報を提供する。どうか民草を守るためにご活用いただきたい。
と送ると、“了承” が返ってきた。ユーザは基本的に貴族なのだ。ノエルの遺志を否定しようとする者はいない。
天空のフィールドでは、母が、百メートルほどの間合いを維持しながら魔力の弾幕を張っているが、その
魔力操作も得意なようだが、使い勝手がいいのは電撃──おそらくは電気操作スキル──なのだろう。
実況中継しつつ見守っていると、襲撃者が急加速して母に迫った。速い。0.3秒ほどで追いつく。およそマッハ2ということだ。
次の瞬間には血飛沫が空に滲んだ。風に流されてゆく。と、ここでようやく、雷鳴にも似た轟音──ソニックブームが大地を揺るがした。
残されていたはずの右腕が地上に落ちてくる。
どうやら、超高密度の “魔力の刃” で切断したようだった。挙動が速すぎてノエルには見えなかったが、母がそう言っている。咄嗟に “魔力の鎧” を纏ったが必要密度に至らず破られた、と。
凝縮した魔力で断面を覆えば止血はできる。しかし、果たしてそれに意味があるのだろうか。
距離を取ろうとした母に、射出された “魔力の刃” が迫る。身をよじってかわしても、次の刃がもう眼前まで来ている。魔力をぶつけて相殺したら、今度は挟み撃ちにするように左右から飛んでくる。ドレスを斬られながらもぎりぎりで回避。しかし、刃は次から次へと射出される。
かわして、相殺して、またかわして──そんな曲芸じみた行動を続けていたら、
「──っ!」
母がたまらず息継ぎをした。その瞬間、〈天空の貴婦人〉の効果が消滅して慣性に流されるだけの存在となる。息を止めている間しか発動できないのだ。
致命的な隙だ。だからこそ母は、同時に “魔力の鎧” を纏う。MP消費量は増えるが、仕方ない。
息継ぎが終わり、飛行が再開する。
すると、再び
息が続かなくなる。魔鎧を纏って息継ぎをする。再び魔刃弾の連撃。魔鎧と息継ぎ──千日手めいた繰り返しだった。
やはりおかしい、とノエルが思うのと、
『生かされていますね』
母からの念話は同時だった。『殺そうと思えばいつでも殺せるはずです』
母の魔鎧を超える密度の魔力で攻撃すればダメージを与えられる。千日手で消費するMPを考えると、高密度の魔刃なりで攻撃したほうがコストパフォーマンスがいいはずだ。戦いぶりを見るに、襲撃者にそれができないとは思えない。
遊んでいるのか?
いや、そんなわけはない。というより、そこまで狂っているとは思いたくない。
『狙いはパチコウか』
その声に涙が出そうになる。兄からの念話だった。『ウィリアムズ家を守るようプログラムされた番犬ゴーレムをおびき寄せるには、母さんかノエルの少なくとも一方は生かしておかなければならない。護衛対象が死亡したら番犬が加勢してくる道理がなくなるからだ。空中という目立つ場所で生かさず殺さず
──僕が生かされているのは母を殺してしまったとき用の保険ということですか?
『おそらくな。
〈以信伝心〉で情報を拡散されても問題ないと考えているというのもあるんだろう。裏を返せば、パチコウの自己進化能力をそれだけ警戒しているということだ』
パチコウは、兄が昔、顔を引きつらせて懸念していたとおり、“大量破壊兵器” の名に相応しい殲滅力を手に入れていた。例えば、小さい領地ならばその気になれば一時間も掛からずに滅ぼせるだろう。その攻撃力は母をも大きく上回る。このまま順調に成長すれば、かの〈星剣〉にも届きうるのではないか、と父が野心を燃やすほどだった。
庭の犬小屋にいた分身体は最初の落雷でやられたようだが、本体は高難度ダンジョンの深部にいる。そして、家族の窮地を察してここに急行しているはずだった。
ただ、あれほどの落雷を操る襲撃者に勝てるとは思えなかった。魔力の精密操作という脅威もある。進化しつづけるパチコウの手札をすべて把握しているわけではないが、期待は薄い。進化を重ねてメタを張ったらわからないけれど。
『自決すべきでしょうか』
母が言った。兄に聞け、ということだろう。
しかし、ノエルが念話を送ろうとしたところで事態が動いた。
『!?』
何が起きた?!
ノエルの目には、襲撃者自身が一瞬だけ青白い雷──電気エネルギーそのものとでも言うべきか──になったように見えた。
かと思えば、またすぐに雷化して閃光を放つ。
『風の暗殺魔法です』母だ。彼女には見えていたようだった。距離を取りながら、『認識阻害を施された風の刃が襲撃者を狙っています。それを透過するために肉体を装備ごと雷に変えているのでしょう、おそらくは自動で』
パチコウか。
ダンジョンから出るなり狙撃したのだ。パチコウは暗殺魔法にも長けている。正面切って戦わなくてすむならそれに越したことはないという判断なのだろう。
しかし自動雷化能力とは。
恐ろしい能力だ。無限とも思える落雷といい、完全に人の域を超えている。神の奇跡とでも言われなければ納得できない。
もしも貫通耐性にも優れていた場合、尋常の攻撃では絶対に倒せないということになってしまうが、おそらくその点も抜かりないのだろう。単身で乗り込んできていることが何よりの証左。自信の程が窺えるというものだ。
魔法は自由度が高い代わりに “貫通効果” や “耐性” というものがない。だからこの襲撃者のように貫通効果がないと一切攻撃が通らない、すなわち物量で押し切れないタイプを物理攻撃や魔法で攻略するには、能力の性質上の弱点を衝くしかない。
が、望み薄だろう。電気系能力は汎用性抜群だ。それをこのレベルで行使できるとなると、弱点などあってないようなものだろう。
例えば毒や生物兵器ならばどうかというと、そもそも自動発動なのだから有害物質を検知された瞬間、雷化で透かされる可能性が高いうえに、上手く摂取させられたとしても雷化で分離させられるかもしれないし、電磁気力により体外に押し出される可能性もある。
幻術などの搦め手でのハメ殺しも通じないだろう。
自分の体を動かす生体電流を完全に制御できるなら幻術や洗脳系能力も効かない可能性が高い。他者の生体電流の正確な感知まで可能なら、精神に作用するのではなく虚像を見せる幻影系や隠密系能力も無意味。
だから、耐性を貫通できるスキルか、あるいは “概念系能力” が必要になってくる。
──のだが、残念ながら母にその手札はない。彼女は正攻法の殺害魔法に特化しているのだ。
空を飛ぶ水の球が見えた。
今際の際に見る幻覚かと一瞬我が目を疑ったが、球体の内部にパチコウの姿があった。青空を反射して日差しを散らしている。
天空の戦場の更に上、もっと青に近い場所で紫電が弾けた。落雷の前兆にほかならない。
果たして、パチコウの小さな体をいなずまが呑み込んだ。
「!!」
パチコウは無傷──水の球で雷をいなしたのだ。
不純物がなく、水の操作性に優れた最高位の水魔法ならではの力業だった。純水は絶縁体なのだ。通常の水ならば雷ほどの規格外の電気エネルギーをぶつけられると絶縁性を壊されて通電してしまうが、魔法の力で絶縁破壊の
まさかここまで極めていたとは、驚嘆せずにはいられない。
突然、半透明の巨大な立方体が出現した。一辺が300メートルはある特大多重反転結界だ。襲撃者を中に捕らえている。
間髪を容れずその結界が輝き出した。夥しい巨大魔法陣が内壁を埋め尽くしているようだった。
すべての魔法陣から水龍の頭部が出てきた。その数、四十八。それらが一斉に放たれた。全長百メートルはあろうかという純水の巨龍が、飛沫を上げながら猛然と突撃する。
結界と純水で雷化回避のスペースを潰そうというのだろう。この激流で圧殺できたら最上、できずとも水龍の残骸に沈めて窒息死させる。二段構えの攻撃に違いなかった。
いけるのではないか。
期待が胸を熱くさせる。
しかしそんな希望的観測は、襲撃者自身が稲妻となって龍の
『雷化移動も可能なのか』
いつも飄々としていた兄ですら驚愕しているようだった。
雷速に追いつける生物などこの世界には存在しない。
やはり神の奇跡なのか、とノエルは愕然とする。ルシフ様が我々に試練を与えるために再臨なさったか、あるいは愚かなる人類への神罰なのかもしれない。
「ああ……」
思わず嘆声が洩れた。
母でさえ唖然としてただそれを見上げていた。
『どうした!? 何が起きている?!』
兄が、ユーザたちが問い質してくる。
太陽の下にもう一つ太陽があった。
青白い光を放つ球体だった。閃光が爆発したかと思ったら、その爆心地に出現していたのだ。それの近くにいる襲撃者は、熱に焼かれぬためだろう、雷化しつづけている。
パチコウが燃えていた。母も炎に包まれ、墜ちてくる。城の残骸を喰らっていた炎がにわかに勢いを増す。
視界が黒く染まった。残されていた左目が熱で損傷したのだろう。全身が熱い。熱と痛みしか感じない。
僕もここまでのようだった。意識が遠のいてゆく。
神よ、僕はあなたを赦さな