「見えてきた!」
長い道のりを越え、マサヒロとイーブイの目の前に、大きな街が姿を現した。
「ヤマブキシティだ!」
高い建物が並び、たくさんの人やポケモンが行き交っている。
「すっげぇ……!」
マサヒロは目を輝かせながら街へ入っていく。
「ここなら、次のジムもすぐ見つかりそうだな!」
「イーブイ!」
イーブイも嬉しそうに鳴いた。
マサヒロは街を歩きながら、ジムを探していく。
そして――
「あっ! あれだ!」
大きな建物を見つけたマサヒロは、迷わず中へ入っていった。
「ここがヤマブキジムか!」
「……?」
イーブイが不思議そうに周りを見渡す。
建物の中には、たくさんの格闘家たちがいた。
「……あれ?」
マサヒロが首をかしげる。
すると、一人の門下生が近づいてきた。
「君、どうしたんだ?」
「俺、ジム戦に来たんだけど!」
「ジム戦?」
門下生は驚いた顔をする。
「ここはヤマブキジムじゃない。格闘道場だ」
「えっ!?」
マサヒロは固まった。
「じゃ、じゃあ俺……ジムと間違えたのか!?」
「そういうことだな」
「うわぁぁ……!」
マサヒロは頭を抱えた。
イーブイも呆れたような顔をする。
「イーブイ……」
「仕方ないだろ! 似たような建物だったんだから!」
* * *
その時だった。
道場の奥から、すすり泣く声が聞こえてきた。
「……うっ……うぅ……」
マサヒロが振り返る。
「どうしたんだ?」
一人の門下生が、涙を拭いながら話し始めた。
「実は……俺たちの師範代が……」
「師範代が?」
「ナツメに負けたんだ……」
「ナツメ?」
マサヒロの表情が変わる。
「それって……ヤマブキジムのジムリーダー?」
門下生はうなずいた。
「そうだ……」
「師範代は、ナツメに勝負を挑んだんだ。でも……」
門下生は拳を握りしめる。
「まったく歯が立たなかった」
「そんなに強いのか……」
「ナツメはエスパータイプの使い手だ。そして……」
門下生の声が震える。
「負けた師範代を……人形にしてしまった」
「人形!?」
マサヒロは驚いて目を見開く。
「そして、そのまま連れていかれたんだ……!」
「……!」
イーブイも驚いたように耳を立てる。
「師範代は今もナツメのところにいるのか?」
「ああ……」
門下生は涙を流した。
「誰も助けに行けないんだ……」
「……」
マサヒロはしばらく黙っていた。
そして――
「俺が助ける」
「え?」
門下生が顔を上げる。
「俺がナツメと戦って、師範代を助ける!」
「君が……?」
「それに、俺はジムバッジも集めてるんだ!」
マサヒロは胸を張った。
「ナツメを倒して、師範代を助けて、ジムバッジももらう!」
「イーブイ!」
イーブイもやる気満々に鳴く。
「よし!」
マサヒロは拳を握った。
「次の相手はナツメだ!」
* * *
「だったら、俺のスピアーで戦う!」
マサヒロはモンスターボールを取り出した。
「ナツメはエスパータイプなんだろ?」
「ああ」
「だったら、虫タイプのスピアーなら有利じゃないか!」
マサヒロがボールを投げる。
「出てこい、スピアー!」
「スピアー!」
スピアーが姿を現した。
「これなら勝てる!」
しかし――
「待ってくれ!」
門下生が慌てて止めた。
「え?」
「今のスピアーでは、ナツメには勝てない!」
「なんでだよ?」
「確かに虫タイプはエスパータイプに有利だ。だが、それだけではナツメには勝てない」
「……」
マサヒロはスピアーを見る。
スピアーも門下生をじっと見つめている。
「ナツメは、ただタイプ相性が有利だからといって勝てるような相手じゃない」
「じゃあ……どうすればいいんだ?」
門下生は少し考えた後、スピアーを見る。
「……一つだけ方法がある」
「本当か!?」
「ああ」
門下生は道場の奥を指差した。
「格闘道場に伝わる奥義を、スピアーに教える」
「奥義!?」
マサヒロの目が輝く。
「それを覚えれば、ナツメに勝てるのか?」
「必ず勝てるとは言えない」
門下生は真剣な表情で答えた。
「だが、今のまま挑むよりは可能性がある」
マサヒロはスピアーの前にしゃがみ込む。
「どうする、スピアー?」
「スピアー!」
スピアーは迷うことなく頷いた。
「よし!」
マサヒロは立ち上がる。
「教えてくれ!」
門下生も頷いた。
「分かった。今日から特訓だ」
こうして――
ナツメとのジム戦を前に、マサヒロとスピアーの新たな修行が始まる。
その奥義とは、一体何なのか。
そして、スピアーはナツメに勝つことができるのか――。